著者
野村 周平 上條 哲也 市野 澤慎
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.187-240, 2006
被引用文献数
4

The air-floating beetle community was surveyed by flight intercept traps (FIT) for each of four stations in the garden of the Imperial Palace, the center of Tokyo, Japan. Three hundred and ninety-three species, 13,838 specimens in 61 families were collected in total, 45 species of which are going to be recorded from the Imperial Palace for the first time. The species diversities and their dynamics of the community of the superfamily Staphylinoidea and that of the other beetles were analysed by Estimates (Corwell, 2005), some diversity indices (Shanon-Wiener function H', J' and H'N), and similarity indices (Jaccard's CC, NSC, Pianka's α). As the result, the following three were pointed. 1) For one station the potential number of species (ICE) were estimated about 76 for Staphylinoidea and about 248 for the other beetles on average, however their percentages of clarification (Sobs/ICE) are low, about 70%. 2) The species diversity was generally high from March to July with large deviation, successively decreased in September, and very low in October to November. 3) Among the stations 1 to 4, the air-floating beetle fauna of St.4 was distinctly different from the other stations, probably because waterside beetle habitat was included only in St.4.
著者
門田 裕一
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.51-61, 1990

国立科学博物館が実施した, 「日本列島の自然史科学的総合調査」に参加して, 1990年2月に奄美大島にてアザミ属の調査を実施した。本論文では, この現地調査と標本調査の結果をもとにして, 日本列島のアザミ属の分類学的再検討の一環としつつ, 南西諸島と小笠原諸島を中心としたシマアザミ群に関する分類学的解析の結果を報告する。これまで奄美大島にはアマミシマアザミCirisium brevicaule A. GRAY var. oshimense KITAMURA (1937)が認識されてきた。アマミシマアザミは, 基本変種のシマアザミに対して, 茎と葉の背軸面脈上が有毛である点で区別されてきた。この毛は多細胞の開出毛である。奄美大島の現地調査では, (1)アマミシマアザミはほぼ全島の沿岸に普通に見出され, (2)この茎や葉の有毛性には著しい集団内変異のあることが明らかとなった。すなわち, 1つの集団においても, 茎や葉に上述の開出毛があるアマミシマアザミの形, 無毛のシマアザミの形, そして葉の背軸面の全面が有毛のイリオモテアザミの形が混在するのである。これらの3種類は, 茎や葉の有毛性以外では有意に異ならない。したがって, 茎や葉の有毛性の違いにもとづいて記載されたアマミシマアザミやイリオモテアザミはシマアザミの異名として扱うのが適当と考えられる。また, 台湾南端の鷲巒鼻<鵝鑾鼻, がらんびOluanpi>産の個体にもとづいて記載されたガランビアザミC. albescens KITAMURA (1932)もシマアザミの異名として取り扱うのが正しい。シマアザミの分布域はFig.2に示した。分布域の北限は奄美大島で, 琉球諸島や先島諸島を経て, 台湾南部に分布する。シマアザミ群には, シマアザミの他に, オガサワラアザミ, オイランアザミ, ハマアザミの3種が認められる。これらの区別点については本文中に検索表として記した。
著者
駒井 智幸 武田 正倫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-144, 2006
被引用文献数
2

国立科学博物館調査プロジェクト「相模灘およびその沿岸地域における動植物相の経時的比較に基づく環境変遷の解明」の調査結果とりまとめにあたり,東京湾を含む相模灘海域より記録されるホンヤドカリ科ヤドカリ類のレビューを行った.本海域のヤドカリ相は本邦海域中でも最も調査が進んでおり,知見の蓄積が多い.特に,三宅(1978)によるモノグラフ「相模湾産異尾類」は,生物学御研究所に所蔵されていた相模湾産の材料を主に扱ったもので,相模湾だけでなく東アジア海域のヤドカリ類を研究する上での基礎資料として参照されてきた.しかし,近年の研究によりヤドカリ類の再検討が進められてきた結果,属レベルでの再編成,新種記載や既知種の再記載が活発に行われてきた.さらに既往の文献における多くの誤同定や分類学的混乱の存在が指摘され,改訂されてきた.本研究は,近年の分類学的知見を十分に反映した相模灘海域産ホンヤドカリ科のチェックリストを作成することを第1の目的とした.また,いくつかの種について,分類学的に不明確な点,あるいは問題点の解決を試みた.Catapagurus misakiensis Terao,1914は相模湾沖の瀬から採集された雄標本1個体に基づき記載された分類群であるが,分類学的な位置が不明確なままとされていた.三宅(1978)では明確な根拠は与えられていないが,Cestopagurus属として扱われている.本研究では,失われたと考えられるホロタイプが奇形個体であったと考え,タイプ産地にごく近い相模灘沖ノ山堆産の雄標本をネオタイプに指定した.ネオタイプ標本は,右精管の形態をのぞき寺尾(1914)の原記載によく一致し,さらにCatapagurus japonicus Yokoya,1933にも一致する.両分類群が同種である可能性はこれまでにも指摘されており(Asakura,2001),本研究の処置によりC.japonicusはC. misakiensisの主観シノニムとなる.和名は従来どおりミサキヤドカリを適用する.ジンゴロウヤドカリは,最近の研究により新しい属に移された(McLaughlin&Asakura,2004).しかし,当初提唱された属名Dofleiniaは刺胞動物のスナギンチャク属のホモニムであったため,置換名PagurodofleiniaがAsakura (2005)により提唱された.本研究により,McLaughlin and Asakura (2004)およびAsakura(2005)による属の標徴には誤りと考えられる点がいくつかあることが判明したので,修正を加えた属の標徴を与えた.カイガラカツギ属の2種(Porcellanopagurus japonicusカイガラカツギ,P. nihonkaiensisマルミカイガラカツギ)は相模灘海域から記録されていたが,形態に関する記載情報が十分でなく種の特徴に不明確な点が多かったので,再記載を行った.カイガラカツギは南半球産のP. tridentatusに酷似することが判明し,両分類群が同種か別種かの決定には今後の検討を要する.今回の研究で,以下の5種が相模灘海域から新たに記録された.いずれも本邦海域からは既に記録のあるものであるが,和名のないものについては新たに和名を提唱した:Anapagrides aequalisトリシマヒナヤドカリ,Decaphyllus spinicornisサツマヤドカリ,Nematopagurus kosiensisシンヨウイトヒキヤドカリ,Pagurus nigrofasciaヨモギホンヤドカリ,Solitariopagurus tuerkayiオニカイガラカツギ(新称).また,本邦周辺海域より記録されている属について同定を目的とした検索表を付した.本科ヤドカリ類では,雄の精管の発達や雌の有対腹肢の有無など性的に変異の生じる形質を重要な識別形質として用いるが,雄雌どちらかが標本に欠けていると同定が困難なことがある.その困難をできるだけ回避するために雌雄分けた検索表を作成した.さらに,これまで和名の提唱されていなかった以下の種について,新たに和名を提唱する:Bathypaguropsis carinatusケショウクロシオヤドカリ(新称),Bathypaguropsis forestiサガミクロシオヤドカリ(新称),Nematopagurus australisツメナガイトヒキヤドカリ(新称),N. richeriツブイトヒキヤドカリ(新称),Pagurus imafukuiイマフクツノガイホンヤドカリ(新称),Pagurus nipponensisシマハダカホンヤドカリ(新称),Pagurus similisヤマブキホンヤドカリ(新称).相模灘産種の生物地理学的観点からの組成であるが,東アジア固有要素が卓越していることが明らかであり,これは海域の地理的な位置からしても驚くべきことではない.また,寒流の親潮から派生した冷水が近隣の房総半島沿岸まで至り,動物相の形成に大きな影響を与えているが,相模灘海域では冷水域に主分布域を持つ種は1種のみであり,特に北太平洋に分布の中心を持つ種が欠如する.一方,黒潮の影響の強い伊豆大島や房総半島南部では熱帯・亜熱帯に起原を持つと考えられる種が潮下帯以深の浅海帯に多く出現し,特に伊豆大島ではその傾向が顕著である.また,相模灘海域のみから記録される種がいくつか存在するが,その多くは最近記載されたもので実際の分布については不明な点が多く,海域の固有種が存在するかどうかは現時点では不明である.
著者
邑田 仁
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.43-50, 1990
被引用文献数
1

国立科学博物館の「日本列島の自然史科学的総合研究」に参加する機会を得て, 奄美大島においてツチトリモチ属植物の現地調査を行った。ここではその結果をもとにして,日本産の本属植物のうち無配生殖を行うものについて比較検討の結果を報告する。ツチトリモチ属で無配生殖を行うものはジャワ島と日本列島にのみ知られている。日本産のものにはツチトリモチ, ミヤマツチトリモチ, ヤクシマツチトリモチおよびキュウシュウツチトリモチが記載されている。本研究ではキュウシュウツチトリモチを除く3種について, 走査型電子顕微鏡を用いて, 担棍体上の雌花のつき方および担棍体上部のクチクラの表面模様を観察し比較検討した。この結果これら3種は以下の特徴を持ち, 形態的に区別できることが明らかとなった。なお, ヤクシマツチトリモチはこれまで屋久島と種子島の固有種と考えられていたが, 本研究により台湾南部にも分布することが判明した。ツチトリモチ : 雌花は黄色で主に花序の主軸上につく。クチクラ表面の隆起条は短く, 担棍体上部の一部に認められる。ミヤマツチトリモチ : 雌花は黄色で主に花序の主軸上につく。クチクラ表面の隆起条は著しい網目状で担棍体上部全面をおおう。ヤクシマツチトリモチ : 雌花は紅色で花序の主軸上および担棍体の下部につく。クチクラ表面の隆起条は短く, 担棍体上部の一部に認められる。担棍体上部の辺縁にある細胞はしばしば親指状となりやや開出する。
著者
朝比奈 正二郎
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.145-"156-2", 1974

世界の熱帯および亜熱帯の洞窟から, 興味深いゴキブリ類が数多く知られている。わが国からは, このようなゴキブリ類は, 従前まったく見つかっていなかったのであるが, 1958年以降, 主として上野俊一博士の努力によって, 琉球列島の島じまの洞窟から, 真洞窟性ゴキブリであるホラアナゴキブリ科Nocticolidaeの種類と, モリゴキブリ属Symploceのうちおそらく好洞窟性と考えられる種類の標本が得られるにいたった。ここに, 成虫が確認されたものについて次のような名称を与え, 記載を行なった。I. ホラアナゴキブリ科Nocticolidae 1a. ホラアナゴキブリ(上野, 1964) Nocticola uenoi nov. (沖永良部島, 与論島, 沖繩本島) 1b. キカイホラアナゴキブリ(新称) Nocticola uenoi kikaiensis nov. (喜界島) 1c. ミヤコホラアナゴキブリ(新称) Nocticola uenoi miyakoensis nov. (宮古島) II. チャバネゴキブリ科Blattellidae 2. エラブモリゴキブリ(新称) Symploce okinoerabuensis nov. (沖永良部島) 3. ミヤコモリゴキブリ(新称) Symploce miyakoensis nov. (宮古島)なお, モリゴキブリ属Symploceのものと思われる幼虫が, 喜界島, 与論島, 沖繩本島, 久米島および石垣島より得られた。また, ツチゴキブリ属Margatteaと思われる1個の幼虫も, 沖永良部島の洞窟より得られている。
著者
武田 正倫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.135-"184-2", 1989

昭和年63年 (1988) 7月, 国立科学博物館の「奄美大島周辺地域の自然史科学的総合研究」の一環として, 奄美大島と加計呂麻島間の大島海峡においてドレッジを用いた底生生物調査が行われた。調査地点は水深15m から 70m にわたる合計27地点で (Fig.1), 得られた力ニ類は10科32属42種に分類された。また, 真珠養殖のために浅海に懸垂したマベの貝殻から掻き落とした付着生物の間から見い出されたカニ類は5科8属12種に分類され, マベの外套腔からカクレガニ科の1種が得られた。その他, プロカメラマンの楚山勇氏がスクーバ潜水中に採集したカニ類(8科18属18種), 昭和45年 (1970年) に鹿児島大学水産学部の学生がドレッジを用いて採集したカニ類(7科16属19種)も含めた。すべてのカニ類は合計14科57属81種であるが, Table 1 に示したように, それぞれのコレクションの間で重複している種が少ないことが特筆される。国立科学博物館と鹿児島大学の採集方法はともにドレッジであるが, 前者の42種と後者の19種とに共通しているのはコブシガニ科3種, ヒシガニ科1種, オウギガニ科1種, ケブカガニ科2種の合計7種にすぎない。これは″ドレッジ″とはいっても器具の形と大きさの違いによるためなのか, あるいは採集地点の海底の状態によるためなのか, カニ類の種構成だけからでは説明が難しい。一方, スクーバ潜水によって得られた18種とマベの付着生物中から得られた12種に共通するのはコブシガニ科の1種にすぎず, また, ドレッジによって得られた種と共通するのもオウギガニ科の1種とサンゴガニ科の1種にすぎない。これは, それぞれの生息環境が異なるほか, 採集方法の違いが主因と考えられる。すなわち, スクーバ潜水によって得られた種は主として岩礁性で, 目につきやすい大型種か, 小型種であっても比較的動きのある種からなっているのに対し, マベの貝殻から得られた種は付着生物の間に潜り込む習性をもつ小型種で構成されている。スクーバ潜水による採集品とドレッジによる採集品にはもっと多くの共通種が期待されるが, 前者には小型種の採集に, 後者では複雑な海底での採集に限界があることから, 採集方法としては両者は互いに補完すべきものである。記録された合計81種には2新種が含まれている。オウギガニ科の Miersiella cavifrons sp. nov. の近縁種は相模湾, インド洋東部のクリスマス島, オーストラリア東部のニューサウスウェールズ州から知られている M.haswelli (MIERS) のみである。一方, エンコウガニ科の Psopheticus megalops sp. nov. の所属にはやや疑問があるが, この属には日本からインドまで分布するナキエンコウガニ P.stridulans WOOD-MASON, 台湾の高雄とビルマ(ミャンマー)のマルタバン湾から記録されているモンツキエンコウガニ P.insignisALCOCK, 日本とフィリピンに産するウスベニエンコウガニ P.hughi RATHBUN およびニューカレドニアから記載された P.vocans GUINOT の4種が知られている。日本新記録種は Table 1 の各種名の前に星印を付して示してあり, カイカムリ科1種, コブシガニ科3種, ヤワラガニ科1種, クモガニ科5種, ヒシガニ科3種, ワタリガニ科2種, オウギガニ科2種, ケブカガニ科2種, エンコウガニ科3種, カクレガニ科1種の合計10科23種に達する。新記録種はいずれも, 従来, フィリピンやミロネシア, マレー諸島などから知られている南方系種である。これほど多くの日本新記録種が見い出されたということは奄美大島の浅海域の調査がほとんど行われていなかったことを示している, 海峡内だけでなく外海に面したサンゴ礁域の浅海の調査が行われれば, さらに多くの種が追加されるものと思われる。また, 従来, 琉球列島南部からのみ記録されていたカニ12種が採集された。それらはコブシガニ科1種, クモガニ科1種, ワタリガニ科2種, オウギガニ科5種, ケブカガニ科1種, サンゴガニ科1種, サンゴヤドリガニ科1種で, 日本新記録種ではないが, いずれも分布の北限が奄美大島まで広がったことになる。一方, 本州中部から九州沿岸にのみ分布するとされていた日本固有の3種, コブシガニ科のゴカクウスヘリコブシガニ Cryptocnemus pentagonus とロッカクコブシガニ Nursia japonica, エンコウガニ科のモールスガニ Xenophthalmodes morsei が今回の調査で採集された。これらはいずれも小型種であるが, 形態的に特徴があるため同定に問題はない。分布の南限が奄美大島まで広がったことになるが, 従来のフィリピンやインドネシア海域の広範な調査において記録されていないことから, 奄美大島よりさらに南方海域に分布している可能性は低い。
著者
西海 功 柿澤 亮三 紀宮 清子 森岡 弘之
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.5-19, 2006

The avifauna of the Imperial Palace Area in Tokyo was monitored by bird censuses nearly in every two months from August 2000 to November 2005. The results were compared with the previous monthly bird census research from April 1996 to March 2000 reported by Nishiumi et al. (2000). The total number of species recorded in the 35 censuses since August 2000 was 64 species, which is composed of 20 residents, 17 winter visitors, 10 transients, and 17 irregular visitors as listed in Appendix 1, but no breeding summer visitors were recoded. In total of these 10 years, 78 species were recorded by censuses. Eleven species among them are newly recorded in this monitoring period since August 2000; Larus argentatus, Sterna sp., Cuculus poliocephalus, Anthus hodgsoni, Anthus spinoletta, Saxicola torquata, Cyanoptila cyanomelana, Terpsiphone atrocaudata, Parus montanus, Sitta europaea, Fringilla montifringilla. Apart from censuses additional 4 species were recorded; Ninox scutulata as a breeding summer visitor and Corvus corone, Fulica atra, Podiceps cristatus as irregular visitors. We found a significant decreasing trend in number of species observed in the bird census during these ten years. The number of individuals was also significantly decreased except for January and individual number of residents was conspicuously decreased, although that of winter visitors was stable or somewhat increased. Moreover, the species diversity showed significantly a decreasing trend in all of odd months.
著者
友国 雅章
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.349-354, 2006

After the publication of Tomokuni et al. (2000), a good number of the heteropterous insects were collected at the Imperial Palace, Tokyo, Japan, under the "Monitoring survey of fauna of the Imperial Palace, Tokyo" conducted by the National Science Museum, Tokyo. This paper reports these material along with a few additional specimens from the Akasaka Imperial Gardens and the Tokiwamatsu Imperial Villa left off the list of Tomokuni (2005). In total 49 species of Heteroptera were found from these three places including four newly recorded species: Apolygus pulchellus, Elasmucha putoni, Eurydema rugosa, and an undescribed species of Miridae (Japanese name, Okuro-kasumikame), all common in Kanto District around Tokyo. Of 49 species, Oncocephalus breviscutum, Cimicicapsus koreanus, and Eurystylus luteus are new to the Imperial Palace, Cletus punctiger is new to the Akasaka Imperial Gardens, and Sastragala esakii, Poecilocoris lewisi, Riptortus clavatus, and Rhopalus maculatus to the Tokiwamatsu Imperial Villa. These species are common in Kanto District as well. Cymus aurescens, found from the Akasaka Imperial Gardens, has been unknown from the Imperial Palace. This may due to the lack of preferable host plants in the flora of the latter.
著者
松隈 明彦 岡本 和夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.91-100, 1986
被引用文献数
2

新生代タマキガイ科二枚貝は, 形態学的に近縁各科と明瞭に区別ができ, 化石として多産し, 種ごとの古生物地理学的分布が限られていることから, 軟体動物の種分化の過程を検討するためのよい素材だと考えられている。 日本産新生代タマキガイ科中, これまで未記載であった島根県松江市南家の中新世松江層(川津凝灰岩部層)及び同県出雲市上塩屋町菅沢の中新世布志名層産 Glycymeris (s.s.) の2新種, 埼玉県秩父郡荒川村久那(秩父鉄道浦山口駅北)の中新世平仁田層産 Glycymeris (Tucetilla) の1新種, 並びに沖縄県島尻郡具志頭村, 東風平村及び中頭郡与那城村の鮮新世新里層産 Tucetona の1新亜種を記載した。
著者
瀬能 宏 松浦 啓一 篠原 現人
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.389-542, 2006
被引用文献数
10

相模灘産魚類の研究は,1900年代初頭にアメリカのジョルダンとその弟子たちによって本格化し,分類群ごとに論文がまとめられ,同時に多数の新種が記載された.その後,田中茂穂とその弟子の冨山一郎や阿部宗明など,日本人研究者によって多くの魚類が相模灘から報告され,研究材料の一部に相模灘産魚類が使用された.近年では相模灘の各地で地域魚類相の研究も盛んに行われているが,長い研究史とは裏腹に,相模灘の魚類が包括的に目録化されたことは一度もなかった.そこで本研究では,主要文献と標本に魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録された画像資料も加え,相模灘産魚類の全体像の把握を試みた.その結果,出現した魚類の総数は45目249科1517種に達した.科別種数の構成比をみると,ハゼ科(7.1%)が最も多く,ベラ科(5.7%)ハタ科(4.5%),フサカサゴ科(3.5%)スズメダイ科(2.8%),チョウチョウウオ科(2.3%),アジ科(2.1%),テンジクダイ科(2.1%)と続くが,その他の241科はすべて2%未満であった.魚類相の分析は,種多様性が高く,相互に同じ質での比較が可能な沿岸性魚類について行った.比較を行った地点は相模灘や屋久島,八丈島を含む南日本の6地点,琉球列島の5地点,および小笠原諸島の12地点である: 1)相模灘, 2)大瀬崎(駿河湾), 3)串本(紀伊半島), 4)神集島(四国), 5)屋久島, 6)沖縄島, 7)伊江島, 8)宮古諸島, 9)石垣島, 10)西表島11)八丈島,および12)小笠原諸島.これらの地点全体で記録された沿岸性魚類について,地点ごとに出現すれば1,出現しなければ0としてコード化し,クラスター分析を行った.その際,生物の分散を妨げる障壁の存在は非出現という共通性にも意味を持たせるとの観点から,距離尺度には単純一致係数を用い,要約手法としてはUPGMAを採用した.その結果,上記12地点の沿岸魚類相は琉球列島とその他の地域に大別され,相模灘は大瀬崎のものと高い類似性を示した.また,串本,柏島,屋久島および八丈島も互いに高い類似性を示した.相模灘と大瀬崎,串本ほか3地点は,西村三郎によって提案された暖温帯区と亜熱帯区にそれぞれ一致し,西村の仮説を支持したが,小笠原諸島については同じ熱帯区の琉球列島ではなく,南日本との類似性を示した.琉球列島とその他地域の非類似性は,トカラ海峡を安定して横断する黒潮が障壁として機能し,南日本から琉球列島への温帯性魚類の分散を妨げていることが原因と考えられた.また,小笠原諸島と南日本の類似性は,伊豆諸島を横断する黒潮の位置が南北に振れることにより,両地域間でファウナの交換が起こりやすくなっていることが原因と推察された.黒潮は生物の分散に寄与すると同時に,障壁として機能する可能性があることが本研究により示された.
著者
小野 展嗣
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.407-418, 2006

Spider specimens of about 1,750 in all were obtained during faunal researches in the Imperial Palace of Japan, which covers an area of 1,150,000 square meters in the center of Tokyo, in the period of 2001-2005. The spiders were collected from the gardens and around moats by sweeping and beating vegetations and sifting soil litter as well as by collecting with hands. A hundred and seventeen species were determined based on this material, including twenty species newly recorded to the fauna of the Imperial Palace. At the present 165 species of spiders are known in the Palace. The number of species reveals that the gardens fill an important role in a green tract of urban area in the center of Tokyo. However, results of an analysis on the species composition show that most of the species found are tough under urban environments by nature and can move well and migrate by ballooning. The fauna in the green tract of Tokyo generally resembles those in coastal areas of Kanto District and in the volcanic islands of Izu-Shichito in the common-species rate more than 70%. Species of larger linyphiids, scare theridiids and araneids, thomisids and salticids living on low vegetation, large spiders as Argiope amoena which require restricted prey insects, and lower active species in ballooning as coelotine spiders and Sinopoda forcipata are lacking in the Palace gardens. A plan to make special biotope to revive a rich fauna and species diversity with those spiders is proposed for the future horticulture and gardening in the Imperial Palace Gardens.