- 著者
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中澤 高清
青木 周司
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1991
南極及びグリーンランドで掘削された氷床コアを分析することによって過去の温室効果気体の変動を推定するために、コアから効率よく空気を抽出する装置と試料気気中に含まれるCO_2,CH_4,N_2C,CO_2のδ^<13>Cを高精度で定量する装置を開発した。総合分析精度はそれぞれ、1ppmv,10ppbv,2ppbv,0.05%以内であった。これらの装置を用いて南極みずほコア,南やまとコア,グリーンランドSiteJコアを分析した結果、以下のことが明らかとなった。1.9000-250年前の後氷期におけるCO_2,CH_4,N_2O濃度は280.9±4.6ppmv,729±30ppbv,265±8ppbvとほぼ一定であった。しかし、何れの気体の濃度も、人間活動の影響によってこの250年の間に急速に増加し、現在のレベるに達した。2.南やまとコアを分析することによって得られたCO_2,CH_4,N_2O濃度は213.3±4.6ppmv,484±44ppbv,243±10ppbvであり、後氷期の値よりかなり低く、このコアは氷河期のものであることが示唆された。また、δ13CはCO_2濃度の変動とほぼ逆相関となっており、このことから、氷河期の大気中のCO_2濃度の変動は海洋生物活動に帰依されると考えられる。3.みずほコア及びSite Jコアから得られた250年以前のCH_4濃度はそれぞれ701±10ppbv,756±10ppbvであり、工業化以前でも自然的発生源の強度の違いを反映して、南半球高緯度よりも北半球高緯度において濃度が高かったことを意味している。また、現在の南北両半球の濃度差は本研究で得られた値の役3倍であり、CH_4の濃度増加の原因は北半球における人間活動による発生源の強まり、あるいは消滅源の弱まりによるものと考えられる。