著者
小笠原 敏記 岩間 俊二 堺 茂樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_301-I_305, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
6

In the Great East Japan Earthquake, we clarified that Ohtanabe fishing ports have fully function as tsunami mitigation using tsunami simulation. The process in which tsunami develops or propagates is very different depending on the presence or absence of the fishing ports. Especially, if there were not the fishing ports, the tsunami height increases more than 60% at the front of Ohtanabe seawall and the inundation height increases twice at the area inside the seawall. Furthermore, there will be also strongly possibility that the large amount of water is stored within the seawall for a long stretch of time. Therefore, we learned from the disaster that a multilayered defense system should be built to minimize damage in the event of a disaster that overwhelms disaster prevention infrastructures.
著者
村上 智一 深尾 宏矩 吉野 純 安田 孝志 飯塚 聡 下川 信也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_396-I_400, 2011 (Released:2011-11-09)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

In this study, a climate in September of 2099 based on the SRES A1B scenario was assumed as the future climate affected by the global warming. 50 cases of potential typhoons striking Tokyo Bay under the assumed future climate were estimated by using potential vorticity bogussing scheme of a tropical cyclone. Then, distributions of the possible maximum storm surges and high waves generated by the 50 potential typhoons were predicted by using an atmosphere-ocean-wave coupled model. The results show that the potential storm tide in Tokyo Port reaches 3.4 m and the maximum storm tide of 4.1 m height in Tokyo Bay is caused in Katunan located at the most inner part of Tokyo Bay. The heights of these storm tides remarkably exceed the largest storm tide 2.3 m ever recorded in Tokyo Bay.
著者
伊藤 康佑 片木 聖樹 水上 純一 熊谷 健蔵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_307-I_312, 2019
被引用文献数
4

<p> 台風201821号は大阪湾を直撃し沿岸部に甚大な高潮・高波被害をもたらした.人工島である関西国際空港においても甚大な浸水被害が発生し,空港機能が麻痺する事態となった.本研究では再度災害の防止を目的とし,空港機能を有する人工島の特性を踏まえ,台風来襲時の気象・海象,現地の被害状況等から推定された護岸からの越波等を含む4つの浸水要因について定量的評価を行った.その結果,浸水の主要因は1期島の東側および南側の護岸からの越波であり,その量は約225万m<sup>3</sup>であることがわかった.さらに,浸水は東側護岸から開始したが,特に,台風通過時における対岸からのS~SSW方向の強風に伴って発生した想定以上の高波浪によって,越波が護岸延長の長い東側護岸で発生したことが浸水被害を増大させる要因となったことがわかった.</p>
著者
吉川 泰弘 阿部 孝章 平井 康幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_416-I_420, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

The tsunami of 2011 Tohoku Pacific-Coast Earthquake broke river-ice, and generated ice jam in Hokkaido, Japan. This study aimed to clarify the phenomenon of ice jam generated by tsunami in ice covered river. We built the river-ice calculation model. In order to check the accuracy of this calculation model, we conducted ice jam experiment and a calculation value reproduced an experiment value. We understood that it was important to set up "the conditions to generate of ice jam" and "the allowable stress of river-ice" appropriately in this calculation model. This following phenomenon was found by Simulation of Ice Jam. At the time of tsunami intrusion to ice-covered river, River-ice was destroyed and moved to the upstream. River-ice was deposited in narrow river-width. Ice jam was generated at this point.
著者
仲座 栄三 田中 聡 本屋敷 涼 宮里 信寿 福森 匡泰 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_79-I_84, 2019

<p> Galvin(1968)は,水理実験によって一様斜面上の砕波形態がspilling,plunging,collapsing,surgingの4つに大別されることを示した.Battjes(1974)は,それらの砕波形態や砕波帯内の諸物理現象がIribarren(1949)の示したパラメータで系統的に整理できることを示し,そのパラメータをsurf similarityと呼んだ.本論は,CADMAS-SURFによる数値計算結果によって,波の砕波形態が進行波の軌道流速と戻り流れとの相対的強弱によって決定されていることを示した上で,新たにresonance mode breakerの存在を位置付けている.また,砕波形態と先行波が派生させる戻り流れとの関連を概説した上で,砕波形態が砕波帯内の波の遡上や反射など諸水理現象に及ぼす影響及び,サーファーが砕ける波をサーフィンできる仕組みを定量的に明らかにしている.</p>
著者
本屋敷 涼 仲座 栄三 宮里 信寿 福森 匡泰 田中 聡 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_769-I_774, 2019

<p> CADMAS-SURFを用いた数値計算によって,高さが1.0m前後の高いステップ高を有する階段式護岸に対する波の遡上及び反射率について明らかにしている.従来型の場合,ステップ高が0.2m~0.3mとなっており,傾斜勾配は1:3程度の場合が多い.この場合の波の遡上高は,滑面斜面に対する場合の1割~2割ほど低めとなることが知られている.しかし,ステップ高がさらに高くなった場合についてはあまり研究が行われていない.本研究は,ステップ高を0.2,0.6,1.0,1.4mと順次高めた場合について,波の遡上及び反射の特性を明らかにしている.波の遡上高及び反射率はsurf similarity parameterによって統一的に整理され,ステップ高を高めることでそれらは総じて低減されること及び緩勾配側で反射率の増加があること,ステップ高を高めることで海岸を占有する面積を小さくすることなどが可能となることが示されている.</p>
著者
福森 匡泰 仲座 栄三 田中 聡 宮里 信寿 本屋敷 涼 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_751-I_756, 2019

<p> 直立護岸は,波を反射させ効率的に越波量を低減させる効果を有する.しかし,砕波した波による護岸衝突時の水塊の飛び出しや飛沫の発生などの問題を有する.また,海岸線の利用という面では,利便性の低下や圧迫感を与えるなどの問題点を有する場合がある.それらの改善策として,直立護岸前面に消波工を設置し,護岸天端高を低減させる場合がある.本研究では,直立護岸前面に独自に開発した消波ブロックを設置する消波工付直立護岸及び遊歩道としてのテラス部を設置するテラス式護岸の提案を行い,それらの護岸に対する越波特性を水理実験及びCADMAS-SURFを用いた数値計算で検討している.検討結果は,消波護岸やテラス式護岸では波の乗り上げ効果により越波量が増えることを示している.しかしながら,海岸線利用という面からは,適宜選択可能な策となっており,実務設計において有用性を与える.</p>
著者
清水 裕真 Abbas KHAYYER 後藤 仁志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_799-I_804, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1

津波や高潮襲来時の流体力による構造物の変形や破壊,タンク内液体のスロッシング現象や船舶のスラミング現象など,流体-構造連成問題(FSI問題)は海岸工学分野に関わるものが多いが,その対策の検討には数値波動水槽の活用が有用である.粒子法は完全Lagrange型数値解析手法の一つであり,大変形を伴う界面の取り扱いに優れる.その特性を活かし,近年様々な完全Lagrange型構造解析モデルおよびFSIソルバーが開発されてきた.しかしながら,これまでに提案された手法はそのほとんどが構造解析に陽解法型のアルゴリズムを用いているため,高Young率構造物の動的解析には極めて微小な時間刻み幅が必要となり,計算コストの増大および連成解析時における流体との時間刻み幅の差異が問題となる.そこで本研究では,高次の時間発展スキームに基づいて導出した陰解法型完全Lagrange型構造解析手法を開発し,非圧縮性流体と高Young率弾性構造物のFSI解析を通して提案手法の検証を行う.
著者
吉野 純 中田 勇輝 古田 教彦 小林 智尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_493-I_498, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

台風1610号は,2016年8月30日午後6時頃に北西進することで統計開始(1951年)以降初めて東北地方太平洋側に上陸した.本研究では,このような特異な進路をとった台風1610号の進路形成メカニズムを解明することを目的として,渦位部分的逆変換法に基づいて,台風周辺の擾乱が励起する指向流ベクトルを渦位偏差毎に分解することで推定した.台風1610号が岩手県大船渡市付近に上陸した時間帯には,台風の西側に位置した上層の寒冷渦が作り出す南東風に加えて,それに伴う積乱雲活動(非断熱加熱)により発達した下層低気圧(湿った正渦位偏差)が作る南風や上層高気圧(湿った負渦位偏差)が作り出す東風が同時に作用することで,約20 m/sの南東風の指向流ベクトルにより北西進したことが明らかとなった.
著者
日比野 忠史 森本 優希 福岡 捷二 植田 彰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_1471-I_1476, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
9

感潮河川では海水の遡上とともに河口から運ばれる有機泥が高塩分下で河岸干潟に堆積している.高塩分下で堆積する有機泥は有機泥,間隙水,流水中に存在するイオンの相互作用により輸送過程における物理運動に強い影響を与えている.本論文ではヘドロ化が進んだ河岸干潟において地盤を形成する有機泥の特性量を評価するためのテクスチャーとなる物理・化学量の個々の特性および相互の関係を考察した.さらに,感潮河川で輸送・堆積する有機泥の基本となる指標とその評価法についてまとめた.提案されたテクスチャーから実河川における有機泥の輸送・堆積状態について推定し,テクスチャーの妥当性を確認した.
著者
水谷 英朗 馬場 康之 平石 哲也 間瀬 肇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_925-I_930, 2018

本研究は,過去に養浜が実施されている南紀白良浜海岸を対象に,海浜地形のモニタリングと各気象イベント毎の短期的な海浜変形特性を現地計測により把握した.現地計測より2017年の6月から9月の期間に高波浪をもたらした6/21低気圧及び台風5号および18号の各気象イベント毎の白良浜の海浜砂の移動実態を捉えることができた.2017年は沖側への養浜砂の流出がそれほど大きくなく,海浜砂の大部分が後浜へ打ち上げられていることが計測土砂量から確認された.また,SWANおよびXBeachを用いた波浪・海浜流の数値シミュレーションを実施した結果,海浜中央部の高波と浜中央部沖地点の海浜流が再現され,北部の権現崎岩礁部域の砕波による運動量輸送により時計回りの海浜流場が形成されることが示された.
著者
宇多 高明 三波 俊郎 高橋 幸一 蛸 哲之 石川 仁憲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_751-I_756, 2016
被引用文献数
8

湘南海岸では,相模川河口テラスの縮小や,茅ヶ崎漁港およびヘッドランドの下手海岸での侵食など,土砂バランスの崩れによる地形変化が各所で起きている.本研究では,既往研究も踏まえてこれらの点について考察を深めたものであり,空中写真に基づく汀線変化解析と1999年以降取得されてきたNMB測量データに基づく地形変化解析を行った.これにより湘南海岸全体における土砂バランスの崩れによる地形変化の実態を明らかにし,その上で課題解決のための土砂管理法について論じた.
著者
遠藤 徹 中野 雄介 板谷 天馬 筏 紀晶 矢持 進
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_1196-I_1200, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
10

It is thought that a salt marsh located at coastal urban area absorbs and emits large amounts of carbon dioxide (CO2). In this study, a field investigation on CO2 budget was conducted at Osaka-Nanko bird sanctuary, and CO2 fluxes were measured at tidal flat, sea surface and reed field by using chamber methods in order to estimate CO2 budgets of the salt marsh. The results of this study were as follows: (1) CO2 fluxes of tidal flat and reed field were one order larger than that of sea surface. (2) It was estimated that CO2 flux emitted from tidal flat was 3.26 g/m2/day and CO2 flux absorbed by reed grass field was 1.53 g/m2/day in October 2013. (3) It was suggested from the result of seasonal change of fluxes that the absorbed amount of CO2 becomes larger on summer than on autumn.
著者
山口 正隆 野中 浩一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.136-140, 2009 (Released:2010-02-09)
参考文献数
5
被引用文献数
2

Two kinds of surface elevation data with a diverse form of spectrum are analyzed to investigate the effect of spectral form on a ratio of the surface elevation-based statistics to the spectrum-based statistics of wave height and period. One is generated by use of a Monte-Carlo simulation and the other is acquired from in-situ measurements. Main conclusions are 1) a proper evaluation for the parameter characterizing the spectral form requires a highly-resolved estimate of spectrum 2) wave height ratio is most closely related to the spectral peakedness parameter Qp and each of the wave period ratios to the spectral width parameter v and 3) the simulation-based ratio indicates an explicit dependency on double-peakedness of the spectrum but the measurement-based ratio shows a weak dependency due to statistical variability.
著者
入江 政安 西田 修三 寺中 恭介 辻 陽平 平澤 充成 藤原 敏晴 中筋 みゆき
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1066-1070, 2010 (Released:2010-11-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3

A field survey and laboratory analyses of sediment quality in the eastern part of Osaka Bay are carried out to clarify their characteristics and influence on the dynamics of hypoxia. Nitrogen, phosphorus and sulfur cycling in the coastal water and sediment are modeled with a focus on the formation of hydrogen sulfide in hypertrophic sediment and its release to the bottom water. In the calculated results the oxygen consumption in the bottom water by the release of sulfide is much larger than the direct oxygen consumption by the sediment in the northern port of the bay. Without the release of sulfide, the hypoxic water area would be estimated to be limited in and near the port area of the head of the bay. The wide spreading of hypoxia in the eastern part of the bay would be contributed largely by the sulfide release.
著者
佐藤 兼太 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_145-I_150, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
11

3次元流体解析による市街地スケールの大規模津波浸水シミュレーションは,計算負荷・コストの点で依然課題があり,京コンピュータなどのHPCIを活用した事例など,限られた環境でしか実現できていない.陽的な解法であることと並列化効率が高いことは,大規模領域における解析には重要な要件であり,その点で格子ボルツマン法(以下,LBM)が注目されているが,自由表面流れ解析において計算が不安定となりやすいことが報告されている.本研究ではLBMで現れる擬似的な圧縮性に注目し,簡便な非圧縮流体モデルを適用することで計算の安定を図った.本研究で提案した手法により時間刻み幅が大きく,従来のLBMでは計算が不安定となる条件においても安定した解析が可能となった.必要な計算量を従来のLBMと比べ,削減することが可能なモデルを開発した.
著者
宮里 信寿 仲座 栄三 田中 聡 福森 匡泰 SCHAAB Carolyn
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_1003-I_1008, 2018

波の入・反射波の分離法には,Healy法をはじめとしていくつか存在する.非線形性の強い波に対するそれらの特性ついてはいまだ十分に議論されていない.CADMAS-SURFを用いた数値計算により,Healy法が小さめの反射率を与えること,その補正として合田によって提案された補正値も大幅な改善には至らないことが示されている.不規則波を対象として提案された合田の入・反射分離推定法の規則波への適用性を調べ,波の非線形性が入・反射分離に影響を及ぼすことを明らかにしている.疑似非線形波を対象とした久保田らの方法が検討され,波高値よりもrms値を用いた方が良い結果を与え,さらに離れた2点のデータを用いる方がより良い結果を与えることが明らかにされている.さらに,これらの結果は横山・水口らのデータと比較され,その有用性が示されている.
著者
福森 匡泰 仲座 栄三 田中 聡 宮里 信寿 SCHAAB Carolyn 下地 涼太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_1009-I_1014, 2018
被引用文献数
2

数値波動水槽CADMAS-SURFは,砕波や越波を伴う波浪場の解析に有用性を示してきている.直立護岸上の越波に関する研究は,古くから行われ,特に合田の越波流量算定図表は実務設計に活用されてきている.最近,合田はEUによるCLASHデータベースを活用し,その見直しを図った.しかし,データのばらつきが大きく,流量係数の詳細な検討が求められている.実験的に護岸上越波時の詳細な流速データを得ることは困難である.本研究は,CADMAS-SURFによる数値計算の有用性を大型実験値との比較で示した上で,直立護岸上越波の流量係数及び流速係数について調べ,それらが護岸上越波の非定常性を示す無次元越波時間によって影響を受けること,さらに波の接近流速の影響を受けることを明らかにしている.
著者
田中 聡 仲座 栄三 SCHAAB Carolyn 福森 匡泰 宮里 信寿 本屋敷 涼
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_1033-I_1038, 2018
被引用文献数
2

合田は,ヨーロッパ諸国が中心として進めたCLASHデータに基づいて,自らが提案した護岸上越波流量推定図表に代わる経験式を提案し,その成果が今後の海岸保全施設の設計・計画に役立つことを期待すると述べている.しかしながら,合田の与えた越波量算定式による推定値と実験値や現地観測値との比較はかなりのばらつきを見せており,現場技術者はその活用に躊躇している.合田の与えた経験式が実際に活かされるためには,現設計法との比較が必須である.本研究は,合田の与えた経験式による推定値と合田の越波流量推定図表との比較を行い,経験式の修正を行っている.さらに,合田の越波流量推定図表との隔たりの要因を,CADMAS-SURFによる数値計算値との比較で明らかにしている.
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_1609-I_1614, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
15
被引用文献数
3

太平洋に直面する徳島・高知沿岸では,繰り返される南海トラフ地震によって,大きな津波被害を受けてきた.同沿岸域では,2011年の東北地方太平洋沖地震で津波被害の大きかった三陸地方沿岸と同じリアス式海岸となっている区間も多く見られる.一方,東日本大震災では多くの神社が津波からの被災を免れたことが知られている.古い歴史を有する神社は地域とともに歩んできた重要な公共空間であり,現在の分布は,過去の大災害等によって淘汰された結果を示しているとも考えられる.こうした社会背景を踏まえ,本研究では徳島・高知沿岸神社の空間分布と南海トラフ地震の津波被災リスクについて検証した.