著者
都築 夏樹 吉田 則裕 戸田 航史 山本 椋太 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.2_97-2_103, 2020-04-23 (Released:2020-05-20)

ソフトウェアのテスト手法の1つであるファジングでは,テストケースを自動で生成,実行し,テストを自動化できる.現在,カバレッジに基づくファジングツールの開発が盛んに行われており,後発ツールの方が優位であることを示すために,ツール同士の比較評価が行われている.しかし,ベンチマークが評価ごとに異なることが多く,評価に用いられたベンチマークとは別のベンチマークを適用した場合に同様の性能を示すか不明である.そこで,カバレッジに基づくファジングツールの評価に利用された実績がある3つのベンチマークに対して4つのツールを適用した.その結果,一部の例外があるものの,統計的には後発ツールが優れていることがわかった.
著者
山中 淳彦 佐藤 雅彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.4_388-4_401, 1997-07-15 (Released:2018-11-05)

本論文では、代入を持つ関数型言語Λを提案する.この言語の定義を示し、操作的意味論がChurch-Rosser性や参照透明性のような良い性質を持つことを示す.次に、Λと[5]で提案された同様の関数型言語Λ94とを比較し、両者の間に成り立つ関係を調べる.Λの操作的意味論はΛ94のそれよりも簡潔に与えられており、そのためΛに対しては決定的な操作的意味論を自然に定義することができる.
著者
萩原 早紀 栗原 一貴
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_52-1_62, 2016

本論文では,俗に“コミュ障”と呼ばれている人間の性質に注目し,その中で他人と視線を合わせられない症状をもつ人々を社会福祉学的な観点から支援するためのシースルー型HMD を使用したシステムの提案を行う.この“コミュ障”支援システムは,彼ら/彼女らが他人と視線を合わせられないというコミュニケーション上の問題を緩和・改善するために,顔検出技術と視覚情報提示により相手の顔を隠したり,視線をそらす癖を改善するように指示したり,視線の挙動の客観的なデータを提示したり,コミュニケーション上の危険状態が発生した場合その場から脱出する手段を与えてくれる.このシステムのプロトタイプを実装し,評価した結果,いくつかの機能は有効に働き,今後の改善点が得られた.
著者
小野澤 拓 岩崎 英哉 鵜川 始陽
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.3_23-3_40, 2021-07-27 (Released:2021-09-27)

ネットワークを介してセンサからデータを収集したり,機器を制御する技術であるIoT (Internet of Things)が近年注目を集めている.eJS (embedded JavaScript)プロジェクトでは,IoTのプログラム開発にJavaScriptを利用可能とすることで,IoTアプリケーション開発の複雑さなどを軽減することを目指している.eJS プロジェクトでは,計算資源が限られるIoT機器や,その上で実行されるIoTアプリケーションに合わせてカスタマイズされたJavaScript仮想機械(eJSVM)を生成するフレームワークeJSTKを提供する.本研究では,eJSVM のふたつの新しいカスタマイズ項目を実現した.ひとつ目に,64 ビット環境向けと32 ビット環境向けのデータ構造を選択できるようにした.ふたつ目に,4種類の異なるごみ集めアルゴリズムから,対象アプリケーションと相性の良いアルゴリズムを選択できるようにした.実験により,これらのカスタマイズ項目の有効性を確認した.
著者
野田 夏子 岸 知二
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_66-4_76, 2014-10-24 (Released:2014-12-24)

ソフトウェアプロダクトライン開発では可変性管理が重要であり,その可変性を明示的に表現するためのモデル化手法が従来から複数提案されている.特に近年では,ソフトウェアプロダクトライン開発の広がりと,可変性を示すモデルの使われ方の広がりに伴い,従来の手法の拡張の提案もなされている.本解説論文では,代表的な可変性モデルであるフィーチャモデルを取り上げ,基本のフィーチャモデルとその代表的な拡張を紹介するとともに,ソフトウェアプロダクトライン開発の利用局面に応じた利用法について解説する.
著者
榎本 真俊 櫨山 寛章 奥田 剛 山口 英
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_58-3_69, 2015

インターネットの規模拡張性の検証やインターネット上の大規模攻撃を模擬する環境として,大規模なサーバクラスタ型テストベッド上に仮想計算機を用いて擬似的なインターネット環境を構築する,インターネットエミュレーションの研究が行われている.インターネットエミュレーションのうち,EBGPルータを用いAS(Autonomous System)網を構築し,ASレベルでのBGPのパス特性やAS間での連携が必要なインターネット技術またはソフトウェアの挙動の観察を目的としたエミュレーション手法を本稿ではASエミュレーションと呼ぶ.ASエミュレーションにおいて,サーバクラスタの限られた物理計算機上でAS数を最大化するために,仮想計算機技術が用いられる.この際,限られた物理計算機から個々の仮想計算機が必要とする量の資源を適切に割り当て,仮想計算機の多重度を上げる必要がある.メモリ資源に着目すると,EBGPで構成されたAS網で個々のBGPルータが必要とするメモリの最適解を求めることは,その計算量の複雑さから,現実的に困難であり,日々拡張していくインターネットの特性をサーバクラスタ上に模擬するためのメモリ量推定手法として向いていない.そこで,本論文ではソースコードレベルでの静的解析と小規模な実験における動態解析の結果を元に曲線回帰よってモデル化することで使用メモリ量の推定を行う手法を提案する.提案手法の妥当性は大規模サーバクラスタであるStarBEDにて,Quagga bgpdを用いたASエミュレーションに対し,Quagga bgpdのソースコードの静的解析と,仮想マシン100台まで動的解析を元にモデル化を行い,最大1500台の仮想マシンによるASエミュレーション環境の構築を通して,その適合性の検証を行った.その結果,提案手法は従来手法より計算量,規模追従性の点で優れていることが明らかとなった.
著者
櫻井 孝平 増原 英彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.3_141-3_152, 2007 (Released:2007-08-31)

本研究はアスペクト指向プログラミング(AOP)の新たなポイントカット機構として,テストに基づいたポイントカットを提案する.AOP言語はアスペクトを適用する時点を指示しなければならない.既存のAOP言語のポイントカットは,アスペクトが適用されるプログラム中の型名やメソッド名により指示を行うため,プログラムの些細な変更に応じてアスペクトの変更が必要であった.テストに基づいたポイントカットでは,テストを通じて間接的にアスペクトが適用される時点を指示する.そのため,プログラムの変更時にテストも修正される前提の下では,ポイントカット記述の変更が必要なくなる.またテストに基づいたポイントカットは,テストごとに異なる実行履歴を利用して,プログラムの実行時の実行履歴に依存したアスペクトの適用を指示することができる.そのため,適用するプログラムの特定の分岐などの時点を詳細に指示する必要がなくなり,簡潔な記述を得ることができる.実際にいくつかの事例に対してテストに基づいたポイントカットを利用し,ほとんどの場合に既存のAspectJによる記述よりも変更に強く簡潔な記述が可能であることを確認した.
著者
中島 震
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.2_26-2_32, 2018-04-24 (Released:2018-06-25)

統計的な機械学習プログラムには通常のソフトウェア・テスティングが前提とする確定的なオラクルが存在しない.相対的な正解値に基づく疑似オラクルを用いることになる.その具体的な方法として,多様なデータを入力して検査するメタモルフィック・テスティングが有力である.一方,機械学習プログラムへの入力は多数のデータからなるデータセットである.データ分布の違いが入力の多様性を表すといってよい.本稿は,コーナケース・テスティングを目的として,適切な偏りを持つ入力データセットを得るフォローアップ入力生成の新しい方法を提案する.具体例として,サポートベクタマシンならびにニューラルネットへの適用事例を報告する.
著者
森 彰 松本 吉弘
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_362-4_373, 1995-07-17 (Released:2018-11-05)

圏論は抽象数学から派生した代数的手法であるが,構文と意味の関係を厳密に定義できることと,可換図式や普遍写像性などによって,数学的構造を視覚的に扱うことができることから,ソフトウェア設計における意味の可視化に役立つものと考えられる.本論文では,情報システムを構成するデータ集合間のシグネチャを圏によって可視化することで,ソフトウェア設計の形式化を図る試みについて論じる.まず,ソフトウェアの統一意味モデルという概念を,GoguenとBurstallによって導入されたインスティチューションの概念を借りて説明し,この意味モデルがソフトウェア設計に占める重要性について論じる.そして次に,この意味モデルを圏を用いて可視化する方法について述べ,それがソフトウェア設計の形式化にどう役立つかを考察する.
著者
竹川 佳成 寺田 努 西尾 章治郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.4_51-4_59, 2006 (Released:2007-06-11)

鍵盤演奏において運指は演奏に影響する重要な要素であるが,同じ楽曲であっても演奏家の身体的特徴や音楽の表現方法によってさまざまな運指が考えられるため,楽曲から運指を一意に決定することは難しい.一方,実際に演奏を聴きながらリアルタイムで演奏者の運指情報を得られれば効率的な演奏学習や奏者と一体感のある音楽視聴が可能となる.そこで,本研究ではカメラベースのシンプルな画像処理と,鍵盤や運指特性から得られた演奏ルールを組み合わせることで,実時間で高精度に運指を取得するシステムを構築する.さらに,鍵盤習熟者による評価実験を行うことで,システムの有効性を検証する.
著者
千葉 滋 立堀 道昭 佐藤 芳樹 中川 清志
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.427-437, 2004-11-25 (Released:2008-11-30)

リフレクションの研究は,計算モデルが先行したので,当初実装は素朴なものばかりで実用にはならないとされていた.本論文は,素朴な実装では実行時に全て動的におこなっていた処理を,機能に制限を加えつつも,静的におこなえるようにし,実行速度を改善する技術について述べる.我々が開発したこの技術により,C++言語やJava言語のような実行効率が重視される言語でも,リフレクション機能を利用することが可能になった.また本論文は,リフレクションとアスペクト指向プログラミングとの関連を軸に,この分野の研究の今後の展望について,著者らの見解を述べる.
著者
山口 高平 福田 直樹 小出 誠二
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.4_12-4_18, 2005-10-26 (Released:2008-09-09)

セマンティックWebのバックボーンとして位置づけられるオントロジーは,知識ベース構築のプリミティブとしての意義を継承しつつも,Webの特徴である拡張性や分散性に対応するための新しい特徴を併せ持つ.本稿では,オントロジー記述言語OWLの特徴を要約すると共に,ソフトウェア工学の新しい潮流であるWebサービスを高度化する視点からOWLの記述能力についても言及する.