著者
長神 風二
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.14-24, 2007-03

“Science Agora 2006” the first integrated event for science communications in Japan was held on 25-27th November 2006. In the event, 86 associations or groups held their own session, 104 sessions and posters were shown, and more than 1500 people participated. The event was aimed for“ infrastructure development” for the advancements of science communications in Japan. Three purposes of“ agoras” were designed; the dialogues between society and science, that between the various science sectors, and that amongst science communicators. In this report, I describe how these purposes were reflected to the process of program planning and how these were realized or not. The network amongst science communicators in Japan were reinforced by the event, and some trials for the corporation between various science sectors were started by the event. Also some outreach events for general public made a good success in Science Agora 2006. Each success was independently accomplished, but Science Agora has the potential to be the place for the active interaction between the different purposes. In future, the multiple network, from government, researchers to general public, should be constructed based on Science Agora, and it will contribute to the sustainable development of science in society.
著者
愉 彦樺 小松 雄士 文野 優華 堤 拓朗 小川 雄大
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.17-28, 2020-03

研究者が社会に対して,自らの研究内容や科学について説明する機会が増えており,科学技術コミュニケーションの重要性が指摘されている.自らが大学で行っている研究内容を分かりやすく社会へ伝える方法を身につけると同時に,アウトリーチ活動の経験を積むことを目的として,北海道大学Ambitious リーダー育成プログラム所属の博士後期課程学生⚕名による実験教室を企画実施したので,これを報告する.沖縄科学技術大学院大学(OIST)にて開催された2018 年度サイエンスフェスタに出展し,実際に大学で研究している紙デバイスを応用したpH 測定実験を行った.本報告を通して,大学で研究している内容や科学をわかりやすく伝える技術や安全性を考慮した実験設計の重要性を学び,また参加した125 名の小中学生を対象にアンケートを実施することで,普段科学技術コミュニケーションに親しみの無い大学院生が専門を活かしどの程度小中学生に科学に対する興味・関心をもってもらうことができるのかを示した.これらの結果および考察は,大学の学生や若手研究者がアウトリーチ活動をする際の一助となることが期待される.
著者
吉村 正志 諏訪部 真友子 池田 貴子 小笠原 昌子 ECONOMO Evan
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.39-56, 2020-03

市民のヒアリ監視活動への参画,および外来種リテラシーの向上を目指した体験型ワークショップ(以下,WS)を開発した.ヒアリの日本国土への定着を阻止するためには,専門家だけでなく市民ひとりひとりがヒアリ監視のスキルと意識を持つことが,きわめて有効なリスク対策となる.本WS は,外来種問題という社会が抱える喫緊課題に対する問題解決の手段としての側面と,市民が身近な自然の生物多様性を学ぶ環境学習の側面を併せ持つ.そのため,ヒアリや外来種に対する危機意識の醸成だけではなく,生き物への純粋な興味や知識欲をくすぐるエンターテイメント性を意識してプログラムをデザインした.加えて,生物を扱うWS で最も講師のスキルと経験が求められるパートである野外観察・採集と顕微鏡観察を省略するために,アリ類の精密拡大模型を作成した.これにより,専門性を担保しつつも,専門家でなくとも実施可能な比較的手軽で汎用性の高いWSとなった.WS のコンパクト化を実現したことで,危機管理WS の命題である実施範囲の拡大へとつながった.ヒアリ対策のニーズの高い沖縄県において継続的にWS を実践し,改良を重ねて本WS が完成した.WS の前後でとった参加者へのアンケート調査結果から,本WS の最適な実施対象は小学校中学年であること,参加者の「ヒアリ」のキーワード認識率はWS 前から高い水準にあること,そしてWS 参加によって「ヒアリ」および「外来種」のキーワード認識率が上昇することが明らかになった.
著者
八木 絵香
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-17, 2010-02

World Wide Views on Global Warming has been developed to establish a model for the future inclusion of the worlds' citizens in global policy making. It has been designed with the purpose of making it possible for potentially all nations on Earth to take part. World Wide Views on Global warming involved roughly 4,000 citizens in 38 countries in deliberations about the issues on climate change. They received the same information about climate change and were asked to give their views. The participating citizens voted on 12 multiple-choice questions and produced a large number of recommendations phrased in their own wordings. They did so on daylong meetings on September 26, 2009. Empirical observations related to effectiveness of this attempt were summarized together with discussions concerning the applicability and limitations of the proposed global-scale participatory technology assessment.
著者
山内 保典
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.33-48, 2010-02

Not only technology which natural science offers, but also one which social science offers can be an object of participatory technology assessment (pTA). In this paper, "World Wide Views on Global warming (WWViews)" which is the globe-encompassing democratic deliberation was assessed by citizen participants. The participants of WWViews are little interested in global warming. Therefore, their assessment is useful to develop a participatory method which can involve wider range of public. This paper is based on questionnaire survey and free description which addressed adequacy of information provision and supports for discussion, satisfaction of the WWViews and motivation to participate in other technology assessment. As a result of questionnaire, majority of participants showed a high level of satisfaction with them. Their free descriptions are grouped into five lessons. 1. Avoid the bias. 2. Give consideration to group dynamics. 3. Reduce the anxiety of making remarks. 4. Make the connection between pTA and real life. 5. Focus on satisfaction of participants.
著者
早岡 英介 郡 伸子 藤吉 亮子 池田 貴子 鳥羽 妙 川本 思心
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-55, 2015-07

福島第一原子力発電所の事故以降,主に放射能リスクをテーマとしたリスクコミュニケーションの取り組みが各地で進められてきた.だが,多くは啓蒙的な説明会にとどまっており,専門家と一般市民との間に十分な双方向の対話の場を生み出せていない.こうした状況を克服するためには, リスク情報を正確かつ受け手側に配慮しながら発信できるリスクコミュニケーターの育成が急務である.北海道大学CoSTEPでは2014 年度にリスクコミュニケーション選択実習という新しい実習を設け,福島の農業と放射能リスクをテーマに活動した.最終的に2015 年2 月から3 月にかけ,三つの対話イベントを実施した.本実習では,「コンテンツの制作能力」「コミュニケーションの場を生み出す能力」「適切なフレームを協働構築する能力」の三つの能力を育成することを目指し,TV番組等を活用して実習中に何度もリスク問題を取り上げて議論を重ねたこと.実際に福島で調査したこと.現地取材した映像を実習メンバーで編集してサイエンス・カフェ等で映像レポートとして上映したことの三つが大きな特徴である.これらの実践を通して「当事者性」「主体性」「多様な価値観」を獲得することができ,上記三つの能力にポジティブな効果がもたらされた.
著者
田中 佐代子 小林 麻己人 三輪 佳宏
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-57, 2017-06

研究成果の理解を助けるビジュアルデザインは,研究者にとり重要な位置を占めるようになった.しかし研究者自身によるビジュアルデザインは,煩雑でわかりにくく,審美性の低い場合が多い.そこで私たちは,研究者のために有用なビジュアルデザインのルールについて考察した.まず,研究者に即したビジュアルデザインのルール案を考案し,それを掲載したハンドブックを作成した.次に,これを研究者に配付し,彼らに対するアンケート調査を介して,提案ルール案の研究者にとっての有用性と問題点を検証した.その結果,有用と判明したのは,第1に「画面の構成方法」に関するルール,特に「視線の流れを意識する」,第2に「効果的な配色方法」に関するルール,特に「3色(メインカラー,アクセントカラー,無彩色)でキメる!」,第3に「PowerPointによる描画」に関するルール,特に『頂点の編集』をマスターする」であった.一方,有用性が低いとされたのは「グラフ・表・フローチャート」に関するルールで,改善の余地があるとわかった.配布ハンドブックは概ね評判が良く,国内の理系研究者に有用とわかった.学ぶ機会が少ないデザインの基本ルールと技術を学習できたため,「役立つ」実感を与えたと推察する.Visual designs aiding the understanding of research results are becoming important for researchers. However, many researchers use incomprehensible and unattractive visual designs, which is why we attempted to formulate effective visual design rules for researchers. First, we published handbooks that presented plans of these visual design rules. We distributed them to researchers in Japan and conducted surveys using questionnaires. We then inspected the effects and problems of these plans. Consequently, the most effective rules were about the "Layout," particularly the rule" Being Conscious of the Flow of the Eyes." The second most effective rules were about "Color Methods," particularly the rule "Deciding Three Colors (Main Color, Accent Color, and Neutral Color)." The rules about "Drawing using PowerPoint" were also effective, particularly the rule" Mastering Edit Points."
著者
伊藤 裕子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.3-15, 2018-12

東日本大震災を契機として,我が国の科学技術コミュニケーションは,専門家と非専門家との双方向のコミュニケーションの推進に対しても効果的であることが期待されるようになった.しかし,専門家と非専門家との間には,知識量のみならず認知や行動においても非対称性があり,この非対称性がコミュニケーションの不具合を引き起こしている可能性がある.本研究は,医薬品情報を対象とし,双方向のコミュニケーションに影響を与える非対称性の特徴及び状況や背景を明らかにすることを目的として,専門家及び非専門家の両方にアンケート調査を実施し,非対称性を分析した.その結果,医薬品情報のコミュニケーションには,コミュニケーションの不具合の認知や解釈において非対称性が生じていることがわかった.さらに,非対称性を生じ易い背景として,非専門家では情報収集をしないこと及び専門家とのコミュニケーションを諦めていること,専門家では尋ねられた情報が知らない情報であることを非専門家に伝えないことが示された.したがって,医薬品情報における双方向のコミュニケーションを成功させるためには,専門家と非専門家のそれぞれに対する情報教育,質の高い情報のオープン化,非専門家が利用し易いコミュニケーションツールの開発が必要と考えられる.
著者
奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.17-30, 2018-12

本研究は科学技術コミュニケーター養成教育がもたらす教育効果,特に対話・参加型コミュニケーションに対する意識がどのように変化したのかを評価するために,科学技術コミュニケーション活動への意識を調査する質問紙を開発し,本質問紙を用いて北海道大学にある科学技術コミュニケーション教育研究部門(通称CoSTEP)の受講生の受講初期・後の意識を調査した.その結果,受講後に受講生は全体的に参加型の科学技術コミュニケーション活動への意識が高まったことが分かった.さらに調査していくと,受講生の受講後の意識は3つの型があることがわかり,最も多かったのは科学技術コミュニケーション活動全般への意識が高い型であった.このことから,CoSTEP における科学技術コミュニケーション養成教育は,対話・参加型に限らず,全体的な意識を高めることが示唆された.
著者
有賀 雅奈
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.17, pp.23-34, 2015-07

日本では,サイエンティフィック・イラストレーション(以下,SI)やメディカル・イラストレーション(以下,MI)を描くイラストレーターが注目されることは少なく,彼らの活動はよくわかっていない.本稿では,SIやMIを描くイラストレーターの団体活動に注目し,団体活動の動向を明らかにすることを目的とした.方法はインタビュー調査である.SIやMIを活動テーマに含み,プロのイラストレーターが関わっている11の団体を選定し,代表や事務局などにインタビュー調査を実施した.その結果,日本にはSIをテーマとする小規模の団体のほか,植物などの重複する,あるいは下位のテーマで活動する団体,SIやMIよりも広いテーマで活動する団体がみられた.2010年以降,SIとMIのイラストレーター向けの教育を行う団体も現れていた.団体の活動内容は設立時期が90年代以前の団体は展示を,90年代頃に設立された団体は研究会を,2010 年以降の団体は教育を行うという傾向があった.また,日本のSIやMIのプロのイラストレーターは関心に合う団体に分散して所属する傾向があった.全体としてSIやMIのプロのイラストレーターの巨大な職業団体や教育組織を持つ欧米とは,特徴が大きく異なることが明らかになった.
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-15, 2016-06

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。It is a well-known fact that the provision of disaster prevention knowledge is not enough to disaster prevention education to the public. For example, the Japan Meteorological Agency issued 'weather information for disaster prevention', including warnings, to inform people that a serious disaster was about to occur. But, residents and local municipalities were not adequately aware about the risk of disaster, warnings failed to result in adequate evacuation procedures, in some cases. If people do not acquire knowledge about where and how to receive basic information, and what kind of information is available, it is difficult to make judgments and act according to individual situations in emergencies. To strengthen people's knowledge of information for disaster prevention and connect thisknowledge to action, there is a need for educational programs that encourage people to change the way they think about disasters. Therefore, in this study, we designed workshops with the aim of improving knowledge and awareness of weather information for disaster prevention in response to heavy rain and analyzed the learning effects of these workshops.