著者
西岡 龍一朗 黒田 萌 黒田 格
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.78-80, 2023-06-10 (Released:2023-06-24)
参考文献数
9

筆者らは,学生が主体となり医療系学生と患者が語り合い,笑い合う活動を定期的に継続した.2020年6月から2022年9月まで28回実施した.活動を通し,学生と患者の双方から沸き起こった感情,新たな認識,気づきについて反響が得られた.患者が学生に対し語ることが,学生には省察の機会や患者視点による病の理解を生む一助となり,患者自身には自己の有意味感や病の新たな認識を生むことが示唆された.
著者
藤原 広臨 上床 輝久 内藤 知佐子 小西 靖彦 上本 伸二 村井 俊哉 伊藤 和史
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.46-51, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
15

近年,特に若年者においてうつ病が多様化し,医学教育の現場でも対応困難な場面を体験することは多い.本稿では,「ゆとり世代」の特徴も踏まえたうえで若者のうつ病について概説し,医学生・研修医のメンタル面での初期対応に資する情報を提供する.
著者
小林 聡 石坂 克彦
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.265-267, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
7

症例は60歳代男性. 原因不明の微熱, 食欲不振に対してうつ病の診断で加療されていた. 全身倦怠感, 肝機能障害等を主訴に入院し, 精査の結果ACTH単独欠損症の可能性が考えられヒドロコルチゾン内服により症状は改善した. ACTH単独欠損症を含む慢性副腎皮質機能低下症には特異的な症状は無くプライマリ・ケアの場でも頻繁に遭遇する症状ではあるが, 疾患を想定し内分泌学的検査を行う事で診断・治療に結びつけ易い疾患であると考えられるので報告する.
著者
越田 全彦
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.273-280, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
31

同種造血幹細胞移植にも関わらず死亡した急性白血病の若年女性の自験例を機に, 筆者は以下の3つの問いを立てた. ①科学技術を駆使すれば機械と同様に肉体を修理できるという考え方はどこから来たのか?②病気や人間を包括的に捉えるための人間観にはどのようなものがあるのか?③より包括的な人間観に立った時, 「なぜ私が病気になったのか」との患者の問いに臨床医はどのように対応できるのか?肉体を機械とみなす生物医学モデルはデカルト以来の心身二元論と還元主義に由来する. 生物医学モデルを超克したものとしてEngelの生物心理社会モデルが存在するが, より包括的な人間観として, 魂の次元を含む霊心身三元論が存在する. 人間が取り結ぶ関係性として, 「自己と他者」, 「自己と世界」, 「自己と自己自身」, 「自己と超越者」の4つがあり, 三角錐を用いて図示できる. 病の真因はこれらの関係性の歪みと捉えられる. 三元論-三角錐モデルと名付けられた新たな包括的医学モデルは, スピリチュアルケアや補完代替医療を含めたあらゆる専門分野・介入手法の特徴と守備範囲を明示し, それらの専門家をも交えた未来のチーム医療の形を提示するとともに, 「なぜ私が」という患者の苦悩を軽減させるための指針を臨床医に与える可能性がある.
著者
西岡 大輔 栄原 智文
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.153-155, 2017-09-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
5

緒言:Ambulatory Care-Sensitive Conditions (ACSCs)とは「適切なタイミングで効果的なケアをすることで入院を減らすことができる状態」のことであり,ACSCsである患者の入院回避は重要である.ACSCsの高齢心不全患者に慢性疾患ケアモデルを適用し再入院までの期間を延長しえた事例を報告する.症例:92歳男性.慢性心不全のために定期通院しており,2014年4月まではコントロール良好であった.その後の入院頻度が増えたため,2015年2月より慢性疾患ケアモデルを適用した.その結果,心機能は継時的に増悪していたにも関わらず,再入院までの平均日数が適用前後で30.5日から64.3日と延長した.考察:利尿剤のスライディングスケールを用いた治療は,欧米では慢性疾患ケアモデルに基づき実施されている.慢性疾患ケアモデルのもとでフロセミドのスライディング療法を開始したことでACSCsにある患者の再入院までの期間が延長できた.
著者
大曽根 卓
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.205-208, 2016 (Released:2016-12-26)
参考文献数
7
被引用文献数
4

目的:検死を通して常陸大宮市における孤独死の実態を明らかにして対策の一助とすること.方法:2008年1月から2014年12月に当院で担当した, 自宅で発見された独居高齢者の異状死体149例について検討した.結果:男性は女性より多く, 年齢分布も広い特性が見られた.一方女性は, 80歳から90歳が多かった.同市内の孤独死は死後経過時間2日以内が多かった.季節では冬から春が多く, 死亡から発見に至る時間もこの時期に長い傾向である.疾病では急性心疾患, 脳血管疾患が多いものの悪性疾患や肺炎比率は少ない.発見者は90%以上が家族親族で, 他には訪問系業者や近隣住民が見られた.結論:常陸大宮市では孤独死は男性に多く発見までの日数が都市部より短い.
著者
松久 雄紀 廣瀬 英生 後藤 忠雄 GP-COMERnet Group
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.297-301, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

目的 : 子宮頚癌予防ワクチンに対する被接種者・保護者の意識, 知識を調査する.方法 : 岐阜県のプライマリ・ケア関連施設で子宮頚癌予防ワクチンの情報源, 接種決定者, 知識, 癌検診等を被接種者・保護者にアンケート調査した.結果 : 被接種者66人, 保護者57人より回答を得た. 情報源について被接種者は学校, 家族が多く, 保護者は自治体からの連絡, テレビが多かった. 接種決定に被接種者が関わったのは約半数であった. 接種に躊躇いがあったのは15%で全員が痛みを理由にあげ流産や不妊が不安との回答はなかった. 子宮頸癌の原因を知っていたのは被接種者15%, 保護者54%, 感染源を知っていたのは被接種者41%, 保護者79%, 子宮頸癌検診を知っていたのは被接種者21%, 保護者63%で, 接種後も検診を受けた方がよいと回答したのは被接種者71%, 保護者90%であった.結論 : 子宮頚癌, 癌検診に対する知識は十分ではなく, 情報提供を行い理解度を深めていくことが重要である.
著者
賀來 敦 松下 明
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.60-66, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

目的 : 大学医学部地域枠入学試験と連動した自治体奨学金募集要項・条例等の横断調査を行い, 奨学金受給による医師のキャリアへの影響を明らかにする.方法 : 2013年度に地域枠関連自治体奨学金制度を実施した42自治体について貸与総額・義務年限・勤務科の指定等の調査を2013年11月から2014年1月の期間にWeb上で行った.結果 : 53大学と関連する59奨学金制度を認めた. 貸与総額最頻値1440万円だった. 借款契約の特徴として, 高返済利率 (10%以上) を7割の制度で, 一括返済の記載を41制度に認めた. 義務年限内に3年以上後期研修先の自由選択可能なものが3制度, 自由選択期間がないものが48制度だった.結論 : 奨学金制度の8割では義務年限中に, 専門医制度研修プログラム整備指針で求められる最低3年の基本診療領域後期研修の確保が十分保障されない. 今後予想される奨学金辞退現象の低減には適正な返済利率・返済方法の設定および専門医取得の支援を要する.
著者
太田 龍一 金子 惇
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.143-149, 2017-09-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
19

目的:日本において人口の高齢化に伴う住民の健康問題の変化を調べた研究はない.プライマリ・ケア国際分類第2版(ICPC-2)によって明らかにされた現在の健康問題と先行研究を比較しその変化を考察する.方法:沖縄県離島で後ろ向きオープンコホート研究を行い受診患者すべての健康問題についてICPC-2を用いて集計した.また1990年に出版されたプライマリ・ケア健康問題国際分類注解第2版(ICHPPC-2 defined)を用いた同地域の健康問題のデータと比較検討した.結果:1年間で4660件の受診があり,15歳未満が826件,15-64歳が2146件,65歳以上が1688件であった.本研究は先行研究と比較しL筋骨格,S皮膚,A全身及び臓器が特定できないものの頻度が高かった.本研究で診療の包括性の指標である全健康問題の上位50%以内に含まれる健康問題の種類が多かった.結論:本研究において沖縄県の離島診療所では整形疾患や皮膚疾患へのニーズが高まり,診療の包括性が高まっていることが示唆された.
著者
後藤 亮平 渡邉 大貴 柳 久子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.62-66, 2017-06-20 (Released:2017-06-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:急性感染症で入院する高齢患者において,入院期間中の日常生活動作(Activities of daily living,以下ADL)能力の回復に関連する要因を明らかにすることとした.方法:急性感染症で入院し,リハビリが実施された65歳以上の患者を対象とした.ADL評価指標である機能的自立度評価法(Functional independence measure,以下FIM)を用い,FIM回復率を算出した.患者属性,在院日数等の期間,リハビリ開始時の身体機能(筋力,尿失禁の有無など)や精神機能(認知機能,うつ状態)のうち,FIM回復率に関連する要因を検討した.結果:対象者124例は,平均年齢82.5±7.7歳,女性68例(54.8%)であった.発症からリハビリ開始までの期間,尿失禁の有無,認知機能がFIM回復率に関連する要因として抽出された.結論:急性感染症で入院し,リハビリを実施した高齢患者のADL回復に関連する要因として,発症からリハビリ開始までの期間,尿失禁の有無,認知機能が挙げられた.
著者
牧 信行 小杉 一江 永嶋 智香 中村 美鈴
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.150-156, 2016 (Released:2016-09-21)
参考文献数
19
被引用文献数
2

目的 : 終末期の延命治療に対する家族の代理意思決定について, 高齢者自身の認識を明らかにする.方法 : 60歳以上の高齢者30名を対象に半構造化面接を実施し, 代理意思決定への信頼感とその根拠を聴取した. それぞれの文章をカテゴリー分類し, 信頼感別の根拠を分析した.結果 : 回答者の70%は代理意思決定を信頼していた. 根拠は信頼感によらず直接の意思伝達が必要としたものが最多で, 次いで信頼あり群では高齢者自身の思いや代理人の特性, 不安あり又は信頼と不安の両者がある群では終末期の代理人の気持ち, 医療者の影響, 終末期の状況が多かった.結論 : 終末期の延命治療に対する意思決定の問題解決のために, プライマリ・ケア現場での意思伝達の動機づけ, 明確な伝達の支援は有用である. さらに, 終末期医療に関する知見の集積, 法・制度面の整備, 倫理面の検討も必要である.
著者
巻 直樹 髙橋 大知 高田 祐 柳 久子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.23-30, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
27
被引用文献数
2 3

目的 : 要介護高齢者における, 呼吸機能とADL・QOLの関連を検討することを目的とした.方法 : 要支援1・2及び要介護1・2・3の介護認定を受け, 通所リハビリテーションを利用している65歳以上の要介護高齢者87名を調査. 呼吸機能検査および, 心身機能検査, 嚥下機能検査と, 質問紙によるADL・IADL・QOL評価を実施し, Spearmanの順位相関検定を行い, 有意な相関が得られた項目を説明変数とする重回帰分析を行った.結果 : 呼吸機能は身体機能, 嚥下機能, ADL・IADL・QOLと有意な正の相関を認めた. 重回帰分析の結果, 一秒量, 嚥下機能はQOL (SF8身体&精神) , IADL, ADLに関連する要因だった. 要介護高齢者において, 呼吸機能とADL・IADL・QOLが関連していることが示唆された.考察 : 呼吸リハビリテーションにより身体機能を向上し, 呼吸機能, 嚥下機能を改善することにより, 要介護高齢者のADL, IADL・QOLを向上出来る可能性が示唆された.
著者
小幡 史明 影治 照喜 田畑 良 長瀬 紗季 生田 奈央 森 敬子 谷 憲治 坂東 弘康
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.18-22, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
11

背景 : 発症4.5時間以内の急性期脳梗塞患者に対するrt-PA静注療法が認可され有効性が報告されているが, 医療過疎地域では専門医不足と地理的条件からその実施は困難なことが多い.目的及び方法 : 2013年2月から2014年2月までの間, 当院に救急搬送された急性期脳梗塞患者は75例あり, このうち4例 (5.3%) に遠隔画像システム (k-support) を用いて画像診断を行いrt-PA静注療法のdrip and ship法を行った. この4例をretrospectiveに再評価し, 発症後の時間経過や治療転帰などについて検討した.結果 : 4例に対してdrip and ship法を施行し, 1例において閉塞血管の再開通が得られ症状の改善が見られた.考察 : 遠隔画像システムを利用することによってrt-PA静注療法のdrip and ship法が医療過疎地域においても安全に実施できると考えられた.
著者
野田 敏宏 新敷 祐士 安西 恵子 川崎 啓子 栗原 智仁 高市 和之 髙野 紀子 中村 峰夫 西野 健三 山田 和也 平井 みどり 田崎 嘉一 松原 和夫 吉山 友二 井関 健
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.93-98, 2013 (Released:2013-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

要 旨目的 : 本研究ではサプリメント類の利用に関して来局患者および薬剤師両者の意識および実態を明らかにすることにより, サプリメント類利用における薬剤師の関わり方を検討した. 方法 : 東京都・北海道内の14保険薬局にて来局患者1,253人を対象に, サプリメント類に関するアンケート調査を来局時に実施した. また, 薬剤師289人に対してサプリメント類に関する意識および情報収集の実態について, 保険薬局および北海道薬学大会 (2011年・札幌) においてアンケート調査を実施した. 結果 : 来局患者からの回答数1,253人のうち, 約50%は薬剤師にサプリメント類の安全性や効果についての情報提供を望んでいるものの, 実際には薬剤師が来局患者の疑問に答えている例は7.3%にしかすぎないことが明らかとなった.  一方で, 回答を得られた薬剤師289人のうち67.5%の薬剤師は自身がサプリメント類の情報提供者として来局患者に期待されていると認識しているものの, サプリメント類の情報収集に積極的に取り組んでいる薬剤師は約30%であり, さらにその情報内容もインターネット上の情報に頼っていることが示された. 結論 : サプリメント類の説明に対する患者の期待と薬剤師による説明の実態には, 大きな隔たりがあることが分かった. 来局患者の期待に応えるためにも, 薬剤師はサプリメント類に対し科学的根拠に基づく理解を深め, 医薬品との関連を含めた統合管理の必要性が求められる.
著者
安藤 明美 今井 鉄平 田中 千恵美 富田 さつき 鈴木 富雄
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.162-164, 2023-12-20 (Released:2023-12-27)
参考文献数
5

日本では産業保健へのアクセスが困難な人たちへの産業保健の提供は不十分だが,健康問題の最初の相談先となり得るプライマリ・ケア医から産業保健サービスが提供されることは,解決策の一つとして期待される.しかし,プライマリ・ケア医の産業保健に対する意識は十分とはいえない.このため,我々は各種教育・啓発活動を2021年4月より行ってきた.今回の報告でプライマリ・ケア医の産業保健への意識が高まることを願っている.
著者
小泉 俊三
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.431-436, 2010 (Released:2015-05-30)
被引用文献数
2 1

説明責任と透明性を強く求められる医療変革の時代にあって総合診療が果たすべき役割について医学教育の観点から略述した.  はじめに医師養成の側面から明治期のドイツ医学導入, 戦後の国民皆保険制度, 更にインターン制度の廃止に至るわが国の医療史を振り返り, 次いで日本医学教育学会の発足と医学教育ワークショップの開催, その後のプライマリ・ケア改革運動, 家庭医療制度導入の試みとそれに続く大学病院や研修病院における総合診療部門の設置, 日本総合診療医学会設立の経緯をたどりながら, 総合診療医の基本的価値観 (core value) が, 新医師臨床研修制度で取り上げられた行動目標, 患者安全のための医療人教育におけるコア・コンピテンシー概念, 新しいプロフェッショナリズム教育などと共通するものであることを示した.  最後に, 医療改革における総合診療医のフロントランナーとしての役割が, 地域の第一線医療においても, 研修病院や大学病院においても, また, 患者中心のチーム医療, EBM, 医療の質と患者安全などの医療人としての行動規範の領域においても, 更には, 卒前・卒後の医学教育改革においても重要であること, また, 総合診療の将来にとっては総合診療を担う次世代の医師をいかに養成するかが特に重要であることを強調した.
著者
小川 壮寛 松下 明 中島 利裕 守安 洋子 島田 憲一 江川 孝 五味田 裕 髙橋 正志 髙見 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.302-307, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

目的 : 共同薬物治療管理 (CDTM) を地域医療に導入するための方略の一つとして, 事前に処方医と事後報告を行うポジティブリストを作成し, 疑義照会を事後報告へ切り替えることによる効果を検証した.方法 : 事後報告に替えることのできる疑義照会をリソルブ疑義と定義した上で, ポジティブリストに基づく事後報告への切り替えを行い, その効果をリソルブ疑義の件数, 保険点数およびジェネリック医薬品使用率の変化を調査することにより評価した.結果 : 医師の治療計画を変更することなく, ポジティブリストにより178件 (疑義照会全体の22.7%) の疑義照会を事後報告に替えることができ, 疑義照会にかかる時間を大幅に短縮することができた. これにより保険点数は17,455点削減でき, ジェネリック医薬品使用率は46.6%まで上昇した.結論 : ポジティブリストに基づく薬剤師自身の判断で疑義照会を事後報告に切り替えることにより, 疑義照会実施件数および医療費削減とジェネリック医薬品使用率上昇を可能とした.