著者
吉村 寿紘 谷水 雅治 川幡 穂高
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.24-24, 2011

本研究では,近年測定可能となったMg同位体比(δ26Mg)を用いることで,陸棚堆積物と間隙水の反応における詳細なMg 動態を解明することを目的とした。試料はIODP Exp317の掘削サイトU1351ならびにU1352で得られた間隙水と堆積物を用いた。試料は陽イオン交換樹脂を用いてMgを分離した後,多重検出器型ICP-MSでMg同位体比の測定を行った。Mg同位体比は海水標準試料IRMM BCR403に対する千分率偏差(‰)として表す。U1351の間隙水のδ26Mgは-1.8~-0.1‰,U1352は-2.2~1.0‰を示した。陸棚と陸棚斜面のプロファイルの違いは海水準変動に起因する堆積履歴の違いに由来すると考えられる。U1352の上部200mではδ26Mgが1.20‰増加し,200~350mでは1.25‰減少した。このことはコア上部200mでは有機物の分解に伴うドロマイトの沈殿反応が卓越するが,コア深度の増加に伴ってMgの除去源がドロマイトから粘土鉱物が卓越する反応に移行することを示唆する。
著者
堀井 勇一 ゲート ペトリック 岡田 誠 片瀬 隆雄 蒲生 俊敬 山下 信義
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.257-257, 2004

残留性有機汚染物質(POPs)の全地球的な環境挙動把握と発生源推定を行うためには従来の組成分析法では信頼性に乏しい。本研究では新規に開発した二次元ガスクロマトグラフ同位体比質量分析計を用い、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)・ポリ塩素化ナフタレン(PCN)製剤、及びハロゲン系の揮発性有機化合物の炭素同位体比分析を行った。PCBについては、すでに報告されている日欧米製剤に加え東欧諸国(ポーランド・チェコ・ロシア)の製剤も分析し、PCNについては世界各国で使用された米国製のHalowax製剤シリーズを分析、各種製剤の傾向を解析した。さらに、これら半揮発性化合物であるPCB・PCNの比較として、異なる製造元から収集した揮発性の有機溶剤についても分析し、各種ハロゲン系有機汚染物質の物性及び炭素数や塩素・臭素置換等の構造の違いにより同位体組成に差があるか注目した。
著者
八代 尚 滝川 雅之 須藤 健悟 菅原 敏 青木 周司 中澤 高清
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.233-233, 2009

大気中水素(H<SUB>2</SUB>)はメタンに次いで濃度の高い反応性気体であり、土壌細菌による消費を主な吸収源とすることから、陸域-大気間の相互作用を研究する上で有用なトレーサーである。本研究において観測された日本上空のH<SUB>2</SUB>濃度は明瞭な鉛直勾配を示し、地表付近での大きな季節変動が明らかになった。全球三次元化学輸送モデルCHASERを用いたH<SUB>2</SUB>濃度の計算結果はおおむね観測結果を再現するが、北半球で秋から冬にかけて過小評価の傾向を示し、より詳細な吸収過程の表現を必要とすることが示された。
著者
松野 弘貴 中町 鴻 本多 照幸 木川田 喜一
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

2011年3月11日に発生した東北太平洋沖地震(M9.0)(以下東日本大震災)によって、福島第一原子力発電所の原子炉の事故が発生しその結果、1~4号機の原子炉建屋で水素爆発が生じ、大量の放射性物質が大気中に放出された(Ⅰ-131等価で77万兆ベクレル)。 その結果、関東地方(東京都市大学原子力研究所・川崎市西部)でも人工放射性核種Cs-134、Cs-137が検出された。福島原発事故により飛来した、これらの人工放射性核種を調査することで、事故による大気拡散や大気環境への影響を解明する端緒となることが期待される。 本研究では、東京近郊の川崎市郊外を中心とした事故直後と1年後の大気試料中のγ線放出核種(Cs-134、Cs-137)の解析結果について報告する。更に放射性Csの化学形態を調査するためにCsの抽出実験を行ったので報告する。
著者
下島 公紀 前田 義明 間木 道政
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.129-129, 2007

活動的な海底地殻で起こっている海底熱水活動域では,天然の状態でCO2が放出されている。熱水中にはマグマ起源のCO2が高濃度に含まれており,熱水噴出孔から放出された後は,高CO2濃度・低pHの熱水プルームとして深層水中に拡散するという現象が繰り広げられている。海底熱水活動域では、溶解したCO2によって高CO2濃度・低pHの環境が発生していることが予想されるため,熱水活動地帯における液体CO2の挙動観測は,CO2貯留の環境影響評価のナチュラルアナログとして最適である。
著者
伊古田 博嗣 岡田 孝一郎 黒木 由貴子 新垣 雄光
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.80-80, 2005

海水中の過酸化物の生成起源は、海水中での光化学反応と大気中の過酸化物の海水への乾性沈着、雨の日は大気中の過酸化物の雨水中への溶け込みとその湿性沈着などが考えられている。また、海水中でのオゾンの生産量、光活性物質の濃度、入射光、海面での透過度や光の波長域などの因子が大きく影響していると報告されている。そこで、本研究では晴れの日の海水中の過酸化物のソースを明らかにすることを目的に以下の3項目について研究を行った。まず、海水中の過酸化物に対する海水の循環や潮汐の影響を考察する。次に、乾性沈着の影響を考察する。さらに、大気中の過酸化物の日周変化を測定し、過去の測定結果との比較を行う。
著者
高橋 浩 風早 康平 高橋 正明 稲村 明彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

トリチウムを指標として深部流体の化学組成を求めるための解析をシオワッカ、鹿塩、有馬・宝塚、津和野において実施した。推定された深部流体の化学成分は、どの地域もNa-Clが主要成分であるが、宝塚や有馬でCaに富み、津和野やシオワッカでMgに富む傾向があった。さらに、炭素成分にバリエーションが見られた。深部流体に特徴的な成分であるCO2、ClとH2Oについて見てみると、有馬、宝塚、津和野におけるC/Cl比はおおよそ一致し、H2Oとの比が変化している。全炭酸-Cl-Liの比では、有馬・宝塚の方が津和野よりもわずかに高いLi/Cl比を示すものの、非常に似た組成を示した。このことは、有馬・宝塚と津和野では共通した深部流体端成分を示唆し、トリチウムを含まない淡水による希釈の影響を示す。一方、鹿塩地域では、Li/Cl比も有馬・宝塚・津和野より高かった。これは、深部流体の上昇過程において、地層との反応が起きているためと考えられる。
著者
佐野 有司 高畑 直人 堀口 桂香 植木 貞夫 中島 淳一 長谷川 昭
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.250-250, 2006

日本列島においても温泉や火山、天然ガスなどを通じて固体地球から揮発性元素が定常的に脱ガスされている。これらの中でマントル起源であることが明らかなヘリウムー3と地殻起源のヘリウムー4の比のマッピングをすることで、日本列島におけるテクトニックな場をヘリウム同位体比がどのように反映するか1980年代から研究されてきた。一方、地震波の高精度データが蓄積し、その解析法に進歩があり、地下の構造を示す地震波トモグラフィーの詳細な研究が行われつつある。本研究では、これまでに蓄積されたヘリウム同位体比のデータをコンパイルし、そのマッピングと地震波トモグラフィーのデータを比較検討し、日本列島における脱ガス過程と地下構造の関係について発表する。