著者
武村 雅之 諸井 孝文
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-26, 2001 (Released:2010-08-12)
参考文献数
27
被引用文献数
6

1923年関東地震における千葉県の詳細な震度分布を推定するために、当時の地質調査所の被害報告書に書かれている木造住家の全潰数、半潰数、墓石の転倒率などを整理しデータベース化した。地調の報告書には、市町村単位の被害集計よりさらに細かい大字毎の集計値が記載されており、それらを用いて500箇所以上で震度を評価することができた。千葉県は、東京都、神奈川県とともに最も大きな被害を出した地域の1つであり、県内は大きな地震動に襲われた。ここでまとめたデータベースならびに詳細震度分布は、今後の千葉県における地震動予測に役立つことが期待される。
著者
中井 春香 武村 雅之
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_220-7_229, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
14

1945年1月13日に発生した三河地震の特徴としては、東南海地震の約1か月後に発生した地震であること、戦時中であったこと、そして家屋喪失数に対して死者数が多い地震であることがあげられる。飯田(1985)のデータにおける三河地震の被害として一般的に用いられている数値は調査データの最大値の総括であり、市町村単位とする内訳に戻れないことが判明した。このため、1945年1月14日の愛知県警備課による統一的なデータも用いながら、各市町村のデータを算出し震度分布図をGISを用いて作成した。その結果、沖積低地である岡崎平野や矢作川流域では被害が大きく、幡豆山地などの丘陵地に属する地域は被害が小さかった。また、地盤による震度や被害の影響は、東南海地震と類似していたことがわかった。一方、断層のごく近傍では、全潰家屋の割に死者数が特に多く発生している傾向もみられ、断層近傍特有の被害にも注目する必要があるものと考えられた。
著者
杉野 英治 岩渕 洋子 阿部 雄太 今村 文彦
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.4_40-4_61, 2015 (Released:2015-08-24)
参考文献数
28

2011年東北地方太平洋沖地震津波の発生及び東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、原子力発電所の津波リスク評価のためには、将来発生する津波の規模は既往最大を上回る可能性があることを前提とした、確率論的津波ハザード評価手法の高度化が必要である。同地震津波の発生以後、このような概念に基づく津波想定が提案されている。そこで、千島海溝から日本海溝沿いのプレート間地震に想定される津波波源を対象に具体的な適用方法と事例を示し、既往最大を基本とする従来の津波想定と比較することにより、津波想定に係る不確実さの取扱いが確率論的津波ハザード評価結果に及ぼす影響・効果を示す。
著者
Michihiro OHORI Seckin CITAK Takeshi NAKAMURA Minoru SAKAUE Shunsuke TAKEMURA Takashi FURUMURA Teito TAKEMOTO Kazuhisa IWAI Atsuki KUBO Kazuo KAWATANI Sawa TAJIMA Narumi TAKAHASHI Yoshiyuki KANEDA
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.3_95-3_113, 2015 (Released:2015-06-22)
参考文献数
34

We have constructed a shallow underground structural model of Kochi City for an area 10.5 km east-west by 5.5 km south-north with a resolution of 125 m, which could control seismic amplification in the short period up to 1 s. By compiling the geological information given by the Committee of Kochi Geo-Hazard Evaluation (2011), we constructed a multilayered model overlying the engineering bedrock with an S-wave velocity of 700 m/s. Based on our newly developed model, the dispersion characteristics of theoretical surface waves at two sites were calculated and verified by comparison with observed data derived from our microtremor array experiments. The predominant periods along two north-south lines calculated from our model were coincident with previous observations derived from microtremor H/V spectral ratios by Mori et al. (2001). We also conducted a seismic response analysis using the synthesized ground motion data from the Central Disaster Management Council of Japan (2003) as the input motion applied to the basement of the developed subsurface structural model. We confirmed that the area where relatively high seismic intensity was predicted corresponded well with the area that was severely damaged during the 1946 Nankai Earthquake.
著者
仲野 健一 川瀬 博 松島 信一
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1_38-1_59, 2015 (Released:2015-02-25)
参考文献数
51
被引用文献数
2

スペクトルインバージョン手法に基づき加速度フーリエスペクトルから分離抽出された強震動特性の性質について詳細な検討を行った。伝播経路特性としてのQモデルについて既往の研究と比較し、減衰傾向の新たな知見が得られた。また、サイト増幅特性の方位依存性について検討したが、約2Hz以上の高周波域でNS/EW比が2倍 (あるいは0.5倍) 程度になる観測サイトがあることがわかった。分離した震源スペクトルからコーナー周波数fcを読み取り、Brune (1970)の応力降下量および短周期レベルAを計算した結果、川瀬・松尾 (2004)の先行研究との間に顕著な差はないこと、本震と余震の応力降下量には地震モーメント依存性がみられること、壇・他 (2001)の地殻内地震の短周期レベルとは回帰式にもばらつきに対するt検定にも有意な差があること、佐藤 (2003)の短周期レベルとは地殻内地震のばらつきに対するt検定を除いて有意な違いがないことがわかった。
著者
田口 仁 李 泰榮 臼田 裕一郎 長坂 俊成
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1_101-1_115, 2015 (Released:2015-02-25)
参考文献数
34
被引用文献数
4

地理情報システム(GIS)は災害対応の際に有効なツールであるが、災害対応者自らがGIS を活用するために備えるべき要件について検討した研究はこれまで無かった。そこで本研究では、災害対応者が自らGISを利用して効果的に災害対応を行うために、1)地理情報の共有および流通のための標準インタフェース(Web Map Service)を有すること、2)Web-GIS を用いることの2つを満たすGISを提案した。2011年東北地方太平洋沖地震において、災害ボランティアセンターおよび地方自治体に対して、提案した要件を満たしたGIS(eコミマップ)による被災地支援を行った事例を示し、提案した2つの要件の有効性を確認した。
著者
田子 茂 勅使川原 正臣 太田 勤
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.3_21-3_33, 2012
被引用文献数
1

本論文は、中高層SRC造集合住宅の桁行方向の第2次診断法に基づく建物高さ方向の耐震性能の分布を分析し、強度が低い弱点層に損傷が集中する可能性を示す。特定層への損傷集中に影響する要因として、柱梁耐力比、高さ方向の鉛直部材の強度分布を取り上げ損傷集中との関係を検討する。その結果を踏まえ、中高層SRC造建築物において、特定層への大破あるいは中破以上の大きな被害集中を回避することを目的とし、実務的に使いやすい第2次診断法に柱梁耐力比と高さ方向の鉛直部材の強度分布(第2次診断法の<i>C<sub>TU</sub>·S<sub>D</sub></i>の分布)を考慮した耐震診断法(第2、3次診断法)の選定について提案する。
著者
長 郁夫 西開 地一志 柳沢 幸夫 長谷川 功 桑原 保人
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.74-93, 2006 (Released:2010-08-12)
参考文献数
54
被引用文献数
2

近年、著者らの一部は3次元地質構造の簡便なモデル化のために地質構造形成史の知見からモデルを拘束する手法を開発した。本研究では同手法の位置付けを明らかにするとともに、同手法のこれまでの適用例よりも地質学的に複雑な地域 (新潟県中越地方南部地域) のモデル化を試みて手法の有効性を確認する。我々の位置付けでは、同手法は、既存の地質図を3 次元的かつ定量的に再構成するための簡便な手段である。モデルの単純化や地質学的知見の曖昧さを考慮すると、探査データの少ない地域における巨視的なモデル化に有効と期待する。新潟県中越地方南部地域のモデル化については、地質構造形成史で重要と考えられる情報と地質図データ及び比較的少量の探査データを併せて用いることにより大局的な3 次元地質構造をモデル化することができた。このモデルは、地震空白域であり将来の地震発生が危惧される同地域の基礎的な地盤モデルとして役立てられる。
著者
深田 秀実 小林 和恵 佐藤 賢二 川名 英之 増田 智弘
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.3_1-3_20, 2012 (Released:2012-08-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

地方自治体の災害対策本部を対象とした従来の防災情報システムは、キーボードやマウスといった入力デバイスを用いるものがほとんどであり、災害発生時の緊迫した状況下で、正確かつ迅速にシステム操作を行なうためには、情報リテラシーの高い専門職員を配置する必要があった。しかし、自治体における現在の防災体制の中で、情報システムに精通した専門職員の配置を必須とすることは、行財政改革を進める必要がある自治体にとって、容易なことではない。そこで、本研究では、自治体の防災担当職員が災害発生直後の混乱した状況でも、容易に操作することが可能な災害情報管理システムを提案する。本提案システムでは、テーブル型ユーザインタフェースとデジタルペンを用いることにより、被害情報を容易に入力できる操作性を実現している。実装したプロトタイプを用いて想定利用者によるシステム評価を行った結果、デジタルペンでアイコンを入力する操作性や対応履歴閲覧機能について、良好な評価を得た。
著者
川崎 拓郎 村尾 修 諫川 輝之 大野 隆造
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_263-4_277, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では、沿岸部住民の津波避難行動に着目し、2008年と2011年の2度にわたって千葉県御宿町を対象とした避難行動に関するアンケート調査を実施した。そして、想定津波および東日本大震災直後の避難経路についての空間的な比較分析を行い、(1)標高、(2)海岸線からの距離、(3)想定浸水域内の残存者数の観点から考察した。その結果、実際の避難行動における多様性、自動車による避難行動の多さ、避難距離の長さ、浸水域に留まる事例の多さ、などが明らかになった。
著者
藤生 慎 沼田 宗純 高田 和幸 松原 全宏 大原 美保 目黒 公郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_177-4_188, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究では、東北地方太平洋沖地震時に発生した帰宅困難者に対してwebアンケートを実施し、帰宅困難者の基礎特性や帰宅経路などを明らかにした。その結果を集計したところ、火災の危険性や建物の倒壊の危険性が高い地域を経由し帰宅行動がなされていることが明らかになった。また、帰宅困難者を被災地内(都心)で受け入れるための施設の在り方の検討を行った結果、病院では、帰宅困難者が多数発生する一方、出勤困難者に対する対応も必要であることが明らかとなった。
著者
岩城 麻子 藤原 広行
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.4_1-4_18, 2013

広帯域地震動計算のために実用的に広く用いられるハイブリッド合成法においては、低周波数側と高周波数側の地震動がそれぞれ差分法等による決定論的地震動計算手法と統計的グリーン関数法に代表される半経験的・統計的手法によって別々に計算される。このとき低周波数側と高周波数側でそれぞれ全く独立のデータと手法を用いて合成されることになるため、時刻歴波形の経時特性まで含めて両者の整合性を保つことは困難である。本稿では、周波数帯間の地震動特性の関係に着目し、低周波数地震動が持つ情報を利用して高周波数地震動を合成する手法を提案し、関東地域において適用性を検討した。観測地震記録に基づいて各評価地点における加速度エンベロープの経時特性の周波数帯域間の関係性を抽出し、その特徴を関係式として整理した。求められた経時特性を基となる低周波数地震動に掛け合わせ、適当な位相情報を与えることにより高周波数地震動の合成が可能であることを示した。
著者
境 有紀 青井 淳 新井 健介 鈴木 達矢
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.4_14-4_53, 2010 (Released:2011-11-09)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

2008 年岩手・宮城内陸地震を対象として,道路事情により調査できなかったものを除く震度6 弱以上を記録した全ての強震観測点と5 強を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,いくつかの観測点周辺で外壁のひび割れや外装材の落下,屋根瓦のずれといった軽微な建物被害は見られたが,いずれの観測点周辺でも,大破・全壊といった建物の大きな被害はなかった.観測された強震記録の性質について検討した結果,そのほとんどが0.5 秒以下の極短周期が卓越した地震動で,建物の大きな被害と相関をもつ1-2 秒応答は小さく,このことが大きな震度にもかかわらず建物の大きな被害が生じなかった原因と考えられる.