著者
池田 圭佑 榊 剛史 鳥海 不二夫 栗原 聡
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-36, 2018-03-14

東日本大震災や熊本地震において,Twitterなどのソーシャルメディアが重要な情報源として利用された.一方,デマ情報のような誤った情報の拡散も確認されており,デマ情報の抑制手法の確立は災害大国日本において急務である.しかし,デマ情報がどのように拡散するかは明らかになっておらず,そのため有効な抑制手法も確立されていない.本稿では,これまでに提案した口コミに着目した情報拡散モデルにおいて「人の生活パタン」および「複数の情報源からの情報発信」を考慮した新たな情報拡散モデルを提案する.本モデルを用いて,これまで再現性に課題のあった実際のデマ情報を再現し,本モデルの妥当性を確認した.また,デマ情報の抑制手法の検討および評価もあわせて行った.その結果,デマ情報を否定する訂正情報をより多く拡散させるための手法が明らかになった.During the Great East Japan Earthquake and the Kumamoto Earthquake, people used social media such as Twitter as an important information source. On the other hand, misinformation such as false rumor was diffused. There are many disasters in Japan, we need methods to suppressing false rumor. However, it is not clear how false information diffuses, then an effective suppression method has not been established. In this paper, we propose a novel information diffusion model considering "life pattern" and "information dissemination from multiple information sources". We confirmed the validity of our model by reproducing the actual false rumor that was not reproducible before. We also evaluated the method of suppressing false rumor. As a result, we revealed methods to spread more "correction information".
著者
小出 明弘 斉藤 和巳 風間 一洋 鳥海 不二夫
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.164-173, 2013-08-21

本稿では,Twitterのフォローネットワークを分析することにより,ユーザのフォローがどのような目的で行われているのか議論する.まず,フォローネットワークの特徴を把握するため,ネットワーク内の高次数ノードに着目し,ブログの読者関係とレビューサイトのお気に入り関係を表したそれぞれのネットワーク構造の特徴と比較する.その結果,ブログやレビューサイトでは,比較的小規模な高コリンクグループが得られたのに対し,フォローネットワークでは,強い双方向関係により構築された大規模な高コリンクグループと,双方向関係がほとんど見られない複数の小規模な低コリンクグループが存在することが分かった.さらに,高次数ノードのツイート集合を分析し,これらのグループは同じようなツイートをしているにもかかわらず,フォロワとの関係に大きな違いが見られることが分かった.
著者
永田 宗伸 村田 佳洋 柴田 直樹 安本 慶一 伊藤 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.23-31, 2007-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
2

今日の観光において,団体ツアーなどのグループ観光は,個人旅行に比べて費用などの点においての利点を持つ.しかし団体ツアーは,参加メンバの細かな嗜好や制約の違いを反映させることが難しい.本論文では,訪れたい観光地が少しずつ異なる複数のメンバがグループで観光する際に,メンバそれぞれの希望を満たしつつ,希望の合致する部分を共有するようなスケジュールを算出する問題を定義し,それを実用時間で計算する遺伝的アルゴリズム(以下,GA)を用いた近似アルゴリズムを提案する.取り扱う問題においては,メンバの数や巡回候補地の数に応じて,スケジュール中の単独行動とグループ行動の間の分離・合流地点の組合せが爆発的に増える.提案手法におけるGA の解のコーディングでは,分離・合流地点を"参照遺伝子" と呼ばれる遺伝子で表し,解候補の評価値を計算する際に,複数メンバのスケジュールをこの遺伝子を介して結合するという手法を採用した.これにより,広大な解空間を効率良く探索することが可能となり,評価実験を行った結果,メンバ数3~9 程度のグループ観光に対し,高速に準最適な解を得られることを確認した.Group tour is popular in recent years because of its reasonable cost. In group tour, however, members must follow the same schedule, and there is little flexibility to reflect preferences of the members. In this thesis, we propose a GA-based approximation algorithm to find the minimum cost schedule (including routes and stay time at each spot) for a flexible group tour with members who have different preferences. In this problem, the number of combinations of leaving and joining points exponentially increases. In the proposed algorithm, we used the gene called "reference gene". This gene means point where members leave or join in the schedule. With this coding of chromosome, efficient searching in the vast search space is achieved. We implemented and evaluated the proposed algorithm. We confirmed that our algorithm can find efficient schedules within reasonable time for group tours with practical size, 3 to 9 members.
著者
井庭 崇
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG19(TOM19), pp.75-85, 2007-12-15

本論文では,2人のモデル作成者によるコラボレーションによってモデリングを行う「ペア・モデリング」の方法を提案し,その実践事例を報告する.ソフトウェア工学の最近の研究では,ペアによるプログラミング作業が,個々に仕事を割り振って分業するのに比べて,生産性の観点からも品質の観点からも優れているということが知られており,モデリングにおいてもそのような効果が期待できる.本論文では,ペア・モデリングの方法について論じた後,ペア・モデリングの原理を,ニクラス・ルーマンによって提唱された社会システム理論に基づいて考察する.最後に,私たちの提案するモデリングツールを用いたペア・モデリングの実践事例を紹介する.
著者
田中 恵海 高橋 謙輔 鳥海 不二夫 菅原 俊治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.98-108, 2010-01-26

本研究では,日本の中学校の一学級を対象とし,教師のいじめ対策行動の効果を検討するためのエージェントシミュレーションモデルを,ソシオン理論とハイダーの認知的均衡理論に基づいて作成し,教師のいじめ対策行動の効果を検討した.いじめは昨今の学級形成の重要な問題となっているが,その対策は十分確立できていない.教師による学級内のいじめ対策方法を確立するためにはその効果を確認する必要があるが,そのためには長期にわたる観測を行う必要があるため,難しい.本研究では,教師および生徒をエージェントとし,エージェント間の対人関係形成の変異をコンピュータによるエージェントシミュレーションで再現し,その効果を推定する.本研究では対策行動として「班行動,出席停止,予防活動」の3つをモデル化し,それぞれに対していじめ被害者および加害者の割合,全生徒間の好感度平均,教師に対する全生徒の好感度平均から各いじめ対策行動の効果と影響を検討した.本実験から,学級におけるいじめ対策行動として最も適切である学級運営手法は「予防活動」であるとの示唆を得た.
著者
糸井 良太 田中 美栄子
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-37, 2013-03-12

戦略の自動進化を取り入れた繰返し囚人のジレンマモデルにおいて,特に2進表現による1次元遺伝子配列の複写変異や分離変異を点変異と組み合わせることで遺伝子の長大化の効果を考察することを目的としたLindgrenモデルがあり,その結果として生き残りやすい戦略に共通した特徴のあることが指摘された.我々はこのモデルに依拠して長大な遺伝子配列が出現するまでシミュレーションを行った結果をもとに,長期間生存する遺伝子の配列パターンに共通する性質,遺伝子長32以下の範囲内で,長寿戦略の約60%が[1001 0*0* 0*0* 0001]という形の遺伝子に対応することを突き止め,さらにこの形の遺伝子の性質が1.自分から裏切らない(最右遺伝子が1=協力),2.裏切られたらすぐに報復する(4つ組の第3要素が0=裏切り),3.裏切りが続くと自分から協力行動を行う(最左遺伝子が1=協力)の3要素であることを見出した.このことは,Lindgrenの先行研究で報告されている[1**1 0*** 0*** *001]の遺伝子配列に比べて,より明確に長寿戦略の遺伝子構造を同定することができたといえる.これらの戦略は単純なしっぺ返し戦略より強く,多様な戦略との対戦に勝利した結果,長期間生存し続けることのできるロバストな戦略であるといえる.このような戦略の出現・生存に対する条件について考察する.
著者
諏佐 達也 村川正宏 高橋 栄一 古谷 立美 樋口 哲也 古市 愼治 上田 佳孝 和田 淳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.15, pp.78-87, 2007-10-15
被引用文献数
1

製造ばらつきにより発生するクロック・スキューの問題を解決するための手法として,遺伝的アルゴリズムを用いたディジタル LSI の製造後クロック調整技術が提案されている.しかし,大規模な LSI の調整では,調整箇所が増大するため,調整時間が増加するという問題がある.そこで,本研究では,大規模ディジタル LSI にも適用可能な製造後クロック調整の高速化手法を提案する.提案手法では,LSI 設計時に行う STA(Static Timing Analysis)の結果を用いて調整箇所を限定し,調整時間を短縮する.それに加えて,遺伝的アルゴリズムの初期集団の分布を工夫することで,さらに調整時間を短縮する.さらに,これらの手法による調整効果を LSI の設計時に検証できるようにするための調整シミュレータを開発した.このシミュレータを用いた調整実験の結果,1 031 カ所のフリップフロップが存在する実用的な回路において,数秒という現実的な時間で調整が完了できる見込みを得た.To solve the problem of fluctuations in clock timing with large scale digital LSIs (also known as the "clock skew" problem), the post-fabrication clock-timing adjustment technique using a genetic algorithm (GA) has been proposed. However, the adjustment time increases incurred when more programmable delay circuits are incorporated within large-scale LSIs is a serious issue. For this problem, we propose a post-fabrication clock adjustment method to realize practical applications. This method reduces the adjustment time by reducing adjustment points utilizing results of static timing analysis (STA) and adopting improved distribution for initial population of GA. Moreover, we have developed an adjustment simulator to predict the adjustment results by the proposed method in design stages of LSIs. Adjustment experiments using the developed simulator demonstrate that our method can adjust practical LSIs with 1,031 flip-flops within a few seconds.
著者
高木 允 森 康真 田村 慶一 北上 始
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.93-104, 2008-03-15

本研究では,ブログの書き手であるブロガに焦点を当て,ブロガをノード,トラックバックによるつながりを辺としたグラフから,数カ月にわたって頻出し,かつ重複を許したコミュニティを発見する手法を提案する.提案手法は,複数のグラフから頻出部分グラフを抽出し,得られた頻出部分グラフに重複を許したクラスタリング手法を適用することにより,重複を許した頻出コミュニティを発見する.頻出部分グラフの抽出については,頻出部分グラフ抽出の問題を頻出アイテム集合抽出の問題に変換し,LCM 法を用いることで頻出部分グラフ抽出を達成している.重複を許したクラスタリングについては,頻出部分グラフをNewman らのクラスタリング手法を応用し,縮約グラフの作成と再クラスタリングすることで達成している.提案手法の有用性を確認するために,複数カ月にわたりブログデータを収集し,頻出コミュニティの抽出を行った.その結果,共通の興味・関心を持って頻出するコミュニティと,複数のコミュニティに重複してクラスタリングされるブロガを発見できた.In this study, we focus on bloggers who are writers of blog articles and propose a technique which extracts frequent and overlapped communities across multiple months from graphs consisting of nodes and edges. A node is defined as a blogger and an edge is a connection of trackback. First, the proposed technique extracts frequent communities by extracting frequent subgraphs. Second, the proposed technique extracts overlapping communities by clustering the extracted subgraphs. In the procedures of extraction of frequent subgraphs, we transform the frequent subgraphs extraction problem to the frequent itemsets extraction problem. In the first step, the LCM algorithm is applied to extract the frequent itemsets. In the second step,we applied the Newman's algorithm to find overlapping clusters. To confirm the availability of proposed technique, we collected the graph data and extracted the frequent communities.As a result, frequent communities which have common interests and the bloggers who are clustered into multiple clusters are extracted.
著者
宮崎 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.132-141, 2002-09-15
参考文献数
9

密度依存型ジャンプマルコフプロセスを,国債入札における今後の落札シェアを予測するために用いた事例報告である.国債入札参加者を大きく,日系証券会社,外資系証券会社,その他金融会社の3つに分けた場合,外資系証券会社の落札シェアが日系証券会社の落札シェアを総合的に上回る(ウインブルドン現象と呼ぶ)の確率がおよそどの程度であるかを数理モデルに基づいて分析することを目的とする.分析方法は,まず,3社間のシェア競争のモデル化を確率的でない場合に考察し,次に,確率的な場合に拡張する.最終的には,将来の落札シェアの確率分布を求めて,ウインブルドン化の可能性を探る.今後3年間におけるウインブルドン化の可能性は,限定的であるという結果が得られた.This article provides an example how the density dependent jump Markov process is applied to the analysis of the probability of the Wimbledon phenomenon, which the foreign dealers 'share exceeds that of domestic dealers in the Japanese Government bond auction. The analysis involves three steps. First, a set of linear differential equations is constructed to model share competition among the three groups in the deterministic case. Second, the deterministic model is transformed to the stochastic one. The last step derives the probability of the Wimbledon phenomenon occurring from the future share distribution. The model indicates that the probability of the Wimbledon phenomenon within three years is quite limited
著者
Akisato Kimura Masashi Sugiyama Hitoshi Sakano Hirokazu Kameoka
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.136-145, 2013-03-12

It is well known that dimensionality reduction based on multivariate analysis methods and their kernelized extensions can be formulated as generalized eigenvalue problems of scatter matrices, Gram matrices or their augmented matrices. This paper provides a generic and theoretical framework of multivariate analysis introducing a new expression for scatter matrices and Gram matrices, called Generalized Pairwise Expression (GPE). This expression is quite compact but highly powerful. The framework includes not only (1) the traditional multivariate analysis methods but also (2) several regularization techniques, (3) localization techniques, (4) clustering methods based on generalized eigenvalue problems, and (5) their semi-supervised extensions. This paper also presents a methodology for designing a desired multivariate analysis method from the proposed framework. The methodology is quite simple: adopting the above mentioned special cases as templates, and generating a new method by combining these templates appropriately. Through this methodology, we can freely design various tailor-made methods for specific purposes or domains.
著者
乾 伸雄 品野 勇治 小谷 善行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.46, no.17, pp.131-142, 2005-12-15

本論文では,先行研究の最長しりとり問題の一般化として,最長しりとり問題で単語の長さを考慮した文字数最大しりとり問題の厳密解法について述べ,その実験的評価を行う.文字数最大しりとり問題は,整数計画問題として記述した場合,単語の最大の長さをl としたとき,最長しりとり問題を記述するための変数のl 倍の変数が必要となり,現実的に解けるかどうかは未知である.l = 26 の既知の単語について,文字数最大しりとり問題は先行研究での最長しりとり問題に比べ,約41 倍の計算時間がかかることが分かった.さらに,これら2 つの問題の派生問題として,固定単語長文字数最大しりとり問題および固定文字数最長しりとり問題を取り上げる.これらの派生問題を用いて,広辞苑とICOT 形態素解析辞書について,最長しりとり問題の最適解と文字数最大しりとり問題の最適解の関係を分析した.This paper describes an exact algorithm of the maximum-shiritori-string-length shiritori problem (MS3 in short) which maximizes a shiritori-string length. This algorithm is obtained from a generalization of an exact algorithm of the longest shiritori problem (LS in short) proposed previously. We experimentally evaluate the algorithm and investigate the properties of the MS3 problem. Since the MS3 problem takes l times number of variables of the LS problem, where l is the maximum length of words, under the integer programming approach, it is unknown whether the problem instance can be solved or not. Our experimental results showed that 41 times calculation times of the LS problem is required to solve MS3 problem, when l = 26. In addition, two derived problem of these shiritori problems, called the fixedlength MS3 shiritori problem and the fixed-shiritori-string-length LS problem, are introduced. In this paper, we analyze the relations between the MS3 problem and the LS problem, using these derived problems.
著者
中島 義裕
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.40, no.SIG09(TOM2), pp.102-110, 1999-12-15

経済時系列は 決定論的カオスであるか 確率過程であるのか 進化的過程であるのかという3つの立場から説明されている.本論ではTOPIXといくつかのモデルを相関次元分析によって比較し 経済時系列が持つ特徴を明らかにする.高次元への埋め込みを行い TOPIXは確率論と決定論の両義的性質を持つ事を示す.
著者
山本 篤 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.117-131, 2010-10-25

本研究では,第 1 に,20 世紀最後の 15 年間における米国株式市場の上昇をマクロ経済リスクの観点から説明付けた Lettau らのモデルが,異なるマクロ経済リスクの下にある 1990 年代以降の日本株式市場においても説明力を有するかについて検証する.第 2 に,個別株式のベータリスク評価モデルを提案し,分析事例に基づいて個別株式のベータリスク量がマクロ経済リスクの観点から説明可能であるか検証する.検証結果から,彼らのモデルは,日本においてもマクロ経済リスクの観点から株式市場のダイナミックスを説明することが可能であり,また,個別株式のベータリスク量に関してもマクロ経済リスクの観点から説明されることが確認された.
著者
錦 康二 加藤 明 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.43-52, 2008-09-26

株式における投資判断の指標として株価レーティングがある.今日,株価レーティングは個人投資家,機関投資家の間で定着してきているが,株価レーティングの精度や特徴について詳細に検証した論文は少なく,実際の投資判断の指標として用いるには十分であるとはいえない.そこで,本研究では,統計的観点から株価レーティングが対象とする銘柄の割安割高を適切に評価しているのかについて検証を行い,レーティングは超過リターンの推移に依存し決定されているのではないかとの観点から,超過リターンの推移がアナリストの評価にどのような影響を与えるのかについても検証を行う.また,予測精度向上のアプローチとして,評価を行っている会社の数と株価レーティングの予測精度の関係について検証を行い,最後に株価レーティングの特徴とその利用可能性について考察を与える.
著者
岩田 具治 斉藤 和巳 山田 武士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.65-74, 2007-03-15
参考文献数
19

定額制サービスを提供しているオンラインストアが収益をあげるためには,ユーザの契約期間をできるだけ延ばすことが必要である.従来レコメンド法では,購入される確率を最大化するためにユーザの嗜好に合致する商品を提示する.しかしながら,従来法により必ずしも契約期間が延びるとは限らない.本研究では,定額制サービスを想定し,契約期間が延びる確率を最大にするレコメンド法を提案する.提案法では,まず契約期間の長いユーザに特徴的な購買パターンを抽出する.そして,抽出されたパターンと同じような購買行動になるように商品をレコメンドする.生存時間解析を応用し,ログデータから効率的に購買パターンの抽出を行う.また,効果的なレコメンドにするため,最大エントロピーモデルを用いてユーザの嗜好を推定する.契約期間が延びることはユーザがサービスに満足した結果であるため,提案法はオンラインストアだけでなく,ユーザにとっても好ましいレコメンドである.携帯電話用漫画配信サイトのログを用い,提案法の有効性を示す.Online stores providing subscription services need to extend user subscription periods as long as possible to increase their profits. Conventional recommendation methods recommend items that best coincide with user's interests to maximize the purchase probability, which does not necessarily contribute to extend subscription periods. We present a novel recommendation method for subscription services that maximizes the probability of the subscription period being extended. Our method finds frequent purchase patterns in the long subscription period users, and recommends items for a new user to simulate the found patterns. Using survival analysis techniques, we efficiently extract information from the log data for finding the patterns. Furthermore, we infer user's interests from purchase histories based on maximum entropy models, and use the interests to improve the recommendations. Since a longer subscription period is the result of greater user satisfaction, our method benefits users as well as online stores. We evaluate our method using the real log data of an online cartoon distribution service for cell-phone.
著者
山下 晃弘 川村 秀憲 飯塚 博幸 大内 東
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.47-57, 2009-03-27
被引用文献数
1

Web 上の情報量拡大にともなって,オンラインストアなどでは推薦システムを導入する事例が増加している.同時に,これまで様々な推薦アルゴリズムが提案,分析,評価されてきた.システムによる推薦結果は,次にユーザが閲覧するアイテムとなり,結果としてどのアイテムが次に評価されるかに影響を及ぼす.したがって,推薦システムとユーザは相互作用を及ぼしあう関係にあるといえる.しかし,先行研究による推薦アルゴリズムの評価・分析では,一時的な推薦精度のみに着目し,このような相互作用は考慮されてこなかった.そこで本研究では,ユーザをエージェントとしてモデル化することで,推薦システムとユーザの相互作用を考慮した,新たな評価・分析モデルを提案する.さらに,本論文では,基本的な推薦アルゴリズムである 「ユーザ間協調フィルタリング」 と,実システムとしてすでに実用化されている 「アイテム間協調フィルタリング」 を例として取り上げ,その特性について提案モデルを用いて分析した.その結果,既存の評価・分析モデルの枠を超え,より有効な推薦への指針を検証可能であることが示された.The problem of information overload spreading across the Internet has been causing serious inefficiency in browsing and searching for information. As a way to overcome the problem, the recommender systems are recently used in many E-commerce sites. Many algorithms have been proposed to improve the accuracy of recommendation based on user ratings. The relation between recommender systems and users is rather interactive in the sense that recommendations decides which items are recommended to users and the results of ratings by users will affect the next recommendations. However, conventional studies have not considered the interactive aspects so much. Therefore, our aim of this paper is to propose a new evaluation model using multiagent modeling where the recommender system and agents (as users) interacts with each other. The properties of typical recommendation algorithms such as user-based and itembased collaborative filtering will be analyzed with our proposed model. Our results also suggest the possibilities to propose a novel and effective recommendation algorithm.
著者
萬屋 賢人 菅原 俊治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.1-9, 2011-11-30

本論文では,視野範囲内の先行車が低速の際に車間距離をとる渋滞緩和車を導入し,エージェントシミュレーションにより,渋滞緩和への効果とその解析結果について述べる.高速道路の交通流は渋滞に至る過程で,渋滞が起こりうる交通密度に至っても,交通流の流量が増加し続けるメタ安定相を経る.メタ安定相は,流量が最大となる状態であり,渋滞の初期状態からメタ安定相へ戻すことができれば,渋滞の緩和や渋滞の発生を遅らせることができると考えられる.そこで渋滞緩和車を渋滞緩和エージェントとしてモデル化し,交通流のモデルである拡張 Nagel-Schreckenberg モデルに加えシミュレーションにより実験したところ,実際に渋滞状態からメタ安定相に移行できることを確認した.さらに詳細な解析の結果,渋滞緩和車を連続して配置することがメタ安定相への移行に重要であることが分かった.また渋滞緩和車を導入しない場合の平均速度と渋滞緩和車を導入したときの通常車両および渋滞緩和車の平均速度を比較したところ,渋滞緩和車となり速度を落としても,平均速度は向上することが分かった.
著者
石川 千里 豊島 良美 髙田 雅美 長尾 年恭 城 和貴
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.22-31, 2010-03-17

地電位差データに稀に含まれる異常電流を地震前駆的シグナル (SES: Seismic Electric Signals) として検出することで地震の予知を図る手法がある.強い電車ノイズを含む地電位差データから SES を検出するために,独立成分分析 (ICA: Independent Component Analysis) を地電位差データに適用し,電車ノイズを分離することが試みられており,結果として ICA が有効であることは確認されている.また,地震予測を迅速に行うためには,ノイズを分離したデータから自動的に SES を検出する手法が必要である.本稿では,ICA を用いて電車ノイズを分離した結果から,自動的に SES を検出する手法について提案する.新潟県中越地震の SES を含むと考えられる地電位差データに対して提案手法を適用する実験を行い,適用結果と地震発生データの相関調査を行う.
著者
矢萩 一樹 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SIG10(TOM12), pp.158-171, 2005-06-15

オプションの市場価格が理論価格より割高である場合には,オプションを売却してデルタヘッジを行えば理論上は確実に収益があがるはずであるが,実際には損失が発生することがある.本研究では,そのメカニズムを解明するために,デルタヘッジの効率性に着目したシミュレーションモデルを提案した後,実データに基づいて本モデルを利用した検証を行う.デルタヘッジを行う際に使用するデルタの算出には,実現したボラティリティ,各時点のインプライド・ボラティリティ,GARCH ボラティリティの3 種類を用いることで,これらのボラティリティがデルタヘッジに与える効率性の違いを比較した.また,分析をより現実的なものとするため,デルタヘッジにおける株式の売買コストを考慮したうえで,ヘッジ頻度を変えた分析からデルタヘッジの効率性とヘッジコストとのトレードオフを確認した.実験結果から,各時点のインプライド・ボラティリティおよびGARCH ボラティリティを直接利用するだけでは,デルタヘッジの効率性はきわめて低いことが分かった.ただし,現実のボラティリティをある程度正しく予測することができたならば,取引回数を10 回程度以上行うことで理論どおりに収益をあげることができるのが確認できた.また,ヘッジコストとヘッジの効率性に関するトレードオフは存在し,ヘッジ間隔が長くなるにつれて売買コストが低下する影響が強く現れる結果となった.
著者
三島 雅史 田中 美栄子
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG19(TOM19), pp.47-54, 2007-12-15

人間乱数を認知症の早期発見に利用するには,比較的短い数列から兆候をとらえる必要がある.相関次元やHMMを用いた従来法は長いデータ列を必要とし診断には不向きである.本研究では長さ50の短い乱数列を対象にして,診断に使えそうな指標を特定することを目的とした.認知症を加齢とともに進行する記憶力の低下が極端な形で現れたものと考え,年齢別にとったデータを用いて様々な指標を計算し,年齢による違いが確認できたものを有効な指標と判断した.これに加えて新たな指標(RP)を提案する.また採取方法による乱数の性質の違いについても考察する.