著者
松浦 直己 岩坂 英巳
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.203-209, 2009-03-31

特別支援教育でCBTを応用した事例を報告する。その際、対象児の情緒と行動の問題をCBCL-TRFで評価した。対象児は9歳の男児。選択性緘黙及び学習障害を有していた。対象児の認知・行動特性として、①自罰的認知、②原因帰属の歪み、③恣意的で極端な行動様式が挙げられた。約2年後のCBCL-TRFの結果、いくつかの下位尺度で改善が認められた。 "不安抑うつ" 及び "社会性の問題" では大幅な改善が認められた一方で、 "ひきこもり" "思考の問題" では臨床域のままであった。本事例ではCBTの技法を4つの構造に分けて適用した。通常学級におけるCBT適用の有効性や、タイミングについて考察した。また、奈良教育大学で実施されている、認知行動療法に関する実践研究についての紹介を加えた。
著者
田渕 五十生 谷口 尚之 祐岡 武志
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.17, pp.289-297, 2008-03

本奈良県には「法隆寺地域の仏教建造物」、「古都奈良の文化財」、「紀伊山地の霊場と参詣道」の3つの世界遺産がある。これは日本では稀有なケースであり、世界遺産教育にとって、非常に恵まれた環境といえる。本稿は附属中学校の谷口と、法隆寺国際高校の祐岡による地域の世界遺産を教材化した実践報告である。それらの実践を通して「世界・地域遺産」教育という新しい概念を提起した。また、身近な地域の文化遺産、将来に残したい地域の自然景観などと結びつける学習過程を組むことによって、地域に世界遺産を持たない学校でも世界遺産教育が可能であることを論じた。
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.7-10, 2010-03-31

本研究は、豊田(2008)と同じ質問紙を用い、小学1年生から中学2年生までの4,139名を対象にして、基本的生活習慣,社会的生活習慣,学習習慣及び情動知能という4つの要因間の関連性、およびこれらの要因に含まれる学習活動が学業成績に及ぼす影響を発達的に検討した。相関分析からは、学習習慣、社会的生活習慣および情動知能の間に関連性の強いことが示され、これらに共通する要因としての学習意欲の可能性が議論された。また、個々の学習活動と学業成績の相関分析では、理解への意欲がほとんどの学年において学業成績への影響が強いこと、および宿題の習慣が、どの学年においても一貫して学業成績を規定することが指摘された。この結果から、今後の課題として、理解への意欲を規定する動機づけ(内発的動機づけ、達成動機づけ)、及び宿題以外の学習機会を確保するための方法の検討が示唆された。
著者
稲垣 紀夫 藤田 正
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.14, pp.47-54, 2005-03
被引用文献数
1

本研究では、効果的な漢字学習方法の検討と、その学習過程のメカニズムを解明することを目的とした。実験では、漢字を直接書いて練習する「書字学習条件」と、紙面上に指で漢字を書いて練習する「空書学習条件」を新しく設定し、それらの学習方法が漢字の書き取りにどのような効果を持つのかについて2つの実験で検討した。特に「書字」と「空書」の違いについて、漢字学習法における学習過程のメカニズムを証明した。本研究で行った2つの実験結果により、(1)漢字学習に多く使われている書字学習法が、漢字の書き取りにおいて促進的な効果をもたらすことが証明された。また、先行研究において漢字を想起する場面でその有効性が示唆されてきた「空書学習法」が、漢字の学習においても有効であることが明らかになった。さらに、(2)「書字」と「空書」の学習法の違いは、「視覚情報の一時的な保持」、「筋肉運動的書字行為」、「書字結果の確認」の学習過程のうちの「書字行為の結果の視覚的な確認」の有無であることが明らかにされた。
著者
石井 由理
出版者
山口大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13468294)
巻号頁・発行日
no.26, pp.81-94, 2009

備考 (<タイトルの訳>アジアの学校教育における音楽的アイデンティティー : 普遍的音楽原理と地域的アイデンティティーの間で), 文化のグローバル化の影響は我々の生活のあらゆるところに見出すことができる。アジアの国々では、それはしばしばグローバルな標準だと考えられている西洋文化の採用とそれに対する適応として現れる。グローバル化のこの側面は文化の収斂あるいは普遍化といった表現で述べられるが、文化のグローバル化は決してこの側j面のみから成り立つわけではない。これに対抗するかたちで文化の発散、あるいは特殊化という現象も存在する。何らかの形で自分たちの文化の特徴を維持しようというアジアの国々の試みは、このような現象の一例である。グローバル化におけるこれらの対照的な特徴が生み出すのは、文化の混成である。本稿の目的は、この文化の収斂、発散、混成に国家がどのように関わっているかを探ることである。この目的のために、本稿は日本およびその他のいくつかのアジアの国々における学校音楽教育政策に焦点をあてる。本稿でとりあげるアジアの国々の音楽教育政策においては、音楽文化の収斂の側面として西洋の記譜法と音楽理論を採用していること、発散の側面として各国の伝統音楽の伝承を主張していること、そして混成あるいは妥協の側面として、自民族の作曲家によって作られ、その言語の歌詞をもつ、西洋音楽理論に基づいた教科書音楽が広く教えられていることが、共通の現象として見られる。