著者
髙橋 亮太 岡田 唯男 上松 東宏
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.213-219, 2019-12-20 (Released:2019-12-27)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

1980年代頃から「複数の慢性疾患をもつこと」は「multimorbidity(多疾患罹患)」と呼ばれ,近年のプライマリケア研究において重大なテーマとなっている.高齢化と共にmultimorbidity患者は増加し,性別,社会経済的地位の低さ,精神疾患合併との相関が示されている.また,死亡率上昇,QOL (quality of life)低下等の健康アウトカムへの負の影響が示唆され,受診回数増加,ポリファーマシー等の患者負担増加や,救急受診,予定外入院,医療費上昇等の医療資源利用への影響がわかってきている.一方で介入方法はエビデンスによる十分な裏付けがない.本総説は国内外の質の高い研究論文を中心にmultimorbidity研究の現状を俯瞰し,研究上の課題を指摘すると共に,それらを踏まえ,臨床現場におけるmultimorbidity患者へのアプローチ方法の提案を行う.
著者
青木 大祐 金子 惇 井上 真智子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.44-53, 2020-06-20 (Released:2020-06-23)
参考文献数
47

目的:青少年のインターネット依存傾向が問題となっているが社会的マイノリティに関する現状は不明である.本研究では,在日ブラジル人生徒の現状を調査する.方法:A市在住ブラジル人生徒342人にポルトガル語の質問紙で,インターネット依存度(以下IAT),ネット利用時間,睡眠,うつ傾向(PHQ2)を評価した.χ2検定,ロジスティック回帰分析を用いた.結果:回答率65%(222人).IAT50点以上と相関したのは睡眠7.5時間以下(オッズ比:0.38,95%信頼区間:0.21-0.68),平日のネット利用4時間以上(2.6,1.4-4.8),PHQ2が3点以上(6.2,3.3-11.5)だった.多変量解析でもPHQ2と平日の利用時間は有意だった.結論:A市在住ブラジル人生徒のインターネット依存度には,平日のネット利用時間とうつ傾向が関連していた.
著者
伊藤 光 平松 哲夫
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.79-85, 2017-06-20 (Released:2017-06-21)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的:睡眠障害の患者に対して,医師と薬剤師が協働でプロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol-Based Pharmacotherapy Management:PBPM)を実施し,その効果と患者満足度を検証した.方法:不眠の訴えがあった患者21名に対し,医師の診察前に薬剤師が面談し情報収集を行い,プロトコールに基づき睡眠薬の必要性判断,処方提案や認知行動療法的アプローチなどを行った.介入3か月後に睡眠状況の変化をPSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index),ISI(Insomnia Severity Inventory),ESS(Epworth Sleepiness Scale)で評価した.患者満足度の評価はCSQ-8J(日本語版Client Satisfaction Questionnaire8項目版)を用いた.結果:介入3カ月後の睡眠状況は,介入前PSQI:10.3±4.1,ISI:15.0±5.3,ESS:8.7±6.6に比して,介入後PSQI:7.2±2.7,ISI:8.3±4.3,ESS:6.2±5.5で,いずれも有意な改善を認めた.CSQ-8Jの平均スコアは25.5±3.1で高い満足度が得られた.重篤な有害事象の発現はなかった.結論:睡眠障害の患者に対するPBPMは,患者の不眠症状を改善させ患者満足度も高い.PBPMにより薬剤師が主体的に不眠治療に参画でき,患者個々の薬物療法の適正化に貢献できることが示唆された.
著者
金子 惇 松島 雅人
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.144-149, 2016 (Released:2016-09-21)
参考文献数
20

目的 : 高次医療機関へのアクセスが制限された地域においてプライマリ・ケア国際分類第2版 (ICPC-2) を用いて受診理由, 新規健康問題, 慢性健康問題の内訳を明らかにすることでフリーアクセスの制度下では明らかにしづらい「受診理由, 健康問題の実像」を推測する.方法 : 沖縄県の離島において後ろ向きオープンコホート研究を行った. 全ての患者の受診理由及び健康問題についてICPC-2を用い集計した.結果 : 1年間で5682件の受診があり, うち0~14歳が862件, 15~64歳が2205件, 65歳以上が2615件であった. 臓器別の集計ではR呼吸器, S皮膚, L筋骨格の順に多かった. 高齢者の慢性健康問題でP70認知症が8位, 小児の新規健康問題はA98健康診断/予防医学が3位であった.結論 : 本研究では従来の報告と比較し主要な受診理由・健康問題に大きな違いは見られなかったが, 高齢者の慢性健康問題では認知症, 小児の新規健康問題は健康診断/予防医学の頻度が高いことが示唆された.
著者
児玉 憲一 夜西 麻椰 北川 奈津子 清水 彩永 江川 克哉
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.107-111, 2023-09-20 (Released:2023-09-22)
参考文献数
6

症例は50代,女性.頭痛,嘔気などを主訴に受診.血液検査での甲状腺中毒症及びTSHレセプター抗体陽性,甲状腺の超音波検査所見からバセドウ病と診断した.入院の上でチアマゾールにて治療を開始したが入院後に幻視や幻聴などの精神症状が出現し甲状腺クリーゼの診断基準を確実例として満たした.チアマゾール増量とヨウ化カリウム追加で対応したが,甲状腺機能改善下での精神症状出現に違和感を持った.血液検査を見直して気づいた偽性高クロール血症を端緒に市販のブロムワレリル尿素含有鎮痛薬乱用が判明,一連の精神症状は慢性ブロム中毒の離脱によるものが疑われた.向精神薬開始により精神症状は軽快,甲状腺機能については以降も順調に改善して退院した.甲状腺クリーゼは早期に疑い治療を開始すべき病態であるが,甲状腺疾患に精神症状を来す他疾患が併発すると診断基準偽陽性となることに注意が必要であると考える.
著者
阪本 直人 釋 文雄 堤 円香 春田 淳志 後藤 亮平 前野 哲博
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.2-8, 2019-03-20 (Released:2019-03-28)
参考文献数
19

目的:健診受診者を対象に,かぜに対する認識の現状と受診信念との関連を明らかにすべく調査した.方法:2012年8月~9月,茨城県X市健診受診者に対し,かぜに対する認識や対処行動について無記名自記式質問紙で調査した.結果:1079名(有効回答率74.5%)が調査対象となり,かぜをひいたら「点滴や注射を受けると早く治る」に75.9%が賛成し,42.0%が「ウイルスが原因のかぜは抗生物質が効かない」に反対した.また,同項目で28.6%が「分からない」と回答.また「かぜ薬を早めに飲むと早く治る(OR:1.61)と「点滴や注射を受けると早く治る(OR:1.86)」が受診信念に関連する要因であった.結論:かぜに対する認識,そして,抗生物質の効果や医療機関で行われる治療に対する理解が不十分なことが分かった.また,かぜ薬や点滴・注射が治癒期間を短縮するという認識が,受診信念と関連することが示された.
著者
河田 祥吾 岡田 唯男 高橋 亮太 鵜飼 万実子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.116-127, 2021-09-20 (Released:2021-09-22)
参考文献数
42
被引用文献数
2

メンタルヘルスをプライマリ・ケアへ統合することは,適切なケア,アウトカム改善,資源の適正利用などへ貢献し,世界的な潮流である.諸外国においては,プライマリ・ケアでのメンタルヘルス教育の開発がされてきたが,日本において家庭医への体系的な教育は十分でない.本稿では,家庭医養成で求められるメンタルヘルスのcompetencyを明らかとすることを目的にscoping reviewを行い,諸外国の教育カリキュラムなどをthematic analysisを用いて分析した.抽出されたcompetencyは,「プライマリ・ケアの一般的能力」「プライマリ・ケアにおけるメンタルヘルスの一般的能力」「プライマリ・ケアにおけるメンタルヘルスの特異的能力」に大別される包括的なものであった.本稿のデータを基に,日本の現状を踏まえたcompetency list作成やモデルカリキュラムの策定などが求められる.
著者
金子 雄司 草島 邦夫 宮岡 慎一 中川 貴史
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.75-77, 2023-06-10 (Released:2023-06-24)
参考文献数
7
被引用文献数
2

医学部低学年に在籍する筆頭著者が,医療機関で多職種業務を実践し,成員となっていく過程を「正統的周辺参加理論」に基づき考察した.学習者と実践共同体の間に互恵的関係が構築される過程で,学習者の学びが促進され,実践共同体の成員として認められた.さらに,実践共同体にも建設的な変化が観察された.本活動は医学生にとって有意義な学習機会であり,転用性の高い活動となりうる.
著者
宮田 潤 阪本 直人 二川 真子 新野 青那 新野 保路 大濱 弘光 鈴木 友輔 武藤 理 此下 尚寛 楠川 加津子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.70-74, 2019-03-20 (Released:2019-03-28)
参考文献数
17

第30回学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーで,本ワークショップ(WS)を開催した.参加者は,健康情報の信頼性の評価やヘルスリテラシー(HL)に配慮した医療面接などを実践し,「満足した」,「理解できた」などの反応を示した.本邦の医療界ではHLの概念が十分に浸透していないこともあり,このようなWSのニーズは高いと考えられた.本WSで得られた知見をもとに改良を重ね,HLの普及と発展につなげたい.
著者
井倉 一政 牛塲 裕治 児玉 豊彦
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.110-116, 2019-06-20 (Released:2019-06-26)
参考文献数
14

目的:20代の子どもを持つ親で構成される精神障害者の若手家族会において,参加家族にとっての家族会の意義を明らかにする.方法:若手家族会に参加している親に半構造化インタビューを行い,質的帰納的分類法でカテゴリーを抽出した.結果:5人の親の同意が得られ,【語り合うことが可能となる場】【楽しく気持ちが楽になる場】【他家族とつながりを作れる場】【同じ課題を共有し合える場】【本人以外のことも話し合える場】【相互に学び合える場】【親自身のエンパワメントが促される場】【本人と向き合いやすくなる場】【家族関係が良好になる場】【地域へ問題提起する準備の場】の10のカテゴリーが示された.結論:若手家族会に参加する親は,本人の兄弟の内容や本人が自立するにあたり直面する住居の内容,本人が加入できる保険商品の内容の問題を共有する意義を感じていた.また,地域へ問題提起する準備の場であるという意義も感じていることが示された.
著者
若林 崇雄
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.19-22, 2013 (Released:2013-05-02)
参考文献数
19

要 旨 震災を契機に日本人と医療について考察した. 日本人は以前よりつながりを重視する文化を有していた. これはリスクを回避する役割があり, 重大な災害時でも秩序だった行動を可能にした. このような文化を有する日本人は欧米流の契約を主体としたプロフェッショナリズムを完全に受容しているわけではなく, むしろ「義理」や「人情」といったつながりを基盤とした思考に行動を規定されているのではないかと考えた. 我々日本人は日本の文化的基盤に即したプロフェッショナリズムを構築する必要があると考えた.
著者
井上 和男
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.23-29, 2021-03-20 (Released:2021-03-22)
参考文献数
9

筆者はへき地で医師としてのキャリアを始めた.その経験から,日々の臨床現場で湧き上がる疑問や仮説について取り組むPractice based researchを実践し,提唱している.今回,本学会編集委員会より投稿依頼をいただいた.熟慮した結果,プライマリ・ケアで研究をする意義,そしてその研究成果を出すために必要なことについて書くことにした.常日頃から,プライマリ・ケアでの研究について興味を持つ若手は多いものの,なかなか前に進めず経験を積めないということを感じていた.実際にそのような悩みを相談されたこともある.そこでまず,現場での研究をしていくことが楽しくかつ最も良い自己研鑽につながってきたという経験を述べた.次に,そのために大切だと思っている二つのことについて実際の経験を基に書き連ねた.その一つは,キャリアの早期から研究に取り組む意義であり,若手の方々に伝えたいことである.もう一つは,より重要であるが次世代が良い環境で研究を実践するには指導者はどうすれば良いのかである.若手を指導する立場にある,あるいは将来なるであろう中堅の方々に考えていただく,その一助になればと考えている.
著者
佐藤 健太
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.56-61, 2012 (Released:2015-11-25)
参考文献数
19

下痢は「日に3回以上の軟便か水様便」と定義され, 一般人口における有訴者数は2%前後1) で, プライマリ・ケア診療所における新規健康問題の中でも1.9%を占めている2) .  一般的に5-7日間続き, ほとんどの例で2週間以内に自然治癒するが, QOLを損なう症状であり, 脱水等を合併し入院することもある. 医療経済的な影響 (ロタウィルス性下痢症では年間直接医療費が100億円を超える3) も大きい.  本稿では, プライマリ・ケア診療所で実施可能な診療フローチャートの紹介や治療法のレビューを行う. なお, 紙面の都合上, 旅行者下痢症4) や院内発生下痢症5) については割愛したため引用・参考文献をご参照いただきたい.