著者
山口 迪夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.606-609, 1989-12-20 (Released:2017-07-13)

従来, 食品学や栄養学の領域でいう「食べ物の酸性・アルカリ性」は, 食品自体が酸性であるか, アルカリ性であるかというより, 食べ物が体内で代謝された後, 生体に対して酸性に働くか, アルカリ性に働くかを意味する場合が多かった。これがいわゆる「酸性食品・アルカリ性食品」の理論といわれてきたものである。この理論に従えば, 食品自体が酸性であってもアルカリ性食品になる場合がある。そして, 酸性食品かアルカリ性食品かを決めるのは, その食品のミネラル組成, すなわち陽性元素と陰性元素の各合計量(当量)でどちらが多いかである。しかし, 近年になりその理論の栄養学あるいは生理学的意義は次第に科学的根拠を失い, 現在の教科書や専門書からは「酸性食品・アルカリ性食品」の言葉が完全に消え去ろうとしている。
著者
山根 良行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.430-431, 2018-09-20 (Released:2019-09-01)
参考文献数
3

金は人間生活とのつながりが非常に深い物質である。高等学校の化学基礎におけるイオン化傾向の単元で,金は王水にのみ溶けると記載されているが,これまでヨウ素が含まれるうがい薬やヨードチンキに溶け,その溶液で金コロイドを生成することが紹介されている。今回は,学校で身近にあるヨウ素-ヨウ化カリウム水溶液(以下,ヨウ素液と略記する)を用いて,金コロイドを生成する方法を紹介する。
著者
若倉 雅登
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.142-143, 2017-03-20 (Released:2017-09-01)
参考文献数
3

快適な視覚は眼球だけでなく,ものを見る準備や,見た対象物を認知するまでの高次脳を含めた機構が健常な場合に得られる。ところが,この機構を乱す原因のひとつに薬物がある。とりわけベンゼン環とジアゼピン環を持つベンゾジアゼピン系薬物とその類似薬の連用は,視覚の高次脳機構を乱す可能性が高い。すでにそれは薬物性眼瞼けいれんとして報告しているものを含め,羞明(眩しさ),眼痛,霧視など視覚のノイズを発現させることを報告し,「ベンゾジアゼピン眼症」として広く認知されるべきである。
著者
大松 亨介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.492-495, 2016-10-20 (Released:2017-04-03)
参考文献数
6

反応活性の高いレアメタルを用いた遷移金属触媒は,いまなお化学合成における主役であるが,金属元素を一切含まない有機分子も,化学反応をコントロールする触媒としての機能を秘めている。本稿では,キラルと呼ばれる性質をもった有機分子の重要性と,キラルな分子の化学合成で活躍している有機分子触媒に焦点を当てる。
著者
若林 文高
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.76-79, 2017-02-20 (Released:2017-08-01)
参考文献数
4

理科教育では原子・分子などの「粒子概念」の習得が重要である。スペクトルを実際に観察して光の不思議に興味をもち,また歴史的にその謎を解き明かすことで「原子・分子」について理解を深めてきた経緯を学ぶことにより,「原子・分子」を身近に感じられるようになると考えられる。スペクトルの歴史的・現代的意義を述べたあと,身近になったDVDを回折格子として用いる「DVD分光器」の製作法と,それを用いたスペクトルの観察,通常のパソコンと表計算ソフトを用いたスペクトル解析法について述べる。最近のデジタル技術の急速な進歩で,驚くほど高精度の分光実験が身近な材料や電子機器でできるようになった。
著者
川野邊 渉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.56-59, 2007-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2

我が国2例目の壁画古墳として知られるキトラ古墳では,壁画取り外し作業が行われている。我が国において初めての試みには装こう技術を初めとする伝統的な技術・材料と共に多くの新しい技術や材料が用いられている。本稿では,これらの技術材料がなぜ文化財保存に用いられたのか,基本的な考え方といくつかの例をあげて解説する。
著者
渡辺 正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.92-95, 2012-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
9

中学生にもなれば「なぜ?」を知りたくなるのに,中高校の化学(理科)が「なぜ?」を欠くため,生徒は興味を失っていくのだろう。暮らしにも大学にも無縁な用語や概念,ときにはウソの説明をひたすら「覚えろ」だから,国民の科学リテラシーも向上せず,大学に入った若者は苦労(ないし脱落)する。先進国に類のない「指導要領+検定」が,日本を世界の孤児にした。孤児状態を脱するには,国際標準の高校化学をもとにしたカリキュラム刷新が望ましい。最短の道は大学入試の改革だろう。
著者
近江谷 克裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.372-375, 2016-08-20 (Released:2017-02-01)
参考文献数
12

ホタルの光に代表される生物発光は基質ルシフェリンの酸化に伴う化学反応の光である。酵素ルシフェラーゼによって効率よく光が生み出されることから冷光ともいわれる。未解明な生物発光の仕組みもあるが,8つのルシフェリンの構造が明らかとなり,それらの酸化反応を触媒するルシフェラーゼも明らかになりつつある。一方,生物発光はATPの定量化や細胞内の遺伝子発現の解析等,生命科学を支える重要な光である。
著者
山縣 厚
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.292-295, 2011-06-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

ベンゼンは,合成繊維,合成時樹脂等の化学工業の基礎原料として,重要な役割を担っている。ベンゼンの生産は,古くは石炭の乾留により得られていたが,化学工業の発展により,現在では原油から得られるナフサ留分を原料として,大部分が生産されている。また,ベンゼンは毒性があるため,その製造工程においては取り扱いに十分注意することが必要である。ベンゼンの製造方法と,製造工場における排出量削減の取り組みについて紹介する。
著者
堀池 喜八郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.334-337, 1998-06-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
10

細胞のエネルギー代謝の中心的役割を担うものは, アデノシン三リン酸(ATP)というリボヌクレオチドである。ATPのリン酸基転移反応の自由エネルギー変化は細胞内条件下では負で, 比較的大きく, このΔGを用いて, 細胞は生体物質の合成・能動輸送・細胞運動・シグナルの変換など, いろいろな仕事をして生きている。ATPは「高エネルギー」リン酸化合物と呼ばれ, その供給の停止は死を意味する。
著者
出川 哲朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.296-297, 2016-06-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
4

曜変天目は世界に3碗しか現存せず,そのすべてが,国宝に指定されている。宋時代に建窯で焼成されたもので,南宋の宮廷でも使われ,日本には室町時代にもたらされ,徳川将軍家にも伝えられた。この曜変天目の釉上に丸い斑文があり,その周囲が青く光り輝くのを特徴としている。この青く見える部分は固有色ではなく,構造色と考えられ,現在その解明が進められている。
著者
朽津 耕三 田中 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.636-640, 1998-10-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1

アボガドロ定数は, 19世紀後半からマクロの物理現象に現れる分子の大きさと単位時間の衝突回数などを用いて推定された。定量的な測定はおもに20世紀に入ってから行われ, 1910年代に, ファラデー定数と電子の電荷の比などに基づいて, およそ6.0×10^<23>mol^<-1>であることがわかった。1940年代には3桁目まで, 最近では6桁目まで正確な数値が得られている。現在の値はおもにケイ素単結晶の格子定数・密度・モル質量の測定に基づくもので, 国際協力のもとにさらに測定の信頼度を向上させる努力が続けられている。もし将来8桁目まで信頼のおける測定値が得られたら, キログラムの国際標準は原子質量で定義され, kg原器は博物館に移される日が来るかも知れない。