著者
鈴木 努 川本 思心 西條 美紀
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-18, 2012-12

Most universities in Japan conduct course evaluation as part of the faculty development program, and many methods to improve course content have been proposed. However, few studies discuss the improvement of omnibus courses. In this paper, we suggest a new method to improve omnibus courses, especially their consistency and relevance. We designed an omnibus course named "Clean Energy Business and Social Acceptance," which consisted of six serial lectures, each conducted by a different lecturer. Prior to the running of the course, we interviewed the lecturers and formulated a conceptual network with regard to the course content. The conceptual network helped lecturers grasp the course content and facilitated the improvement in relations among lectures. At the end of each lecture, we collected students' responses including some keywords pertaining to topics they were interested in. We integrated these keywords into another conceptual network and then examined the consistency and relevance of the lectures. The measures of network analysis were used to compare the keyword network with that of the previous year's course, with regard to which no conceptual network was formulated before the course and no interviews were conducted. The comparison revealed the effectiveness of our method.
著者
沼崎 麻子 湯浅 万紀子 藤田 良治 鈴木 誠 松田 康子 吉田 清隆 斉藤 美香
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.73-89, 2014-06

As a place of science communication, museums are being expected to encourage all citizens to avail and participate in its activities. This paper focuses on adults with ASD (Autism Spectrum Disorder) with whom a questionnaire survey was carried out. 80% of them answered they liked museums. There were two main reasons behind this: the appreciation for the museum’s side of satisfying intellectual interests and its less burdening atmosphere and environment for people with ASD who are hypersensitive. On the other hand, it became clear that services for improving learning effect are not being sufficiently used by them. They also face some difficulties when using museums: museums might be inconveniently located, do not match well with their hypersensitivity, and often have hard to understand indications and instructions. The result of the survey reveals that there is an expectation for museums to improve usability to match better with people with ASD’s characteristics. Such improvement will have to take into consideration different positions that people have and obstacles they face, in order to incorporate universal design to museums and develop educational programs that utilize minorities’abilities. On a long-term basis, museums’contribution will be expected for the development of science communication and community.
著者
立花 浩司
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.19-35, 2021-08

「はこだて国際科学祭」は,北海道南西部・広域はこだて圏(函館市,北斗市および七飯町の2市1町)を基盤とする,地域のサイエンスフェスティバルである.2009年から毎年夏に定期的に開催しており,JST による支援が終了した後も自主財源を確保して事業を継続,はこだての地域に根ざし,楽しみながら科学を身近なものとして親しむ市民イベントとして定着している.これまで例年のべ10,000人を超える多くの人々が集う恒例イベントとして,地元での認知度を向上させてきた.ところが2020年度は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に伴い,多くのイベントが開催中止,延期等の大幅な軌道修正を迫られた.「はこだて国際科学祭」においても例外に漏れず,一時はイベントの開催そのものが危ぶまれていた.この状況下において,「はこだて国際科学祭」はいち早くオンライン化に向けた新たな科学祭のイベントスタイルの可能性を見出し,オンラインで科学祭を実現するに至った.本稿では,コロナ禍の中で開催した,はこだて国際科学祭2020の設計と実践の経験を通じて得られた,オンライン開催のメリット/デメリットについて報告する.
著者
小林 良彦 中世古 貴彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.3-16, 2019-07

科学技術コミュニケーター像の探求に有益な情報提供を行うための試行調査として,求人・求職支援ポータルサイト「JREC-IN Portal」に掲載された求人情報の分析を行った.本研究では,5カ月間の調査を通して得た83件の求人情報における雇用条件や応募要件,また,そこから読み取れる職務や職能の実情を調べた.結果として,それらの求人情報を,URAや産官学連携コーディネーターを含む「URA相当」,研究機関や研究プロジェクトの広報担当者から成る「科学広報」,ジオパーク専門員を含む「科学館スタッフ」,そして,ファンドレイザー等の「その他」に大別することができた.さらに,担う職務や求められる職能が求人情報において詳述されていない,という現状も明らかにすることができた.これらの結果からは,想定する職種分類に応じた科学技術コミュニケーター養成のコンテンツ開発が求められること,そして,科学技術コミュニケーターの専門的な能力が未だ十分に認知されていない状況が示唆された.
著者
星野 太 奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.71-83, 2017-12

近年,日本においてはアートが地域と協力関係を結び,プロジェクトを実施するという動きが加速している.アートはなぜ社会や地域に接近し,どのように地域との連携を深めているのだろうか.金沢美術工芸大学で美学/表象文化論を研究する星野太氏は,社会問題と向き合うアートやアートと観客の関係の論評でも著名な美学者である.今回は,星野氏を訪ね,アートと社会,特に地域との関係を解説してもらい,その中でアートはどのような課題を抱え,今後どのように解決していこうと考えているのかという展望を語ってもらった.本インタビューで,地域振興のためにアートが活用される際に生じる,公共性という概念をどのように社会と共有していくか,という,科学技術コミュニケーションにも通じる課題が明らかになった.
著者
高梨 克也 加納 圭 水町 衣里 元木 環
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-17, 2012-06

Though the importance of bidirectionality in science communication becomes recognized gradually, it is still difficult to understand what the "bidirectionality" means accurately. This article conducts a micro-analysis of scientists' behaviors using video data recorded in a science café with reference to a concept of "participation status," which is one of the most important analytic tools for multiparty interaction, and consider a nature of "bidirectional" communication in the situation of science communication.
著者
標葉 靖子 福山 佑樹 江間 有沙
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.45-54, 2018-12

近年,科学技術が高度に発展していることに伴い,科学技術と社会を取り巻く問題もまた複雑化してきている.本研究では,そうした科学技術と社会を取り巻く問題への多角的視点を涵養することを目指し,大学1,2年生を対象とした,学生自らが科学技術と社会をテーマとしたシリアスゲームを作成する「科学と社会をつなぐゲームデザイン」授業の開発・実践を行った.本稿では,当該授業の実施概要を報告するとともに,当該授業を受講した学生のふりかえり・レポート記述の内容から,「科学技術と社会」について考える上で,ゲーム作成というプロセスを活用することの可能性と課題について考察する.
著者
有賀 雅奈
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-34, 2015-07

日本では,サイエンティフィック・イラストレーション(以下,SI)やメディカル・イラストレーション(以下,MI)を描くイラストレーターが注目されることは少なく,彼らの活動はよくわかっていない.本稿では,SIやMIを描くイラストレーターの団体活動に注目し,団体活動の動向を明らかにすることを目的とした.方法はインタビュー調査である.SIやMIを活動テーマに含み,プロのイラストレーターが関わっている11の団体を選定し,代表や事務局などにインタビュー調査を実施した.その結果,日本にはSIをテーマとする小規模の団体のほか,植物などの重複する,あるいは下位のテーマで活動する団体,SIやMIよりも広いテーマで活動する団体がみられた.2010年以降,SIとMIのイラストレーター向けの教育を行う団体も現れていた.団体の活動内容は設立時期が90 年代以前の団体は展示を,90年代頃に設立された団体は研究会を,2010 年以降の団体は教育を行うという傾向があった.また,日本のSIやMIのプロのイラストレーターは関心に合う団体に分散 して所属する傾向があった.全体としてSIやMIのプロのイラストレーターの巨大な職業団体や教育組織を持つ欧米とは,特徴が大きく異なることが明らかになった.
著者
定松 淳 花岡 龍毅 田野尻 哲郎 田中 丹史 江間 有沙 廣野 喜幸
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.3-15, 2017-06

科学技術コミュニケーションの重要な課題のひとつとしてリスクコミュニケーションがあり(廣野 2013),そのなかでも一般市民にも広く接点のある領域として医薬品のリスクコミュニケーションがある.特に医薬品の副作用は身近で,重大なものになりえるにもかかわらず,その事実は社会的に十分認知されているとは言えない.医薬品リスクについてのコミュニケーションを活性化させ, リテラシーを向上させる必要がある.本稿では,医薬品についてのリスク情報を掌握している薬剤師の専門性に注目し,一般市民の薬剤師との関わりの実態についての探索的調査を行った.その結果から,医薬品リテラシーの向上のために薬剤師の専門性を活用する余地があること,その際には 前提としての「薬剤師が医薬品についての専門性を持っている」という点についての社会的認知を 高める必要があることを指摘する.これは,一般市民に対して知識の増進をつい求めてしまいがちな科学コミュニケーション一般に対しても,社会的なインデックス情報の重要性を指摘するものとして示唆するところが小さくないと考えらえる.
著者
川本 思心
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.135-146, 2016-06

現在、科学技術政策において安全保障関連技術の研究が積極的に推進されている。一方で、大学や研究機関の対応は遅れている。デュアルユース研究(軍民両用研究)に関する意思決定において、研究者個人、研究組織、独立の審査機関、そして政府がどのような役割を果たすべきか、専門家による議論が求められる。その際、市民が大学や研究機関におけるデュアルユース研究をどのように捉えているのかを把握し、それを議論に反映させることが重要である。しかし、市民の意識について現状では十分に把握されていない。本稿はデュアルユース研究をテーマに開催した公開シンポジウム「デュアルユースと名のつくもの~科学技術の進展に伴う両義性を再考する」の参加者に対して実施した質問紙調査の結果について報告する。サンプルバイアスがあるため、この結果から議論できることは限定的である。しかし、賛成と反対が二分された結果は示唆的である。科学技術コミュニケーションの観点からも、デュアルユース問題に関して専門家と市民の議論を喚起する必要がある。
著者
谷口 忠大 中村 仁美 熊谷 歩 矢野 史朗
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.37-56, 2014-06

In this paper, we proposed a novel serious game for decentralized autonomous electric power network called i-Rene (inter intelligent renewable energy network). Renewable energy sources and micro energy-storages have been attracted in years past. We have proposed a concept which not only improves energy independence but also achieves an optimal allocation of renewables by introducing market mechanisms based on artificial learning multi-agent system. Although such decentralized network would play an important role to install further renewable energy, there is no similar system in this real world today. Many people are unfamiliar with such renewable energy network. It means that the many people are not ready to adopt such decentralized autonomous electric power network. This has been an invisible barrier to install the new electric power network. To solve this problem, we propose to use a serious game. We developed a handon game simulating i-Rene based on serious game concepts. We evaluate the performance of this platform through two experiments.
著者
敷田 麻実
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-38, 2010-12

This article proposes a Half-shift model to simultaneously achieve the mutually reinforcing goals of creative work and social contribution. Science communicators are closely examined as one of the possible conduits to implement this model. Intensifying global competition requires work places and social settings to be more efficient and less flexible, making it difficult for professionals to gain satisfaction from being creative and contributing to society through their paid work. After a closer examination, the author proposes a Half-shift model as a new way to achieve a more balanced work environment. The Half-shift model looks at combining paid work and unpaid work in conterminous areas. The research shows that the keys for promoting this model are changes in work rules and professionals' personal motivation for work. It is hoped that this article provides a conceptual framework for the development of a Half-shift model, and contributes to its implementation.