出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.288-289, 2020

ミニ特集:乾癬治療の最前線<br>ミニ特集にあたって:乾癬は,慢性炎症性の皮膚疾患であり,皮膚の細胞が異常に増殖することでかゆみ,爪の変形,関節炎等様々な症状が発現する.また,乾癬という病名や見た目から"感染する"とよく誤解されるが,うつることはなく,遺伝的素因に様々な環境因子(不規則な生活や食事,ストレス,肥満,感染症,特殊な薬剤など)が原因であると言われている.これまで乾癬の治療には,外用療法,光線(紫外線)療法,内服療法が行われていたが,近年生物学的製剤による注射治療が開発され,患者QOLの向上に大きく貢献している.本稿では,乾癬の臨床や研究に携わっている先生方にご執筆いただくことにより,今後の乾癬治療や啓発活動について考えていきたい.<br>表紙の説明:いよいよ新学期.大学には新入生が,職場には新人が入ってくる.受験時には,天神さん(天満宮)に合格祈願した読者も多いのではないだろうか.天満宮に祀られている菅原道真は,梅をこよなく愛し,大宰府に左遷させられた道真を慕って京から梅の木が飛んできたとの伝承がある(飛梅伝説).そんなことから,梅鉢紋が三階松紋と並んで天満宮の神紋になっているらしい.電子付録では,波乱万丈の道真の生涯,梅の花,梅にまつわる文化,さらには梅の家紋と著名人を紹介したい.
著者
牧野 健一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1166, 2018

「ひらめき」は,突然かつ瞬間的になされる学習であり,心理学においては洞察学習と呼ばれる学習機構である.らに,洞察学習の特徴として,学習の成立に伴った快と驚きの情動反応,すなわち「アハ体験」(Aha! moment)が生じることが知られている.<br>近年では,洞察学習時における脳活動に関して,主にヒトfMRIを用いた研究が行われている.現在までに,洞察学習に付随した前帯状皮質や海馬などの脳領域の活動上昇が報告されている.しかしながら,洞察学習時における脳活動は,特に皮質下領域の活動性に関しては,未だ十分に明らかとなってはいない.本稿では,7Teslaの超高磁場fMRI(7 T fMRI)を用いることで,アハ体験と相関したドパミン神経系の活動を捉えることに成功した知見を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Köhler W., "The mentality of apes", Routledge & Kegan Paul, London(1925).<br>2) Topolinski S., Reber R., <i>Curr</i>. <i>Dir</i>. <i>Psychol</i>. <i>Sci</i>., <b>19</b>, 402-405(2010).<br>3) Luo J., Niki K., <i>Hippocampus</i>, <b>13</b>, 316-323(2003).<br>4) Aziz-Zadeh L. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Hum</i>. <i>Brain</i> <i>Mapp</i>., <b>30</b>, 908-916(2009).<br>5) Tik M. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Hum</i>. <i>Brain</i> <i>Mapp</i>., in press.
著者
栗原 堅三
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.95-98, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
7

私が北大薬学部に在籍していた頃,研究室の共通テーマは神経と感覚であった.教室員はこの範囲で,各自が独自の好きな研究を行っており,それなりの成果を挙げていた.教授はお金を持ってきて,教室員には自由に研究させると言えばかっこいいが,要は研究室をあげて1つのテーマで統一した研究をやらせるだけの実力と指導力がなかったのに過ぎない.そんな中で,ここに取り上げる「うま味」は,私が大学院の学生諸君と一緒にやった研究である.うま味が世界のUMAMIになるまでには,私以外の多くの優れた研究者が貢献してきたが,ここでは私たちの研究を中心に話を進めさせていただきたい.うま味物質は,グルタミン酸(コンブ),イノシン酸(カツオブシ),グアニル酸(干しシイタケ)の3者である.実はそれぞれの単体のうま味はそれほど強くないが,グルタミン酸とイノシン酸またはグアニル酸を混合すると,大きな相乗作用が働き,5倍も6倍もうま味が強くなる.ところで,コンブの「だし」には,グルタミン酸とアスパラギン酸(グルタミン酸より弱いがうま味を持っている)が圧倒的に多く,他のアミノ酸はごく微量しか含まれていない.コンブ「だし」は純粋なうま味溶液と言える.また母乳にはグルタミン酸が含まれているが,その含量は突出しており,なんとコンブ「だし」のそれとほぼ同程度である.
著者
高橋 秀依
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.297-300, 2017 (Released:2017-04-01)
参考文献数
4

医薬品の一般名に含まれるステムは、医薬品を体系的に理解するために重要である。本稿では、ステムの具体的な活用の仕方についてSGLT2阻害剤のステムを例にあげて解説し、その他の汎用されるステムや最近の生物製剤のステムについてまとめた。ステムを活用することで医薬品の理解が深まることが期待される。

1 0 0 0 OA 5TOOs

著者
望月 眞弓
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.236_1, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
1

新薬は治験において有効性や安全性が確認されているが,その治験には限界があることについて,以下の5つのTOOで表現されている.市販後にこうした限界を克服する調査や試験を行うなどして情報を補完することが重要である.too few:症例数が少ないtoo narrow:腎機能・肝機能障害,妊婦などの特殊な患者は除外されているtoo median-aged:高齢者や小児は除外されているtoo simple:投与方法が単純で,併用薬などが使われていない too brief:投与期間が短く,長期投与の結果が不明である
著者
煙山 紀子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1147, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
2

健康長寿に良い食事とは―これまで,様々な食事法が考案され,現在のところ寿命延長が効果的とされる最も有名なものはカロリー制限である.それでは,カロリーを構成する三大栄養素である,炭水化物・タンパク質・脂質の適切な摂取比率はどうであろうか.こちらについてはいまだ議論が尽きない.例えば,炭水化物を制限した食事法は短期的には減量に効果的とされるが,長期的な影響は不明な点も多い.また,食事中の炭水化物や脂質が多いと総カロリー摂取の増加につながり,肥満や糖・脂質代謝に悪影響を及ぼす懸念もある.このような背景の中,慢性的な高タンパク・低炭水化物食を与えたマウスはやせ型を示したにもかかわらず,寿命が縮まったという最近の知見を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Solon-Biet S. M. et al., Cell Metab., 19, 418-430 (2014).2) Levine M. E. et al., Cell Metab., 19, 407-417 (2014).
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.2-3, 2017

特集:躍進するがん免疫療法<br>特集にあたって:がん免疫療法は,外科手術,化学療法,放射線療法に続く第4のがん治療として期待され,近年の腫瘍関連抗原の同定や免疫機能の解明に伴い,治療の表舞台に躍進してきた.最近では,免疫チェックポイント分子CTLA-4,PD-1に対する抗体が臨床試験で画期的な効果を示し,国内でも発売に至っている.また,がんワクチン療法,T細胞養子免疫療法の臨床試験が精力的に進められているほか,他の抗がん剤との複合免疫療法やDDSにより治療効果を高めるための取り組みもなされている.本特集号では,こうした多様ながん免疫療法の最前線に加えて,今後重要性が増してくる臨床現場での効果予測診断法や薬剤師の役割についても紹介する.<br>表紙の説明:表紙の写真は,富士山頂にかかる太陽の光がダイヤのように輝く「ダイヤモンド富士」である.ダイヤモンド富士の名所で知られる山中湖では,正月の前後2か月間にわたり,この優美な姿を拝むことができる.抗PD-1抗体をはじめとした日本の免疫学の基礎研究成果が,がん免疫療法の躍進をもたらし,がんの実医療に大きく貢献する様子をダイヤモンド富士の光と重ねてみた.
著者
長瀬 博 沓村 憲樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.846-850, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
23

鎮痛作用に関与するオピオイド受容体にはμ、δ、κの3つのタイプがあり、依存性はμ受容体を介して発現する。長瀬らは、独自のモルヒナン構造を母核としたκ受容体選択的作動薬ナルフラフィンの創出し、難治性そう痒症治療薬として上市に成功した。また、ナルフラフィンを用いて、なぜ引っ掻くと痒みが鎮まるのかという長年の謎の解明に迫った。さらに、鎮痛薬として開発したδ受容体作動薬の光学異性体が、アトピー性の痒みに関与するMRGPRX2に作動活性を示す事も見出した。
著者
三浦 克之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.140, 2021

予想外の結果が出ることで研究の面白さを感じることがある。ここでは山中伸弥先生が大学院時代、研究指導をしていた私の予想とは全く逆の予想外の実験結果に遭遇し、研究への情熱が高まったというお話。私の仮説は血小板活性化因子による血圧低下作用はトロンボキサンA2を抑えると消失する。仮説自身、意味不明と思われるかもしれない。しかし、結果は想定外の降圧反応の増強。何が起こっていたのかを解説したいと思う。
著者
寺崎 哲也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.447, 2020

帝京大学の出口芳春氏が「<i>In vitro</i>血液脳関門モデルおよびマイクロダイアリシス法を用いた薬物の血液脳関門輸送機構解析」の業績で,このたび日本薬学会学術貢献賞を受賞した.出口氏は独自の方法論と解析法を展開し,血液脳関門薬物輸送研究を通して薬剤学・薬物動態学の発展に貢献した.
著者
木澤 義之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-109, 2020

アドバンス・ケア・プランニングとは「将来の意思決定能力の低下に備えて、今後の治療・ケアに関する意向、代理決定者などについて患者・家族、・医療者があらかじめ話し合うプロセス」を指す。その実践の要点は、1)侵襲的でないコミュニケーション、2)代理決定者をまず選定し、代理決定者とともに意思決定を進めること、3)事前指示書などの書類の作成にとらわれず、患者の価値感や決断の理由を探索すること、である。
著者
高山 幸三
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, 1999-09-01