著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.14, pp.5-10, 2005-03

本研究の目的は、大学生における異性関係スキルが、異性の友人数と自己判断による異性からの好意度に及ぼす影響を検討することであった。611名の大学生に、異性関係スキルを調べる尺度の各項目について6段階で評定を求めた。因子分析の結果、男子学生では「会話スキル」及び「対人不安」、女子学生では「会話スキル」、「対人不安」及び「対人関係の自信」という因子が抽出された。重回帰分析による検討の結果、男子学生においては「会話スキル」と「対人不安」が異性からの好意度を21%、女子学生においては「会話スキル」、「対人不安」及び「対人関係の自信」が異性からの好意度の24%を予測することが示された。また、異性からの好意度の高群と低群の比較を行ったところ、両群間に差が認められる項目が明らかになり、異性からの主観的好意度の高い人と低い人に行動の違いのあることが明らかになった。
著者
亀口 まか
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.20, pp.167-173, 2011-03

本稿は、戦前日本において、学齢期の子どもたちの放課後生活を保護するということがいかに認識され、展開されるに至ったのかを考察するものである。具体的には、大正期以降に活発化する児童保護事業の議論のなかにみられる内務省の関係者、社会事業家による放課後の保育・教育問題に対する認識とその特徴を検討、整理する。また、戦時下に展開された公的政策としての放課後事業の性質について、それまでに形成されてきた構想との違いに留意して検討するものである。検討を通して明らかになったのは、貧困家庭の学齢児童に対する放課後事業の必要性が、欧米の影響を受けて広く認識されるようになり、学校と家庭の双方に関わる新しい児童保護事業の一種ととらえられていたことであった。一方で、戦時下に国民学校等で行われた放課後事業は、女性の勤労動員と国民教育を強化することを背景として公的学校教育の一事業に位置付けられ、実施されたことが明らかになった。
著者
山根 望 名島 潤慈
出版者
山口大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
no.21, pp.231-247, 2006

Gender Identity Disorder (GID) has been attracting social attention in Japan since 1998, when Sex Reassignment Surgery (SRS) was officially approved by Saitama Medical School. It may occur that the number of GID patients will increase. However, many Japanese GID patients are still distressed by the hostility and misunderstandings. Many GID patients have experiences of school refusal, suicidal ideation, or other psychiatric illnesses. Taking these distresses into account, more psychological and social supports for GID patients are necessary in order for them to live with satisfaction. In the paper, we would like to introduce current psychological studies both in Japan and in the world, most of which were written in the 21st century and some of which referred to "transgender." Examining these studies, it appears that psychologists and psychotherapists will have to explore more (1) psychological and social support for students with GID in school, (2) psychological change after SRS, (3) psychological interventions for couples when the other confesses his or her GID, (4) psychological change in real life experience and psychological support for GID patients, and (5) studies on mental health of aging GID patients.
著者
藤田 正
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.125-128, 2008-03-31

大学生の完全主義傾向と日常生活における学習課題の先延ばし行動との関係を明らかにするために、大学生119名を対象に、新完全主義尺度(「完全欲求」、 「高目標設定」、 「失敗過敏」、 「行動疑念」より構成)と学習課題先延ばし傾向尺度(「課題先延ばし」と「約束への遅延」より構成)を実施した。完全主義傾向と学習課題先延ばし行動の関係を調べるために両者の相関を検討した。その結果、 「課題先延ばし」と「約束への遅延」の両方で、 「失敗過敏」と「行動疑念」の間にのみそれぞれ正の有意な相関がみられた。これらの結果から、完全主義傾向を構成するすべての要因が学習課題先延ばし行動に関係するのではなく、 「失敗過敏」や「行動疑念」のような、どちらかといえば行動を抑制したり、不適応に結びつきやすい要因が関係することが明らかになった。
著者
藤田 正
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-46, 2005-03-31

日常生活における学習課題の先延ばし行動と失敗行動の関係を明らかにするために,大学生175名を対象に、学習課題先延ばし傾向尺度と失敗傾向尺度を実施した。新たに作成した課題先延ばし傾向尺度を因子分析した結果、「課題先延ばし」と「約束事への遅延」の2因子が見出された。次に、先延ばし傾向と失敗傾向の関係を調べるために両者の相関を検討した結果、両者の間には全体得点で中程度の有意な正の相関が見出された。さらに失敗傾向の下位尺度(アクションスリップ、認知の狭小化、衝動的失敗)のすべてにおいても有意な正の相関が見出された。また、先延ばし傾向高群は、低群に比べ全ての失敗傾向において有意に高い得点であった。これらの結果から、課題先延ばし行動は失敗行動と強く関係していることが明らかになった。
著者
桑原 昭徳
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-16, 2007-03-25

2006年の10月初旬、6ヵ月後には定年退職をむかえる60歳のC教諭の2年国語授業を参観した。これが授業を通してのC教諭との最初の出会いとなった。学級の児童は12名なのだが、授業が始まる前に、子どもたちは教室の時計やチャイムの音を気にもしなかった。開始定刻に着席できず、学習準備もできなかった。端的に言えば、「学習規律」が指導されていない学級であり、授業なのであった。学年が始まってすでに半年が経過しているというのに、授業の指導技術の中でも最も基本的な「遅刻・私語・忘れ物」が克服されていないのであった。国語授業のなかで物語文を学習するための「学習方法」は考慮されているのだが、発問が子どもに理解されづらい。無限定の発問であるので、子どもたちが応答しようのない場合があった。結果として、会話を中心として展開され、わかりやすい物語であるにもかかわらず、子どもたちが登場人物に同化しながら、考えたことをきちんと発表することができなかったし、子ども自身が「わかった」という実感が持ちづらい授業となった。第2回目のC教諭の授業の参観は、筆者から申し出て10月20日となった。最初の授業参観から数えて、14日後のことである。この日、3時間目の音楽と4時間目の算数を参観することになった。算数は、授業の始まりから15分間をC先生が指導して、桑原と校長先生が参観した。残りの30分間の授業は、同じ教材を用いて桑原が指導して、C先生と校長先生が参観した。授業が終了した直後の10分間、校長室でC先生に助言する時間を持った。第3回目のC先生の授業の参観は、11月16日午後から開催されるB小学校の他学年の授業研究の日の4時間目に、筆者がC教諭の授業参観を希望するという形で実現した。この日の授業の始め方は、従来の子ども達とは違っていた。C教諭が「10、9、8」と声をかけると、子どもたちは一斉に「7、6、5、4」とカウントダウンの声を続けた。「3、2、1、ゼロ」で終わると、今度は一斉に「日直さん、お願いします」と言った。すると、日直の子どもが前に出て「気をつけ、れい、お願いします」と合図の声を発した。この声に合わせて、子どもたち全員が11時30分の定刻に、緊張感とともに授業を始めることがで?きたのであった。学習内容は掛け算九九の「6の段」であり、「6の段」の練習活動が展開された。学習規律の定着とともに、子どもたちの授業への参加の度合いや集中力は、約40日の中で明らかに向上した。第3回目の研究協議と私の指導講話の最後、それは同時に私の参加したB小学校における3回にわたる公式の授業研究の最後でもあったのだが、私は次のようにC先生とB小学校の先生方に呼びかけた。「どうかC先生、3月下旬の終業式まで、授業改善をしつづけてほしい。ほかの先生方はC先生を支えてあげてほしい」とお願いするとともに、「C先生が退職をされる最後の日まで、良い授業をしようとして努力され、笑顔とともにお辞めになった」という風の便りが、いつの日にか、私の耳に届くことを楽しみしていると伝えた。
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-6, 2007-03-31

本研究の目的は、中学生に学習習慣を指導することが、学業成績の向上に貢献するか否かを検討することである。被調査者は公立中学校の1~3年生であり、62項目からなる学習習慣尺度を集団実施した。教員が学業成績との相関係数が高い項目6項目を学習習慣の指導における目標とし、教室等の生徒の目に見える位置に目標を掲示し、生徒との約束で、基本的な宿題の習慣の指導を徹底させた。校内研修も増やし、学習指導の活性化を促す工夫を行った。このような指導を行い、1年後において学習習慣尺度を再度実施した結果、学習習慣の伸びと標準学力検査の得点の相関は.43というかなり高い値であった。この結果は、学習習慣が伸びた生徒が高い学業成績を収めていることを示すものであり、学校全体が学習習慣の指導を実施することが生徒の学力向上に貢献することを明らかにしたのである。
著者
藤田 正 野口 彩
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.101-106, 2009-03-31

大学生の依存性、自己完結型セルフ・コントロールと学習課題先延ばし行動との関係を明らかにするために、大学生152名を対象に、依存性自己評定質問紙、他者介在型SC/自己完結型SC評定尺度と学習課題先延ばし傾向尺度(「課題先延ばし」と「約束への遅延」より構成)を実施した。変数間の関係を調べるために相関を検討した。その結果、「課題先延ばし」と、「自己完結型SC」の間にのみ有意な負の相関がみられた。また、自己完結型SCは、「統合依存」との間に有意な正の相関がみられた。これらの結果から、依存性が先延ばし行動に直接影響する要因ではなく、自己完結型SCを介在して学習課題先延ばし行動に関係することが明らかになった。
著者
重松 敬一 佐藤 学
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.61-66, 2010-03-31

本研究は、児童が主体的に取り組む算数学習のあり方を追究するため、教師と学習集団によって協定される算数の学習規範がどのように内面化するのか、児童の様相からとらえていくことを目的としている。本稿では、先行研究を基に、算数の学習規範の枠組み作成に向けた考察を試みる。その結果、低学年という発達段階では算数の学習規範も、教師という権威が強く働くことが明らかになった。その定着については、1つの方法を伝達するよりは、児童の考えをもとにした話し合いの場が設定されることが効果的であった。また、第1学年であっても、内面化し自律的な行為へと向かうに当たって、必要な、数学的価値を見出すことが可能であることも事実として、見て取ることができた。
著者
藤田 正 岸田 麻里
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.71-76, 2006-03-31

大学生の日常生活における学習課題の先延ばし行動とその原因の関係を明らかにするために、大学生142名を対象に、予備調査に基づいて作成された先延ばし行動の原因調査項目と学習課題先延ばし傾向尺度(「課題先延ばし」と「約束への遅延」より構成)を実施した。先延ばし行動の原因調査項目を因子分析した結果、「興味の低さによる他事優先」、「先延ばし肯定・容認」、「課題困難性の認知」の3因子が見いだされた。次に、学習課題先延ばし傾向とその原因の関係を調べるために両者の相関を検討した。その結果、課題先延ばしと「興味の低さによる他事優先」、「課題困難性の認知」の間に正の有意な相関がみられた。また、約束への遅延と「興味の低さによる他事優先」の間に有意な正の相関がみられた。これらの結果から、大学生の学習課題先延ばし行動の原因として最も大きな影響をもたらすものは、課題に対する興味の低さにより他事を優先して行うことであると結論づけた。
著者
川本 祥也 佐藤 臨太郎
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.20, pp.95-100, 2011-03

近年、タスクを用いたTBL(Task-Based Language learning)授業が学習者のいわゆるコミュニケーション能力育成に効果的であるとの観点から大いに注目を集めている。しかし、日本のような、教室外での英語使用場面がほとんどないEFL(English as a Foreign Language)環境においては、PPP(Presentation-Practice-Production)の流れに沿った授業の方がよいという指摘もある。本研究では、PPP授業とTBL授業の文法学習における効果を比較検証した。結果から、両授業とも文法学習において一定の効果が見られたが、文法知識の習得や英作文における正確さを重視するならばPPP授業、英作文のおける流暢さや内容の豊かさを重視するならTBL授業の方が効果的ではないかとの示唆が得られた。また、多様な性格や学習への動機づけを持った学習者がいることを考慮し、さまざまな形式の授業を組み合わせて活用すべきであるということが示唆された。
著者
藤田 正
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.14, pp.43-46, 2005-03
被引用文献数
2

日常生活における学習課題の先延ばし行動と失敗行動の関係を明らかにするために,大学生175名を対象に、学習課題先延ばし傾向尺度と失敗傾向尺度を実施した。新たに作成した課題先延ばし傾向尺度を因子分析した結果、「課題先延ばし」と「約束事への遅延」の2因子が見出された。次に、先延ばし傾向と失敗傾向の関係を調べるために両者の相関を検討した結果、両者の間には全体得点で中程度の有意な正の相関が見出された。さらに失敗傾向の下位尺度(アクションスリップ、認知の狭小化、衝動的失敗)のすべてにおいても有意な正の相関が見出された。また、先延ばし傾向高群は、低群に比べ全ての失敗傾向において有意に高い得点であった。これらの結果から、課題先延ばし行動は失敗行動と強く関係していることが明らかになった。