著者
横窪 安奈 木村 健一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P50, 2010 (Released:2010-06-15)

本研究は,茶室における亭主の動作と茶釜音(環境情報) が茶事における周期性を持つことを明 らかにし,この周期への客の同期を図ることで,茶事協調支援を促すための新しい茶室「幻庵」の 提案を目的としている.茶道は日本の伝統芸能の代表の1つである.茶道の技能を習得するためには,教科書を用いた知識習得型の学びでは,体得するのは困難である.そのため,技能の習得に関わる身体動作の周期性への同期を主体とした,スキル・サイエンスの知見を用いて茶事協調を解明することに取り組んだ.まず,茶釜の湯温変化が茶事協調の重要な要素であると仮説を立て,LED を発光体とし,Gainer で発光パターンを制御する明滅発生装置「幻庵ver0.1」を試作した.ここでは,茶室空間独自の雰囲気を損ねないことが確認できた.次に,茶事協調の同期の状況を確認するため,茶室フィールド実験を行った.実験結果から,亭主の動作が茶釜の音の変化と同期していることが明らかになった.さらに,亭主の動作を一区切りとした周期があり,茶事全体の周期を構成していることが示唆された.これを可視化することで,客が茶事の周期への同期を図ることができ,茶事協調の支援となる可能性があると考える.
著者
加藤 健太
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.H08, 2010 (Released:2010-06-15)

国土交通省が公的に使用している乗用車の平均乗車人数の値は1.3人である。これは現在市販されている乗用車の多くが4人以上の乗車定員だということを考えると、乗車定員数削減による小型化が大いに可能なように思われる。そこで本研究では、乗用車の定員数と生活者の意識の変遷を文献調査から分析し、現在の乗車人数と利用実態をアンケート調査によって明らかにした。それをもとに乗用車の乗車人数を適正化する手段の一つとして少人数乗りの乗用車の可能性を考察した。その結果、2人乗りのパーソナルモビリティが今後普及する可能性があると分かった。また、5人乗り以上の乗用車は非所有化し、レンタカーなどを利用することが望ましい。しかし、少人数乗り乗用車を購入する事による利点が消費者にとって少ないのが現状である。今後はこの利点を明白にし、実現の可能性のための解決策を具体的な数字で明らかにしすることが課題であると言える。
著者
後藤 吉郎 石川 重遠 山本 政幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E09, 2010 (Released:2010-06-15)

この研究は、アメリカや日本の印刷界で使われているゴシックと呼ばれている活字分類の起源を解明する事を目途としている。ゴシックという呼称は、アメリカと日本の両国の活字見本帳で見る事ができる。そもそもゴシック体は、15世のグーテンベルグ聖書で使われたブラックレターを指し示していたが、アメリカでは19世紀のサンセリフ体を使用する時からこのゴシック体という用語を用いていた。William Gambleが中国の教会で印刷家として任を終えてアメリカへ帰る途中、日本へ立ち寄り、印刷技術の商会をしたが、その折にこのゴシックという用語も教えて帰国したのではないだろうか。Gambleとアメリカの活字鋳造所がタイプフェースを誤ってもたらした事と、この仮説をこの研究で明らかにする。
著者
立部 紀夫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F05, 2010 (Released:2010-06-15)

「金網看板」とは方形の木枠に金網を張り、金網の中央に木を切抜いた文字を付着 した独特な形式の看板である。大正期から昭和初期にかけて都市部を中心として 店舗の庇の上に掲げられたが、現在見かける数は少なくなった。 本稿では「金網看板」の意匠的特質について考察する。
著者
臼井 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F07, 2010 (Released:2010-06-15)

1930年代のイタリアでは、短期間に同じようなエクステリアとインテリアを有する新形式車両として気動車と電車が全国に大量導入された。流線型の先頭形状、丸みを帯びた車体断面、屋根から床下近くまで平滑に仕上げられた車体、茶色の濃淡で統一された塗装、一室空間による開放的な車内、連続する窓とヴォールトの高い天井、それらは同年代に登場した新形式車両にそれぞれ共通する特徴である。これらのデザイン的特質は、表層的なスタイリングの操作ではなく合理的な構造がダイレクトに形態に反映されたものである。そのため余分な装飾や機能は微塵も認められない。しかも製作メーカーの違い、内燃機関か電動機かという動力形式の違いを越えて、ほぼ一様に単純化されたスタイルが反復されている。一定のコードで統一されたシンプルなデザインは、1930年代の新形式車両デザインの特質といえる。そして形態を極端なまでに単純化させることで全体の調和の図られていたモダンデザインの駅舎と、機能に即して無駄な要素をそぎ落としデザインを先鋭化させていった新形式車両。ミニマルなデザインを実現したという点で、1930年代のイタリアに生み出された両者は相通じている。
著者
岩崎 信治
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F01, 2010 (Released:2010-06-15)

イギリスの人類学者エヴァンズは1900年にクノッソスにある古代ミノクスの宮殿で、二世紀または四世紀と云われる迷路の原型が画かれたクノッソス貨幣の出土を発掘した。このクノッソスの迷路はその後世界各地から出土品や遺跡として現われた。代表的な迷路はフランスのシャルトル大望堂の床に描かれたモザイクであり、北欧では石で庭に画かれた迷路が各地に見られる。これら迷路の成立過程や存在理由は民族の神話や伝説であったり、神話学的解説や学術的定説は未だに不明である。迷路は入り口から中央の終点まで迷うことない一本道だが、途中はくねくねと迂回する曲折模様や螺旋状を示している。その形状はクノッソス貨幣の迷路の原形を伝承するもので、このようなクノッソス文化形態は日本では全く見ることができない。
著者
木平 崇之 金 美英 小山 慎一 日比野 治雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P19, 2010 (Released:2010-06-15)

本研究では,SD方法を用いて,歴史的仮名遣いと現代仮名遣いの表記の相違による単語の印象の変化を分析し,定量的に評価した.被験者には,評価対象となる単語について15組の形容詞対によって印象評価を求めた.印象評価結果に対して因子分析を行った結果,安定性因子,力量性因子,感受性因子の3つの因子が抽出された.また,因子得点を用いて数量化_I_を行ったところ,仮名遣い全体としては安定性因子に大きく影響を与えていることがわかった.また仮名遣いの中でいくつかに分類することで,力量性因子,感受性因子にも影響を与えていることが判明した.
著者
商 倩 落合 勇介 崔 庭瑞 日比野 治雄 小山 慎一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P37, 2010 (Released:2010-06-15)

照明方向が顔の印象に影響を与えることは先行研究によって指摘されているが,顔の好ましさに与える影響を定量的に評価した研究は行われていない.そこで本研究では,左または右からの照明が顔および物体の好ましさに与える影響について検討した.提示刺激は、顔に見える図形・物体に見える図形・顔写真の3種類であった.刺激として顔に見える図形と顔写真を提示する場合,単純に顔と認識させる事が重要であるため,表情による印象変化や顔の非対称性などの要因を排除した画像を用いた.明るさはグラデーションで表現した.左側が明るい画像,右側が明るい画像を画面の上下にランダムに提示し,被験者にはどちらか印象の良いほうを選ぶよう教示して印象を評価してもらった.さらに,刺激を倒立させて同様の実験を行った.結果としては3種類全ての場合において,左側を明るくした方が良い印象を与えるという傾向が認められた.特に顔に見える図形および顔写真ではその効果が大きかった.刺激を倒立させた場合は、物体に見える図形においてのみ,その効果は減少した.
著者
角山 朋子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F06, 2010 (Released:2010-06-15)

芸術家と職人の団体「ウィーン工房」(1903-1932)の幾何学的デザインは、オーストリア・ユーゲントシュティールの典型様式である。本研究は、20世紀初頭オーストリアの近代デザインの特徴の解明を目的に、ウィーン工房製品様式とデザイナーの造形思想、および世紀転換期ウィーンの文化動向との関連性を明らかにする。ウィーン工房の母胎は、新たな時代様式の確立と「総合芸術」の実現を目指したウィーン分離派であった。ウィーン工房の単純な家具や金属細工は、イギリスを中心とする工芸改革運動の理想と一致する。しかし装飾は皆無ではなく、そこには歴史主義を批判し機能を暗示するものとして装飾を節制した、当時のウィーンの新たな造形観念が現れている。また、簡素なデザインには、1900年前後のウィーンで郷土的表現として流行したビーダーマイヤー様式との類似性が認められる。
著者
平野 聖
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F02, 2010 (Released:2010-06-15)

本稿では昭和40年代以降すなわち昭和後期の我が国扇風機のデザインの変遷に関し、三菱電機のデザイン開発事例をもとに考察し、以下の事情について概観した。 昭和後期は、我が国扇風機の成熟期に相当し、普及率が頭打ちの状態となった時代である。各社の扇風機のデザインは、非常に似通ったものとなった。そんな中、同社において市場を喚起する約割を担ったのが、「扇風機のコンパクト化」に関する提案であった。扇風機を分解梱包し、使用しない時にはコンパクトに保管できるアイデアを「コンパック」とネーミングし消費者に大いにアピールした。扇風機本体の形状を変化させる工夫を施しさらにコンパクトにするアイデアは継続的に研究され、「オレオレ」として花開く。他社がスイッチ部の電子コントロール等の開発に血道を上げている間に、同社はダイナミックな外観の変化を優先することにより差異化を図った。
著者
横尾 俊輔 柳澤 秀吉 村上 存 大富 浩一 穂坂 倫佳
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.C19, 2010 (Released:2010-06-15)

製品音は感性品質を向上させる重要な設計要素である.静音化が十分なレベルに達した製品群においては,製品音を感性品質として捉えた音のデザインが注目されている. これまでの筆者らの研究から,製品音に含まれる適度なピーク成分(トーン)の存在が快音に寄与する知見が得られ,新しい感性品質指標の存在が示唆されている.そこで,本研究では,ピーク成分を含む製品の定常音について,和声学にもとづいた音の調和性を向上させることで,音質評価が向上することを被験者による感性評価実験の結果から明らかにする.これにより,製品音の快音化において調和性が一つの評価指標となることを示す.また,この調和性を説明する特徴量の候補として,和音性モデルの特徴量及びトーナリティを提案し,それらと対応する評価語,及び調和感・不快感に関する定量化を行う.さらに,不快感と調和感,及び協和感には強い関係があり,協和感を上昇させる不協和度を低く設定することが音質評価における不快感の軽減につながることを示す.
著者
國村 大喜 五十嵐 浩也 蓮見 孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P31, 2010 (Released:2010-06-15)

私達は足を怪我した場合、松葉杖を使用する。松葉杖は、使用時に両手で握らなくてはならず、手が使えない不便な生活を強制する製品といえる。それにも関わらず、大昔からその形状は変わっていない。 ここに問題点を見いだし、本研究では片下肢を完全免荷したままでの歩行を可能にする歩行補助具「pivot-walker」およびそれを用いた歩行方法である「ピボット歩行」の提案を行った。pivot-walker は移動時に片手を自由に、直立位で両手を自由にすることが出来る。 松葉杖生活は両手が使えない、という常識を覆す画期的な歩行補助具といえる。
著者
武藤 武志
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P29, 2010 (Released:2010-06-15)

クロスメディアやメディアミックスの中心にはWEBサイトが置かれることが多いが、その中でもWEBサイトや動画共有サイト等の普及により、動画がプロモーションやリッチコンテンツとして使用されるケースが増加している。そこでの動画の尺は、テレビCMより長く、映画より短い時間で構成されている。この尺での映像表現を魅力的にするためにはその尺に合った「盛り上がり」を考えなくてはならない。映画ほど時間をさいての盛り上がりの設定は困難であり、テレビCMのような短時間でのインパクトを追求した表現では、WEBに誘導する効果は薄いと言える。 この盛り上がりを考える上で、情報量との関係に注目した。映像表現には多くの種類の情報が混在している。文字情報、写真やイラスト等のグラフィック、オブジェクトの動きから、音楽・効果音などである。情報量を調節することが、映像のリズムを演出し、視聴者の集中力を維持し、しいては魅力的なものとなると推測される。 本研究では映像表現における盛り上がりについての要因の抽出分析を行い、仮想映像モデル作成、印象評価等を行い、各要因の関係性について考察する。
著者
石村 眞一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E19, 2010 (Released:2010-06-15)

沢田知子が『ユカ坐・イス坐 起居様式にみる日本住宅のインテリア史』を刊行したのが1995年で、その後15年が経過した。沢田は「洋式床坐」は昭和50年代後期に誕生し、その後いくつかのバリエーションに展開したと指摘している。すなわち、洋式椅子坐のリビングルームが、座家具のある床坐、座家具のない床坐、椅子坐と床坐の併用(椅子座は応接セット、ソファーを事例としている)に展開していると論じている。この「洋式床坐」について、沢田は床坐から椅子坐へと移行した生活者が、再び床坐を取り入れるという「床坐回帰現象」の延長上で捉えている。しかし、それだけが「洋式床坐」の成立要因であるとも思えない。本発表の目的は、沢田の論じる「洋室床坐」の出現時期と発展、さらに家具類との関連性を、戦後に製作された映画の場面を通して検証していくことにある。
著者
等々力 心太朗 原田 泰
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A13, 2010 (Released:2010-06-15)

この研究は、リアルタイムドキュメンテーション(以下RTD)のスムーズでクオリティの高い活動を目指している。本研究は、特に紙媒体による表現に主眼を置いている。その目的は、リアルタイムペーパー(以下RTP、参加者がその場で持って帰ることのできる新聞)の表現や制作、記録のノウハウを外在化することである。その研究の一環として、RTDのスタッフやファシリテータとのイメージの共有を目指して、これまでにRTDの活動にて作成されたRTPの分類を行った。その結果、以下のパターンがあげられた。 1.グリッド型 2.チャート型 3.コラム単位型 4.レイヤー構造型 5.マップ型
著者
横川 耕二 須永 剛司
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A11, 2010 (Released:2010-06-15)

絵を描いたり文章を書いたりする表現活動は人々の生活を豊かにする。この表現活動はそれを行う人々が自らの心の中に抱く思いを他者へ対して具現化する複雑で繊細な活動である。表現活動のための道具や場は自由と制約の慎重な設計によって人々の表現したい気持ちや能力を引き出すことが求められる。本稿では市民の表現活動のための道具「Zuzie」を開発する過程で得られたデザインの知見をデザイン論として明らかにしたい。
著者
浅野 智 鈴木 平 山田 雅代 和田 夏希 佐藤 純 田中 拓也
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P41, 2010 (Released:2010-06-15)

人間中心設計を応用したWeb開発プロセスでは、フィールドワークやインタビューでユーザーの潜在的欲求を探り、その情報を可視化するペルソナやシナリオといった手法が活用されるようになってきた。また可視化されたユーザーが利用する人工物をモデル化する過程としてペーパープロトタイプなどが注目されている。 本研究は、Webサービスの設計において可視化されたユーザーがどのようなコンテクストで人工物を扱いゴールにたどり着くかを、スケッチからプロトタイピングという流れに着目しその手法について提案と検証を試みた。