著者
黒田 長禮
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.282-283, 1976-11-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
4

A presumed old female pintail Anas acuta with masculinized plumage pattern is here reported with its photo taken by Mr. Akio Sasagawa at Shinobazu pond, Ueno Zoo, Tokyo, early February, 1974. It has rough flank markings and elongated central tail feathess.Another example of different plumage pattern also found at the same pond, photographed a 10 February 1976, by Mr. Kazue Nakamura is added.Kuroda (1929, '39) had reported another old record of the pintail and a female Mandarin duck Aix galericulata was masculinized when molted after long kept in author's aviary.
著者
黒田 長久
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.111-137, 1967-12-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
8 11

モグリウミツバメ(Pelecanoides)は翼の長い飛翔型のミズナギドリ目のなかで,外形上は小型ウミスズメに極めて似た翼の小さい潜水型に進化した。ウミスズメ(Synthliboramphus)と外部形態,翼型,翼面積など比較すると一般的類似のなかで,やはり飛翔型由来を反映する測定比例がみられる。一方翼で潜水する適応として初列部の自由な回転(プロペラ効果)など平行的適応がある。剥皮した体型では一次的潜水適応型としてのウミスズメと飛翔型由来の二次的潜水適応型のモグリウミツバメの間に一般体格とその各部(a…zのアルファベット測定)の測定比例の差がみられ,とくに胸郭が太く胸部の短かい点はそれが著しく長いウミスズメと非常に異なる違いである(これは両者の採食法への適応を反映する-後述)。骨学的にもモグリウミツバメは腰骨,肋骨,胸骨などにミズナギドリ目中のウミツバメ科や小形ミズナギドリ科の特徴を保有し,一方潜水適応としての翼骨や脚骨の長さの比例はウミスズメと極めて類似している。ただしモグリウミツバメの腰骨はミズナギドリのなかの潜水性のものほど特化(細長く)していない。また,鎖骨の著しい発達(その形はややウミツバメに近い)は独特の特徴で,これは潜水に必要な胸筋量を前方に増大(後方は腹を圧迫しないように短かい)する効果(適応)があり,飛翔能力も低下させないという補償適応である。この状態はウミスズメ目でもコウミスズメ,エトピリカなど飛翔性の高いものにも平行してみられる傾向である。胸筋ではモグリウミツバメは大胸筋深部をもち(退化しているが),これは他のミズナギドリ目に共通な滑空飛行への適応を保有していることを示す。前胃に多量の食物を貯えるのもモグリウミツバメにみられるミズナギドリ目の特徴で,常時潜水して少しつつ食物をとるウミスズメ目の細い前胃と異なる(この目でもコウミスズメなど飛翔性の高いもので小さい〓のうをみる)。さらに腸の回転型も,恐らく食習性の違いに適応して異なっている。なお,モグリウミツバメはミズナギドリ目特有の体嗅より強い「カモ嗅」を含む嗅いをもつ。
著者
中村 登流
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5-6, pp.424-488, 1972-12-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
80
被引用文献数
3 4

1.エナガ(Aegithalos caudatus)の繁殖期の番い行動圏について構造•分布•冬の群れテリトリーとの関係を研究した。調査は1964~1968年の5繁殖期に,本州中部山麓の混合林で行なった。2.番い行動,活動点の分布,移行行動,たたかい行動,手伝い行動を分析し,繁殖期の番いテリトリアリズムについて考察した。3.番いは番い群を経て冬の群れから分出して来る。春に番い形成の行動は見られない。番い群の行動圏は冬の群れのそれに入っている。そしてその範囲を共同で防衛している。番いは冬の群れの中にでき,除々に孤立していく。番い行動圏は番い行動と共に冬の群れのそれから分離して来るが,冬の群れの行動圏内に入っている。4.番いは夜には,共同ねぐらで群れと共に眠る。日中には営巣行動をするが初期には午前中のみで,悪天候には群れに戻る。次第に一日中番いで過し,営巣するようになる。5.番い行動圏は重複し,特に冬の群れ行動圏のセンターでは著しい。優位の雄の番いは早く孤立し,群れ行動圏のセンターに対立するような位置をとる。おそくまでセンターにとどまり,そこで重複した行動圏を持つものは劣位の雄のものである。6.はじめは同じ群れのメンバーと番い群をつくり,異る群れのメンバーとはたたかう。しかし,番いの孤立化が進むにつれて同じ群れのメンバーともたたかうようになる。番いが完全に孤立するのは共同のねぐらから巣の内部へ番いのねぐらを移した時からである。それは巣の外装が完成したあとである。7.たたかい行動のピークは営巣期にあり,営巣期後半に交尾が行なわれる。エナガのテリトリアリズムは営巣期に最高となって完成する。その後,たたかいはずっと減少し行動圏も小さくなる。個体群内は社会的構造において安定し,次世代の生産が行なわれる。しかし実際には抱卵期以後,巣の破壊がはげしくなり,そのために再営巣があるために混乱する。8.番いは行動圏内に高活動密度部を持ち,そこは隣接番いと決して重複しない。パトローリングはそのセンターから出てセンターへ戻る。その間隣接番いとのたたかいがある。また,隣接番いとしばしば対立する特定の数ヶ所がある。9.巣の位置は必ずしも高活動密度部に関係しない。しかしそのセンターの内部か又は近くにある。それはブッシュの濃密な場所である。巣の位置は雄が紹介して雌が決定する。その時求愛や交尾前と同じ型のディスプレイを伴なう。10.再営巣は前の巣の近くに行なうが,しばしば著しく離れ,隣接テリトリーを越えることもある。しかし前の行動圏にこだわる傾向があり,一方では,たとえ離れても冬の群れ行動圏を出ない。11.手伝いは営巣期,抱卵期には現われない。育雛行動のみの手伝いである。独身者と繁殖に失敗した番いであって,後に家族群となり,冬季群のメンバーとなる。12.番いのテリトリアリズムはルーズであるが,space outははっきりしている。番いのテリトリアリズムは冬の群れのテリトリイ内で現われ,その占有地域は冬の群れテリトリアリズムによって保証されている。
著者
山階 芳麿
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.131-142, 1977

本文はソ連邦•中国及び朝鮮に於いて近年出版された報告を集めて,トキ及びコウノトリのアジア大陸東部に於けるこの両種の現状を解説したものである。<br>1.トキがソ連邦で最後に発見されたのは1940年(クリュチ•ザハロフスキー地区),中国で最後に発見されたのは1957年(陜西省洋県)で,既に久しく発見されていないから,恐らく両国では絶滅したものであろう。しかし,朝鮮半島の中部では1965年以後,1974年まで稀に目撃されているので,北方の蕃殖地から稀に中部の平原に迷い出るのであろう。そして,その蕃殖地は不明だが,推測をすれば長白山脈の南側森林地帯が一番可能性がありそうである。<br>2.コウノトリはソ連邦内では,東西はゼーヤ川流域から日本海沿岸まで1,000km,南北はアムール川下流のボロン湖から沿海州南部のハンカ湖まで600kmの広大な地域に未だかなり多く蕃殖している。又,中国に於いても満州の中北部(恐らく嫩江流域)及び中部(ハルピン付近)に蕃殖しているという。これらのごく一部は朝鮮半島及び日本に越冬に来るが,その大部分は中国の揚子江下流及び福建省あたりで越冬する。したがってこの貴重なコウノトリの保存は,ソ連邦と中国の密接な協力によってのみ可能なのである。私はそれを強く希望する。それとともに,未だかなり大陸に蕃殖しているとはいえ,稀に日本に越冬に来るコウノトリが,心なき狩猟家によってたびたび銃殺されているのは,国際的にも日本の恥である。狩猟者及び狩猟者団体の猛省をうながしたい。
著者
高島 春雄 芳賀 昭治
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.1, no.8, pp.329-343, 1956-06-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4
著者
黒田 長久
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.2, no.14, pp.50-59, 1960-06-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
5
被引用文献数
4 7

M. pectoralis major of birds in general consists of M. pect. m. proprius and lateralis (Kuroda, '60) and in soaring birds such as some hawks and the Tubinares a distinct deep-seated layer, M. pect. m. profundus (white muscle in the Tubinares) (Kuroda, 1. c.), is differentiated. The M. p. m. lateralis, generally ignored, is an important part in flight in pulling backward the wing (humerus) struck down by M. p. m. proprius, thus giving the propelling effect to the wing. Comparison of this part of the pectoral muscles in various groups of birds is shown in Plate 1. The comparative weight of M. p. m. profundus (Fig. 3, H, I, L, N) in some species of the Tubinares is listed; it is best developed in the albatross in which the M. p. minor (M. supracoracoideus) is the smallest. The relative weight of entire pectoral muscles to the body weight and that of small pectoral muscle to large pectoral are listed by Orders of birds. As a rule smaller species of a group of birds generally have more developed small pectoral relative to large pectoral. The former muscle is least developed in some hawks and the Tubinares which are soarers and best developed in the wing-diving sea-birds, the Alcidae. Their relative development is heighly adaptive to the way of flight. In the herons, an anterior superficial layer of the M. p. m. proprius can be distinguished, and this was named, the M. pect. major antero-superficialis.
著者
田宮 康臣 青柳 昌宏
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.35-44, 1982-03-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

アデリーペンギンの非繁殖個体が,育雛期後半にルッカリーに再上陸し,放棄巣や未利用巣で模擬営巣することは従来より知られていたが,その意義についてはほとんど報告されていない。1968-69年のバード岬ルッカリーでの観察で,繁殖の成功に意義があると認められる彼等の行動結果を得たので報告する。この結果から,再上陸は繁殖にとって適応的であると共に,彼等のクレイシシステムはより多くの雛を巣立たせるために役立っていると考えられる。
著者
中村 登流
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.155-173, 1962-12-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

1.この研究はエナガ(Aegithalos caudatus trivirgatus)の蕃殖期生活の特殊性を明確にするため野外観察の結果をまとめたものである。2.1951年から1961年までの蕃殖期におけるのべ147回の野外調査により,48番,71巣を観察した。雌雄の区別は行動差,尾羽の曲り方の差,尾羽の破損状態,足環によって判別した。3.蕃殖期は比較的早期性で新葉ののびる時期に育雛期が来るように調整されている。早期営巣者は2月からはじめるが寒波によって影響されやすく,営巣期間が晩期営巣者より長い。4.番形成は営巣場所決定以前に行なわれ,番群は冬期群移行範囲の局部執着により出現する。営巣に入っても寒冷気候が戻った場合再び番群が形成される。5.営巣場所は林縁ならびに林冠部で,常緑性針葉樹に執着し10m以上の枝先にもっとも多い。落葉広葉樹の樹幹には3~10m,小灌木またはブッシュでは3m以下である。6.蕃殖期内で巣が破壊された場合営巣場所を変更する。蕃殖期末に破壊された場合再度営巣はしない。7.営巣は雌雄共同で行なう,営巣活動時間は休息時間とほぼ同じ位で,むしろ休息の方が多い。営巣期間は早期営巣者で2ヶ月もかかる場合があるが晩期営巣者は10日位である。8.塒は営巣初期の外廓ができるまでブッシュの中にとり,外廓ができて以後巣内でとる。9.抱卵活動は,巣外時間に対する巣内時間の比で示すと,前半で1に近く,後半で2に近い。10.夕刻巣へ入る時には雄が先導して雌が先に入り,後から雄が入る儀式的行動がある。11.孵化当時の給餌は抱雛している雌に雄が口うつしにし,雌が雛に与えるが数日にして雌雄が給餌行動をとるようになる。12.1羽当り1分間の給餌回数は0.03であり,初期と晩期でやや少ない。13.雌雄の給餌行動には雄が先導して先に雌が給餌し,その間雄はデスプレイ行ない,次に雄が給餌するという儀式的行動がある。14.主として雄が行なうup-right flight displayは営巣期には特定の場所で大規模に行なわれ,産卵•抱卵•育雛期には巣の周辺の一定空間で行なわれ,その活動が最高に達するのは孵化直後である。15.テリトリーははっきりせず巣の防衛が主であり,デスプレイは持ちながらテリトリーの主張をしない。
著者
黒田 長久
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.397-402, 1966-06-30 (Released:2008-11-10)

1. A total of 5, 789 Tree Sparrow Passer montanus were banded in Japan during 1924-'43 with 157 recoveries (2.71%), of which 121 (77.07%) were those banded during August and October at Kuzutsuka, Niigata, a heavy snow area.2. In total, 60.5% of recoveries were made within 5km and 80% within 23km from banded places, and out of 110 recoveries within 23km, 91.8% were within 5km. These results represent resident populations.3. There were no recoveries between 24-100km. But, 45 (29%) recoveries were made again between 100-600km from S-SW directions (except one from E and one N). These data represent emigrating populations and since the birds were banded during August and October and were recovered in winter months, their movements suggest the wintering dispersal. However, whether this is a mere dispersal or a true migration is not clear, and it is suggested that the emigrating population would be young groups of the year.4. Kuzutsuka population consisted of 67.23% resident (within 23km, of which 90% within 5km) and 39% emigrating populations. The latter dispersed distances of 105-406km, while out of only 23 recoveries from birds banded at Nagaura, only 4km from Kuzutsuka, 6 recoveries were made from Okayama at 600km of distance. These 6 birds had been banded in the same period (October to November 2, 1940) and all were recovered after 4 months at Okayama (only one other bird came from Kuzutsuka). This is an evidence of group movement of a local population.5. The periods from banding to recoveries were: within 6 months 77.37% (101), 12 months 13.14% (18), 13-17 months 6.57% (9) and 19-35 months 2.9% (one each for 19, 24, 26, and 35 months) (total 137 cases).
著者
川路 則友 安部 淳一
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.107-110_1, 1988-09-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

シベリアセンニュウは,これまで日本での正式な確認記録がなかったが(日本鳥学会1974),最近になって標識調査により下記の2個体が捕獲され,日本にも稀ながら渡来していることが明らかになった。最初の個体は,北海道枝幸郡浜頓別町にある環境庁浜頓別1級ステーションにおいて協力調査員山内昇氏により1985年9月29日に捕獲されたものである。成鳥で,性別は不明であった。次の個体は,鹿児島県国分市にある国分干拓で1987年11月15日に筆者らにより捕獲されたものである。この個体も成鳥で性別は不明であった。シベリアセンニュウには4亜種が知られているが(Dement'ev et al. 1968など),筆者らの捕獲したものは,羽毛の特徴,分布などからrubescensに属すると思われた。本種は,渡り途上ではアシ原等の環境でほとんど目立たない行動を示していると思われ,これから標識調査などにより記録が増大することが充分考えられる。
著者
池長 裕史 儀間 朝治
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.28-39, 1993-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

沖縄島の北部のみから記録されているクイナ科の希少種であるヤンバルクイナは5種類以上の鳴き声を持つ。初めてビデオ撮影に成功したデュエットの映像と録音テープをもとに,本種の鳴き声についてソナグラフで解析し,以下の知見を得た。1) 5種類の鳴き声:コールI(ケッケッ(Kyo)-コール),コールII(ググッ(Gu)-コール),ソロソングI(クルル(Krr)-コール),デュエット(ケケケ(Kek)-デュエット)及びソロソングII(ケケケ(Kek)-コール)のソナグラムと波形を図示し,デュエットについては2羽を分別した。2) デュエットの際,2羽はお互いに向かい合わず,反対方向を向いて頭をふりながら同時あるいは交互に鳴き合わせた。3) デュエットは,先に鳴き始め,1秒間に7~8回の比較的安定した間隔で発声する個体と,これに同調し,やや分散的に鳴く別の個体とにより唱和され,この2羽は嘴の長さの差からそれぞれ雄と雌と考えられた。4) ソロソングII(ケケケ(Kek)-コール)はデュエットに類似していたが,他の個体が同調することなく,それより短い独唱のままで終わっており,導入部,声の連続性,後半の声の強さの変化においてデュエットとは差がみられた。5) 同じ種類の鳴き方でも鳴き声は変化し,ある特定の声の特徴について,それが雌雄の差によるのか,鳥の個体差によるものなのかは今後の課題である。
著者
鈴木 昭夫
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.125-126, 1953-12-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
5

1.私は駒井博士の行われた猫の毛色のセンサスと同じ方法で埼玉県所沢附近でセンサスを行い毛色の遺伝関係を調べた。このセンサスで集計された猫の数は276匹(雄140,雌136)である。2.集計された猫について計算した性比は100:100で人為的選択の要因はみられなかつた。3.毛色特に茶の因子が伴性因子によるとの仮説のもとに計算すると駒井博士の結果とよく一致する。又茶の因子頻度は24.56でかなり少い。4.この猫の毛色のセンサスの結果は茶の伴性因子であるという推定によく合うものになつたが,同時に黒と雉とでは雌雄の数に大差なく,その常染色体性のものであることを示している。
著者
Satoshi Yamagishi
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2-3, pp.96-102, 1982-12-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
4
被引用文献数
5 10

A total of 197 Bull-headed Shrikes Lanius bucephalus were examined for this study. Out of 756 nestlings banded for a population study, 38 were re-captured more than once and examined. Their plumage was checked for the presence of buff-tipped greater primary upper coverts (BTGPUCs), and the process of replacement of the buff-tipped coverts was followed. Similar examinations of BTGPUCs were also made on 6 juveniles and on 153 other captured birds whose age could not be established. At least some proximal juvenal BTGPUCs, almost without exception, were retained until the second fall molt. Thus, the presence of these juvenal feathers in the greater primary upper covert (GPUC) series is a reliable criterion for designating first-year birds in this species.
著者
柿澤 亮三 菅原 浩
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.326-339, 1989-09-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
14

Tadorna cristata (Kuroda) is known only from three extant specimens. The first, a female, was taken near Vladivostok in 1877, and preserved in the Copenhagen Museum. The second specimen, also a female, and the third specimen, a male, were taken from near Fusan, Korea in 1916, and 1913 or 1914, and preserved in the Yamashina Institute for Ornithology. The first specimen was described in 1890 by Sclater, and it was then considered to be a hybrid between the Ruddy Shelduck (Tadorna ferruginea) and the Falcated Duck (Anas falcata). In 1917, Dr. Nagamichi Kuroda described the second specimen and gave it the name Pseudotadorna cristata. The inconsistency between Sclater's hybrid view and Kuroda's new species view was solved in favor of the latter, when Kuroda obtained the third, male specimen, and described it, along with the discovery of four sketches of the Crested Shelduck from the Edo period. This species has been extremely rare, and close to extinction evre since its discovery in 1887. Recently three other old sketches of the Crested Shelduck have been reported, two of them by the present authors. In this paper twelve published sketches of the species from the Edo period have been introduced, and all twenty known sketches are arranged in order based on their characteristics and descriptions, and the status of it's occurrence during the Edo period is disccussed. In conclusion, we presumed that a few Crested Shelducks were imported from Kyohou period (1716-1735) and it actually migrated once or twice to Hokkaido (northern Japan), and was captured to be illustrated as a living bird.
著者
佐藤 文男 鶴見 みや古
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.325-330, 2003-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
6
被引用文献数
2

The Madeiran Storm-petrel Oceanodroma castro is a threatened seabird breeding on the Hide-shima (39°40'N, 142°00'E), Iwate Prefecture, in northern Japan. This small island is the only known large colony in Japan for this species. In the latter half of 1980s, nesting burrows of Madeiran Storm-petrels were confirmed to have been decreasing owing to the interspecific competition for nesting burrows between larger Streaked Shearwaters Calonectris leucomeras and this smaller species. We used small wire mesh nets at the nesting ground in order to exclude larger species from Madeiran storm petrel burrows in 1990. Results suggest that nest numbers of Madeiran Petrels have been gradually increasing in the experimental area.
著者
河野 裕美 安部 直哉 真野 徹
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-27, 1986-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
34
被引用文献数
4 7

Nakanokami-shima was designated a national monument in 1972 because of its important for breeding seabirds, though the seabirds of the island were very poorly known. In this paper we present the information on the breeding species and their current status. Observations were made over a ten years period from 1975 to 1984.Seven species of seabirds were found to breed on the island. All were summer visitors, except for the Brown Booby which may be a resident.1. Bulwer's Petrel, Bulweria bulwerii. Bulwer's Petrel was not known to breed on the island until we captured and ringed 2 adults on 2 July, 1981, both of which had fully grown brood patches, and 2 more adults on 4 July, 1982, both of which were incubating. In 1982, 1983, and 1984 the petrels bred at the same locations shown in Fig. 1. The petrels bred gathering in small numbers and laid under rock, Sixty-six adults were ringed from 1981 to 1984 and it seems that the breeding population is fewer than 100 birds.2. White-faced (or Streaked) Shearwater, Calonectris leucomelas. Many nest holes of the White-faced Shearwaters were widely distributed on gentle slopes in grassplateau in the centre of the island. Some birds incubated on bare ground under dwarf 'Gajumaru', Ficus retusa, and others incubated under large rocks. We could not estimate their population.3. Brown Booby, Sula leucogaster. The main colonies, which were used by almost all the birds, were found annually at areas A, B, C, and D shown in Fig. 2. On Nakanokami-shima Brown Boobies nested on ridges and on steep cliffs. Few birds nested in the rocky zone near the shore. Before noon on 3 July, 1981, a Maritime Safety Agency Helicopter flew over the eastern part of the island, surprising the settled birds and causing them to take flight one after another. It was possible at that time to make a total count and 250 birds were counted. Since the breeding pairs were taking care of chicks at that day, some parents were probably absent offshore. Clearly the population was larger than 250. A chick ringed on 29 June, 1980, at the main colony was recaptured at the same place on 21 August, 1983. The bird was in adult plumage, but was not breeding. This recovery record indicates that non-breeding immatures are also included among those attending the main colonies. Table 1 shows the results of an intensive search for nests during the breeding season of 1984. Nests on inaccessible cliffs in areas A-D were of course omitted. The annual breeding population was estimated approximately as about 200 to 500 birds.4. Red-footed Booby, Sula sula. This species was not known to breed in Japan before 1975, when we discovered a breeding pair on 27 August, 1975. The parent incubated one egg and its nest was builted on the canopy of dwarf 'Gajumaru' bush in area A in Fig. 2. On 24 June, 1976, 3 adults and 2 chicks were ringed at the same place, and on 30 June, 1977, one downy chick and parent were found again at the same place as in 1975. On 13 July, 1982, two fledglings and one adult were seen on the cliff in area E in Fig. 2.5. Bridled Tern, Sterna anaethetus. This, species was not known to breed in Japan until we found its breeding at the island on June, 1980. The Bridled Tern settled rocky zone near the shore, placing their eggs in the shelter of rocks. The locations of colonies in 1983, and 1984 are shown in Fig. 3. This tern is apparently an inshore feeder, remaining usually close to the colony. The estimated numbers were 120 birds in area A, and 40 in area B on June 30, 1980, about 1000 in area A, and 100 in area B on 2 July, 1981, and about 650 in area, A, and 50 in area B on 2 July, 1982. Since 1981 the numbers have increased markedly. The birds in attendance at these areas were in adult plumage, however considerable numbers of non-breeding, presumably immature, birds may make up part of these totals.
著者
小沢 敬次郎
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.411-413, 1968-12-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
7

アシナガコシジロウミツバメ(Oceanites oceanicus)の日本近海の発見例は犬吠崎における1例(清棲,1932)があるのみであった。1967年7月,東京大学海洋研究所の本田座氏は同所淡青丸で三陸沖調査中1羽捕獲し,写真を撮り,これを著者に提示された。著者は帯黄色の蹼と〓蹠の長さから本種と同定した。また海鷹丸で著者は11月,鳥島の東50海里の海上で1例を得て測定し,南極大陸産の亜種Oceanites oceanicus exasperatusであろうとした。北太平洋における既知例は日本近海の1例,カリフォルニヤ沖の2例であったが,これらに2例を加えた。
著者
内田 康夫
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1-2, pp.54-72, 1970-12-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

Although white and grey forms had long been known in Japanese Crested Ibis Nipponia nippon, its scarcity prevented detailed research. Contrary to a former opinion that these were color phases, Mr. H. Sato (1957) considered them as seasonal forms and later suggested (1968) that the grey form is caused by cosmetic coloration toward breeding season.This paper presents a detailed analysis on the mechanism of this type of color change based on numerous feather samples offered to Yamashina Institute by Mr. Y. Muramoto who collected them in its natural habitat in Ishikawa for many years. Supplemental observations were made with live birds in Sado I. with valuable assistance of Messrs. K. Chikatsuji and T. Takano of Ibis protection Center. Histological studies were made by the author at Department of Zoology, Tokyo University.Some important points clarified in this paper are as follows:1. The feather samples suggested neither of the known types of color change: 1) molting, 2) abrasion, 3) cosmetic staining with color substance in preen oil, 4) photo chemical change of biochrome in the feather, and 5) external staining (e. g. iron in water birds).2. Under the feathers surrounding the naked face of Japanese Crested Ibis, a particular area of the skin was found producing 'black substance.' (Fig. 12).3. A few tiny samples of this black substance fell on the snow when a captive ibis scratched that region of the head (Fig. 13, 14). These could be collected and used for chemical analysis (to be published elsewhere).4. Prior to the breeding season, in late January through February, a characteristic behavior of rubbing the side of its head to the shoulder region was observed after bathing. This was named 'daubing behavior' (Fig. 16) and it lasted 20-30 minutes followed by normal preening.5. The grey, or rather blackish, tint of the neck to shoulder region got deeper as the 'daubing behavior' was repeated.6. Histologically, it was proved that the grey tint was caused by external adherance of 'black substance' to the proximal (not distal) barbules of the normal white feathers (Fig. 4-10).7. The black substance on the feathers and those picked up after head scsatching were identical microscopically and chemically. These are supposed to come out along feather pores of the skin, since the feathers of the black substance producing area had black ring near the root of the rachis (Fig. 2, 9, 10).8. The change from grey to white form occurred by normal post-nuptial molting (Fig. 17) and neither 'daubing behavior' nor dropping of black substance was observed after bathing in this period.9. The 'daubing behavior' was so important in this new type of plumage color change that even during the critical period of change from white to grey form, the white plumage remained untinted unless this behavior was performed, which always occurred after bathing. Five to six bathing-'daubing behavior' sequences completed a typical grey form. The first bathing of the season was observed on a fine day in late January.10. Physio-ethological mechanisms and the hormonal control involved were analysed (Fig. 20) and significance of the grey form was discussed eco-evolutionarily.
著者
黒田 長久 柿澤 亮三 堀 浩 大阪 豊 臼田 奈々子 内田 清一郎
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-15, 1982-03-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3 6

22目57科185種の鳥類の血球(一部胸筋)を試料として,澱粉ゲル竜気泳動法(pH7)により,ミトコンドリア内リンゴ酸脱水素酵素(M-MDH)の陰極側への移動度を測定した。移動度の表現は,マガモ血球のM-MDH移動度を100と定めたときのこれに対する相対値である。鳥類M-MDHの移動度は各種組織間に差がなく,またこれまで種内,属内での変異は見られなかった。さらに科内,目内での変異も比較的少なく,他の酵素(アイソザイム)にくらべて極めて均一性の高い酵素である。ダチョウ目,ミズナギドリ目,ペンギン目,カイツブリ目,ペリカン目(ウ科),コウノトリ目(トキ科),フラミンゴ目,ガンカモ目,キジ日(ツカツクリ科•キジ科),ツル目,チドリ目(チドリ科•カモメ科)に属する鳥類は何れも移動度100を示した。これらの目は比較的に原始的とされる地上•水生鳥類の大部分を含んでいる。しかし,ペリカン目のペリカン科(130),コウノトリ目のコウノトリ科(130)•サギ科(150),キジ目のホウカンチョウ科(140),チドリ目のシギ科(250)•ウミスズメ科(190)では100以上の移動度が見られた。また,地上性のシギダチョウ目は例外的に160の,コウノトリ目に比較的近いとされるワシタカ目(ワシタカ科)は140の値を示した。一方,いわゆる樹上性の鳥類では140から360までの移動値が得られ,ハト目からスズメ目へと次第に高い値を示す傾向が見られた。すなわちハト目(140,190),ホトトギス目(200),フクロウ目(200),ヨタカ目(200),アマツバメ目(220),ブッポウソウ目(220,250),キツツキ目(230,300),スズメ目(360)である。ハト目に近いとされるオウム目では,300から360のスズメ目に近い値が得られた。以上の結果から,電気泳動法によるM-MDHの移動度は,科•目を含む高いレベルでの進化を反映しているように思われる。
著者
田宮 康臣 青柳 昌宏
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.35-44, 1982
被引用文献数
1

アデリーペンギンの非繁殖個体が,育雛期後半にルッカリーに再上陸し,放棄巣や未利用巣で模擬営巣することは従来より知られていたが,その意義についてはほとんど報告されていない。1968-69年のバード岬ルッカリーでの観察で,繁殖の成功に意義があると認められる彼等の行動結果を得たので報告する。この結果から,再上陸は繁殖にとって適応的であると共に,彼等のクレイシシステムはより多くの雛を巣立たせるために役立っていると考えられる。