著者
山川 仁子 天野 成昭
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.109-116, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
4

屋外における拡声放送の情報伝達精度の向上を目指し, 拡声放送において使用される音声言語の特性を明らかにするための基礎的検討として, スキー場の拡声放送における単語の出現頻度, 単語親密度および音素構成を調べた。その結果, スキー場の拡声放送には, 出現頻度が高いが, 単語親密度が低く, 難聴取音素を含む単語が使用されていた。これらの中には, 滑走上の安全に関わる単語や非常時に使用される単語が含まれていることが明らかになった。
著者
宇野 文重
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.46, pp.133-151, 2014-03-31

本稿では,明治10(1880)年代の小学校教員が起こした雇用契約に基づく給与支払い請求訴訟を素材に,小学校制度と「村/むら」の関係を教育史的観点も交えつつ分析する。 行政単位としての「村」と旧来の農村共同体(集落)としての「むら」とは必ずしも一致せず,近代的学校制度の導入には困難が伴った。村の指導者層は,幕藩期以来の「むら」の旧慣に依存しつつ,「村」の就学率を上げるために形式的に「村」の小学校を設定するほかなかった。くわえて,教員の雇用契約上の地位に対する認識は曖昧で,教員と「村」との紛争を惹起した。
著者
森 みゆき
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.149-170, 2015-03-31

明治期の日本において,一般大衆がどのように西洋音楽を受容したのか。可能な限り,その全体像を把握し実態に迫るために,地方都市の新聞における西洋音楽関連記事を網羅的に調査した。明治21年(1888年)創刊の九州日日新聞における記事,楽器や楽譜の公告,さらに楽器や演奏者のイラストが描かれた公告(薬や時計など)を調査し,時代順に一覧化した。
著者
畠山 真一
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.49, pp.29-42, 2017 (Released:2017-11-13)
参考文献数
19

本論文は,現代日本語の存在動詞イルの成立史とシテイル形式の文法化が緊密に関連していることを明らかにする。現代日本語のイルは,典型的な状態動詞の一つであるが,イルの語源を形成するヰルは,状態動詞ではなくむしろ起立状態から着座状態への態勢変化を意味する主体変化動詞であったと考えられており,イルは,主体変化動詞ヰルではなく,むしろヰルの主体変化結果状態を表現するヰタリから発達してきたと推定されている(金水,2006)。本論文で検討した歴史的なデータは,ヰタリから存在動詞イルへと至る意味変化とテイルの文法化が相互に関連していることを示している。すなわち,近世におけるアスペクト形式としてのシテイル形の確立には,存在動詞イルの成立が反映されていると考えられる。このような議論にもとづき,本論文は,シテイル形が,イルの意味的漂白化(semantic bleaching)に加え,テ形節とイルを述語とする主節からなる複文構造(biclausal structure)が単文化することによって確立すると主張する。
著者
竹下 裕俊
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.49-57, 2023-03-31 (Released:2023-08-04)
参考文献数
12

本稿は,拙論「“The Short Happy Life of Francis Macomber” における登場人物の指示表現について」(2020)及び「登場人物の指示表現に見るヘミングウェイ作品―「医者と医者の妻」を中心に―」(2021)に続く,筆者のヘミングウェイ作品における登場人物の指示表現研究の一環である。今回は,短編集『われらの時代に』(In Our Time, 1925)から作家の代表作の一つである「季節はずれ」(“Out of Season”)を取り上げ,これまでと同様,言語学的文体論の立場から分析を試みた。作品の主な登場人物は,鱒釣りのガイド役のペドゥッツィと若い夫婦である。物語から読者が感じるこれらの登場人物たちの心理的距離感や不調和感には,作家による指示表現の巧みな選択と配置が不可欠な役割を果たしていることが分かった。
著者
森 みゆき 国府 華子 山﨑 浩隆 佐藤 慶治 正源司 有加
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.121-138, 2023-03-31 (Released:2023-08-04)
参考文献数
12

犬童球渓(1879-1943,本名は犬童信蔵)は,1907(明治40)年『中等教育唱歌集』に所収された《旅愁》の作詞で有名だが,音楽教育に従事する教員でもあった。生涯に500曲以上の作詞・作曲作品を残したが,音楽学的見地からの研究は未だ進められていない。犬童は『中等教育唱歌集』での発表を皮切りに,教科書や雑誌,ピース譜に作品を発表し続けた。教科書,雑誌,ピース譜には重複して掲載されている作品も多い。筆者らは最終的には犬童の全作品目録を纏める計画であるが,本稿ではその第一弾としてピース譜に掲載された作品について目録を作成する。
著者
武田 昌憲
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.A25-36, 2015-03-31 (Released:2019-02-16)

山口県文書館蔵『澄水記』は四国の伊予国(愛媛県)東部の戦国軍記である。「里伝」などの異文を含む特殊な作品なので,翻刻してみたものである。国語学的にも特殊な仮名遣いの訓がみられる。地方の軍記として有益である。
著者
畑田 秀将
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.67-84, 2013-03-31 (Released:2019-01-31)

本研究では,大手新聞社が発行する新聞の縮刷版に掲載されている記事が,データベースにおいてどれほど再現されるかという点を調査した。松本サリン事件をサンプルに網羅性を重視する検索を実行した結果,各データベースともに表記のゆれに対する諸機能は導入されているものの,件名もしくはそれに類するアクセスポイントは整備されていないことが分かった。また,事件の初期報道から収束に至る過程においては,一般的な事件名ではなく,検索語を有効に組み合わせる方法が網羅性を確保する手段として効果的であることが確認された。
著者
桑原 芳哉
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.13-25, 2016-03-31 (Released:2019-07-05)

本研究では,前回調査に引き続き,2015年時点における公立図書館における指定管理者制度導入の現状について明らかにし,全国的な傾向を示すとともに,特徴的な事例について分析することを目的とする。調査の結果,2015年11月現在,214自治体,528館において指定管理者により管理運営が行われていることが確認できる。2015年度は,図書館の管理運営に新たに指定管理者制度を導入する自治体の増加傾向が再び強まっており,佐賀県武雄市図書館の事例が,他の自治体において指定管理者制度の導入検討に影響を与えていることが推察される。NPOを指定管理者とする図書館は少数であるが,図書館経営に住民自治の考え方を反映させた事例として注目できる一方,経営安定性等の面から2期目以降の指定を受けられない事例があり,課題と考えられる。
著者
所 吉彦 徳永 彩子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.113-120, 2020

ILO によれば我が国の女性管理職比率は12%とG7最下位である。そこで本研究は女性が管理職に至るまでの「鍵となる出来事」を探ること,今後の調査への示唆を目的とした。東証1部上場企業女性管理職10名を対象とした半構造化面接を実施した。分析は前回研究と異なるM-GTA 法を用いた。その結果,「鍵」には5カテゴリーが存在することが再度確認された。また,「鍵」カテゴリーの継続修正,初級管理職の「鍵」データ蓄積が必要であることが分かった。
著者
小沢 日美子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.83-93, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
42

ヒトの発達過程における行動形成とそのための環境的要因は, 発達段階に応じて理解されることが望ましい。他者理解研究の一つでもある「theory of mind (ToM) : 心の理論」研究は, Premack & Woodruff (1978) の霊長類を対象にした研究に端を発している。そして Wimmer & Perner (1983) が, Dennet (1978) の提起を受け, 幼児に実施した「false belief task」は大変良く知られている。その後, Baron-Cohen (1995) は, 「theory of mind」 の形成の過程について, 「注意共有機構のモジュール」を論じ, 三者関係が社会環境におけるさまざまな情報の認識, また, 社会適応の基盤となるとした。そのため一者関係的認識に基づく「false belief task」の通過は, 「theory of mind」の形成とは同義とは捉えられにくい。たとえば, 成人期における「theory of mind」研究では, 対象者自身が, 「theory of mind」課題の回答の際, すでに前提としていることを把握することが欠かせないと考えられている。したがって, 今後の「theory of mind」の発達的検討でも, 自己―他者―対象との間の関係発達を捉えた社会的環境適応との関連で検討されることが重要になるだろう。
著者
武田 昌憲
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.A1-A12, 2013

『寛永諸家系図伝』と『寛政重修諸家譜』から島原の乱の記述の違いを簡単に指摘して、諸家の事情により、必ずしも後世の記録が増幅されているとは限らないことも指摘した。
著者
山川 仁子 天野 成昭
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.157-167, 2020 (Released:2020-07-30)
参考文献数
16

非日本語母語話者が発声した日本語音声の自然性に関わる音響特徴を明らかにすることを目的とし,日本語,中国語(台湾語),韓国語,タイ語,ベトナム語, フランス語を母語とする話者各10名が発声した日本語単語を,日本語母語話者22名に呈示し,発声の正誤判定および自然性の5段階評価を行わせた。発声が正しいと判断された単語の各母音について,単語全体に対する相対時間長,相対強度, 相対基本周波数を求め,これらを独立変数とし,自然性評価値を従属変数とする重回帰分析を行ったところ,母語による相異はあるものの,語頭または語末の母音の相対時間長および相対基本周波数において標準偏回帰係数の絶対値が大きかった。従って非日本語母語話者が発声した日本語音声の自然性に相対時間長および相対基本周波数が関与していることが示唆される。
著者
片桐 真弓
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.137-148, 2016-03-31 (Released:2019-07-05)

本稿では,子育て中の母親への面接調査を下に,父親の子育ての質的特徴について明らかにした。父親には何よりもまず職業人としての扶養役割があるという前提はあるが,それでも扶養役割だけでなく,いくつかの親役割を果たし,子育てに関わっていないということはなかった。しかし,その内容を見ると,子どもの身の回りの世話のようにほぼ毎日決まった時間に行うことが求められるものは母親が担っており,父親の子育ては限られたなかで行われていた。イクメンをブームで終わらせないためには,長時間労働の働き方の見直し,教育が課題として上げられる。
著者
中嶋 弘二
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.46, pp.107-118, 2014-03-31

便利で快適な現代生活が抱える健康への悪影響を指摘した。関節,骨,筋肉などの運動を担う運動器の状態を自己診断する「ロコモーションチェック」や生活状態を自己診断する「体力年齢チェック」を紹介した。ゆっくりとした動作で行う有酸素運動トレーニングを解説した。これまで筆者が取り組んできた地域教育活動の実践も報告した。
著者
河村 諒
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.149-155, 2016-03-31

わが国では,介護職への就業増加と離職防止による介護人材の確保が急務の課題となっている。本研究では,介護職への就業希望や継続に影響を及ぼすと示唆されている特性的自己効力感と介護職を想定した職業性ストレスとの関連性及び介護職への就業希望との関連を検討することを目的として,女子短期大学生81名を対象に質問紙調査を行った。結果,介護職への就業希望に対して「仕事の適合性」は関連性が示されたが,特性的自己効力感は関連性が示されなかった。しかし,特性的自己効力感と「仕事の適合性」は相関関係が認められた。
著者
森 正人
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.48, pp.A1-11, 2016-03-31

この研究の目的は,学校法人尚絅学園の建学の精神を記述した諸資料について調査した結果にもとづき,建学の精神と教育理念の本来の姿を復元するものである。尚絅学園の建学の精神は,佐々友房と彼の同志達が起草した「濟々黌付属女學校創立ノ主旨(趣旨)」に示される。学園に伝えられてきたのは,二つの段落から成る文章である。しかし,本来この文章には,教育課程の方針について述べる第三段落がそなわっていた。このことを,新資料とそのほかの資料を用いて証明した。
著者
田口 誠一
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-14, 2015-03-31

文学作品はかつて日本の英語教育でしばしば活用されていた。しかしながら,近年文学教材は際立って減少しており,それは主に日本の英語教育がコミュニケーション能力を重視するようになってきたからである。文学教材の活用とコミュニケーション能力の育成とは相容れないものとよく言われている。この論文ではオー・ヘンリーの有名な短編「二十年後」に言及しながら,英語教育における文学教材の意義を考察する。
著者
稲葉 浩一
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.89-106, 2015-03-31

本稿は学校教育における,児童生徒の知的関心・意欲にもとづいた学習を導く「教育方法」に関し次のように論考を展開する。まず日常生活者である子どもたちにとっての「知識」の意味を確認し,そのうえで学校教育という制度的空間において求められる<児童生徒>としての知識の探求のありかた(=規範)を考察し,そこに潜在する根本的な困難を指摘する。そしてそのオルタナティブとしての児童生徒の「探求的学習」の方法を模索する。
著者
宮﨑 尚子
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.49, pp.01-08, 2017 (Released:2017-11-13)
参考文献数
2

現物が確認できなかった大正初期の雑誌「団欒」を十八冊発見したとして,それらの目次を「石丸梧平主宰の家庭雑誌『団欒』に関する調査①」「石丸梧平主宰の家庭雑誌『団欒』に関する調査②」「石丸梧平主宰の家庭雑誌『団欒』に関する調査④」において紹介した。今回は,その『団欒』の中でも、雑誌『青鞜』の作家でもある加藤みどりについて紹介する。