著者
丸尾 智実 河野 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.104-111, 2014
被引用文献数
4

<b>目的</b> : 家族介護者への認知症の症状に対応する自己効力感向上プログラム (SE向上PGM) を実施しその効果を評価した.<br><b>方法</b> : 対象者はA県下の居宅介護事業所の利用者の家族であり, 介入群 (IG) 32名, 対照群 (CG) 25名の計57名である. 認知症に関する情報提供, 介護者交流, リラクセーション体験を共通PGMとして両群に, 加えてSE向上PGMをIGに実施した. 評価は介入前, 介入直後, 介入2か月後の質問紙調査とし, 一次アウトカムを介護自己効力感, 二次アウトカムをBPSDの出現の有無と負担感, 介護負担感, 抑うつ, 認知症の知識量とした.<br><b>結果</b> : 認知症の症状に対応するSEの得点がIGはCGに比べて介入前から介入2か月後の間に有意に向上した. また, 年齢, 性別, 利用者の日常生活自立度判定を共変量とした共分散分析では, IGはCGに比べて認知症の症状に対応するSEが有意に向上した.<br><b>結論</b> : SE向上PGMが認知症の症状に対応するSEを向上させる可能性が示唆された.
著者
末松 篤樹 野口 善令 横江 正道 吉見 祐輔 久田 敦史 宮川 慶 吉田 心慈 吉田 紗衣子 渡邊 剛史 井村 洋
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.36-38, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
4

American College of Physicians (ACP) 日本支部年次総会2013において, 「誰も教えてくれなかった診断学・中級編—鑑別診断を絞り込む」をsmall group discussionとして開催した. 症例提示を行い, 鑑別診断から絞り込む思考プロセスを体験するために, マインドマップを利用して疾患の全体像を把握する試みを行った. 参加者からは概ね好評であり, 診断推論を学習する機会を提供し, 診断推論の指導方法も広めることができた. 今後もこのような企画を学会で行い, 診断推論を学ぶ環境を整えていくことが重要と考える.
著者
山村 恵子 倉田 寛行 重野 克郎 長田 孝司 足立 雄三 長谷川 嘉哉
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-48, 2011 (Released:2015-11-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

目的 : 診察時に医師がワーファリン服用患者の最新のPT-INR (Prothrombin Time-International Normalized Ratio : PT-INR) と服薬状況を把握するため, クリニックと薬局の間でPT-INRモニタリング情報共有システムを構築し, システム機能を検証する. 方法 : 患者は医療機関受診前に薬局でPT-INR簡易迅速測定器にてPT-INR自己測定する. 薬局薬剤師はPT-INR, 服薬状況を確認し施設間連絡票 (連絡票) を作成する. 医師は患者から提出された連絡票を参考に診察, 処方を行ない, 連絡票に診察情報を記載し患者に返す. 薬剤師は薬局を再訪した患者が持参した処方せん, 連絡票に基づき調剤, 服薬指導を行なう. 結果 : 薬局にて患者の誤った思い込みによるコンプライアンス不良例を抽出できた. 患者情報の共有により処方量変更なく, 服薬指導にて治療域に到達した. 結果 : 診察時に最新のPT-INR値を患者・医師・薬剤師が共有する本システムは, 通院患者のワーファリン処方量調節の迅速化に有用であり, 患者の利益に寄与すると考えた.
著者
沢崎 健太 星川 秀利 宮崎 彰吾 向野 義人
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.260-264, 2014

<b>目的</b> : 非侵襲性の微細突起による皮膚刺激を用いて, 大学生の便秘に及ぼす影響を検討した.<br><b>対象</b> : 便秘の事前調査を回収できた280名の内, 研究趣旨に同意が得られた17名とした.<br><b>方法</b> : 微細突起を耳甲介腔に各自貼付するS群 (9名) とプラセボP群 (8名) を封筒法により無作為に割付け, 便秘 (CAS-J) , 体重, 体脂肪率, 血圧の評価を行った.<br><b>結果</b> : S群では介入開始前と比較して研究終了後にCAS-Jが有意に低下 (P=0.02) したが, P群では有意な差はなかった. 両群共に体重, 体脂肪率, 血圧は研究終了後に有意差はみられなかった.<br><b>結論</b> : 本研究は耳甲介腔への微細突起による非侵襲性の皮膚刺激が便秘の改善傾向, 特にセルフケアの一手段として活用できる可能性を示唆する.
著者
小糸 秀 川本 龍一 鈴木 萌子 上本 明日香 熊木 天児 二宮 大輔 阿部 雅則
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.214-220, 2015 (Released:2015-09-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的 : 近年, 高齢化が進む我が国で, 単に疾患の治療だけではなく生活の質を高めることが重要視されている. 今回, 地域在住者を対象として主観的健康感と平均3.8年後の死亡との関係を検討した.方法 : 2008年度に地域在住の2657名を対象に自記式アンケート調査を郵便法にて実施し, 住民基本台帳を基に平均3.8年後の死亡との関係について検討した. 調査項目は, 死亡に関わる背景因子として, 性別, 年齢, 健康状況 (心脳血管疾患既往歴, うつ状態, 主観的幸福感, 主観的健康感) , 基本的日常生活動作 (BADL : 歩行, 食事, 排泄, 入浴, 整容, 移動を全介助から完全自立まで4段階で評価) , ライフスタイルとして老研式活動能力指標 (TMIG : 手段的自立, 知的能動性, 社会的役割) を用いた.結果 : 1825名, 男性767名 (平均年齢 : 67±13歳) , 女性1058名 (平均年齢 : 68歳±11歳) が分析可能であり, 2008年から2012年までに91名 (5.0%) の死亡が確認された. 主観的健康感に影響する背景因子について検討したところ, 年齢, 心脳血管疾患既往歴, うつ状態, 知的能動性, 主観的幸福感が有意な関係を示した. さらに主観的健康感はロジスティック回帰分析より死亡の有意な独立説明変数であることが示された.結論 : 自分の健康状態に対してどのように感じているのか, どう認識しているのかは大切であり, 物理的に目に見えないものではあるが, 予後を予測する指標の1つとして考えられる.
著者
森田 喜紀 神田 健史 山本 祐 古城 隆雄 小松 憲一 梶井 英治
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.363-365, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
1

自治医科大学地域医療学センターは, 平成25年度より栃木県小山市で始まった「小山の地域医療を考える市民会議」の活動を行政と共に支援してきた. 行政・医療者・市民が市民会議で担う役割を明確にし, とくに市民が無理なく市民会議の主役を担えるように活動の企画や運営の支援を行ったことが, 市民の意識変化や市民会議の活性化に繋がったと思われた.
著者
西村 真紀 大野 毎子 小崎 真規子 片岡 仁美 川島 篤志 早野 恵子 村田 亜紀子 森 敬良
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.346-349, 2014 (Released:2014-12-24)

日本プライマリ・ケア連合学会は, 2012年8月に系統的キャリア形成支援を目的に女性会員支援委員会を設立した. 西村真紀委員長以下5名の委員により, 学会員の現状把握, 学術大会・セミナーでの定例企画開催, 託児所の円滑な運営が行われてきた. 2014年度より委員を8名へ増員, 名称を2014年9月男女共同参画委員会へ変更し男女共同参画に関する要望の作成を進めている. 概要につき報告する.
著者
梶原 理絵 乗松 貞子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.5-9, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
11

目的 : 覚醒度に及ぼす背面開放端座位の影響を, 自律神経機能および大脳機能から検討し, 加えて背面開放端座位における指先圧の有無の影響も考察することである.方法 : 健常成人女性20名を対象に安静仰臥位と背面開放端座位における大脳機能, 自律神経機能を, 2007年10月から11月に測定した.結果 : 被験者は平均25.8±4.1歳であった. 背面開放端座位は安静仰臥位よりも, 脳波のβ波含有率, 心拍数, 拡張期血圧値が高値を示し, 副交感神経活動は低値を示した. また, 指先圧の有無による背面開放端座位の効果は, すべての指標において有意差が認められなかった.結論 : 背面開放端座位は, 自律神経機能のみならず大脳機能においても覚醒度の上昇に効果的な姿勢であることが示唆された. また, 手掌接地した背面開放端座位で, 指先に力を入れた状態と入れない状態を比較すると, 大脳機能, 自律神経機能からは覚醒度に差は認められなかった.
著者
吉村 学
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.353-354, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
1

担当患者をもち, チームの一員としての役割が与えられ, ロールモデルである指導医からのフィードバックやスタッフからの学びによって, 臨床的な自信と患者を診る喜びが生まれる. 実習成功の秘訣は学習者のみならず, 患者にとっても指導医にとってもメリットがあるように工夫することである. 今回は15のコツを紹介した. 患者, 指導医, スタッフにとって具体的なメリットが出てくることが多い. より長い期間の実習にてより効果が大きくなる. その経験の積み重ねはよりよい学習環境の構築につながる.
著者
竹中 裕昭 藤原 靖士 朝倉 健太郎 武田 以知郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.109-113, 2012 (Released:2012-10-05)
参考文献数
10

要 旨目的 : 関西の家庭医が行っている地域・コミュニティアプローチの具体的内容とゴールを明らかにすること. 方法 : 対象は, 関西家庭医療研究会または奈良県家庭医療研究会 “万葉衆” の会員. フォーカスグループディスカッションを行い, 発言を記録した上で分析を重ね, 参加者チェッキングにより真実性の確保に努めた. 結果 : 関西の家庭医の地域・コミュニティアプローチは, 1. 日常診療, 2. 自分の責任エリアの明確化, 3. 医師の地域への参加と住民による医師の品定め, 4. キーパーソンと各人のやる気の評価, 5. 課題への取り組みに対する一歩引いたところからの支援, 6. 成果と達成感の評価という6つのステップから構成されていた. そのゴールについては, 住民の自律性という説と, ゴールなどないという説とに別れた. 結論 : 今まで明示されなかった関西の家庭医特有の地域・コミュニティアプローチが存在した.
著者
坂戸 慶一郎 松島 雅人 川崎 彩子 横田 祐介 岩上 真吾 佐藤 裕美 田中 忍 平塚 祐介 竹内 一仁
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.104-108, 2012 (Released:2012-10-05)
参考文献数
10

要 旨目的 : 地域中規模病院における経皮内視鏡的胃瘻造設術 (percutaneous endoscopic gastrostomy, 以下「PEG」) 施行患者の長期生存率を明らかにする. 対象・方法 : 2004年1月1日∼2006年9月1日の期間にあおもり協立病院にてPEGを施行した患者を対象とし, 過去の診療録を用いて調査した. 累積生存率を生命表分析 (Kaplan-Meier法) にて推定し, その95%信頼区間を算出した. 後ろ向きコホート研究である. 結果 : 対象者332名, 平均年齢77.5±9.5歳 (中央値78歳). 24名は転帰不明であり追跡が可能だった日までを解析に組み入れた (追跡率92.8%).  累積生存率は30日90.3%, 1年61.8%, 2年47.9%, 3年37.6%, 5年21.5%であった. 結論 : 地域中規模病院におけるPEG後の長期生存率は高次機能病院と同程度であったが, 原因疾患は異なる可能性がある.