著者
加茂 直樹 平田 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.114-118, 1996-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

化学反応速度の初歩の理論を解説した。アレニウスの半経験的な式に現われる活性化エネルギーおよび頻度因子を, ガス分子の衝突理論およびアイリングの活性化複合体理論によって解説した。化学反応が起こるためには, 分子が衝突し, 1)衝突に際し適当な向きになっており, 2)ある値のエネルギーを供給できるだけのエネルギーをもって衝突しなければならない。1)は活性化エントロピー, 2)は活性化エネルギーが決定する。
著者
八木 健太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.600-603, 2013-12-20 (Released:2017-06-30)

リンは,体を構成するミネラルのひとつであり,筋肉,神経,内臓などすべての組織に含まれている。体内に含まれるリンは体重の約1%で,体内に豊富に含まれる多量ミネラルである。また,肥料の三要素にも数えられ,生物にとって必須な元素であるにもかかわらず,高校教科書での取り扱いは数ページ程度である。単体の取り扱いには注意が必要であるが,その他化合物は,化学の基本的な実験で使用したり,案外身近に存在しているものが多い。本稿では,地味な印象の強いリンを少しでも身近に感じてもらえるよう,リン発見の歴史から精製法,生体との関わりなどを紹介していく。
著者
村上 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.242-243, 2016-05-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
6

三角縁神獣鏡は,古代日本の最大の謎の一つである。邪馬台国の女王卑弥呼が,中国魏の皇帝から下賜された鏡100枚にあたるとする説もあるが,すでに500枚を超える出土がある。いつ,どこで,誰がどうやって作ったかもわからない謎の鏡なのである。三角縁神獣鏡に対するこれまでの研究は,裏面の文様の研究が主であり,鏡本来の機能を考察するには至っていなかった。古代鏡に対する材料科学的研究の一環として,三次元デジタイザで形状を計測し,さらに成分調整をした金属粉体を用いた3Dプリンタによって三角縁神獣鏡を精確に復原した。そして,その鏡面が太陽光によって「魔鏡現象」を起こすことを実証することができた。
著者
桜井 弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.262-267, 2019-06-20 (Released:2020-06-01)
参考文献数
4

2019年は,ロシアの化学者メンデレーエフがはじめて「周期律」を発見し,「元素周期表」を発表した1869年から数えて150年を迎える記念の年である。わずか1枚の紙に収まる元素周期表は,今や私たちの生活にとけ込み,物理,化学,生命,産業や日々の生活を考える科学のバイブルとなっている。18世紀のはじめから,多くの元素の発見や性質の解明にはヨーロッパを中心とする科学者が貢献してきた歴史があった。しかし,元素を合理的に整理し理解できる組織図は,ヨーロッパ近代科学を目指すロシアの化学者により達成されたことは驚異的なことと思われる。その不思議はどこにあったのであろうか?「元素周期表」誕生150年を記念して,メンデレーエフの天才の秘密と努力,そして周期表を不滅とした人々の英知の成果を紹介する。
著者
小河 脩平 矢部 智宏 関根 泰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.68-71, 2018-02-20 (Released:2019-02-01)
参考文献数
7

豊富に存在する天然ガスの主成分であるメタン,化石資源を燃焼した後に出る二酸化炭素,次世代の二次エネルギーとして期待される水素,これらをとりまく触媒技術の動向についてまとめる。
著者
角田 陸男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.162-166, 1993-03-20 (Released:2017-07-13)

ファーブルの言葉に"小さな子どもはみんな科学者だ"というのがある。日本でも小学生, 特に低学年の児童にとっては「理科」は大好きな教科の一つである。しかし, 昨今大きな問題として出てきている高校生の「理科離れ」の実状にも伺うことができるように, 「理科に対する好き嫌いの意識」は学齢が進むにつれ, しだいに変容していくことを示しているように思われる。それでは, 児童・生徒はどこで「理科」が嫌いになるのだろうか。
著者
眞鍋 敬
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.454-457, 2008-09-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8

ラジカルとは,不対電子を持ち,反応性に富んだ活性種のことである。ラジカルは,その高い反応性ゆえに様々な反応に関与する。ラジカルが関与する素反応には,開裂反応・引抜反応・付加反応・ラジカルカップリング・不均化などがあり,さらにそれらが組み合わさることにより,連鎖的なラジカル反応が起きる。ラジカルを利用する種々の分子変換法が開発されており,多くの有用物質の化学合成において,ラジカル反応は重要な役割を果たしている。
著者
磯村 明宏 畠山 望 八重樫 祐介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.532-535, 2015-11-20 (Released:2017-06-16)

地上に舞い降りた瞬間から雪は,その形状や物性値を変え,千変万化の挙動を示す。スキー滑走用ワックスの挙動のその場観察は容易ではなく,その開発は試行錯誤的手法により行われてきた。筆者らは,スキー滑走面の有する微細構造とワックスに含まれる成分の相互作用について,マルチスケール計算化学的手法を導入し,解析を試みた。本稿ではワックス成分の滑走面素材への浸透性解析について,実験結果,計算結果を紹介する。口絵31ページ参照
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.90-95, 2022-02-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
10

紫外・可視吸光光度法は,測定の原理・装置共に比較的理解しやすく,機器分析法の基本を身につけるための初歩的教材として取り入れやすいものと思われる。その一方で,受講者数の多い実験クラスでの実施のために十分な台数の装置を用意することは難しい。本稿では,吸光光度法による定量の原理を概説した上,教材としての活用が期待される安価かつ容易に作製できる簡易光度計の例として,光源・検出器共に発光ダイオード(LED)を用いた簡易光度計の事例について紹介し,試作による知見を踏まえてその作製・使用のポイントについて述べる。
著者
深野 和裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.452-455, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
5

高等学校の化学で,光を発する現象として最初に出てくるものは炎色反応である。この反応においては原子が外部からエネルギーを与えられ,安定した基底状態から不安定な励起状態にされる。この励起状態にされた原子が基底状態に戻るときに吸収したエネルギーを可視光線の領域で放出する。ここでいうエネルギーは熱のほかに光,電気などもある。しかし,光を発する現象は炎色反応以降は記述がほとんどなく,有機化合物の分野で紹介されている程度である。自ら光を発する生物や紫外線などを照射することで光を発する鉱物が確認されている中から,身の回りにある発光現象とアルカリ土類金属を主とする無機物質を母体として取り扱う実験を紹介する。
著者
海保 房夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.654-657, 2006-12-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

クスリは人間にとって異物です。この異物であるクスリを体内に吸収させるには,そのクスリの持つ特性を最大限に活かした形に変えて,投与できるようにしなければなりません。そこで考えられたものがクスリの剤形です。この剤形とクスリとの関係について,吸収・代謝機能を基に考えてみましよう。

3 0 0 0 OA 中分子医薬品

著者
佐々木 茂貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.290-293, 2020-07-20 (Released:2021-07-01)
参考文献数
7

近年,医療技術が大きく進歩してきたものの,遺伝病やがんなどの病気は依然として治療が困難である。本庶佑先生のノーベル賞受賞で話題になったがんの治療薬である抗体医薬は,生物が生産するバイオ医薬に分類される。バイオ医薬は一般の低分子量の薬よりも分子量がはるかに大きいという特徴がある。最近,これらの医薬品の中間の大きさの新しい医薬品として中分子医薬品が注目されている。中分子医薬品は化学合成により大量生産が可能なことや,低分子よりも複雑な構造の治療標的を識別できる優れた特徴を持っている。本稿では,中分子医薬品として環状ペプチド,天然物や核酸医薬について解説する。
著者
草野 英二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.184-185, 2018-04-20 (Released:2019-04-01)
参考文献数
8

水の三態は我々の身の回りに日常的に存在し,かつ我々の生活に密接に結びついている。しかしながら,密接に結びついているからこそ,わかったつもりになって,誤って理解していることも多い。本稿では,誤解されやすい事例を示し,より良い理解および学習について考えていく。
著者
吉本 秀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.498-501, 2009-11-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

化学の前身が錬金術であることはよく知られている。錬金術に由来するランビキ,レトルト,炉等の化学操作に不可欠の装置の流れを2世紀のギリシャからラボアジェまで展望したい。その際とくに図像表示のあるものを重点的に取り上げ,視覚的に錬金術=化学の実験室の様子を紹介しよう。
著者
吉留 勲
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.8-11, 2018-01-20 (Released:2019-01-01)
参考文献数
4

1856年に合成染料が世界で初めて作られ,日本にも輸入されるようになったが,第一次世界大戦の勃発により,染料の輸入が途絶えてしまう。この染色業界の危機を救うべく,由良浅次郎は合成染料の原料であるアニリン合成の工業化に取組んだ。しかし,日本の機械工業は未熟だったため,独学で設計を行いながらのベンゼン精留装置の完成であった。これにより染色業界の窮地を打開し,我が国の合成染料工業を切り開いたのである。
著者
脊黒 勝也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.8-11, 2021-01-20 (Released:2022-01-01)
参考文献数
5

食品添加物は加工食品の製造に欠かせない素材である。また加工食品は,食材,加工技術,食文化などの地域で異なる。日本は経済連携協定などで海外との連携を深め,海外の加工食品と接し,日本の加工食品を海外へ提供する機会が増えている。今回,海外の状況を理解する一つとして,海外の食品添加物法規について解説する。
著者
金村 聖志
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.534-537, 2019-11-20 (Released:2020-11-01)
参考文献数
20

二酸化炭素削減にむけて電気自動車や自然エネルギーの導入が必須となっている。ここでは蓄電池の特性とその役割について述べる。また,より高性能な電池開発を目指した革新的な蓄電池の紹介とそれらの研究開発状況について紹介する。