著者
岸谷 孝一 鈴木 健夫 渡辺 暉生 三原 晃一 石井 貴和 桑原 隆司
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.51-61, 1991

東京の自治と文化の新しいシンボルを目指して, 新宿新都心で1988年から建設工事が進められていた東京都新庁舎が, 今春完成した。新都庁舎は, 新宿中央公園に面する第一, 第二本庁舎と, 都民広場を囲む議会棟からなる複合建築群であるが, その中でも地上243mと日本一の高さを誇る第一本庁舎はひときわ目立つ存在となっている。この第一本庁舎では, 超高層・大スパンを実現するために, 丹下健三・都市・建築設計研究所の設計によるスーパーストラクチャー構造が用いられ, 2階以上の骨組みはS造で, 床はデッキプレート上に軽量コンクリートを施工する設計になっている。このコンクリートの施工に際して, 従来の常識では, ポンプ車を用いて地上から直接コンクリートを圧送できる垂直高さの限界は150~160m程度が目安とされていたが, 第一本庁舎工事では工程・工期等の関係から工事関係者の総意によりこの限界への挑戦が行われることになった。その結果, 各分野工事関係者の努力と近年のコンクリート圧送用機器・制御技術等のめざましい進歩により, 日本最高所, 地上243mに至るまでのすべてのコンクリートの施工がポンプ車を用いて地上から直接行われ, 工事を順調に終了させることができた。
著者
森 博嗣 谷川 恭雄
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.30-40, 1994-12-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
74
被引用文献数
5

フレッシュコンクリートの流動解析技術に関する研究は, ポンプ圧送性に関する一部の理論的研究を除けば, 最近10年間に行われたものがほとんどであり, 特に, 型枠内流動などを対象とした数値解析技術は, 国外では例を見ない。フレッシュコンクリートの流動現象は, 力学的に取り扱うことが非常に困難であったため, その定量的な解明は遅れていたが, 各種の数値解析手法の開発によって, しだいに明らかになりつつある。最近では高流動コンクリート, 高強度コンクリートなどをはじめとする新しいタイプのコンクリートが出現し, 施工の合理化や省労力化を実現する上で, フレッシュコンクリートの流動解析技術に対する期待が増している。しかし, フレッシュコンクリートの流動挙動や施工性を解析的に的確に予測することはむずかしい課題であり, この分野の研究者は数多くの問題に直面しているのが現状である。本稿では, フレッシュコンクリートの流動解析技術開発の最前線における課題を中心に, この研究分野における今後の展望を概説する。
著者
半井 健一郎 蔵重 勲 岸 利治
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.3_3-3_6, 2011 (Released:2012-03-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

コンクリート構造物の耐久性能を直接的に確認することを目的とし,スイスでは,竣工時に非破壊の透気試験によって実構造物のかぶりコンクリートの品質(物質移動抵抗性)を検査するために必要となる指針を作成している。プロセス検査ではなく,最終的な製品の耐久性能を直接的に検査する本手法は,耐久性の確保や向上,技術開発につながるものと期待される新たな取組みである。本稿ではその概要を紹介する。
著者
タレク・ウディン モハメッド 濱田 秀則
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.23-26, 2008
被引用文献数
1

コンクリート中の鉄筋の腐食は, コンクリートの専門家 (研究者, 技術者) にとって, 鉄筋コンクリートの耐久性を阻害する主要因として共通の関心事項である。この問題に関しては古くから数多くの研究が実施されてきた。しかし, 実際の構造物において鉄筋の腐食がどのように進行するのかを正確に把握するための一手法として, 長期暴露試験の意義は大きく, 構造物の耐用年数を正確に評価するための基礎的かっ重要なデータを得ることができる。このような背景に鑑み, 本文においては, これまでに筆者らが実施してきた長期暴露試験より得られた, 中性化による鉄筋の腐食および塩化物イオンによる鉄筋の腐食に関するいくつかの貴重な結果を取りまとめるものである。これらの結果は, また短期間に実施する促進試験の結果と比較する意味でも貴重なものである。
著者
小林 一輔
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.22-28, 2000-11-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
6

コンクリートから発生するアンモニアは, 美術館の収蔵庫に保管されている文化財の変色を引き起こすとともに, 半導体や液晶を製造するクリーンルームの汚染源となる。本文は, コンクリートから発生するアンモニアに関する既往の研究の動向を取りまとめたものである。コンクリートからのアンモニア発生は, 素材であるセメントや骨材中に存在する窒化物とアンモニウムイオンを含む粘土鉱物や雲母などの層状珪酸塩に起因すること, 石灰石は上述のようなアンモニア発生物質を含んでいないこと, などの知見に基づいて, コンクリートからのアンモニア発生の対策を示したものである。
著者
窪内 篤
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.39-49, 1993

小樽港勝納ふ頭において, 既設-12m岸壁を-13m岸壁へと増深改良を行う再開発事業の実施にあたって, 内面リブ付き鋼管ぐいを用いたコンクリート充填鋼管ぐいを横さん橋形式に採用し, その施工をケーシングドライブ工法との組合せによって行った。本報告ではこの再開発事業に至った経緯を含め, 新たな試みであったこの工事の施工法について紹介し, 併せて同時に行った調査結果について報告する。
著者
古村 崇 中山 良直 関東 継樹 山中 修一郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.11-18, 2006

雨水流出による水害を回避するためのプレキャストコンクリート構造の地下貯水槽を開発した。本貯水槽の特徴は, 屋根部材をプレストレストコンクリート (PC) 構造とし, 柱間隔を従来の鉄筋コンクリート (RC) 構造の2倍以上の10mに広げていることである。柱による阻害率が小さいため, 経済的かっ効率的な施設を構築できるようになり, 柱間隔が広く底版がフラットなため, 維持管理が容易で重機による清掃が可能になった。また, プレキャスト部材同士の接合により, 現場作業を省力・短期化でき, かっレベル2地震にも耐えられるピン結合方法を考案し, 実物大実験で検証した。
著者
武 高男
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.11-17, 2007-06-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
8

2006年に, 石綿含有建材に関する大気汚染防止法や労働安全衛生法などの多くの法律が同時期に改正された。理解するのが難解であるため要点を解説した。石綿は既に製造および使用が禁止され, 問題は既存の建物に残るあらゆるアスベスト含有製品である。この調査, 分析, 処理・処分方法について概説した。さらに石綿の代替となりうる繊維にっいて紹介した。
著者
葛西 泰弘 神山 繁 池田 隆 田中 茂義
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.35-46, 1995-08-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
4

十勝大橋は北海道帯広地方において建設中の, 中央径間251m, 幅員32.8mを有する日本最大の1面づりPC斜張橋である。施工は片持ち張出し架設により行われたが, -20℃を超える厳寒期にも施工を行うために, 断熱シートや鋼板で覆った全天候型移動式作業車が用いられた。寒中施工, 特に寒中コンクリートの施工では打設コンクリートの温度管理と養生管理が重要となる。前者は生コンプラントの製造システムで対処され, 後者は現場における養生囲いや給熱養生により実施された。その他の技術的特色としては, 大容量現場製作斜材の採用, リフトアップ工法による移動式作業車の組立て, 水バラスト工法による側径間部の施工等がある。