著者
山田 佳那 松村 佳子
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.61-70, 2006-03-31

This research aims at preventing accidents during experiments in science classes. For the purpose we investigated various accidental instances that happen in past time. And in order to make survey of the kind of accidents that students have met, we sent questionnaires to the students of junior and senior high school, and those of the Nara University of Education. The results indicate that there is a coincidence between the accidents that can potentially happen when performing experiments and the safety guidelines which students suppose to follow. In addition, there are several differences for the students with respect to their grades, because of various surroundings, in the image for science, the safety perception and the dangerous experience. This fact may be due to the conditions which students are living in and the reduction in the science class experiments contents caused by changes in the course curriculums. Considering the current measures taken by the Board of Education and the information gathered about accidents during science experiments, we propose how accidents should be prevented when executing experiments in science classes.
著者
桑原 昭徳
出版者
山口大学
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.17-31, 2007-03-25

2006年の10月初旬、6ヵ月後には定年退職をむかえる60歳のC教諭の2年国語授業を参観した。これが授業を通してのC教諭との最初の出会いとなった。学級の児童は12名なのだが、授業が始まる前に、子どもたちは教室の時計やチャイムの音を気にもしなかった。開始定刻に着席できず、学習準備もできなかった。端的に言えば、「学習規律」が指導されていない学級であり、授業なのであった。学年が始まってすでに半年が経過しているというのに、授業の指導技術の中でも最も基本的な「遅刻・私語・忘れ物」が克服されていないのであった。国語授業のなかで物語文を学習するための「学習方法」は考慮されているのだが、発問が子どもに理解されづらい。無限定の発問であるので、子どもたちが応答しようのない場合があった。結果として、会話を中心として展開され、わかりやすい物語であるにもかかわらず、子どもたちが登場人物に同化しながら、考えたことをきちんと発表することができなかったし、子ども自身が「わかった」という実感が持ちづらい授業となった。第2回目のC教諭の授業の参観は、筆者から申し出て10月20日となった。最初の授業参観から数えて、14日後のことである。この日、3時間目の音楽と4時間目の算数を参観することになった。算数は、授業の始まりから15分間をC先生が指導して、桑原と校長先生が参観した。残りの30分間の授業は、同じ教材を用いて桑原が指導して、C先生と校長先生が参観した。授業が終了した直後の10分間、校長室でC先生に助言する時間を持った。第3回目のC先生の授業の参観は、11月16日午後から開催されるB小学校の他学年の授業研究の日の4時間目に、筆者がC教諭の授業参観を希望するという形で実現した。この日の授業の始め方は、従来の子ども達とは違っていた。C教諭が「10、9、8」と声をかけると、子どもたちは一斉に「7、6、5、4」とカウントダウンの声を続けた。「3、2、1、ゼロ」で終わると、今度は一斉に「日直さん、お願いします」と言った。すると、日直の子どもが前に出て「気をつけ、れい、お願いします」と合図の声を発した。この声に合わせて、子どもたち全員が11時30分の定刻に、緊張感とともに授業を始めることがで?きたのであった。学習内容は掛け算九九の「6の段」であり、「6の段」の練習活動が展開された。学習規律の定着とともに、子どもたちの授業への参加の度合いや集中力は、約40日の中で明らかに向上した。第3回目の研究協議と私の指導講話の最後、それは同時に私の参加したB小学校における3回にわたる公式の授業研究の最後でもあったのだが、私は次のようにC先生とB小学校の先生方に呼びかけた。「どうかC先生、3月下旬の終業式まで、授業改善をしつづけてほしい。ほかの先生方はC先生を支えてあげてほしい」とお願いするとともに、「C先生が退職をされる最後の日まで、良い授業をしようとして努力され、笑顔とともにお辞めになった」という風の便りが、いつの日にか、私の耳に届くことを楽しみしていると伝えた。
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-10, 2006-03-31

本研究の目的は、大学生の自尊感情と自己効力感が、これまでの随伴経験及び非随伴経験の程度によって規定されるか否かを検討することであった。476名の女子大学生に、牧ら(2003)が開発した主観的随伴経験尺度を実施した。被調査者には随伴経験・非随伴経験尺度の各項目に対する6段階評定を求め、自尊感情及び自己効力感尺度についても同じように評定を求めた。随伴経験及び非随伴経験を説明変数、自尊感情もしくは自己効力感を目的変数とする重回帰分析の結果、自尊感情は随伴経験及び非随伴経験尺度の評定得点によって21%が説明でき、自己効力感についても12%が説明可能であった。この結果は、両経験によって自尊感情及び自己効力感が規定される可能性の高いことを示すものとして解釈された。
著者
松浦 直己 岩坂 英巳
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.203-209, 2009-03-31

特別支援教育でCBTを応用した事例を報告する。その際、対象児の情緒と行動の問題をCBCL-TRFで評価した。対象児は9歳の男児。選択性緘黙及び学習障害を有していた。対象児の認知・行動特性として、①自罰的認知、②原因帰属の歪み、③恣意的で極端な行動様式が挙げられた。約2年後のCBCL-TRFの結果、いくつかの下位尺度で改善が認められた。 "不安抑うつ" 及び "社会性の問題" では大幅な改善が認められた一方で、 "ひきこもり" "思考の問題" では臨床域のままであった。本事例ではCBTの技法を4つの構造に分けて適用した。通常学級におけるCBT適用の有効性や、タイミングについて考察した。また、奈良教育大学で実施されている、認知行動療法に関する実践研究についての紹介を加えた。
著者
田渕 五十生 谷口 尚之 祐岡 武志
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.17, pp.289-297, 2008-03

本奈良県には「法隆寺地域の仏教建造物」、「古都奈良の文化財」、「紀伊山地の霊場と参詣道」の3つの世界遺産がある。これは日本では稀有なケースであり、世界遺産教育にとって、非常に恵まれた環境といえる。本稿は附属中学校の谷口と、法隆寺国際高校の祐岡による地域の世界遺産を教材化した実践報告である。それらの実践を通して「世界・地域遺産」教育という新しい概念を提起した。また、身近な地域の文化遺産、将来に残したい地域の自然景観などと結びつける学習過程を組むことによって、地域に世界遺産を持たない学校でも世界遺産教育が可能であることを論じた。
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.7-10, 2010-03-31

本研究は、豊田(2008)と同じ質問紙を用い、小学1年生から中学2年生までの4,139名を対象にして、基本的生活習慣,社会的生活習慣,学習習慣及び情動知能という4つの要因間の関連性、およびこれらの要因に含まれる学習活動が学業成績に及ぼす影響を発達的に検討した。相関分析からは、学習習慣、社会的生活習慣および情動知能の間に関連性の強いことが示され、これらに共通する要因としての学習意欲の可能性が議論された。また、個々の学習活動と学業成績の相関分析では、理解への意欲がほとんどの学年において学業成績への影響が強いこと、および宿題の習慣が、どの学年においても一貫して学業成績を規定することが指摘された。この結果から、今後の課題として、理解への意欲を規定する動機づけ(内発的動機づけ、達成動機づけ)、及び宿題以外の学習機会を確保するための方法の検討が示唆された。
著者
稲垣 紀夫 藤田 正
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.14, pp.47-54, 2005-03
被引用文献数
1

本研究では、効果的な漢字学習方法の検討と、その学習過程のメカニズムを解明することを目的とした。実験では、漢字を直接書いて練習する「書字学習条件」と、紙面上に指で漢字を書いて練習する「空書学習条件」を新しく設定し、それらの学習方法が漢字の書き取りにどのような効果を持つのかについて2つの実験で検討した。特に「書字」と「空書」の違いについて、漢字学習法における学習過程のメカニズムを証明した。本研究で行った2つの実験結果により、(1)漢字学習に多く使われている書字学習法が、漢字の書き取りにおいて促進的な効果をもたらすことが証明された。また、先行研究において漢字を想起する場面でその有効性が示唆されてきた「空書学習法」が、漢字の学習においても有効であることが明らかになった。さらに、(2)「書字」と「空書」の学習法の違いは、「視覚情報の一時的な保持」、「筋肉運動的書字行為」、「書字結果の確認」の学習過程のうちの「書字行為の結果の視覚的な確認」の有無であることが明らかにされた。
著者
石井 由理
出版者
山口大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
no.26, pp.81-94, 2009

備考 (<タイトルの訳>アジアの学校教育における音楽的アイデンティティー : 普遍的音楽原理と地域的アイデンティティーの間で), 文化のグローバル化の影響は我々の生活のあらゆるところに見出すことができる。アジアの国々では、それはしばしばグローバルな標準だと考えられている西洋文化の採用とそれに対する適応として現れる。グローバル化のこの側面は文化の収斂あるいは普遍化といった表現で述べられるが、文化のグローバル化は決してこの側j面のみから成り立つわけではない。これに対抗するかたちで文化の発散、あるいは特殊化という現象も存在する。何らかの形で自分たちの文化の特徴を維持しようというアジアの国々の試みは、このような現象の一例である。グローバル化におけるこれらの対照的な特徴が生み出すのは、文化の混成である。本稿の目的は、この文化の収斂、発散、混成に国家がどのように関わっているかを探ることである。この目的のために、本稿は日本およびその他のいくつかのアジアの国々における学校音楽教育政策に焦点をあてる。本稿でとりあげるアジアの国々の音楽教育政策においては、音楽文化の収斂の側面として西洋の記譜法と音楽理論を採用していること、発散の側面として各国の伝統音楽の伝承を主張していること、そして混成あるいは妥協の側面として、自民族の作曲家によって作られ、その言語の歌詞をもつ、西洋音楽理論に基づいた教科書音楽が広く教えられていることが、共通の現象として見られる。