著者
神田 克久 武村 雅之
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.68-79, 2007 (Released:2010-08-12)
参考文献数
20
被引用文献数
6 6

最近、高密度の地点で多くの地震のデータが得られるようになった計測震度をデータベース化して、短周期地震動に関する距離減衰特性や地点による揺れやすさの分析を行った。関東平野では、揺れやすさの尺度である相対震度についてマグニチュード (M) 依存性がみられ、埼玉東部などの低地ではM が大きくなると相対震度が大きくなり、千葉県南部などの丘陵地では逆の傾向が見られた。得られた震度の距離減衰特性や相対震度を用いて、1923 年大正関東地震と1703 年元禄地震の震度インバージョン解析を行い、短周期地震波発生域を求めた。大正関東地震は三浦半島を挟んで2 箇所に短周期地震波発生域があり、その重心は別に求められているアスペリティ (すべりの大きな領域) の終端部にあたる。元禄地震の短周期地震波発生域は、神奈川県から房総半島南部までは大正関東地震に類似し、加えて房総半島南東沖に広がっていることが分かった。
著者
村上 ひとみ 中須 正 島村 誠 後藤 洋三 小川 雄二郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_76-5_96, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
17

本研究では、海外における災害避難関係資料・文献を収集するとともに、その内容を分析し、概要を明らかにする。また、特徴的な研究については、レビューを行う。以上から災害からの避難について海外ではどのような研究がされているかを俯瞰する。また研究にとどまらず政策としての避難対応マニュアルや調査するうえで不可欠となるデータベース等、基礎的な情報についても併せて概説する。
著者
神田 和紘 境 有紀
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.7_38-7_45, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
8

木造建物の全壊といった建物の大きな被害と対応した震度を迅速に計算するために,計測震度の算定に用いるフィルタの周波数特性を修正することを試みた.具体的には,過去に発生した地震動の観測点周辺の木造建物全壊率と対応するようにフィルタの周波数特性を修正した.その結果,フィルタの周波数特性を修正することにより,木造建物の全壊率と対応した震度を迅速に計算できることがわかった.
著者
角田 功太郎 五十田 博 井上 涼 森 拓郎 田中 圭 佐藤 利昭
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1_21-1_33, 2019 (Released:2019-02-27)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

2016年熊本地震において悉皆調査が実施された建物を対象に,2年後の調査を実施した.調査の目的は,被害レベル,建築年,構造種別などと2年後の使用状況の関係を定量化することである.益城町の調査範囲において,約半数が現存しないことがわかった.加えて,当然ではあるが,被災した建物の建築年が新しいほど,あるいは被災した住宅の被害レベルが低いほど,継続的に使用されている割合が高かった.また,継続使用されている建物であっても,そのうちの37%には補修が施されており,外観調査上は無被害と判定された建物でも補修されている例も多くみられた.建替え後の構造は84%が木造であり,階数は平屋建てが最も多く,71%を占めていた.
著者
安田 進 石川 敬祐
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_205-7_219, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

2011年東日本大震災で住宅地が液状化により甚大な被害を受けた関東の諸都市では、地区全体で地下水位を低下させて対策を施す「市街地液状化対策事業」が進められている。ところが、地下水位低下が家屋の液状化被害を軽減する効果に関しては、これまであまり定量的に明らかにされてきていない。そこで、まず過去の地震における被災事例について調べ、被害が生じる限界の水位を調べた。また、下層の液状化が地下水面上の表層の水位上昇に与える影響に関して試算を行った。さらに、戸建て住宅のめり込み沈下量や傾斜角に与える地下水位の影響を残留変形解析によって解析してみた。これらの結果、現在各都市の「市街地液状化対策事業」で目標とされているGL-3m程度まで地下水位を下げることが妥当と考えられた
著者
中井 春香 武村 雅之
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.2_23-2_37, 2017 (Released:2017-05-30)
参考文献数
26

1945年1月13日午前3時38分に発生した三河地震(M=6.8)の特徴としては, 全潰家屋数に対して死者数が多い地震であることがあげられる.その要因を明らかにするために, 戦時中であったこと, 地表地震断層が現れたこと, 1944年東南海地震(M=7.9)の約1か月後に発生したこと等に着目した.本稿では, それらの要因を定量化するため全潰家屋数を死者数で割ったNk値を用いて検討した.三河地震のように震動を主な被害要因とする地震では, 通常Nk値は10程度となるが三河地震はNk=3.1である.戦争の影響についてデータを元に検討した結果, その影響は少なくとも0.4程度Nk値を引き上げることが分かった.次に被害町村を死者数が多い順とNk値が低い順にそれぞれ並べた表を作成した.死者数では震度7となる岡崎平野に位置する町村が上位に並び, 地表地震断層が通った地域が必ずしも上位に並ぶわけではない.一方, Nk値が低い順に並べた場合は地表地震断層が明瞭に現れた町村が上位に多いことが分かった.そこで地表地震断層近傍の町村を一旦除き, 三河地震のNk値を算出すると, Nk値は3.9となり0.8程度Nk値を引き上げることが分かった.さらに上位に並んだ断層近傍地域を細かく見ていくと断層の上盤側の断層から約1kmの範囲で, 縦ずれの断層変位がより多い地域において被害が集中的に発生していた.特に縦ずれの断層変位が多い地域でNk値が1.1から1.2と低いことが判った.このことは, Nk値を小さくする原因として地表地震断層近傍で現れる断層変位や, 震源近傍の特有なパルス的地震動(キラーパルス)などが建物を一瞬にして全潰させて一挙に多くの死者を出したことを示唆するものである.また, 東南海地震が1か月前に発生していたことや発生時刻が真冬の夜中であり迅速な避難をより困難にしたこともその傾向を助長した可能性がある.
著者
年縄 巧 高浜 勉 中山 将史
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_26-1_36, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2014年に不同沈下被害が発生した箇所と1923年関東地震の際に木造家屋の全壊率が80%以上であった河内集落を含む横浜市都筑区池辺町地域において高密度の常時微動測定を行い,軟弱地盤の厚さの分布と地盤震動増幅率を推定し被害との関連性を調べた.ボーリング調査地点近傍で得られた微動H/Vスペクトル比のピーク周期(Tp)とN値50深さ(D)を比較し,TpからDを推定する式を求めた.この式を用いてこの地域のDの分布を推定すると,低地部のほとんどはD=10-15 mであるが,台地際低地北端部のDは15 mを超え,局部的にはDが20 mを超す領域が存在し,2014年の不同沈下発生地点は表層地盤の厚さが大きく変化する領域に位置していることがわかった.また,微動H/Vスペクトル比のピーク値(Ap)から強震スペクトル比(As)を推定し,その面的分布と集落毎の中央値を求めた.1923年関東地震の際の木造家屋全壊率がそれぞれ80%以上,30-50%の河内・川向集落はAsの中央値が5以上,全壊率が10%未満の藪根集落はAsの中央値が3以下であり軟弱地盤の地盤震動増幅が被害を大きくした可能性を示している.しかしながら,河内集落の木造家屋全壊率が特に大きかった理由については地盤震動増幅だけから説明することはできなかった.
著者
高橋 広人 福和 伸夫 岸浦 正樹
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.9, pp.9_46-9_66, 2016 (Released:2016-08-29)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

強震動予測及び液状化評価を目的とした表層地盤のモデル化手法を提示し、名古屋市域を対象に適用した。適用したモデルの妥当性を示すとともに、1944年昭和東南海地震による旧名古屋市の住家被害と地盤条件、震動特性との関係について考察した。表層地盤モデルは38600本のボーリング資料に基づいて9層の地層年代に区分し、地層年代別にN値と土質を標高1m刻みで水平方向に50m×50mメッシュ単位で補間し、これらを累積することで構築した。微動計測に基づくH/Vスペクトルのスペクトル形状や地震応答解析による地震動の増幅に基づいて表層地盤モデルの妥当性を確認した。1944年昭和東南海地震を想定した強震動予測及び液状化評価結果は、連区(学区)別の住家被害と対応がよく、地盤モデルに基づいて被害要因を解釈できる可能性について示した。
著者
森川 信之 神野 達夫 成田 章 藤原 広行 福島 美光
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.23-41, 2006 (Released:2010-08-12)
参考文献数
36
被引用文献数
10 7

異常震域を表現するための距離減衰式に対する補正係数の改良を行った。基準の式をKanno et al.(2005) によるものに変更し、応答スペクトルにも対応するようにしている。海溝軸に替えて、火山フロントまでの距離を導入することにより、一部地域に対して過大評価となっていた問題点を解決するとともに、対象地域を関東・甲信越地方まで拡大した。さらに、基準式では考慮されていない震源特性に関する検討を行った。地震動強さに関して震源の深さ依存性は見られなかったが、プレート間地震とスラブ内地震では明瞭な違いがあることが確認された。そのため、両タイプの地震に対する補正係数も新たに求めた。
著者
Yadab P. DHAKAL Wataru SUZUKI Takashi KUNUGI Shin AOI
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.6_91-6_111, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
37
被引用文献数
7 7

We constructed ground motion prediction equation (GMPE) for absolute velocity response spectra in the period range of 1 to 10 s with the primary aim of providing early warning of long-period ground motions in Japan during moderate to large magnitude earthquakes. We found that the spatial variability of the observed long-period intensities can be reproduced in broad areas within a difference of one intensity by using the methodology proposed in this study that requires the magnitude and distance to be determined promptly.
著者
酒井 周 高橋 徹 中村 友紀子
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1_134-1_149, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
13

梁間方向が9mであるのに対し,桁行方向が最大で84mと非常に大きい辺長比を持つ建物を対象として,強震時及び常時微動の振動観測が長期間にわたって行われた.得られた記録に対して並進振動及び捩れ振動の成分に注目してフーリエ変換を用いた解析を行い,推定される卓越振動数が季節によって変動していることを確認した.さらに,コヒーレンスが低下する現象についても検討を行い,振動性状の詳細について考察を行った.また,比較的短時間の気温変化であっても卓越振動数が変化する例が見られた.
著者
境 有紀 福川 紀子 新井 健介
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.5_21-5_28, 2009 (Released:2011-06-13)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

地震発生直後の面的被害推定,あるいは,地震被害想定をより正確に行うことを目的として,建物の構造種別や層数などの建物種別を考慮に入れた建物群を人口データから構築することを試みた.具体的には,人口が集中する都市部ほど非木造建物,非木造高層建物が増えるのではないかと考え,建物種別を木造,9階以下の中低層非木造,10階以上の高層非木造の3つに分類し,1kmメッシュを対象として,関東圏3万メッシュから人口の大小,夜間人口と昼間人口の比を万遍なく網羅するように20メッシュを選んで調査を行い,そのデータを基に,メッシュ当たりのそれぞれの建物種別の棟数を国勢調査による夜間人口,昼間人口から推定する式を構築した.その結果,いずれの場合も高い精度でメッシュ人口からそれぞれのメッシュの建物種別の棟数を推定できることがわかった.ただし,団地など特殊なケースで,推定値が実際の棟数と異なり結果となり,その解決が今後の課題である.
著者
栗田 哲史 安中 正 高橋 聡 嶋田 昌義 末広 俊夫
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.1-11, 2005 (Released:2010-08-12)
参考文献数
5
被引用文献数
8 3

山地形のような不整形地盤では、地震動の増幅特性が地形の影響を受けることが知られている。不整形地盤に入射した波と内部で反射した波の干渉により、伝達する地震波は複雑な様相を示す。この様な山地形の地震動特性を明らかにするために、横須賀市内の山地において、アレー観測を行ってきている。観測記録はデータベース化され、震動特性の分析に活用されている。本研究では、この山地形を対象として観測記録の分析及び3次元有限要素法による数値シミュレーションを実施した。観測記録を良く説明できる適切な解析モデルを作成し、山地形の増幅特性を評価することを目的としている。検討の結果、山地形を忠実にモデル化することによって観測記録を良く説明できるシミュレーションが可能となった。更に同モデルを用いて、山地形に地震波が入射した時に地震動がどの様な特性を示すのかを解析的に評価した。
著者
藤本 一雄 翠川 三郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.2_1-2_11, 2010 (Released:2011-07-27)
参考文献数
14
被引用文献数
9 7

地震動強さ指標(PGA, PGV, PGA×PGV)から計測震度をより精度良く推定することを目的として、1995 年兵庫県南部地震以降に震度5 強以上を観測した国内の20 地震での記録を用いて、地震動強さ指標と計測震度の関係に対するマグニチュードの影響について検討した。さらに、高震度域での地震動強さ指標と計測震度の関係に対する回帰式として、1 次式と2 次式のどちらの適合度が高いかについて、AIC(赤池情報量規準)に基づいて検討した。これらの結果を踏まえて、各種の地震動強さ指標とマグニチュードを用いて計測震度を推定する関係式を提案した。
著者
鳥澤 一晃 松岡 昌志 堀江 啓 井ノ口 宗成 山崎 文雄
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.5_98-5_118, 2021 (Released:2021-11-30)
参考文献数
52

本研究では,2016年熊本地震の熊本県益城町および宇城市における罹災証明データを統合し,推定地震動分布と組み合わせて,構造別・建築年代別の建物被害関数を構築した.相関係数はすべての分類で0.9前後の強い正の相関を示し,広範囲の地震動で熊本地震の実被害率を説明可能である高精度な被害関数が得られた.木造建物を対象として,既往の被害関数と比較を行ない,被害関数構築に使われた被害調査データの違いや地震が発生した地域の違いなどに基づき,予測結果の傾向の違いやその要因を考察して,本研究で構築した建物被害関数の妥当性について検証した.
著者
塩浜 裕一 坂本 宏昭
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_324-7_334, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
10

水道配水用ポリエチレン管は、ポリエチレン材料と一体構造管路の特性により、高い耐震性を持っている。ここでは、管に使用されているポリエチレンの特性、ポリエチレン管による一体構造管路の耐震計算例、地震動や地盤変状を想定した耐震実験及び東日本大震災などの大地震での被害調査などについて述べる。
著者
山田 真澄 溜渕 功史 WU Stephen
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.4_21-4_34, 2014 (Released:2014-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3

現在、気象庁が用いている緊急地震速報の処理には、気象庁の観測網を利用する処理と、Hi-netのデータを用いた着未着法の2つの処理系統がある。これらは独立して行われ、それぞれ計算結果を比較して緊急地震速報に使用している。本研究では、より高精度、高速の緊急地震速報を実現するため、気象庁観測網とHi-netの統合処理を検討する。我々は、Hi-net 速度計に帰納的な方法で機械補正及びハイパスフィルタ処理を行い、気象庁の機械式地震計の応答と揃えた。また、Hi-net速度計が飽和する問題についても検証し、震央距離10km、深さ10kmの場合マグニチュード5.2程度まではP波が飽和せず使用可能である事を示した。Hi-netの地震計データは、適切なフィルタ処理により気象庁の地震計データと併用することが可能である。2つの観測網の統合処理によって、内陸部では平均3.6秒ほど警報発表時間が向上する。
著者
山田 真澄 山田 雅行 福田 由惟 スマイス クリスティン 藤野 義範 羽田 浩二
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1_20-1_30, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

我々は、2011年長野県北部の地震(Mj6.7)の震源域で木造建物の全棟調査及び高密度の常時微動計測を行った。木造住家の全壊率は、長野県栄村の青倉地区と横倉地区で30%を超えており、観測記録の得られている森地区では10%以下であった。また、震源近傍で得られた地震観測記録と常時微動記録から青倉地区と森地区での強震時の地震動を推定した。推定された地震動は、地区の中の揺れやすさを反映することができ、その特徴的をとらえた分布を示した。推定した地震動(PGA, PGV)と木造建物被害率との相関は概ね良く、被害分布と矛盾しない地震動分布を推定できたことを示している。本研究で求められた被害率曲線では、150cm/sを境にして木造建物の倒壊率が急増し、倒壊率が半数を超える結果が得られた。
著者
若松 加寿江 先名 重樹
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.2_124-2_143, 2014 (Released:2014-05-23)
参考文献数
42
被引用文献数
2 1

本論文は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって東北地方に発生した液状化とその被害、および液状化地点の土地履歴、微地形区分について述べている。東北地方で液状化が確認された市区町村は、東北6県63市区町村に及んだ。最も液状化が多く発生したのは、宮城県、次いで福島県、岩手県である。青森県、秋田県、山形県でも局所的に液状化被害が起きた。液状化発生地点は、北上川、鳴瀬川、吉田川、江合川、阿武隈川などの大河川の沿岸に集中していた。東北地方は、関東地方に比べて埋立地が少なく、海岸部は津波で浸水したこともあり、埋立地で確認された液状化は少なかった。仙台市では丘陵地帯の造成宅地の谷埋め盛土部分での液状化被害も多かった。宮城県の大崎平野には池沼の干拓地が多く存在するが、これらの旧池沼には液状化の発生は確認されなかった。
著者
山崎 泰司 瀬川 信博 石田 直之 鈴木 崇伸
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.5_55-5_68, 2012 (Released:2012-11-07)
参考文献数
15

本論文は、東日本大震災に際し、日本電信電話株式会社における電気通信土木設備の被災状況を報告するとともに、被災状況の傾向分析により、これまで実施してきた耐震対策の有効性を確認したものである。阪神淡路大震災と比較した場合、津波被害を除く地震動及び路面変状等による被災率は、東日本大震災の方が低い傾向にあることが確認できた。また、今後予想される首都直下型地震、東海・東南海・南海地震を想定した耐震対策については、公開されている地盤情報に基づき被災しやすい箇所を想定することが可能であることが確認できた。