著者
正月 俊行 翠川 三郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.6_1-6_11, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

長周期地震動により超高層建物で大きな揺れが発生すると、家具が大きく滑動して周囲の家具や壁と激しく衝突し続ける危険な状態が生ずる可能性がある。このような室内被害と床応答の大きさの対応関係を明らかにしておくことは被害軽減策を考える上で重要であるが、大きな変位の揺れに対して複数の家具や壁の衝突等を考慮した上で、定量的に検討した研究はみあたらない。そこで、超高層住宅の一部屋を想定して家具群の地震時挙動をシミュレーションして室内被害を予測し、室内被害の様相と床応答加速度の大きさの対応関係について整理した。その結果、1次モードの揺れが卓越する超高層住宅上階では、i) 床応答加速度が200cm/s2程度以下の場合はほとんどの家具は動かず、ii) 200~300cm/s2程度になると背の高い家具が倒れ始め、iii) 300~450cm/s2程度では、転倒した家具も含めて多くの家具が滑動するが、滑動量は小さく、部屋のレイアウトもあまり崩れないのに対し、iv) 450 cm/s2程度以上になると、固定されていない家具は周囲の家具や壁と激しく衝突しながら滑動する危険な状況が長時間続く結果となった。また、シミュレーションと簡易な室内被害評価手法の結果を比較し、想定する床応答加速度が大きな場合は、簡易な手法による評価結果が過小となることも指摘した。
著者
戸松 誠 岡田 成幸
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.2_1-2_19, 2011 (Released:2012-01-24)
参考文献数
24
被引用文献数
3

本研究は活断層による都市直下地震を対象に、36パターンの断層パラメータを設定して実施された複数の被害評価結果に基づき、自治体が最優先すべき想定地震を決定するための手法を提案するものである。防災対策項目を構造化し、防災対策を実施する自治体関係部局に対して、階層分析法(AHP:Analytic Hierarchy Process)を応用し防災対策項目の重要度評価を行う。さらにこの重要度と複数の被害評価結果を用いて、複数の想定地震の優先度を求め、優先地震を決定する。
著者
中村 亮一 鶴岡 弘 加藤 愛太郎 酒井 慎一 平田 直
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_1-1_12, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
15

関東地方には約300点の加速度計から構成される高密度なMeSO-netが展開されており,2008年から連続波形記録が蓄積されている.これら高密度観測記録を用いることで,より高分解能の三次元減衰構造を求めることができることが期待される.ただし,各地震計は地中約20mの深さに設置されており,観測波形記録には地表からの反射波の影響が含まれると考えられるため,これらの影響を考慮してゆく必要がある.そこで,まず波形記録のスペクトルに現れる特徴を調べた.その結果,地中設置のためスペクトルに谷が形成されていることが確認できた.次に,MeSO-netとK-NET及びKiK-net記録を用いた三次元Q値とサイト増幅特性の同時インバージョンを行い,地中設置による地盤増幅特性への影響について解析を実施した.ここで,地盤増幅は卓越周期からグループ化し,それぞれのグループで同じ増幅をもつと仮定する手法であり,K-NET及びKiK-netの地表観測地点は8グループに分け,MeSO-netの地中記録は,それとは別の2グループに分けた.その結果,減衰構造は先行研究と整合した結果が得られた.地中設置の場合でも,その増幅率を適切に考慮することにより減衰構造を求めることができることを確認した.また,平均的にみて地中記録の増幅特性は地表の岩盤サイトに類似しており,地表の地盤の差異による影響に比べて小さいことがわかった.
著者
村田 幸一 宮島 昌克
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.27-42, 2007 (Released:2010-08-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

水道供給システムでは, 地震が発生した直後, システムに物理的なダメージが無くても急激な流量増加と水圧減少という異常挙動を発生することがある.この現象は一時的であるものの, 発生中は水道供給システムを機能低下させることがある.本論文では, この影響について観測結果を報告するとともに, これらの原因と考えられる受水槽のスロッシングについて, 観測データから因果関係を解明した.さらに, 大阪市で観測された地震波形を用い, 受水槽のスロッシングによる水面最大変位と地震動の振動数特性との関係を分析するとともに, 発生が予想される東南海・南海地震についても, 予測地震動を利用して水道供給システムへの影響を分析した.
著者
源栄 正人 ツァンバ ツォグゲレル 吉田 和史 三辻 和弥
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.5_117-5_132, 2012 (Released:2012-11-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では、2011年東北地方太平洋沖地震で大きな被害を受けたSRC造9階建て建物を対象に、地震時とその前後における振幅依存振動特性の分析を行うとともに、実観測記録に基づく動的履歴特性を分析した。ウェーブレット解析に基づく倍調波成分の励起の確認により浮き上がり振動を起こしていたことを示唆し、被害状況とも調和することを示した。また、竣工以来40年に及ぶ微動レベルから強震動のレベルの長期モニタリングデータに基づく振幅依存振動特性について整理分析を行った。
著者
瀬﨑 陸 丸山 喜久 永田 茂
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.6_244-6_257, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
23

本研究では, 車載カメラから取得した画像から, 地震による道路被害を深層学習によって自動で抽出することを目的としている.あらかじめ目視で被害の有無を分類した教師用画像を使用し, それらを畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で深層学習し, 画像判別モデルの作成を行った.この画像判別モデルに学習に使用していない精度評価用画像300枚を判別させたところ, 道路閉塞の判別精度は87%, 無被害の判別精度は90%と高かったが, 道路被害の判別精度は66%とやや低かった.この結果を踏まえて, 地震直後の利用を想定した条件設定を行い, 道路変状の自動抽出シミュレーションを行った.本研究の手法は地震後の道路被害の早期把握に有効と考えられ, 道路管理者の震後対応に貢献できる.
著者
星 幸男 久田 嘉章 山下 哲郎 鱒沢 曜 島村 賢太
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.2_73-2_88, 2010 (Released:2011-07-27)
参考文献数
7
被引用文献数
6 5

近年首都圏に建つ超高層建築では巨大地震に対する対策の重要性が指摘されている。巨大地震に対する被害想定や被害低減案を示すには、地震時における正確な振動性状の把握が不可欠である。本論文では新宿副都心に建つ最高高さ143mの超高層建築物である工学院大学新宿校舎を対象とした観測記録および立体フレームモデル解析結果の比較検討による振動性状の評価を示す。はじめに常時微動観測および人力加振観測より得られた固有周期およびモード形を表す変位振幅図を立体フレームモデル固有値解析結果と比較を行い両者が一致する事を確認した。続いて対象建築物の強震観測システムより得られた地震観測記録と立体フレームモデル応答解析結果との比較を行い両者が良い対応を示す事を確認した。解析に用いる減衰は人力加振観測より算出した減衰および超高層建築に一般的に用いられる、初期剛性比例減衰の2種類を用い比較検討を行った。これより初期剛性比例減衰では高次モードの減衰を過大に評価している事を確認した。さらに、モーダルアナリシスを用いた最大応答値の評価や、観測記録の振幅レベルによる固有周期の変化についても考察した。
著者
大原 美保
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_2-5_16, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
21

東日本大震災後以降、多くの自治体が「災害・避難情報伝達手段の多層化」に取り組みつつある。災害・避難情報伝達手段には、受信者の状況に関わらず情報を伝達可能であるPUSH型の手段と、受信者側で何らかのアクションを行わないと情報を閲覧できないPULL型の手段があり、両者の効果的な活用が必要である。本研究では、首都圏の自治体へのアンケート調査を行い、自治体におけるPUSH型及びPULL型の災害・避難情報伝達に関する現状と今後の課題に関する分析を行う。前半ではまず、自治体での各種伝達手段の利用状況を概観する。後半では、近年普及が目覚ましい携帯電話を用いた情報伝達に着目し、PUSH型の手段である緊急速報メール(エリアメール)と、PULL型の手段である住民登録型のメールサービスを比較した上で、利用状況・発信内容の違いや今後の課題を明らかにする。
著者
染井 一寛 浅野 公之 岩田 知孝 宮腰 研 吉田 邦一 吉見 雅行
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.6_42-6_54, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1

2016年熊本地震および一連の地震活動による熊本県および周辺177地点での強震記録に対してスペクトルインバージョン法を適用し, 震源・伝播経路・サイトの各特性を分離した.地震基盤から地表までのS波サイト増幅特性は, 平野や盆地内の観測点では他点に比べ1 Hz付近で大きな値を示した.分離した182地震(MJMA: 3.0-5.5)の震源スペクトルから推定した応力降下量には, 震源深さ依存性が見られた.また, 分離したQs値は, 0.5-10 Hzの周波数帯域でQs=73.5f0.83とモデル化された.
著者
加藤 研一 宮腰 勝義 武村 雅之 井上 大榮 上田 圭一 壇 一男
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.46-86, 2004 (Released:2010-08-12)
参考文献数
125
被引用文献数
3 8

内陸地殻内で発生する地震を対象として、既存の活断層図等の文献による調査、空中写真判読によるリニアメント調査、現地における地表踏査等の詳細な地質学的調査によっても、震源位置と地震規模を前もって特定できない地震を「震源を事前に特定できない地震」と定義し、その地震動レベルを震源近傍の硬質地盤上の強震記録を用いて設定した。検討対象は、日本およびカリフォルニアで発生した計41 の内陸地殻内地震である。地質学的調査による地震の分類を行い、9 地震12 地点の計15 記録 (30 水平成分) の強震記録を、震源を事前に特定できない地震の上限レベルの検討に用いた。Vs=700m/s 相当の岩盤上における水平方向の地震動の上限レベルとして、最大加速度値450 cm/s/s、加速度応答値1200cm/s/s、速度応答値100 cm/s が得られた。
著者
高尾 誠 谷 智之 大島 貴充 安中 正 栗田 哲史
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.2_96-2_101, 2016 (Released:2016-02-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

確率論的断層変位ハザード解析手法は、地表地震断層の変位の量がある値を超過する確率を評価する手法であり、日本においては、高尾ほか(2013)および高尾ほか(2014)によって各種評価式が提案された。これらの論文では、わが国における地震時の地表地震断層の変位量に関する調査結果、模型実験結果および数値解析結果を基に評価式が策定されているが、確率論的断層変位ハザード解析の先駆者であるYoungs et al.(2003)に倣った部分もあった。本論文では、確率論的断層変位ハザード解析手法における副断層の断層変位量を評価するための確率密度関数について、最尤推定法を適用してそのパラメータの見直しを行ったので報告する。
著者
秦 吉弥 村田 晶 野津 厚 宮島 昌克
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_60-2_77, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2 3

2011年東北地方太平洋沖地震の翌日に発生した2011年長野・新潟県境地震では、震源域を中心に強い地震動が数多く観測された。震源近傍の長野県栄村などでは、住家被害などが多発しており、被災地点の地震動を推定することは非常に重要である。そこで本研究では、栄村横倉集落での余震観測結果などに基づいて、当該地点におけるサイト特性を評価した。そして、サイト特性置換手法を用いて、栄村横倉集落での地震動を推定した。さらに、既往の大規模地震による強震観測記録との比較検討を行い、栄村横倉集落における推定地震動の特徴についても言及した。
著者
土岐 憲三 岸本 英明 古川 秀明 酒井 久和
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.45-59, 2007 (Released:2010-08-12)
参考文献数
23
被引用文献数
3 4

京都盆地に点在する文化遺産に対する防災対策を目的に、花折断層を想定地震とした京都盆地全域の強震動予測を3次元非線形有限要素解析により行った。解析では、絶対応答変位による定式化、共役勾配法、修正Newton-Raphson 法、並列計算を導入し、計算機資源および計算時間を節約した。京都盆地全域の非線形堆積地盤モデルに対して、シナリオ地震における基盤岩での強震動予測波形を多点異入力し、地震動評価を行った。検討の結果、文化遺産の集積密度の大きい東山山麓をはじめ、計測震度7の領域が京都市の第3次被害想定の計測震度分布よりも大きくなり、震源、深部地盤構造、堆積層の不整形性、土の非線形性を同時に考慮することの重要性が示された。
著者
高田 一 佐藤 康頼 松浦 慶総
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.5_33-5_43, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
10

本研究では、車両の1/10模型の停止時あるいは走行時に正弦波加振し、脱線させ、脱線挙動、およびそのメカニズムについて解析を行った。さらに地震波形の振動特徴が違うことを考慮し、十勝沖地震、新潟県中越地震、能登半島地震、新潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震の地震波形を用いて、各地震波形の周波数特性の解析、および脱線挙動、脱線限界について検討した。その結果、走行中の方が停止中に比べて脱線確率が高く、また地震波加振の方が正弦波加振より脱線限界値が低いことが分かった。さらに地震波の周波数特性により、共振状態に近いと脱線限界値が走行中の方がばらつき、遠いと停止中の方がばらつくことが分かった。
著者
河合 荘景 佐治 斉
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.46-58, 2008

大規模な地震災害直後に被災地において救助・支援活動を行うためには、車両の移動経路を確立することが必要となる。そのためには広域道路情報を早期に迅速に把握することが必要となる。この目的のため、撮影時に災害による影響を受けにくく、広域に渡り早期に情報を得られる航空画像を用いることは有効である。本研究では、地震災害発生後に撮影された航空画像とディジタル地図を用いて、都市部における建物倒壊による道路閉塞領域を抽出する手法を提案する。具体的には、エッジや色情報を用い、道路被害や建物倒壊が発生している場所を抽出し、それらの隣接関係を用いることにより高精度に道路閉塞状況を抽出するものである。提案手法に基づき計算機上にソフトウェアを作成して実際の航空画像を解析し、手法の有効性を示した。
著者
高浜 勉 翠川 三郎
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.42-57, 2009

1978年宮城県沖地震、1995年兵庫県南部地震、2004年新潟県中越地震による鉄道構造物の被害資料を収集・整理し、被害発生地点を震度分布と重ね合わせ、計測震度とメッシュ単位での鉄道構造物の被害率との関係を地形・地盤分類ごとに整理した。さらに被害率の傾向が類似した地形・地盤分類を統合し、震度4~7で適用可能な被害関数を構築した。その結果、鉄道構造物の被害は震度5強程度から生じ始めること、被害率は山地・丘陵や谷底低地などで高いことを確認した。
著者
翠川 三郎 野木 淑裕
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.2_91-2_96, 2015 (Released:2015-05-25)
参考文献数
6
被引用文献数
5

地盤の増幅度を推定するためのパラメータとしてよく用いられる深さ 30m までの地盤の平均S波速度 VS30 を深さの浅いデータから推定する方法について、日本の都市域でのデータを中心とした 2099 地点での S 波速度検層結果を用いて検討した。浅い深さまでを対象とした平均 S 波速度と深さ 30m までの値との関係にはかなりのばらつきがみられることから、対象とした深さの最深部の S 波速度の影響も考慮した関係式を求めたところ、既往の式に比べ、推定誤差が小さく、より汎用的な式を得た。
著者
久保 久彦 鈴木 亘 㓛刀 卓 青井 真
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.4_13-4_29, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
20

2015年小笠原諸島西方沖の地震をはじめとする小笠原諸島周辺の深発地震による地震動の特性把握および予測を目的として,本研究では強震動指標の空間的な分布やその距離減衰の様相を調べた上で,深発地震による地震動の距離減衰式を構築した.深発地震による地震動の距離減衰は地域毎に様相が異なっており,東日本前弧,東日本背弧,西日本および伊豆半島から伊豆・小笠原諸島にかけた地域の順で各地域への波線経路上での内部減衰と散乱減衰の双方またはいずれかが弱いと考えられる.これを踏まえて本研究では各地域で異なる非幾何減衰係数を持つ距離減衰式を提案している.また深発地震時の地盤増幅を評価した上で,過去の地震を対象とした地震動予測を試みた.
著者
西川 隼人 宮島 昌克
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4_94-4_103, 2012

本論文では著者らが簡便に地震動スペクトル特性を評価できる指標として提案している最大加速度比を2011年東北地方太平洋沖地震の観測記録を対象に求め、その適用性を調べるとともに、木造家屋応答を評価する際に利用できるかを検討した。震度5弱以上の地震観測記録を用いて、最大加速度比とフーリエスペクトルの振幅特性の関係を求めるとともに、周期0.5~1秒、1~2秒の地震動指標の推定への最大加速度比の有用性を調べた。その結果、周期1~2秒の地震動指標を推定するうえで最大加速度比が有効であることが明らかになった。続いて、性能等価加速度応答スペクトルによって木造家屋の応答変形角を評価し、最大加速度比との対応を調べたところ、降伏せん断力係数が0.3、0.5の場合、最大加速度比と応答変形角に良好な相関関係が見られた。
著者
武村 雅之 諸井 孝文
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.55-73, 2002 (Released:2010-08-12)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

1923 年関東地震における埼玉県の詳細な震度分布を推定するために、当時の地質調査所の被害報告書に書かれている木造住家の全潰数、半潰数、地盤の液状化発生地点などを整理しデータベース化した。地調の報告書には、市町村単位の被害集計よりさらに細かい大字毎の集計値が記載されており、それらを市町村単位の集計値に加えて震度7に達する地域を特定することができた。震度の評価結果が地下構造に密接に関連していることが明らかになった。過去に埼玉県が実施した地震危険度評価の結果とも比較し、今後の地震危険度評価のあり方にも言及する。