著者
安田 憲二 大塚 幸雄
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.217-224, 1997-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
12

都市ごみの燃焼にともなうThermal NOxとFuel NOxの排出挙動を定量的に把握するため, 窒素含有量が異なるように組成を調整した都市ごみを用いてパイロットスケールの実験炉による燃焼実験を行った。その結果, Fuel NOxの変換率は燃焼温度およびO2濃度が高くなるほど増大した。また, ごみの燃焼実験におけるFuel NOxの変換率は1.7~9.3%であり, 化石燃料を燃焼しているボイラでの変換率 (30%程度) と比べて1/3以下と小さかった。燃焼域での02濃度を低くすることによりFuel NOxだけでなくThermal NOxの排出も抑制できる。特にFuel NOxの低減率はThermal NOxに比べて2倍から5倍高かった。さらに燃焼温度との関係では, Thermal NOxの方がFuel NOxよりも強い温度依存性を示した。
著者
川端 弘俊 碓井 建夫 丸川 雄浄 原 茂太 中里 英樹 田中 敏宏
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.184-192, 2002-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
11
被引用文献数
9 9

ダイオキシン類は有機塩素化合物であることから, 燃焼物中の塩素源およびその形態がダイオキシン類生成濃度に大きく影響する重要な因子になると考えられる。そこで本研究では, 主として高温における燃焼実験および熱力学的平衡計算から, ダイオキシン類生成濃度に及ぼす燃焼過程における有機塩素, 無機塩素などの塩素源およびその塩素形態の影響を実験室規模の燃焼炉を用いて調査した。ダイオキシン類を構成する4元素が存在すると, 800℃という高温燃焼においてもダイオキシン類は生成する。また, 燃焼物中の塩素源および塩素形態が同一である場合, 塩素濃度とダイオキシン類生成濃度はほぼ比例し, 燃焼物質中の塩素源が有機塩素化合物か熱力学的に安定な無機塩素化合物かによりダイオキシン類生成濃度は大きく異なる。さらに, 無機塩素化合物でも, その塩素形態すなわち水和物などの活性なClが存在すると高濃度のダイオキシン類が生成することを, 小麦粉と塩との水和物の燃焼実験により明らかにした。
著者
高岡 昌輝 武田 信生 小田 烈弘 藤山 弘道 藤吉 秀昭 森本 林
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.256-263, 1998-09-30

平成6年度から平成8年度にわたり行った全国87のごみ焼却施設を対象にした保全整備の実態調査と平成7年度に行った廃炉の実態調査からごみ焼却施設の寿命の推定を試みた。まず, ごみ焼却施設の寿命を表す分布形を決定するため, 廃炉のデータに対して正規分布, 対数正規分布, ワイブル分布の適用を試みた。ワイブル分布の適合度がよく, ごみ焼却施設の寿命は15.7年と推定された。保全整備実態調査の補修のデータについてワイブル分布を適用したところごみ焼却施設全体の寿命は19.2年と, 設備のつながりを考慮した最小寿命系の場合は16.4年と推定された。保全整備費のデータより焼却炉形式, ガス冷却形式の違いによる寿命の比較では, 全連・ストーカ・ボイラーの施設が18.2~37.4年の範囲であることが推定され, 最も長寿命であった。また, ワイブル分布の形状母数からごみ焼却施設はゆるやかな磨耗故障を示す分布で表されることがわかった。
著者
山本 勝彦 三沢 真一 肥塚 和彦 三村 良平
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.195-203, 2000-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本実験は, RDFの利用用途の開発を目的として, 木材や石炭の燃料精製に適用されている炭化工程により, 家庭系可燃ごみから製造されたRDFを炭化物とした。この結果, 炭化物の容積は, ごみ段階から1/10~1/8に減少し, 重量ではごみ段階の1/8~1/6に減少した。また, RDFからは容積, 重量ともに約1/3に低下した。もう1つの炭化処理の効果として, RDFに含まれる塩素が熱分解により塩化水素として分離され, RDFの塩素含有量が61%削減された。炭化物には植物が必要な微量成分が含まれており, 有害物質の含有量も溶出量も少ないことから, 土壌改良材として使用できることが明らかとなった。炭化物の塩素含有量を削減するため, 粉砕した炭化物を水洗し, 温水 (80℃) と水蒸気 (115℃) で洗浄することにより, RDF中の塩素含有量は最終的に90%以上が除去された。この実験から, 以下の3点がRDFを炭化処理する利点として得られた。第1には, 広域化処理を念頭に置いた場合, 炭化物はごみ輸送あるいはRDF輸送から炭化物輸送に転換することにより輸送効率を改善できることであり, 第2はRDFより塩素含有量の少ない燃料として利用できることさらに, 第3は炭化物は土壌改良材に利用できること, である。
著者
小林 紀子 森岡 幹夫 小宮山 鉄兵 伊藤 豊彰 三枝 正彦
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.150-154, 2008 (Released:2009-03-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

山形県の農家および堆肥製造センターでつくられた家畜ふん堆肥87点 (牛ふん堆肥77点,豚ぷん堆肥6点,鶏ふん堆肥4点) のケイ素含量とその簡易推定法を検討した。1) 牛ふん堆肥のケイ素含量は,12.1~307.8g kg−1乾物 (以下DW),平均が95.4g kg−1DWであった。豚ぷん堆肥のケイ素含量は,9.5~79.6g kg−1DWで平均34.1g kg−1DW,鶏ふん堆肥のケイ素含量は,2.4~36.1g kg−1DWで平均16.8g kg−1DWであった。2) 牛ふん堆肥の炭素含量 (x) とケイ素含量 (y) の間には,y = −0.75x + 354 (r = −0.904) で両者の間に0.1%で有意な負の関係が得られた。また,牛ふん堆肥の灰分含量 (x) とケイ素含量 (y) の間においても,y = 0.44x −39.8(r = 0.970) で0.1%で有意な正の関係が得られた。よって,敷料や副資材に籾殻,わら類,もどし堆肥が使用されている牛ふん堆肥のケイ素含量は,炭素や灰分含量から推定することができると考えられた。
著者
大迫 政浩 山田 正人 井上 雄三 金 容珍 朴 政九 李 東勲 吉田 悳男 野村 稔郎
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.256-265, 2001-11-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
30
被引用文献数
3 2

韓国では, 都市ごみ焼却主灰 (以後主灰と略す) からの鉛の溶出濃度が判定基準に適合しないために, 埋め立てできない状況に陥っており, 深刻な問題になっている。その原因を明らかにするとともに, 日本の主灰においても同様の問題が生じていないかを明らかにするために, 韓国の都市ごみ焼却施設に野積み保管されている主灰を採取し, 日本の施設からも主灰試料を採取して, 含有量試験, 環境庁告示13号法による溶出試験およびpH依存性試験を実施した。試験結果に基づいて, 日韓の主灰の重金属類含有量および溶出量を日本を中心にした文献データと比較検討した。その結果, 韓国の試料で鉛 (Pb) の溶出濃度が高い原因は, アルカリ・アルカリ土類金属の含有量が高く, それらの酸化物等の溶解によってpHが高くなったためであると考えられ, 文献データを基にした考察から, 日本の主灰でも同様の現象が起こっていることがわかった。韓国において埋立を法的に可能にするためには, 埋立前にエイジングを行う方法などが考えられる。日本では主灰に対する溶出基準はなく, 今後の埋立処分および有効利用の観点から適切な対策を講じる必要がある。
著者
福岡 雅子 小泉 春洋 高月 紘
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 = Journal of the Japan Society Waste Management Experts (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.418-428, 2004-09-30
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究は, 2000年度から完全施行された容器包装リサイクル法に対応して市町村で分別収集が導入されつつあるその他プラスチック製容器包装について, 既に分別収集を導入した自治体の事例から, モデル実施および全市実施を行った場合の収集量原単位や収集ごみ質等の変化を把握し, 分別収集の方法等による違いを検討した。<BR>その結果, 行政区域全体で導入した場合 (全市実施) は, 行政区域の一部でモデル的に導入した場合 (モデル実施) に比べて収集量原単位が大きくなる傾向があることが明らかとなった。原因として, モデル実施と全市実施における住民啓発方法や住民への協力要請内容の違いが, 収集量原単位に影響を与えていることが想定できた。寝屋川市におけるごみ質分析結果でも, 全市実施時にはモデル実施時に比べて住民の協力が高まり, プラボトル, パック・トレイ等については, 重量で7割以上が適正に分別排出されることが確認できた。
著者
高橋 泰弘
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.491-499, 2004-11-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

下水汚泥焼却灰中の有用な資源を回収する目的で水酸化ナトリウム溶液による溶出実験を行った。リン含有率の異なる4種類の焼却灰を用いてリンだけでなく, その他有用成分についても溶出特性を明らかにした。リンについて溶出温度と溶出時間の関係を検討した。アルミニウム, 亜鉛の効率的な溶出条件を調べるために焼却灰濃度, 温度について検討した。リンはリン含有率が高いほど溶出濃度は高かった。アルミニウムはアルミニウム含有率に関係なく, リン含有率が高いほどアルミニウム溶出濃度が高かった。焼却灰中のアルミニウム含有率にかかわらずリンとアルミニウムの溶出挙動は同じであったことからリン酸アルミニウムが溶出していると考えられる。アルミニウムの溶出率は溶出温度と焼却灰濃度に関係があることが明らかとなった。亜鉛の溶出率は水酸化ナトリウム濃度10%, 溶出温度80℃の時, 最大で16%であった。
著者
矢口 淳一 千種 薫 嶺岸 令久 田村 利久
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.57-65, 1995-03-20 (Released:2010-05-31)
参考文献数
14

酵母によって食品工場排水を処理し, 増殖する酵母から効率よく酵母エキスを抽出する方法について検討した。さらに酵母と抽出した酵母エキスを, 微生物培地材料およびキノコ栽培用生理活性素材へ適用した。酵母エキスを抽出する方法としては, 自己消化法, 酸熱分解法およびアルカリ熱分解法が有効で, アルカリ熱分解法では70~80%のエキス抽出率が得られた。栄養要求性の高い乳酸菌の生育度試験では, 三つの抽出方法で作成されたいずれの酵母エキスも, 市販酵母エキスと比較して遜色のない乳酸菌の増殖が観察され, 8ヶ月間にわたって性状も比較的安定していたので, 微生物用の培地材料として適用できることが確かめられた。またキノコの栽培試験では, 酵母と自己消化法で抽出された酵母エキス添加培地で菌糸生長, 子実体増収に共に効果がみられ, マイタケでは品質も改良されたので, キノコ栽培にも有効であることが明らかとなった。
著者
吉野 秀吉 浦野 紘平
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.11-18, 1994
被引用文献数
11 6

一般廃棄物焼却施設における焼却灰の遺伝子毒性の実態と特性を明らかにするため, 23施設の飛灰と10施設の残灰について, 前報の方法で変異原性物質を抽出してエームス試験を行った。<BR>23施設のうち8施設の飛灰から明確な変異原性が認められ, とくにTA98+S9の代謝フレームシフト型の突然変異が多く認められた。聴き取り調査による稼働状況との関係を検討したところ, ストーカ式で, 炉内滞留時間の短い施設の飛灰に変異原性の著しく高い場合が認められた。そこでストーカ式焼却炉において燃焼条件を変化させた場合の飛灰の変異原性の変化を調べたところ, 排ガス中のCO濃度が高く, 飛灰の熱灼減量が高くなると変異原性が高くなった。これらのことから飛灰中の変異原性物質は不完全燃焼した場合に生成しやすいことが明らかになった。なお, 飛灰を400℃, 30分間熱処理すると変異原性が消失することが確認された。また, 焼却灰を2規定の塩酸または水酸化ナトリウムで処理したところ, 変異原性物質の一部が分解された。塩酸処理ではカルシウム塩などが溶解して質量が大幅に減少したため, 抽出しやすくなり, 変異原性が高感度で検出できた。酸処理後, 変異原性の低い残灰についても10施設のうち3施設から明確な変異原性が認められた。
著者
中村 一夫 来住 宜剛 池上 詢
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.9-16, 2008 (Released:2009-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
2 5

廃食用油からバイオディーゼル燃料を製造する際に,触媒のカリウムを多く含むグリセリンやメタノールの混合廃液が発生する。この廃液は,現在廃棄物として処理されているが,グリセリンやメタノールのような分解性の有機物の有効利用の観点からメタン発酵での再資源化の可能性について実験を実施した。実験の結果,グリセリン混合廃液は,廃液中に含まれるカリウムによる発酵阻害もなく,良好にメタン発酵することが確認された。その際のCODCr分解率は80%以上であった。また,グリセリン廃液におけるガス発生率は分解CODCr1gあたり0.51NL-dryであり,理論上のガス発生率とほぼ一致する結果を得た。一方,メタン発酵を問題なく進めるためには,窒素やリンのような栄養塩や固形物を適切な濃度に保つ必要があるが,グリセリン廃液は固形分を含まないうえに窒素やリンの含有量が少ない。この対策としては,生ごみとの投入が効果的であった。
著者
松藤 敏彦 田中 信寿 松尾 孝之
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.133-141, 1994

家庭ごみの発生特性を明らかにするため, 札幌市内の3家族をモニターとするごみの計量調査を9年間行った。各モニターは, 排出するごみを, 厨芥, 紙くず類, プラスチック, 金属, ガラスに分けて毎日計量し, 資源回収するもの, 粗大ごみは対象としていない。<BR>厨芥, 紙くず類の排出量は, それぞれ正規分布, 対数正規分布にしたがい, 分布の代表値としてはメジアンが適当である。両者の経年変化は, 紙おむつの使用, 家族人数の変化, 年齢の変化によってほぼ説明できた。また, 季節変動パターンにはモニターごとの特徴が見られるが, 夏の厨芥, 年末, 年度末の紙くず類の増加が, 市全体のごみ量の季節変動の原因と考えられる。曜日変動には, 家庭ごとに固有な一週間の生活パターンが表われている。一方, プラスチック, 金属, ガラスは排出されない日も多く, 対数正規的な排出分布を示す。モニター間の排出量の違いは厨芥が最も大きく, 生活スタイルの差を反映している。
著者
田中 信寿 松藤 敏彦
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.107-115, 1993
被引用文献数
5 7

廃棄物埋立層内における不飽和水分移動は埋立地内の移動現象を解明するための基本的研究課題であるが, まだ研究は進んでいない。埋立層内の水分移動現象にも土壌層内で使用される不飽和水分移動理論が適用されると思われる。そこで中粒砂を対照として焼却灰と模擬ごみを用いてそれらの充填層の不飽和水分移動パラメータ (マトリック吸引圧と体積含水率, および不飽和透水係数と体積含水率の関係) を実測した。<BR>同じ充填層を用いて, ステップ状の降雨開始や停止実験, およびランダムなパルス降雨実験の流出水量経時変化を実測し, 廃棄物層の不飽和水分移動の特徴を実験的に明らかにすると共に, 前述した特性パラメータをRichards式に代入して流出水量変化を模擬し, 日数単位で見ようとするようなタイムスケールでは, この特性パラメータおよびRichards式は有効であることを示した。
著者
青井 健太郎 小野 芳朗 並木 健二 山田 亜矢
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.124-130, 2002-05-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では, 一般廃棄物焼却施設から採取した飛灰および主灰について各種の溶出試験と化学物質のリスクに関わる優先度を決定するスコアリングを組み合わせることにより, 焼却灰中に含有されるCr, Cd, Pb, Sbの『溶出されやすく, 生体内に曝露されやすく, しかも有害な影響をおこしやすさ』を浸出水へ与えるインパクトの強さとして定量的に評価した。その結果, 焼却灰の浸出水への影響を評価するためには, 二段階バッチ試験とアベイラビリティー試験を組み合わせる必要があることと, 埋立て初期のCd, 長期間にわたるPb溶出によるインパクトが強いという結論を得た。
著者
谷川 昇 浦野 紘平
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.181-187, 1998-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
36
被引用文献数
3 2 12

都市ごみ焼却施設において, 乾電池の水銀含有量の低減化と塩化水素 (HCl) と二酸化硫黄 (SO2) の処理技術等が水銀の排出におよぼす影響を明らかにし, 東京23区および日本全国における都市ごみ焼却施設から排ガスとして大気中に排出される水銀量等を考察した。HClとSO2の処理技術として電気集じん装置 (EP) と組み合わせた粉体噴射法を採用している都市ごみ焼却施設において, 乾電池の水銀含有量の低減化によって, 水銀排出濃度が約0.25mg/m3Nから約0.08mg/m3Nへ低下したこと, 高い水銀排出濃度の出現回数が激減したことが確認された。HClとSO2の処理技術によって水銀が除去され, その除去率はEPと組み合わせた粉体噴射法では約35%, 湿式法では約65%, キレート剤を吸収液に添加した湿式法では約90%, フィルタ法では約75%であった。東京23区では, 1986年から1996年の間に焼却ごみ量は約1.27倍に増加したが, 乾電池の水銀含有量の低減化と排ガス処理技術の採用によって, 水銀の排出量は約1/6に減少した。また, 1992年の日本全国における都市ごみ焼却に伴う大気環境への水銀の排出量は約17t/yと推算され, 排ガス処理技術による水銀の排出削減量は約9t/yと推算された。
著者
吉仲 賢晴 福原 知子 長谷川 貴洋 岩崎 訓 安部 郁夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.340-346, 2008 (Released:2009-03-26)
参考文献数
20

廃木材のリサイクルが重要視されている中,生産量が増加している新たな木質系素材としてファルカタに着目し,炭化物を製造してそのトリクロロエチレン (TCE) 吸着性能を評価した。ファルカタを様々な温度で炭化した結果,800℃炭化時にヨウ素吸着性能が極大となった。また,BET比表面積や細孔容積は900℃炭化で最大となり,それぞれ444m2 g−1, 0.196mL g−1であった。また,TCE吸着性能は平均細孔径が最も小さくなった800℃炭化物で最大となり,市販活性炭よりも高い吸着性能を示した。市販活性炭に比べると比表面積や細孔容積の値で劣るファルカタ炭化物が市販活性炭よりもTCE吸着性能が高くなったのは,TCEの吸着に適した径の細孔が多かったためだと考えられ,比表面積や細孔容積の値だけでは,溶液中に低濃度で存在する有機化合物の吸着量を推定することは困難であることが確認された。これらの結果より,ファルカタから製造した炭化物はTCE汚染地下水の浄化に有効な吸着剤になりうることが示された。