著者
坂野上 淳
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.59-64, 2015-07

サイエンスカフェにおいては,話題提供者である研究者とファシリテーターの存在が必須である.ファシリテーターに求められる能力が単に研究内容を理解し一般向けに言葉を移し替えることなら研究の同業者がいいだろう.一方で,こうしたカフェでは,“参加者が先生同士の対談を見物する”という図式を招くおそれもある.そこで,科学の素人がファシリテーターを務めることにも意味があると考え,筆者らが大学で企画したサイエンスカフェを紹介したい.話題提供者である専門家と一般事務職員が務めるファシリテーターによるカフェは想像以上に好評を持って迎えられた.特に理解のプロセスに対する評価が高かったが,そこにはファシリテーターとスタッフによる準備段階でのストーリー作成が必要だった.一般市民が,自分と同じレベルの科学リテラシーを持つファシリテーターが作り上げたストーリーに沿って研究を理解するとき,知的な充実感が高まり,大きな満足感を感じられるのだろう.
著者
東島 仁 中川 智絵 山内 保典 三浦 優生 高橋 可江 中村 征樹
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.28-43, 2012-06

The advancement of science and technology has brought not only positive but also negative influences. As a result, people are finding it important to examine the potential consequences of science and technology and their effects on society. In this paper, we describe a public dialogue to examine the relationship between autism (Autism Spectrum Disorders) and society, with detailed methodology for conducting it. Autism is a lifelong neurodevelopmental disorder; approximately one in 100 people have autism. The study of autism is one of the most active fields of research. The approximately 30 participants in the dialogue included various citizens, for example, entrepreneurs, autistic people, parents of young children with/without autism, educators, artists, and students. After being provided with sufficient information on autism, participants were divided into 5 groups to discuss the topic and offer proposals. Finally, 5 proposals for an autism-friendly society were announced; these can be viewed in English at http://ristex-kanazawa.w3.kanazawa-u.ac.jp/syoppu/Consensus.htm. In each proposal, the importance of collaborating with a variety of sectors such as citizens, medical institutions, schools, and other professionals was mentioned. We hope that these proposals will be a foundation for future discussions on the relationship between autism and society.
著者
標葉 隆馬 川上 雅弘 加藤 和人 日比野 愛子
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-32, 2009-09

In modern times, there is a growing need for scientists' active participation in science communication. However, scientists' current attitudes toward science communication are unclear, despite the fact that scientists are one of the main actors of science communication. In order to consider the effective participation of scientists in science communication, a survey on scientists' attitude is necessary. To this end, an Internet-based questionnaire survey to researchers in life science fields was conducted in 2008, and 1255 respondents were obtained. The results show the attitudes concerning 1) motivation, 2) hurdle for participating in communication, and 3) way of promoting communication, between strongly active scientists and less strongly active scientists. From the result, we considered the issues of science communication in two aspects: infrastructure and variety of awareness. These are important factors for promoting science communication: infrastructure which makes opportunities for communication constantly without the need for a lot of preparation by scientists, and new communication tools and designs especially of scientists who have less positive view of science communication.
著者
内田 麻理香
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.3-6, 2011-06

本稿は「どう活かす,電子書籍~ウェブメディアで拓く科学技術コミュニケーション~」というテーマを,一介の科学技術コミュニケーターの視点から考え,電子書籍の抱える課題および可能性について検討した.
著者
竹本 寛秋
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.35-49, 2011-06

From doing access analysis, the effect of the CoSTEP's information dispatch about Akira Suzuki (Emeritus Professor at Hokkaido University), one of the winners of the Nobel Prize in chemistry 2010, was examined. At the result, although such a high impact topic generally falls in interest rapidly after goes up, I demonstrated that the information dispatch strategy of CoSTEP had the effect for re-raising the interest to the Nobel Prize topic. In this paper, I analyzed why the strategy for re-raising the public interest succeeded. In addition, the tendency of the access log when the interest was re-raised and the browsing behavior of viewers were analyzed. I considered about the essences in case the topical news is dispatched in the context of science communication.
著者
鴈野 重之 富田 晃彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.49-57, 2023-09

査読付き論文は研究コミュニティ内で成果を共有する最も重要な手段である.一方で論文が十分に相互参照されないと,似たような研究に気づかずに研究を進めてしまう危険が生じるなど,その分野の発展の遅滞を招くこととなる.本研究では,天文教育普及分野における査読付き学術論文の引用-被引用関係を調べることで相互参照性を評価する指標づくりを提案するとともに,各々の学術雑誌が分野に対して及ぼすインパクトを調べた.結果として,天文教育普及分野では同じ雑誌内だけの引用が多く,他の雑誌からの引用が少ない傾向が見られた.とくにインパクトの高い雑誌の論文も隣接する分野の雑誌では参照されていなかったり,重要と考えられる論文も他の雑誌からの引用がなかったりという例も見られた.論文の相互参照性を高めるためには,分野に特化した論文データベースや検索エンジン対策などを,そのコミュニティとして考える必要があるだろう.
著者
湯沢 友之 佐倉 統 湯沢 友之 佐倉 統 湯沢 友之 佐倉 統
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-17, 2022-09

科学コミュニケーターとしての訓練を受けてない研究者が科学コミュニケーションを行なう場合,しばしば困難に直面するが,それは聴衆の背景知識への配慮が足りないからであると考えられる.本論文ではこの点について,大学院での教育内容だけでは不十分であり,博物館などで実施されている科学コミュニケーター養成プログラムがそこを補っているという仮説を設定し,養成プログラム修了生を対象として非専門家にどのような配慮をするように認識が変化したのか,半構造化インタビューによって検証した.その結果,修了生は,非専門家への配慮が重要であるという意識を明確化しており,エンターテインメント的な要素を付加するなどの意識変容が生じていたことがわかった.さらに大学院での自然科学系の専門教育では,非専門家を聴衆とするコミュニケーション・スキルは重視されておらず,これが非専門家を対象とする科学コミュニケーションに負の影響を与えている可能性が示唆された.この点について補足的な追加調査を行った結果,研究重視型大学院における研究者養成教育が非専門家を対象としたコミュニケーションに抑制的に働いている可能性が示唆された.しかしこの点については,さらに調査が必要である.
著者
森 沙耶 奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.71-85, 2020-08

幅広い年代が利用する科学館では,小さな子供のいる家族での来館者は科学館のメインの来館者層の一つである.札幌市青少年科学館では展示内容をより身近に科学を感じてもらうため展示物のほとんどがハンズ・オン展示である.しかし,その操作が複雑であったり,身体的動作と科学的情報が連続的につながっていない場合,来館者は十分にハンズ・オン展示を活用できない.親子でハンズ・オン展示を体験する際は,子にとって親によるサポートは必要不可欠である.本研究ではハンズ・オン展示における親子が展示物を体験する様子を⚒回検証し,会話を質的に分析した.一回目の検証では家族のハンズ・オン展示におけるつまずきについて調査した.そのつまずきを解消すべく開発した支援ツールを用いて二回目の検証を行った.その結果,親がハンズ・オン展示の仕組みを理解することによって子が主体的に展示物体験に関わり,親子の発話が増加し家族での学習が発展することが明らかになった.
著者
棚橋 沙由理 山本 桃子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.17-30, 2022-01

社会の持続可能な発展をにらみ,博物館における学際的な教育研究が社会の持続可能性へどのように寄与し得るのかについて,議論が活発化している.ことに理工系大学・学部では科学技術の社会実装に際し,科学技術コミュニケーションの重要性が増しているため,大学博物館も科学技術コミュニケーションへの貢献が期待されている.そのような現状において,海外の大学博物館ではオブジェクト介在型学習(Object-based learning)による分野横断型学習の可能性に注目が高まっている.欧米を中心に博物館教育の文脈で育まれてきたオブジェクト介在型学習であるが,わが国では学術的枠組みにもとづく実践例が乏しい.本稿ではオブジェクト介在型学習の再考にあたり,大学博物館のコレクションを用いた分野横断型学習としての有効性を検証し,科学技術コミュニケーション活動の一手法としてどのように一般化できるのかを明らかにすることを目的として,理工系大学の大学博物館における養蚕・製糸風景の描かれた錦絵のキュラトリアルワークショップを実施した.その結果,オブジェクト介在型学習は学生の知識習得および共同作業について有用であることが明らかにされた.本研究により今後,オブジェクト介在型学習の多種多様な事例研究が展開されることにより大学博物館の教育研究に資するとともに,科学技術コミュニケーション活動を通じた学術・文化コモンズとしての大学博物館の機能が一層高まるであろうことが示唆された.
著者
水町 衣里 工藤 充 八木 絵香
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.5-18, 2021-08

筆者らは,これまでに対面形式で実施してきた市民参加型ワークショップの実践経験をもとに,2020年度に3回(8月に1回,2月に2回)の市民参加型ワークショップをオンライン形式で開催した.本稿では,これらワークショップの設計プロセスや具体的な運営方法について報告する.基本的にはオンライン形式にあっても,対面形式で実施してきたワークショップと同様に,グループ対話の時間と会場全体での論点共有の時間を組み合わせるという構成を活かしつつ,グループファシリテータの役割や情報提供資料「対話ツール」の形式について,オンライン形式に適したものとなるように検討を重ねた.オンライン形式で対話型の催しを実施する際,参加者同士のやりとりをどのように促すことが可能か,アナログ的な要素をどこまで盛り込むべきかなど,既存の対面形式での経験を直接応用することが困難な事項も少なくない.今後,多様なワークショップの実践例が記述され,それが集積することで,科学技術をテーマとした対話型の催しをオンライン形式で実践する際の課題や重要な点についての議論が深まることが期待される.
著者
岸田 直樹
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.107-125, 2021-08

筆者は総合診療医・感染症医として診療の現場に立つだけではなく,一般社団法人Sapporo Medical Academyを立ち上げ,医療コンサルタントの仕事も行なってきた.2020 年以降は,札幌市の危機管理対策の新型コロナウイルス担当参与を務め,行政とともに対策にあたるとともに,個人として新型コロナウイルス感染症の情報をTwitter やマスメディアで積極的に発信してきた.本講演では,まず札幌市の新型コロナウイルス対策を振り返る.次に,新型コロナウイルスの問題は10年前からあった医療における様々な社会課題が顕在化したものであり,薬剤耐性菌の問題や2025 年問題など,より広い視野で医療の問題に取り組むことが次の10 年に向けて重要であることを述べる.また,これらの問題や筆者の経験をふまえ,論理だけではない,信頼や共感といった感情的要素をも重視した発信の重要性を紹介する.
著者
加納 圭 水町 衣里 岩崎 琢哉 磯部 洋明 川人 よし恵 前波 晴彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.3-16, 2013-06

Science cafés have become popular as casual public dialogue format since 2005, when is considered the first year of science communication in Japan. We conducted a research focused on the participants in science cafés, using a method of marketing research, "segmentation." We used the third generation of segmentation method, which was originally from Victorian Government in Australia and was considered as useful to access target audiences and segmented the participants in science cafes and other science and technology (S&T) events such as public lectures, science festivals as "the high engagement in S&T" and "the low engagement in S&T" segments. As a result, we found that major participants in science cafés belonged to "the high engagement in S&T" segment and this tendency was true of public lectures and science festivals. However, we also found that the following three formats had a potential to attract "the lowly engagement in S&T" segment. 1) The theme is relevant to their lives. 2) The events are held in a place where can serve alcohols such as a bar. 3) The theme looks collaborative with non-science area such as art or Japanese culture. We need more samples and further analysis to better understand the participants in S&T events.