著者
田島 惇 中野 優 牛山 知己 大田原 佳久 太田 信隆 阿曽 佳郎
出版者
浜松医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本研究者らは合計152回(生体81、死体71回)の腎移植を施行してきた。なお本研究期間では、32例の死体腎移植を施行した。われわれの症例では、全例心停止後の腎提供のため、述後急性尿細管壊死(ATN)は不可避であった。この自験例において、ATN中の適切な免疫抑制法とその間の管理を中心に、検討した。1)術後ATN中の免疫抑制法について:シクロスポリン(Cs)の登場により、死体腎移植成績は飛躍的に向上した。Csが入手可能となってから、Cs(12mg/kgで開始)とlow doseのステロイド(60mg/dayより漸減)で免疫抑制を行ったが、1年間の死体腎生着率は80%弱と著明に向上した。Csの投与量は、主に血中のCs濃度および移植腎生検像から調節した。免疫抑制状態の指標としては、リンパ球サブセットOKT4/8が有用であった。この比が0.6以下の場合は、過剰な免疫抑制状態であると考えられた。拒絶反応の治療としては、従来のステロイド療法に加え、OKT3の使用が可能となったが、その有用性は高く、優れた臨床効果を示した。2)ATN中の管理:ATN中移植腎合併症の診断における超音波移植腎針生検は極めて有用である。生検像のDNA polymerase-αによる免疫組織化学により、ATNからの回復状態を評価することができた。本研究者らの開発したリンパ球除去を、ATN中のステロイド抵抗性の拒絶反応の治療に応用し、優れた効果が得られた。またリンパ球除去システムを、従来のシステムより安全かつ容易なシステムへの改善の試みを行った。Cs血中濃度測定では、FPIA法がベッドサイドで簡便にできる点が優れている。Cs腎毒性のレニン-アルドステロン系の関与が示唆された。ATN中のCMV感染症に対するガンシクロビル、白血球減少に対するColony Stimulating Factorの有用性が確認された。死体腎の潅流液としてUW solutionを用いた場合、従来のコリンズ液よりATNの期間が短縮される可能性が示された。静岡県の死体腎提供の分析をした。
著者
中村 幸雄
出版者
杏林大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

重症排卵障害による不妊症例に対しゴナドトロピン(hMG)律動的皮下投与法による排卵誘発を試み、その有効性、低多胎発生率や排卵機序を解明した。従来の連日筋注法より高い排卵率、妊娠率が得られ、副作用の一つである多胎発生も認められなかった。低多胎発生率の理由として律動的皮下投与法では複数個の卵胞が発育しても実際に破裂する卵胞が少数のため多胎発生が少ないものと考えられた。また多嚢胞性卵巣症候群ではゴナドトロピン療法中に卵巣過剰刺激症候群(OMSS)を発生しやすいが、その機序としてLFSH比の高値が考えられた。GnRHアゴニストを併用することによりLH/FSH比が有意に低下し、OHSSの予防が可能であった。hMG律動的皮下投与法に妊娠した18症例の着床-非着床期間の血中ホルモン動態を詳細に比較解析し、妊娠成立のための至適内分泌環境、特に黄体機能についても検討を加えた。着床においてはP,E_2の高値ではなく、P/E_2値が重要な意義をもっており、黄体期初期から中期におけるP/E_2比の高値症例で妊娠成立の可能性が高いと考えられた。また連日筋中法ではpremature luteinizationやpremature LH riseが高頻度に出現し、妊娠成立に悪影響を及ぼすとされているが、律動的皮下投与法でもそれらは高頻度(40〜50%)に出現した。しかし着床、非着床期間にその出現頻度とパターンに差違が認められなかったことより、妊娠成立の予後を左右する因子とは成り得ないことが確認された。以上の3年間の研究成果より、hMG律動的皮下投与法は高い排卵率や妊娠率、低多胎発生、重篤なOHSSの防止などの優れた排卵誘発法であり、重傷排卵障害患者に対して有効な治療法として臨床的意義をもつものと考えられた。
著者
藤井 靖彦 鬼塚 初喜 野村 雅夫 冨安 博 岡本 眞實
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

昨年度の研究結果に基づき、本年度の主要な研究タ-ゲットを次のように設定した。1.ガドリニウムのイオン交換クロマトグラフィ-を行い、同位体分離係数を実測する。2.高速陰イオン交換樹脂を充填した、分離装置を使用してUー232,Uー233の濃縮挙動を解析し、他のウラン同位体と比較する。3.100℃以上での化学交換ウラン濃縮実験を行い、同位体分離係数の温度依存性を検討する。本年の研究結果は上記番号と対応し、次の通りである。1.EDTA、りんご酸を錯形成剤とするガドリニウムのイオン交換クロマトグラフィ-を行い、20m及び14mの長距離展開により、Gdー156,Gdー157,Gdー158のGdー160に対する同位体分離係数を決定した。EDTA系ではこの値が3.9×10^<-5>,4.0×10^<-5>,2.5×10^<-5>(上記同位体に対し)の値であった。2.U(IV)ーU(VI)交換陰イオン交換クロマトグラフィ-を90m/日の速度で約200m展開し、Uー232,Uー233,Uー234,Uー235の濃縮挙動を実験的に検討した。その結果、奇数のUー233はUー235と同じ方向の異常性示し、Uー232は他の偶数核種と同じ正常性を示した。この事から同位体効果の偶・奇数依存性が確認され、核スピンが関与することが明らかとなった。3.87℃と160℃でU(IV)ーU(VI)交換陰イオン交換クロマトグラフィ-を行い、同位体分離係数が温度に依存しない結果を得た。これも従来の理論を覆す事実である。
著者
遠山 柾雄 岩崎 正美 木下 収 杉本 勝男 竹内 芳親
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

高温乾燥の激しいメキシコ沙漠の海岸砂丘地で、野菜の生産性増大に関する基礎研究を行った。供試野菜は小松菜,廿日大根,ベカナ,チンゲンサイ,レタス,グリーンデビューの6種で、これらの野菜栽培に対して点滴かんがい法,保水剤の利用,かん水頻度とかん水量等による節水技術の確立を行った。また、良質のかんがい水として空中水分を除湿機により採取し、それを育苗床へ利用することを試みた。メキシコ砂漠の地下水のEC1442μs/cmに対し、除湿水は266μs/cmで極めて良質であった。地下水に対する葉重がレタス1.9倍,チンゲンサイ1.6倍となったように、その除湿水は育苗に対して顕著な効果をあげた。また、9種の保水剤を利用した実験においてチンゲンサイの葉重には増収効果が表われたが、その中で最大の効果をあげた保水剤は約60%で、全体的には国内実験に比較して効果があがらなかった。これはかんがい水中の塩分が影響しているためであり、沙漠緑化に対しては耐塩性保水剤の開発が急務であることが示唆された。また、同量のかん水量に対して、かん水頻度の多い方がチンゲンサイの葉重は増加した。
著者
鈴木 康夫
出版者
静岡県立大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は本年度で終了する。本研究の目的は、インフルエンザウイルスの宿主変異機構を明らかにし、その成果をもとに新規な抗インフルエンザ薬や次世代のワクチンをデザインする実験的基盤を確立する事である。この目的は下記のとおりおおむね達成された。本研究は、インフルエンザウイルスの進化、宿主変異機構の核心を突く研究に発展しつつあり、今後さらに本研究が継続できればと願っている。1)ヒトおよび動物から分離されたインフルエンザウイルスの受容体解析によりインフルエンザウイルス宿主が持つ受容体シアル酸の分子種に(Neu54Ac,Neu5Gc)および結合様式(Neu5Ac2-3Gal,Neu5Ac2-6Gal)に結合できるものが選択されその繰り返しにより宿主変異を遂げる可能性が明らかとなった。2)その証拠としてN-グリコリルノイラン酸(Neu5Gc)分子種を気道上皮細胞に持つ動物種(ウマ、ブタ)から分離されるウイルスはすべてNeu5Gc含有糖類を受容体とすること、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を気道上皮に持つ動物(ヒト)から分離されたウイルスはNeu5Acと結合することが分かった。3)シアル酸結合様式が異なるMDCK細胞と発育鶏卵細胞でインフルエンザ患者(ヒト)から分離したウイルスを継代すると、前者においてはNeu5Ac2-6Galを認識するウイルスが分離されるが、発育鶏卵で継代するとNeu5Ac2-3Galに強く結合するウイルスが選択されやすいことが分かった。4)インフルエンザウイルスは宿主により受容体認識の性質は変異するが、これは末端シアル酸の分子種、およびシアル酸の結合様式のみであり、どのウイルスもシアル酸α2-3(6)Galβ1-3(4)GlcNAcβ1-構造を最も強く認識するが判明した。このことから、上記糖鎖がインフルエンザウイルスに共通した受容体構造であり、この類似体および抗イデヤオタイプ抗体はウイルスの変異を克服した広域性のある抗ウイルス薬として、また受容体抗体は広域性のある次世代インフルエンザワクチンとして有効であることが実験的に明らかとなった。
著者
喜田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

新型インフルエンザウイルスの出現機構に関する我々の仮説を実証し、さらに、今後出現し得る新型ウイルスの抗原亜型の予測に資するため、ウイルス遺伝子を詳細に解析するとともに、豚を用いて感染実験を実施し、以下の成績を得た。1.中国南部の家禽から分離されたH3インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)の抗原性ならびにその遺伝子を詳細に解析した。得られた成績から、中国南部では家禽が渡り鴨由来ウイルスを豚に伝播する役割を果たしたことが分子生物学的に裏付けられた。2.由来宿主を異にするH3およびH1インフルエンザウイルスに対する豚の感受性をしらべた。実験の結果、豚の呼吸器は豚および人のインフルエンザウイルスのみならず、渡り鴨および家鴨のH3ウイルスにも感受性を示すことが明らかになった。さらに、豚の呼吸器では容易に遺伝子再集合ウイルスが産生されることが実証された。3.H2ーH13HA亜型の鳥類由来インフルエンザウイルスの豚における増殖と抗体応答をしらべた。実験の結果、これまで鳥類のみに分布するとされていた多くの抗原亜型のウイルスが豚に感染し、その呼吸器で増殖することが明らかとなった。またこれらの鳥類由来ウイルスに感染し、鼻汁中にウイルスを排泄した豚の血清はホモのウイルスの血球凝集を阻止しなかったが、明らかな血中抗体応答がELISAによって検出された。以上の成績は何れの抗原亜型のHAをもつウイルスも豚に導入され得ること、ひいては新型ウイルスとして今後人の間に出現する可能性があることを示唆している。また血球凝集阻止試験による血清疫学成績が必ずしも正確な情報を提供しないことが示された。
著者
水谷 幸正 藤堂 俊英 渡辺 千寿子 場知賀 礼文 藤本 浄彦 小西 輝夫 田宮 仁
出版者
佛教大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

医療技術の進歩と高齢化社会の到来によって、より問題化してきた終末看護に、仏教的叡智を体して対応しうる人材を養成することは、その原理的精神を継承する日本仏教の、またそれを教授指導する仏教系学府の今日的使命の一つであるといえる。そうした認識をふまえて本研究は三期七年にわたる「仏教とターミナル・ケアに関する研究」を先行する基礎的理論的研究とし、さらにその成果をもとに平成5年4月より本学専攻科内に本邦で最初の仏教看護コースを開設した。その就学者には看護僧をめざす僧尼ばかりでなく、第一線の看護、社会福祉、社会教育に携わる人々も含まれることになり、仏教精神を体した日本的ターミナルケアの本格的な稼働が如何に待望されているかを知らしめられることになった。今回の一期二年にわたる研究は当該コースにおける教授指導を通してターミナルケア従事者、特に仏教看護僧の養成に当っての教授法やカリキュラムについて多角的、また統合的な検討を加えて行った。その成果は順次、仏教看護コースの教授の中に活かされ、その充実に資するところとなった。仏教看護コースの修学年限は一ヶ年(二年まで可)であるが、欧米では定着している大学院レヴェルでの教育システムの中で専門家を養成して行くことで、日本におけるターミナルケア従事者の裾野を充実したものに広げて行くことが次の課題となった。またそうした構想の実現を通して、日本社会におけるターミナルケア従事者、仏教看護者の受け入れ体制も徐々に整って行くことであろう。尚、先行する「仏教とターミナルケアに関する研究」の三冊の報告書が新たな編集のもとに法蔵館(京都)より出版されることとなった。この公刊により日本におけるターミナルケアに対する理解が一層深まることを期待したい。
著者
松久保 隆 大川 由一 田崎 雅和 高江洲 義矩 山本 秀樹 坂田 三弥
出版者
東京歯科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、食品の咀嚼性の評価方法や個人の咀嚼性を解析するための指標食品を得ることを目的としている。今期の課題は、平成2年度に得られた結果をふまえて食品咀嚼中の下顎運動解析によって得られる運動速度の各咀嚼サイクルが、食品の咀嚼中の状態変化をとらえることが可能かどうか、各咀嚼サイクルの出現頻度と被験者の咀嚼指数および歯牙接触面積とにどのような関係があるかを検討することを研究目的とした。顎関節に異常がない成人6名を被験者とした。被験食品は、蒲鉾、フランスパン、スルメ、もち、ガムミ-キャンディ-、キャラメル、ニンジンおよびガムベ-スとした。被験食品は一口大とした。下顎運動はサホン・ビジトレナ-MODEL3を用い、前頭面における下顎切歯点の軌跡を記録し、下顎運動速度の各咀嚼サイクルの開口から閉口までを1単位として分解し、パタ-ン分類を行なった。被験者の中心咬合位での歯牙接触面積ならびに石原の咀嚼指数の測定を行なった。下顎運動速度の各咀嚼サイクルは、被験食品で6種のパタ-ンに分類できた。すなわち、Uはキャラメル摂取の最初に認められるパタ-ンでとくに開・閉口時に食品の影響を著しく受けるもの、Vは開・閉口時に速度が遅くなるパタ-ン、Wは閉口時に速度が遅くなるパタ-ン、Yは開口時に速度が遅くなるパタ-ン、Xは人参の摂取初期に認められるパタ-ン、Zは開・閉口時ともに速度に影響がみられないパタ-ンであった。各パタ-ンの出現頻度と咀嚼指数および接触面積との関係を解析した結果、咀嚼性が高いと考えられる人は、硬い食品で、食品の影響をほとんど受けないパタ-ンZおよび閉口時に影響をうけるパタ-ンWが多く、閉口および閉口時に影響を受けているパタ-ンVが少ないと考えられた。このパタ-ン解析は、咀嚼中の食品の物性変化を表わすものとして重要な情報と考えられ、個人の咀嚼能力を示す指標食品の選択にも重要な歯科保健情報の一つと考えられた。
著者
中村 良夫 仲間 浩一
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究は、鉄道を始めとする軌道系交通に配慮した都市空間の計画・設計の考え方やその手法を提示することを目標に定め、以下のような具体的成果を得ることが出来た。まず、軌道系交通空間の都市における意味的な位置づけを把握する方向において、1.「地下鉄路線の認知構造に関する研究」を行い、地下鉄の利用者側から見たイメージアビリティとその路線認知のイメージ構造を明らかにし、都内地下鉄路線網のイメージ形成要因を整理した。2.「情景描写からみた駅のイメージに関する基礎的研究」を行い、駅空間の都市における位置づけを明らかにする目的で、「都市の顔」としての駅空間の原初的な特性と、交通網の結節点としての機能獲得と並行して個性喪失が進行した経緯を明らかにした。また今後の都市駅の在り方を国土全体のイメージの縮図として提言した。次に、視点場として軌道系交通空間をとらえ、得られる眺望景観が都市の骨格形成やイメージ形成に与える影響を分析する方向として、1.「ウオーターフロントの景観計画に関する基礎的研究」を行い、昭和初期の臨海都市開発における複合的な機能の接合に際して、鉄道が果たしたパブリックアクセス上の機能的役割、ならびに都市イメージ形成上の役割を明らかにした。また海水浴場の経営にあたっての、開発地域内での水上交通との連係方法を示した。2.「高架鉄道の車窓景観の分析手法に関する研究」において、JR京葉線/東京モノレールなど6路線を対象に、車窓からのシーケンス景観における視野占有要素の露出に着目した数量的評価手法を示した。また形態・文字情報からなる車窓景観の認識パターンや、車窓景観の移り変わりの度合いに着目した評価手法を示した。以上の研究の成果は、軌道系交通を活用した都市計画・設計に有用な知見を提供できるものと期待される。
著者
渡辺 隆 大場 孝信
出版者
上越教育大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

鉱物の組み合わせや鉱物の組成は温度や圧力などの物理条件が一定の時は母岩の組成に支配されることが良く知られているが、混合層鉱物の生成を母岩の化学組成との関係で考察されたものがほとんどない。これに関係するいくつかの研究があるが、世界の泥岩中の続成作用でできたイライト/スメクタイト混合層の化学組成や層電荷は、比較的良く似ていると述べている。このことは、世界の砕屑性堆積物の化学組成が似ており、そこからできるイライト/スメクタイト混合層の化学組成が似ていること示している。また、SiO2活性度がイライト化に関係があると報告している。これまでの研究で我々も、同じ層準で泥岩中のスメクタイトの方が砂岩中のスメクタイトよりイライト化がわずかに速いことを確認した。しかしながら、東頚城ボーリング試料を見るかぎり、砂岩と泥岩のSiO2量に違いはみられない。Altaner(1986)は、K-長石からのKの溶脱は、イライト化にともなうKのスメクタイトへの固定に比べ、はるかに大きいことを報告している。このことも、堆積物の粒子の大きさより鉱物の組み合わせが重要である事を示唆する。これらの結果と本研究の結果から考えると、新潟平野ボーリング試料と東頚城ボーリング試料の化学組成の違いは小さく、イライト化に重大な影響を与えていないように見える。深度増加にともなう温度の増加と、反応が進む継続時間の方が、イライト化進行にとって重要だと考えられる。また、東頚城ボーリング試料の砂岩と泥岩の化学組成はほとんど同じことから、砂岩と泥岩にイライト化進行の違いを認めるとするなら、源岩の化学組成の違いでない別の要因を考える必要がある。このため、スメクタイトからイライト化にともないKの供給物として、K-長石、火山ガラスや黒雲母の表面がどのように溶脱していくのかを詳細に検討をする必要がある。
著者
石田 英夫 重里 俊行 奥村 昭博 佐野 陽子
出版者
慶応義塾大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

金融機関といっても、機関によって特性の異なることも確認された。本研究では、(1)銀行、(2)保険、(3)証券、(4)外資系、と4つに分けた。金融全体で見ると私たちがすでにおこなった化学・エネルギ-大企業の本社事務職男子に比べて、総じて仕事の満足度が高いことがわかった。とくに、昇進、能力発揮、給与について満足しているが、労働時間や心身疲労では化学・エネルギ-より不満が多かった。定着性向、つまり定年までいるかという問いに、化学・エネルギ-は、59%がイエスであった。金融平均はそれより低いが、銀行は64%、外資系は11%という開きがあり、機関別に大きな差があることがわかる。HRMの重要な成果たる帰属意識についても、興味深い結果がえられた。内部化ともっとも関係の深いと思われる「運命共同体型」と「安定志向型」は、銀行がもっとも多く、次いで保険であった。反対に「希薄型」は、外資系と証券に多い。しかし、証券には「モ-レツ型」も多いし、外資系は「安定型」と「運命共同体」も多いというように、二分化の傾向が見られるから、単純に1つのモノサシで4つの機関の色分けはできないだろう。製造業を対象とした他の研究と比べると、革新型の帰属意識は見られず、金融機関の伝統的な意識構造の傾向が見られる。金融機関の給与が高いことも、従業員の定着や帰属意識に作用しているが、これは「支払能力」にあずかるところが大きい。しかしそれは、長期勤続者に大きく傾斜した高給与が多いから、利潤分配の性格があるだろう。さらにまた、銀行、証金、保険の各社は、1社のみ突出するのをきらうから、企業間のバランスという「相場」要因も重要である。この「相場」というのは、企業の「格」と言いかえることができる。このような所得配分メカニズムは、金融の特徴ではなく日本の大企業における中核的労働力に共通なものと思われる。
著者
伊理 正夫 今井 敏行 久保田 光一 室田 一雄 杉原 厚吉
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は,代表者伊理正夫が1983年に発案した高速自動微分法のためのソフトウェア試作と実際問題への応用を発展させ,実用技術として確立することを目的とした。本研究によって得られた成果をその目的に沿って述べると次のようになる。(1)プリプロセッサの改良:C++による処理系を試作し,既に製作してあったFORTRANによるものとともに改良を重ね,実験用ソフトウェアとしては一応の完成をみた。それらを移植し,種々の計算機上で高速自動微分法を利用可能にした。さらに,勾配の誤差も計算できるようにするなど改良を加えた。現在,サブル-チン等の副プログラムに対する処理,ベクトルプロセッサ向けの処理を導入すべく,処理系をさらに改良中である。(2)丸め誤差の推定の理論の厳密化,丸め誤差の推定値を積極的に利用する算法の開発・実験,実際的な問題への応用:理論的に従来の区間解析よりも優れていることを証明しただけでなく,応用時に問題になる計算グラフの作成方法の改良の必要性を指摘し,解決のためグラフの縮小法を開発した。実用面では,演算増幅器の直流解析などを例にした非線形方程式系解法への応用や,幾何的アルゴリズムを利用した地理的最適化問題に適用し,精度,速度,特に収束性を詳しく調べることを通じ,従来の方法に比べて高速自動微分法が有効であることを確認した。(3)高速自動微分法と数式処理システムとの融合:プリプロセッサが改良中であること,実用面での高速自動微分法の有効性の証明を精密に行なうのに時間と労力を費やしたため,この方面に関する研究は,完成しておらず,今後の課題として残された。上記の成果をふまえて,国際数理計画シンポジウム,京大数理解析研研究集会,情報処理学会研究会,SIAM Workshopなどでの発表,内外の研究者との交流を行い,本研究の成果が国際的に先導的地位にあることを確認した。
著者
杉山 純多 斉藤 成也
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1980年代に登場した分子系統進化学の新しい波は、これまで形態学中心の保守的な立場を堅持してきた菌類分類学にも波及し、1990年代初頭より菌類の分類・系統進化の研究は、新しい局面に入った。すなわち、菌類分子系統分類学と呼ぶ新しい研究分野が登場した。そのような背景を踏まえて、本研究は当初次の諸点を明らかにすることにあった。1.分子進化学的手法を用いて、高等菌類系統論の鍵を握るタフリナ目(Taphrinales)菌類の系統進化的関係を明らかにする。2.担子菌酵母・アナモルフ酵母の超微形態学的、細胞学的研究を行い、それらの形質の系統進化学的指標としての評価を行う。3.分子と形態の両形質の多面的解析から、高等菌類における系統進化の現代的構図を提示し、分類体系再構築の手がかりを探る。4.分子系統樹作成法の開発。その結果、次のような特筆すべき研究成果が得られた。1.18S rDNA 塩基配列の比較解析から、タフリナ目菌類などの系統進化的関係を明らかにして、子嚢菌類中の新主要系統群として“Archiascomycetes(古生子嚢菌類")を提案した。2.分子と形態の両形質の解析から、85年にもわたり子嚢菌類と堅く信じられてきたMixia osmundae(=Taphrina osmundae)は、担子菌類のサビキン菌類系統群に位置づけられることを明らかにした。3.担子菌類における担子菌類系酵母の系統関係を明らかにした。4.高等菌類は単系統であるが、下等菌類のツボカビ類と接合菌類は多系統であることを提示し、さらに複数の系統で鞭毛の消失が起こったことを示唆した。5.植物寄生菌類Protomyces属菌種の18S rRNA遺伝子中にグループIイントロンを発見し、当該遺伝子の異種生物間における水平移動を強く示唆した。6.分子系統樹作成法について、最尤法を用いた分子系統樹作成への並列配列論理プログラムの応用を検討し、論理プログラム言語の一つであるKL1を適用して開発した。
著者
山下 淳志郎 堤 史朗 中田 重厚
出版者
明星大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

この研究の目的は1890年代における近代製糸業の展開に伴う岡谷地域社会の構造転換の構造発生的把握である。その為1)岡谷近代製糸業成立・展開の構造的・機能的契機把握の問題、2)岡谷近代製糸業と経営・労務管理の展開、3)製糸労働力市場の再編と地主制共同体規制の三論点に焦点を絞り、国家・地域相互の媒介的規定関係を解明把握せんとした。岡谷近代器械製糸業は、地域レベルの自然的、社会構造的条件によるだけではなく、むしろ早急の近代化を目指す国家レベルにおける殖産興業政策の一環たる官による県営製糸場の設立、指導と民営育成促進の如き誘導勧業に応じ展開するが、国家独占資本蓄積機構整備上設置された国立銀行、その背後の日本銀行等金融関係による淘汰過程を通じて、片倉等大製糸の集中化とこれによる地域社会支配の構造基盤形成が現実化して行くのである。岡谷製糸業の労務管理施策は、その方向づけが農家経済の低生産性に依存する官僚主導案の中に先取り的に示され、その先導のもとで1870年代後半の開明社、80年の友誼社(工女取締り規則)、87年の共同揚返場の設立を経て、1902年の製糸同盟規約(女工登録制度)において整備され、工女労働力の確保は差別的に賞罰規定を含んだ等級賃金制によって果され、この事はまた貧困農家に原料繭の買い叩きを受認ならしめた。かくして製糸業労資関係は低生産の農家経済と封建的なイエ制度を構造的に組み込み、前近代性を性格付けられた。しかしこの前近代性の可能契機を成したのが、原料繭と工女労働力市場の調達を容易ならしめた地主制共同体規制の存在であるが、工女労働力市場の外延化に伴う労働力市場及び企業内支配秩序の機能的使い分けに依拠した地主制共同体規制の再編が、地域社会の全面的支配を完遂させ、岡谷近代器械製糸業の産業資本的発展を可能としたのである。
著者
徳永 幹雄 高柳 茂美 磯貝 浩久 橋本 公雄 多々納 秀雄 金崎 良三 菊 幸一
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、スポ-ツ選手に必要な「精神力」の内容を明らかにし、その診断法とトレ-ニング法を明らかにすることであった。3年間の研究成果は、次のとおりである。1「心理的競技能力診断検査」および「心理的パフォ-マンス診断検査」の作成スポ-ツ選手に必要な精神力の内容は、競技意欲を高める能力(忍耐力,闘争心,自己実現,勝利志向性),精神を安定・集中させる能力(自己コントロ-ル,リラックス,集中力),自信をもつ能力(自信,決断力),作戦能力(予測力,判断力)および協調性の5因子(12尺度)であることが明らかにされた。これらの結果、52の質問項目から構成される心理的競技能力診断検査と10項目から構成され、試合中の心理状態をみる心理的パフォ-マンス診断検査を作成した。いずれの調査も精神力の自己評価、実力発揮度の自己評価、競技成積などと高い相関が認められ、その有効性が証明された。また、2つの検査法には高い相関が認められ、心理的競技能力診断検査で高い得点を示す者ほど試合中に望ましい心理状態が作れることが予測された。今後、スポ-ツ選手の心理面のトレ-ニングに活用されるであろう。2心理的競技能力のトレ-ニング心理的競技能力診断検査の結果にもとづいて、それぞれの内容をトレ-ニングする方法をカセット・テ-プにまとめた。その一部は平成2年度国民体育大会福岡県選手に適用した。また、一般のスポ-ツ選手を対象としたメンタル・トレ-ニングの「手引き書」も作成した。3報告書の作成過去3年間の研究成果を報告書としてまとめた。
著者
山川 岩之助 阿部 一佳 田崎 健太郎 諏訪 伸夫 村木 征人 井上 一男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、我が国競技スポ-ツ選手の競技水準を世界のトップレベルまで引き上げることないしはそれに限りなく近づけることにある。具体的な研究方法としては、第一に、競技水準については、オリンピック大会におけるものを考察の対象とし、それも夏季大会を中心として時系列的には、過去数回のオリンピック大会までさかのぼって考察した。第二に、競技力向上政策をそれぞれの国の実情に応じてスポ-ツ政策それ自体のレベル、労働・雇用問題等の社会政策レベル及び国策としてのレベルの面から考察することとし、具体的には、「概念規定」「歴史的背景」「組織形態」「政策主体及び理念」「立法措置」「予算」「重点施策」及び「選手養成」等について吟味した。その際の政策ないし施策の評価をオリンピック大会における金、銀及び銅メダルの獲得数及び獲得状況からみることとした。スポ-ツ超大国であり、メダル獲得数でも他を圧している米国とソ連からみてみると、米国は「アマチュアスポ-ツ法」の制定にみるように、一項の国際競技力の退潮を、連邦の直接的支援や国内競技スポ-ツ組織の改革等によりおしとどめ且つ押し上げようとした。ソ連はスポ-ツにおける英才教育の整備や競技施設建設の推進や指導法の開発等の研究部門の充実などにより成果を収めてきたが、より一層の競技力向上を求めてスポ-ツ分野におけるペレストロイカやグラスノスチ(公開)による改革が現在進行中である。フランスは米国と同じく国法であるスポ-ツ振興法を制定し改定するなど強力なテコ入れを行っており、西ドイツは、官民相提携して競技力向上政策に務め相当の成果を収めてきた。中でも選手強化策たる拠点強化制度は有名である。英国はスポ-ツカウンシルによる「新10カ年計画」の一環として着々と競技力向上施策が進行中である。わが国はJOCの法人化等組織の改正や選手強化体制の充実による国際競技力の向上を図っているが、その成果はこれから問われよう。
著者
荒生 公雄 長岡 信治 高橋 和雄 中根 重勝 藤吉 康志
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

雲仙・普賢岳の火山活動は弱まりながらも、地下からの溶岩供給は続き、溶岩ドームは1995年1月には1,500mを越えるまでに成長した。また、山体周辺の火砕流および土石流による堆積物は確実に増加しており、今後においても土石流の脅威からは開放されない危険な状態にあることをしっかり認識したい。本研究で得られた成果の概要は以下の通りである。(1)1993年の大規模土石流発生時の降雨はすべて名古屋大学RHIレーダーによって観測され、貴重なデータセットとなった。それらの解析の結果から、普賢岳を襲う強雨は西南西の方角から時速約60〜70kmで来襲したことが明らかになった。このことは、降雨の現況監視や防災対策の整備について重要な規範を与えるものであり、本研究によって得られた貴重な成果の一つである。(2)3年間の度重なる大規模土石流にもかかわらず、犠牲者(死者)は出さなかったのは、(1)気象台から島原地方に出される警報が緻密になった、(2)島原市、深江町の行政・防災機関が非難誘導に尽力した、(3)住民が呼びかけに応じて早めに避難した、ことなどが理由として挙げられる。しかし、警報慣れと緊張感の弛緩もみられることから、今後一層の努力と実践的な研究が必要である。(3)雲仙岳北麓(北側斜面)の地形と火山性堆積物を解析した結果、過去において数千年〜数万年の間隔で、大規模な火砕流と土石流が発生していたことが明らかになった。それらは火山活動と並行して発生しており、今回と同じような火砕流・土石流現象が、雲仙岳周辺で過去に何度も繰り返されていたことが確認できた。
著者
足利 健亮 金田 章裕 応地 利明 成田 孝三 山田 誠 青木 伸好
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

都市の立地決定は、計画都市の場合、大別して二つのタイプに分かれる。一つは近代以前に多いタイプで、立地決定が1人の権力者によって為されるものである。もう一つは近現代に多いタイプで、権力者というよりは為政者の合議によって決定が下される。後者のタイプは、特に時代が新しいものは、立地決定に至る経過が記録に残されていると考えてよいから、それを把握することは容易である。しかし、北海道の諸都市や新大陸の諸都市でも、19世紀以前の計画都市では、立地決定に至る経過の完全な復原は、史料の散逸ではやくも困難になっていることが多い。一方、近代以前の計画都市の選地にあたっては、多くの場合選地主体者たる権力者の意図が記録されることはない(戦略機密なので)から、文献史料による方法で「意図」と「経過」を解くことは不可能と言ってよい。ところが、都市が作られたという事実は地表に、従って地図上に記録されて残り続けてきているから、これを資料として上記設問の解答を引き出すことが可能となる。徳川家康や織田信長の城と城下町の経営の意図、つまり安土や江戸をどうして選んだかという問題は、上記の歴史地理学的手法による研究で解答を得ることができた。例えば、江戸を徳川家康が選んで自らの権力の基盤都市として作ったのは、不確かな通説とは異なり、富士が見えるという意外な側面の事実を「不死身」と読みかえて、自身の納得できる理由[選地理由]としたと説明する方が明快であることを、研究代表者は明らかにした。その他、各研究分担者によって日本古代地方官衙、同近代の計画都市、前近代アジア都市、アメリカ・ワシントン、カナダ諸都市など具体的に取り上げて選地理由と経過を明快に説明する結果を得た。詳細は、報告書(冊子)に論述された通りである。
著者
クラインシュミット ハラルド 竹沢 泰子 山田 直志 波多野 澄雄 岩崎 美紀子 秋野 豊 岡本 美穂
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究グループは、地域統合の問題を理論的側面と現実的側面の二つのレベルにおいて共同研究を進めてきた。従来の地域統合理論では、ヨーロッパ以外に地域における統合の動きを分析しえず、アフリカやアジア・太平洋地域における統合の動きや、さらに1989年以降のヨーロッパにおける統合をめぐる激しい変化に対応できなくなり、新たな地域統合理論が必要であった。平成4年度は、研究最終年度であることから、平成3年度に行った従来の理論研究の再検討、およびそれを踏まえて構築した基本的フレームワークをもとに、各研究者が個別研究を行い、共同研究の総括をした。個別研究は下記の内容についてそれぞれ論文にまとめた。ハラルド・クラインシュミット 東アフリカにおける国家建設と地域統合岩崎美紀子 アンチ・ダンビング領域における統合の形態早坂(高橋)和 チェコスロバキアの連邦制竹沢泰子 アメリカ合衆国における民族集団の統合化波多野澄雄 近現代日本における地域統合論とアジア・太平洋秋野豊 東欧における地域協力ーカルパチア協力をめぐってー大島美穂 北欧会議とEC統合山田直志 EC統合と日本企業の海外進出これら個別研究の成果は、平成3年度に行った理論研究の成果とともに、同文館から『地域統合論のフロンティア』として出版される。
著者
鷹取 昭 後藤 範章 中泉 啓
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

科研費の交付を受けての研究の最終年度にあたる本年度は、(1)埼玉県戸田・与野・八潮の3市を対象とする大量調査とケース・インタビュー、(2)東京・福岡・札幌その他の大都市圏での資料の収集・ヒアリング・踏査を主とする現地調査、の補充調査を実施しながら、これまで進めてきた調査研究の成果のとりまとめ作業にあたった。(1)は、メトロポリタニゼーション(巨大都市化)が個々の地域社会に与える社会的効果を明らかにすることを、(2)は、巨大都市化の歴史的推移やメカニズムを、比較大都市園研究と交差させながら明らかにすることを、それぞれ目的としていたが、これらの調査研究によって実証的に分析・解明し得た主要な点は、次の通りである。I)巨大都市化は、とりわけ交通・通信ネットワークの整備・拡充と密接な関連性をもって進展してきた、ということ。II)交通・通信は、各都市・地域相互の時間・費用上の距離を短縮させることによって、その地理的・空間的距離を実質的に短縮させるばかりか、諸都市・地域を分かちがたく結びつけて、その社会的・文化的及び心理的な隔たりをうめていく効果をも有する、ということ。III)交通・通信ネットワークの結節点(ノード)となる都市は、社会的交流の結節点としての機能を高めて、一国内ばかりが、全世界の諸都市・地域との結びつきをも強めている、ということ。IV)その結果、交通・通信を介しての世界的なネットワーキングが進み、分化と統合を軸とした地球一国一地域(リージョン)の各サイズの垂直的分業体系の巨大で多段的な重層構造と機能連関が、現下の巨大都市化の推進力として強力に作用するようになっている、ということ。