著者
高橋 栄一
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

2011年3月11日に発生したM9東北地方太平洋沖地震の結果、日本列島にかかる強い水平圧縮がほとんど取り去られ、一部地域は引張場に移行した。その結果地殻内のマグマ移動は容易となったと考えられるため、日本列島全体で休眠中の火山が活動を再開するなど火山活動の長期にわたる活発化が懸念される。地震と火山活動の関係としては地震発生から数時間~数か月の近接された活動例が従来注目されてきたが、地殻応力場の変化に火山が応答するメカニズムからは数年~数10年の長い時間間隔を経た相互作用を考慮する必要がある(高橋2012、連合大会)。巨大地震により広域的に且つ長期的に火山活動が活発化した例としては、17世紀の中盤に開始した北海道駒ヶ岳[1640年~]、有珠[1663年~]、樽前[1667年~]の火山活動がある。これら3火山の17世紀から現在に至る火山活動は1618年に北海道東方沖で起きたM9地震により励起された可能性が極めて高い。本セッションでは、この因果関係について中川(本セッション)と佐竹(本セッション)の講演でなされる予定である。2011年の東北地方太平洋沖地震の1100年前に起きた貞観地震(西暦869年)後の鳥海火山噴火(871年)、十和田―a噴火(915年)も巨大地震による励起噴火である可能性が考えられる。日本列島の第4紀火山の多くは噴火間隔が数100年以上あるため、火道や浅部にあるマグマだまりは冷却され結晶度が高いマッシュ状態にあるものが多い(竹内、本セッション)。地震から火山活動活発化までに要する時間は、それぞれの火山の地下マグマ供給系の熱的状態に応じて数年から数10年の幅があるものと考えられる。数千年に渡って休眠していた北海道駒ヶ岳、有珠、樽前、十和田においては、地震後から噴火が起こるまでに30~50年の時間間隔が必要だった。これはマントルから注入した玄武岩マグマが半ば固化した火道を温めたり、マグマだまりの温度を上げてマグマの粘性を下げたりするのに時間を要するからであろう。反対に鳥海火山のように玄武岩マグマがそのまま噴火した例では時間間隔は2年と短かった。3.11地震後の影響で地殻応力場が変化した日本列島においては、これまで休眠中であった火山がマントルからのマグマ注入を受けて活動に向かっている可能性がある。それぞれの火山における地下のマグマ供給系がいかなる状態にあって、今後どのような時間内にいかなる噴火を起こす可能性があるかを学際的に検討することが必要である。本セッションは2014年度から東大地震研究所特定研究課題に採択された「巨大地震が励起する火山活動の活性化過程の研究」(世話人代表:高橋栄一・栗田敬)を母体としている。この研究課題では、我が国の火山活動の予測に資するため、それぞれの火山のマグマ供給系の実態解明を目指す。火山物理、火山化学、火山地質学、岩石学、地震トモグラフィー、MT観測など多方面の研究者の参加を広く呼びかけた。日本列島の火山活動の長期的な推移を予測するためには、それぞれの火山のマグマ供給系の実態をできる限り正確に把握し、火山体深部で起きている噴火の予備的過程を正確に読み取ることが重要である。
著者
諏佐 達也 村川正宏 高橋 栄一 古谷 立美 樋口 哲也 古市 愼治 上田 佳孝 和田 淳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.15, pp.78-87, 2007-10-15
被引用文献数
1

製造ばらつきにより発生するクロック・スキューの問題を解決するための手法として,遺伝的アルゴリズムを用いたディジタル LSI の製造後クロック調整技術が提案されている.しかし,大規模な LSI の調整では,調整箇所が増大するため,調整時間が増加するという問題がある.そこで,本研究では,大規模ディジタル LSI にも適用可能な製造後クロック調整の高速化手法を提案する.提案手法では,LSI 設計時に行う STA(Static Timing Analysis)の結果を用いて調整箇所を限定し,調整時間を短縮する.それに加えて,遺伝的アルゴリズムの初期集団の分布を工夫することで,さらに調整時間を短縮する.さらに,これらの手法による調整効果を LSI の設計時に検証できるようにするための調整シミュレータを開発した.このシミュレータを用いた調整実験の結果,1 031 カ所のフリップフロップが存在する実用的な回路において,数秒という現実的な時間で調整が完了できる見込みを得た.To solve the problem of fluctuations in clock timing with large scale digital LSIs (also known as the "clock skew" problem), the post-fabrication clock-timing adjustment technique using a genetic algorithm (GA) has been proposed. However, the adjustment time increases incurred when more programmable delay circuits are incorporated within large-scale LSIs is a serious issue. For this problem, we propose a post-fabrication clock adjustment method to realize practical applications. This method reduces the adjustment time by reducing adjustment points utilizing results of static timing analysis (STA) and adopting improved distribution for initial population of GA. Moreover, we have developed an adjustment simulator to predict the adjustment results by the proposed method in design stages of LSIs. Adjustment experiments using the developed simulator demonstrate that our method can adjust practical LSIs with 1,031 flip-flops within a few seconds.
著者
高橋 栄一 小池 汎平 田中 英彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.867-876, 1991-07-15
被引用文献数
2

本研究は 大規模な知識処理の高速実行を目的として研究を進めている並列処理マシン PIE64の相互結合網の開発関すもので.一般に並列計算機において 相互結合網は計算機アーキテクチャの良否決定する重要なファクタの一つであり 相互結合網の性能や特徴は システム全体の処理能力と処理方式に重要な影響を与える.PIE64におけるプログラムの実行は 細粒度のプロセスを動的に生成し かつ割り付けろことにより行われ この実行過程で発生するプロセッサ間通信を効率的に支援するような特性を有する相互結合網を構成する必要がある.本稿では まず PIE64の相互結合網としてどのような構成のネットワークが最適かを考察し (1)回線交換 (2)ノンバッファリング (3)多段網 (4)動的負荷分散支援 (5)二重構成(同一構成の独立した二つのネットワークを用意)などの特徴を有するネットワークが PIE64 の相互結合網として妥当であることを述べる.次に 相互結合網ハードウェアの実装方法を検討し 実際の実装過程について説明する.最後に 作製した相互結合網ハードウェアの予備評価として 経路設定や転送遅延など基本的な機能や信号伝送路の品質などの電気的特 性の測定結果を検討し PIE64の相互結合網として十分な性能を持つことを示す.
著者
秋山陽平 河西勇二 岩田昌也 高橋栄一 佐藤文明 村川正宏
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.945-952, 2013-07-03

太陽光電池パネルの寿命は一般的に20年といわれているが、工業製品である以上一定の確率で故障が発生する。しかし、現状での太陽光発電システムでは、パネル単位での異常を検出することが難しい。そのため、パネルの異常を抱えたまま太陽光発電システムが運用され、期待する発電量に達しないケースが発生している。このため、太陽光電池パネルの価格上昇や通信工事費用増加を招くことのない異常検出システムの研究開発が急務である。これまでに、産業技術総合研究所では直流電力線を利用した独自の電力線通信方式を用いて、パネル毎にデータ通信装置子機を実装し、発電情報の状態モニタリングを可能としている。今回我々は、データ通信装置子機において計測された膨大な発電情報をネットワーク上の仮想データベースであるクラウドサーバ上に集約・蓄積させることで、ブラウザ上でパネル単位での発電状況を逐一観測可能な状態モニタリングと早期に異常を検知する異常検知システムを開発した。さらに、一枚のパネルを遮光することにより擬似的に異常パネルを作成し、開発したシステムを用いて評価実験を行った。
著者
山崎 優大 野里 博和 岩田 昌也 高橋 栄一 何森 亜由美 岩瀬 拓士 坂無 英徳
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.28-37, 2015-03-30

錐制約部分空間法は,非負の特徴ベクトルに対して錐形状の空間を形成することで学習パターンを精度良く表現し,錐との角度を基にパターン認識を行う.しかし,錐形状の空間内では表面付近と中心付近の特徴ベクトルの区別ができないため,錐形状の空間の広がりが大きい場合は,認識性能が低下するという問題がある.そこで本論文では,錐の表面付近の異常を検出するため,錐形状の空間における確率密度を基にした異常検出手法を提案する.提案手法では,錐形状の部分空間の広がり方向を表す空間上において学習パターンの確率密度関数を作成し,確率密度が低い位置に存在する特徴ベクトルを異常として検出する.実験では,乳腺超音波画像の実データを用いて病変検出精度の検証を行い,提案手法の有効性を確認した.
著者
高橋 栄一 加藤 進 佐々木 明
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、高層大気中に観測され注目を集めているスプライト放電に類似した拡散と分枝構造を併せ持つ放電を一様電界中の予備電離分布をUVレーザーにより制御することで再現した。分枝の有無は初期の予備電離密度に強く依存することが分かった。高層大気中でもその様な密度分布の存在が予想される。また、放電の時間発展をナノ秒の時間分解能を有する超高速マルチフレーミングカメラをストリーマ放電に初めて適用することにより、分枝の発展の様子の詳細を明らかにした。その結果、成長を続ける分枝の止める分枝の存在、電離度が高い領域では放電の波面が一様な伝搬をしていても電離度が低い領域に進展すると分枝が形成されたこと、いくつかの分枝のうち一つが反対側の電極に到達すると短絡するが残りの分枝の先端はそれでも伝搬を続ける、あるいはその短絡して形成された短絡路に向かって再結合をした振る舞いから、分枝の形成機構は成長界面の不安定性に類似のものと考えられる。
著者
戸田 賢二 西田 健次 高橋 栄一 Nick Michell 山口 喜教
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1619-1629, 1995-07-15
被引用文献数
13

実時間並列計算機用相互結合網の構成要素として用いるルータチップの設計およびその性能について報告する。本ルータはパケット交換型で4入力4出力であり、多段網における優先度逆転現象の発生を抑える方式として我々の提案した「優先度先送り方式」を採用している。優先度は32ビット、入力ポートごとに8パケットの優先度キューを持ち、データ転送レートはポート当たり190メガバイト/秒、パイプラインは25ナノ秒ピッチの2段構成である。この性能は優先度制御を行わない通常の方式のルータと比較し遜色のないものである。