著者
松井 康博
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.430-434, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
7

連続生産は2002年頃から始まった医薬品の品質向上のために新技術の採用を促進する取り組みの一環であり、QbD とも深い関係があると考えられる。連続生産ではスケールアップが不要であること、及び、製造工程を常時PATツールによりリアルタイムモニタリングすることからQbDアプローチの適用に適しており、高品質な医薬品の設計に有用であると考えられる。連続生産の実用化に向けては技術上、規制上の課題はあるが、近い将来それらが解決されて高品質な医薬品の迅速な提供に貢献することが期待される。
著者
橋本 知幸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.359-361, 2021 (Released:2021-05-01)

衛生害虫対策は、防除対象となる媒介害虫、有害害虫、不快害虫の区分や発生環境によって、目標や手法が異なる。世界的には感染症対策としてのベクターコントロールが重要であるが、日本では媒介害虫の意義が低減し、不快害虫対策の需要が増えてきた。しかし近年、新興・再興感染症の増加に伴い、そのフェーズが変わりつつある。ここでは衛生害虫対策の目的、基本的手順、今後の課題について概説する。
著者
武藤 敦彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.396-401, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
12

衛生害虫や生活害虫(有害・不快害虫)に対して用いられる家庭用や防疫用の殺虫剤について、薬機法などによる法的規制、エアゾール剤、ベイト剤、蚊取り剤などの剤形、有機リン系化合物、ピレスロイドなどの有効成分、毒性・安全性、殺虫剤抵抗性および近年問題となっているマダニやヒアリなどに対する殺虫剤分野での対応などについて解説した。
著者
内山 茂久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.729-732, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
7

近年,紙巻タバコの有害性が問題となり,電子タバコや加熱式タバコなどの非燃焼式タバコが普及している,しかし,最近,米国で電子タバコの喫煙による肺障害,さらに関連する死者も報告されている.現在,肺疾患の原因となる化学物質は特定されていないが,非燃焼式タバコから多くのカルボニル化合物やオキシド類が検出されている.また,主流煙は2μm以下の微小粒子が大半を占め,直接肺胞に達することから健康影響が懸念される.
著者
若杉 安希乃
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.235-239, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
4

「目は口ほどにものをいう」「病は気から」等のことわざは,古くから語り伝えられてきた.誰が言い出したのかは不明ではあるが,そのほとんどが,真実を鋭く言い当てているものが多い.当研究所では,漢方薬の治療効果と自律神経との関係を明らかにすることを目的に赤外線電子瞳孔計(イリスコーダ,Iriscorder C-7364,浜松ホトニクス社製)を用いた自律神経機能検査を実施している(図1).瞳孔反応と漢方薬の関係から,「目は口ほどにものをいう」を科学的に確認することができたので,紹介したい.
著者
佐竹 真幸
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.309-310, 1996-03-01
被引用文献数
1
著者
岩宮 貴紘 野上 健一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.56-58, 2022

近年世界的に急増している心不全に対して,再生・細胞医療による新規治療方法の開発が盛んに行われているが,いずれの製品も臨床試験での治療効果や商業利用には課題があり,十分な実用化には至っていない.本稿では,実用化における課題点について提起し,これらを克服することを目指したメトセラの自家再生医療等製品MTC001の製品特徴について紹介するとともに,当社が考える自家再生医療等製品の一般医療化の展望について述べたい.
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.288-289, 2019

表紙の説明:春の野山にすみれの花を探しに行った.山の斜面にすみれとは違う鮮やかなショッキングピンクの花が視界の中に飛び込んできた.「カタクリだ!」思いがけない出会いほどうれしいものはない.カタクリの粉は,現在は食用に用いられることが多いが,昔は滋養薬としても利用されていた.カタクリの開花時期は咲く場所の気候・標高・環境の 違いにより3月から6月までと幅広い.カタクリの群生地に出かけるのも楽しいが,春の野山をハイキングし,思いがけない出会いを楽しんでみては?
著者
池谷 裕二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.473, 2015 (Released:2018-08-26)

小山隆太博士は酒に酔うと人柄が一変します.シラフのときでも自身の考えをテキパキと話すタイプですが,アルコールが回ると更に遠慮なく本音を語ります.言うまでもないことですが,とめどもなくクドく,そして,アツいです.そんな彼が昨年の酒席でこぼしていた言葉が「日本薬学会には足を向けて寝られない.私は薬学に育ててもらったようなものだ」です.小山博士が学部学生だった頃から14年間にわたって交流してきた私には,この発言が口からの出まかせでなく,本心からのものであることがよく分かります.それほどまでに日本薬学会を愛する小山博士が,この度,同会の奨励賞を受賞されました.どれほど喜んでおられることか.心より「おめでとう」とお祝い申し上げます.
著者
池田 幸弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.56-57, 2016

道修町,難読地名である.不勉強な筆者は薬に関わる仕事に就いてからこの町を「どしょうまち」と呼ぶことを知った.調べてみると,昔は「どうしゅまち」と呼ばれていたのが,訛って「どしょうまち」になったようである.その源は,古くはこのあたりは道修谷と呼ばれていた,北山道修という医師が居て門前に薬屋が集まってきたなど諸説ある.
著者
久下 周佐 関根 僚也 色川 隼人 武田 洸樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.147-151, 2022 (Released:2022-02-01)
参考文献数
25

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し,パンデミックを起こしてから2年以上経過したが,いまだその混乱は続き、終息の目途は立たない。一方で、COVID-19の予防や治療を目的とした医薬品の開発および使用が驚異的なスピードで進んでおり,発生後1年以内に既存薬の使用や、mRNAワクチンの開発、中和抗体医薬の開発がなされた。そして2年後の現在、経口治療薬が開発され、実用化されようとしている。本稿では、これらCOVID-19に関する医薬品の開発の状況を振り返り、期待される経口治療薬の開発の経緯、現状と今後について述べる。
著者
五十嵐 中
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.937-941, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
7

「日本の医療費(国民医療費)は,平成24年実績で年間39兆円です」…数字が大きすぎて,あまり実感が湧かない.「1人当たりにすると,年間30.8万円です」…今度は小さすぎて,やはり実感が湧かない.「この教室,だいたい150人いますね.1部屋で,年間4,000万から5,000万円ですね.」このあたりの金額を出すと,ようやく「手頃」にイメージできるようになる.年々医療費が増大していくなか,臨床系の学会でも,「〇〇の医療経済」「××の費用対効果」のタイトルを時折目にするようになった.マイナーな分野に陽が当たるようになったのは嬉しいことである.ただ残念なことに,まだまだ誤解されることも多い.このコラムでは,薬剤経済評価・費用対効果評価について,「そもそも何なのか」「どうやって評価するのか」「評価結果をどう使うのか」に分けて紹介していきたい.

1 0 0 0 結膜炎

著者
内尾 英一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.196-200, 2014

結膜(conjunctiva)は眼表面を覆う粘膜組織で,角膜以外の部分を指す.球結膜(bulbar conjunctiva)と瞼結膜(palpebral conjunctiva),その移行部である結膜円蓋(conjunctival fornix)から成っている.表面は涙液で保護されている重層扁平上皮組織であり,上皮には結膜上皮細胞以外に粘液を分泌する杯細胞がある.上皮下には血管や各種の細胞が豊富に存在する.眼球とは疎に結合し,眼球を保護し滑らかに運動させる機能がある(図1).<br>結膜は眼表面(ocular surface)を形成し,外界に直接接している部位である.そのため感染症やアレルギーなどの炎症を生じやすい特徴があり,臨床所見は様々である.本来動物は海の中で進化していたが,両生類以降陸上で生活をするようになると,眼表面の乾燥を防ぐために涙液を持つようになり,さらに眼瞼も陸上生活に対応して備わった.魚類には眼瞼はない.瞬目(まばたき)をすることにより乾燥を防ぎ,涙液を行き渡らせることができるが,これは進化の結果として獲得したものである.しかし現代の生活では様々な要因で乾燥しがちであり,ドライアイも増加している.<br>結膜炎は結膜の炎症性疾患であるが,原因によりアレルギー性結膜疾患と感染性結膜炎とに大別される.すなわち,非感染性結膜炎と感染性結膜炎である.