著者
圦本 尚義
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

<p>今,あなたが解き明かしたい地球化学は,あなたの実験室の分析装置でできそうですか?どこかの実験室に行けばできそうですか?それとも全く新しい分析装置の発明が必要ですか?この発表では最後の質問に「はい」と答える方と議論したい. なぜ最先端分析装置を越える新しい分析装置を発明したいのか?それは,最先端分析装置を発展させるだけでは解き明かせない新しい地球化学を発見しているからだ.新しい分析装置の開発は,新しい物理と新しい化学のコラボレーションで始まり,発明へと進展する.地球化学の発見が分析装置の発明によりなされることがあることを,同位体顕微鏡を例にして議論する.地球化学の難題は,分析装置発明の原動力になりそうだ.</p>
著者
西尾 嘉朗 塚原 弘昭
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.193, 2009

松代群発地震域の湧水のリチウムとストロンチウムの同位体比に正の相関を発見した。松代湧水のLi濃度から計算すると,本地域のLi同位体比は表層水混入の影響はなく,深部水の値とみてよい。つまり,今回発見されたLiとSrの正の相関は,非表層水と表層水の2成分混合の結果ではなく,従来1成分と思われていた非表層水成分が少なくとも2成分あることを意味する。
著者
丹 秀也 関根 康人 渋谷 岳造 宮本 千尋 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>木星の衛星エウロパは、表面を氷地殻に覆われており、内部には内部海を持つことで知られる。近年の望遠鏡観測により、木星の衛星イオ由来の硫酸がエウロパの公転後面を汚染している一方、汚染の少ない公転前面にはナトリウム塩などの内部海由来の物質が存在していることが示された(Ligier et al., 2016)。これは内部海での化学反応により硫酸が消費されている可能性を示すが、その反応や温度・pH 条件はよくわかっていない。本研究は、エウロパ内部での熱水環境における硫酸還元反応が消費過程として働く可能性を室内実験で検証し、温度やpH条件を制約することを目的とする。エウロパ海底条件1300気圧下で溶液のオンライン採取が可能なオートクレーブ装置により硫酸還元反応の速度のpH依存性を調べた。また、硫酸還元の反応率はpHが小さいほど速くなることから、エウロパ内部海では熱水環境が硫酸濃度とpHを安定化させる、負のフィードバック作用が働く可能性がある。</p>
著者
佐藤 佳子 熊谷 英憲 岩田 尚能 柴田 智郎 丸岡 照幸 山本 順司 鈴木 勝彦 西尾 嘉朗
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.72, 2011

3.11の巨大地震の後、福島第一原発の事故により放射性希ガス放出が予想された。そこで、放射性希ガスを四重極質量分析計で測定し、希ガス存在度の変化の検証を試みた。Ar-41, Ar-39, Kr-85, Xe-133などの希ガスが安定な希ガス同位体に対して10倍以上に増加したことが地震後の測定で明らかになりつつある。地震による安定な希ガス同位体の放出を差し引いて、放射性希ガス存在度の変化について報告する。
著者
山方 優子 田中 佑樹 平田 岳史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

海洋環境において海水に含まれる鉄は非常に微量であるため、本研究では、鉄濃度情報に代えて鉄の同位体比情報(56-Fe/54-Fe, 57-Fe/54-Fe)を用いることで海洋生物の鉄代謝効率および海洋環境中の生物学的鉄循環に関する知見を引き出す。陸上動植物中では、栄養段階に応じて鉄同位体比が系統的に変化する(Walczyk and Blanckenburg,2002,2005)のに対し、海洋生物では、陸上生物と比較して大きく変化しないことが報告されている(Jong et al., 2007; Bergquist and Boyle, 2006; Walczyk and Blanckenburg, 2002)。そこで本研究では、これまでに測定されてこなかった高栄養段階に位置し、かつ鉄の局所的な酸化・還元の影響を受けない遠洋性の生物から鉄安定同位体比を分析した。分析対象とした試料は、カズハゴンドウ、マカジキ、ビンナガ、メバチの血液、筋肉、肝臓である。本発表では、分析結果を発表する。
著者
上野 雄一郎 遠藤 美朗
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

<p>Photochemistry of sulfur dioxide yields anomalous sulfur isotope fractionation under anoxic atmosphere. The isotope anomaly can be transported into sedimentary sulfide and sulfate, thus is useful to trace atmospheric chemistry before the Great Oxidation Event (GOE) at about 2.3 billion years ago. Based on the isotopic analysis of Archean sedimentary rocks, the δ36S/δ33S trend seems to have changed through time, though the factors controlling the δ36S/δ33S signal are still uncertain. Our new laboratory experiments have shown that the δ36S/δ33S trend are mainly controlled by pSO2 and redox state of the atmosphere even without molecular oxygen. Thus, the observed change of the sulfur isotopic signal may reflect volcanic SO2 flux as well as redox fluctuation before GOE. Furthermore, our results indicate that the Archean atmosphere is not the pure CO2, but should be more reducing to explaining the observed δ36S/δ33S trend in the Archean rocks.</p>
著者
智原 睦美 福嶋 彩香 川幡 穂高 鈴木 淳 井上 麻夕里
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>熱帯域における過去の気候変動に関する情報は、全球的な気候システムを理解する上で重要である。しかし、熱帯域における気象観測データは少なく、1950年以前からの連続的なデータはほとんど存在していない。そこで本研究では西太平洋に位置するフィリピンのサンゴ骨格試料についてSr/Ca比の分析を行い、約2ヶ月の時間分解能で1778年から1890年までの過去110年分に相当する海水温を復元した。Sr/Ca比の測定にはICP-OESを使用し、測定誤差は0.5%未満であった。今回の発表では、サンゴ骨格中のSr/Ca比から復元した海水温の記録とその時系列解析に基づき、西太平洋周辺の海水温と気候イベントとの関係について考察していく。</p>
著者
馬上 謙一 山本 征生 長尾 敬介 本田 雅健
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.154-154, 2006

鉄隕石Gibeon(IVA)のいろいろなフラグメントの希ガス(He、Ne、Ar)同位体組成を測定した。これらの希ガスは宇宙線照射起源であり、地球落下前の鉄隕石の表面付近と中心部分の3Heのガス量の分布が6桁ほども差があることがわかった。このような鉄隕石のデータはこれまで報告されたことがない。鉄隕石の希ガス分析は、石質隕石の分析に較べて様々な実験的困難が伴う。本講演では、特に宇宙線照射起源希ガス濃度が低い中心部の試料の測定方法について詳細に述べる。
著者
橋本 燎 亀山 宗彦 佐藤 孝紀 小川 浩史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2020

<p>雷放電は大気中では窒素の酸化を促し、自然起源の窒素酸化物の主要な生成要因となる(Wang et al., 1998)。雷放電は積乱雲を形成しやすい陸域で多く発生するが、海洋域でも定常的に見られていることが分かっており、気候変動等による将来の雷放電の増加が予想されている(Romps et al., 2014、Thornton et al., 2017)。本研究では、気相中・液相表面において、プラズマ放電を人工的に起こすことで、自然界における雷放電や海面への落雷を模擬し、窒素酸化物の生成・消費とその質の変化について定量的に評価する事を目的とした。本研究では、雷放電による窒素酸化物の生成を定性的に評価するための項目と定量的に評価するための項目に分けて、実験を行った。実験には、北太平洋亜熱帯域で採水されたキャリア海水を用いた。その結果、窒素酸化物は主に気相で生成され、それらの生成量は湿度、パルス長、電圧、気圧等によって変化することが分かった。</p>
著者
大浦 泰嗣 本田 雅健 海老原 充
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.157, 2009

Gibeon鉄隕石中の宇宙線生成安定核種<SUP>45</SUP>Scを放射化学的中性子放射化分析法にて定量した.本研究では0.0064ppbまでの<SUP>45</SUP>Scを定量することができた.ブランク値は0.001ppb以下であると見積もられる.<SUP>45</SUP>Sc濃度は宇宙線生成核種<SUP>4</SUP>He濃度と高い相関があり,Gibeon以外の鉄隕石で観測されている相関とよく一致した.Gibeon鉄隕石では,希ガス同位体を用いて2つの異なる宇宙線照射年代が観測されている.照射年代の異なる破片を分析したが,<SUP>4</SUP>He濃度との相関に系統的な相違は見られなかった.よって,Gibeon隕石で観測される短い照射年代は希ガスの損失によるものではないと結論できる.
著者
堀川 恵司 西田 絵里奈 小平 智弘 張 勁
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>1973年~1974年の南半球の夏期に,熱帯太平洋から南極海にかけて実施されたGEOSECS航海では,南太平洋広域で表層海水が採取され,海水の酸素同位体比が報告されている(Ostlund et al.1987)。本研究では,2014年~2015年の南半球の夏期に,GEOSECS航海と同じ観測点で表層海水試料を採取し,海水の酸素同位体比を分析した。1973-74年と2014-15 年の酸素同位体比組成の比較を通して,(1)過去40年間について温暖化の影響の有無を考察することと,(2)1973-74年はラニーニャ年に相当し,2014-15年はエルニーニョ年にあたるため,酸素同位体比組成の比較から大気海洋循環の影響について考察することも目的とした。</p>
著者
市山 祐司 相馬 伸介 華房 康憲 田村 芳彦 川畑 博 布川 章子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.106, 2010

海洋研究開発機構(以下JAMSTEC)では、平成19年にデータ・サンプルの取り扱い方針を定めて、JAMSTECの船舶で採取されたデータ・サンプルを一元的に保管・管理し、一定の公開猶予期限を経たのち公開を行っている。岩石サンプルについては、深海底岩石サンプルデータベース「GANSEKI」<SUP>*</SUP>において岩石サンプル情報の公開を行っている。本大会では、岡別府ほか(2006)によってGANSEKIの構築の前段階における概要が紹介されていたが、その後2006年10月の外部公開より本格運用が開始され、幾度かの機能改修を経てデータベースとして軌道に乗りつつある。本発表では、GANSEKIの現状と今後の展望についての紹介を行う。<BR> JAMSTECは四半世紀にわたり、島弧周辺域(伊豆・小笠原など)、中央海嶺(太平洋、大西洋、インド洋)、海洋島(ハワイ諸島など)といった様々なテクトニックセッティングから火成岩や堆積岩、チムニー、マンガン酸化物などを船舶・潜水船を用いて採取してきた。現在GANSEKIでは、これらのサンプルのメタデータ18700件、分析データ11200件、アーカイブサンプル7300試料を公開している。<B>アーカイブサンプルについては、研究・教育・展示目的であれば随時無償提供を行っている<SUP>§</SUP></B>。<BR> GANSEKIでは、サンプルを採取した航海名、船舶(潜水船)、緯度・経度・水深、海域、岩石名などのメタデータによる検索や地図上にプロットした潜航またはドレッジ地点からの検索が可能である。検索結果にはサンプルのメタデータが表記され、分析データとアーカイブサンプルの有無が確認できる。アーカイブサンプルがあるものは、サンプル写真やサイズ・重量を閲覧することができる。分析データは、「JAMSTEC深海研究」や一般学術誌の掲載データや研究者の未公表データなどから収集した全岩組成と鉱物組成が登録されており、CSVファイルでダウンロードが可能である。<BR> 昨年度からは、国際的岩石化学ポータルサイト「EarthChem」<SUP>**</SUP>との連携を開始した。これにより、GANSEKIに登録されている分析データを持つサンプルをEarthChem上で検索することが可能となった。今後は海外の研究者からのアクセスやサンプルリクエストの増加が期待される。また、今後は薄片写真や記載情報の公開、分析データの収集、堆積物コアサンプルデータや地球物理データとの統合などを視野に入れ、データベースのさらなる質の向上を目指していく。<BR><SUP>*</SUP> http://www.godac.jamstec.go.jp/ganseki/index_jp.html<BR><SUP>**</SUP> http://www.earthchem.org/<BR><SUP>§</SUP>問い合わせ先:dmo@jamstec.go.jp<BR>
著者
薮田 ひかる アレクサンダー コーネル フォーグル マリリン キルコイン デイビッド コーディ ジョージ
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.169, 2010

未分類C2コンドライトのWIS91600隕石は、その反射スペクトルがD- 又はT-タイプ小惑星のものに似ていることや、鉱物学的特徴がTagish LakeおよびCIコンドライトに似ていること 、その一方で熱変成を受けた証拠を有すること が報告されており、その起源や進化について共通の見解が得られていない。そこで本研究では、WIS91600 隕石が経験したプロセスに関する情報を引き出すために、WIS91600隕石中の有機物の同位体・構造分析を行い、それらの結果を他の隕石有機物の特徴と比較した。その結果、WIS91600 隕石の有機物は、種々の分類に属するコンドライトの有機物とは異なる独自の化学特徴を持っていることが明らかとなった。各分析から得られた知見を総合すると、WIS91600 隕石は、Tagish Lake 隕石が経験したものに似た水質変成を受けた後、500℃より低い"穏やかな"衝撃熱変成を受けた可能性が示された。
著者
藤村 彰夫 安部 正真 矢田 達 田中 智 加藤 學 はやぶさ試料初期 分析チーム
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.74, 2009

宇宙航空研究開発機構に設置された惑星物質試料受け入れ設備(キュレーション設備)は今後の種々のサンプルリターンに対応したものであるが、直近の2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」によるサンプルリターンに備え、設備の機能性能を確認する試験運用を実施した。今回の試験運用で、はやぶさ試料の受け入れ、試料カプセルの開封、試料の取り出しと保管、秤量や分配の手順確認ができた。現時点でクリーンチャンバー内では取り扱うことができない微小なサイズの試料についてのハンドリングを可能にする対応についても今後検討すると共に、直近に迫っている「はやぶさ」試料帰還に備えて、リハーサル運用を実施する予定である。
著者
町田 嗣樹 折橋 裕二 マルコ マニアーニ 根尾 夏紀 サマンサ アンスワース 谷水 雅治 玉木 賢策
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.318, 2011

中央インド洋海嶺の南緯20°-18°付近は、典型的な中央海嶺-ホットスポット相互作用の場所である。しかし、南緯20°から15°にかけての中央海嶺より採取された玄武岩の化学組成の変化は、レユニオンマントルプルームによる上部マントルの汚染とは関連しないことが判明した。つまり、上部マントル中のリサイクルされた過去のプレート物質が、ホットスポットからの熱によって大量に融解している場所であると解釈される。
著者
廣田 明成 蒲生 俊敬 角皆 潤 竹内 章 張 勁 山越 祐子 岡村 行信
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.35, 2002

日本海東縁部の冷湧水活動にともなうバクテリアマット域で「よこすか/しんかい6500」YK01-06航海において海底直上水および間隙水のサンプリングを行い化学成分の分析とデータ解析を行った。その結果として湧水から高濃度で炭素同位体比の軽い微生物起源のメタンが検出された。また間隙水中のメタンは堆積物中の微生物による酸化が進行していることが分かった。
著者
佐藤 瑠美 張 勁 山腰 裕子 佐竹 洋 竹内 章 岡村 行信
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.182, 2004

2001年、北海道茂津多岬沖海底で、1km2弱の豹紋状巨大バクテリアマットが発見された。本研究は、この巨大バクテリアマットの生成メカニズム、海底冷湧水とテクトニクスの関連性を明らかにすることを目的とした。1999-2003年計10回の潜航調査により採取された柱状試料で、バクテリアマット下0-4cmbsfで、急激な硫酸濃度減少が見られ、硫酸還元菌も確認された。硫酸還元は、メタン又は有機物と反応するが、間隙水中のΔSO4とΔCa+ΔMgのモル比が1:1であることより、メタン起源であることが分かった。また、塩素濃度減少と、δ18O/δDの値から、メタンの起源がメタンハイドレートである可能性が大きいと推測され、堆積物中の有機炭素量にも支持された。さらに、斜面崩壊の痕跡と共にバクテリアマット下5-37cmbsfで強い硫化水素臭の砂利層が確認され、地殻熱流量の実測値と合わせた結果、砂利層を通って、メタン源からメタンが広域に供給されることが考えられる。
著者
石村 豊穂 坂井 三郎 鐵 智美 尾田 昌紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

微小領域切削装置Geomill326と微量炭酸塩分析システムMICAL3cを用い,微小領域における魚類耳石の安定同位体比分析をおこなった.1歳魚と推定される千葉県産マイワシの耳石を成長段階ごとに,幅30&micro;m前後,最大深度100&micro;mで切削をおこなった.回収したサンプル量はそれぞれ0.6~5.5&micro;gである.安定同位体比分析の結果,成長段階によって同位体組成が明瞭に変動することを確認でき,このマイワシ耳石の同位体比の変動幅から北西太平洋を回遊する群集であることが推測された.そこで回遊経路を照合したところ,黒潮から混合域,そして親潮へ移動した情報が耳石に明瞭に記録されており,実際の回遊経路とも整合性があることが示され,これまでに無い高精度・高解像度での生息環境復元が可能であることを示した.
著者
岩森 光 中村 仁美 吉田 晶樹 柳 竜之介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

若い玄武岩質溶岩組成の大規模データベースを構築し、多変量統計解析により独立な組成空間基底ベクトルの抽出と化学的解釈を行った。その結果、マントルは、「Dupal anomaly」のような南北分割ではなく、「日付変更線付近を境とする東西半球構造」を持つことが分かった。また、この構造は、2.5~9億年前の間、東半球に分布していた複数の超大陸に向かっての沈み込みと親水成分の集中に関連すること、およびマントル東西半球構造が内核の地震波速度構造と酷似し、マントルの長波長対流パターン・温度分布が、核にまで影響を及ぼしている可能性があることが分かった。大陸の離合集散を含むマントル対流モデルは、大陸集合時の「沈み込み帯のかき集め」が、超大陸下に効率的な親水成分集中と冷却をもたらすことを示している。東半球に濃集する親水成分は、地球ニュートリノの偏在をもたらす可能性があり、これは日本とイタリアの検出器を用いて検証可能である。
著者
佐藤 翔一 柵木 彩花 大野 剛 深海 雄介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>炭酸塩鉱物はどの時代にも地球表層環境に普遍的に存在し、元素・同位体組成が沈殿時の海洋環境を反映することから、海洋古環境情報復元のための試料として広く用いられている。近年、新たに環境情報を復元する指標として炭酸塩鉱物中の二族元素の同位体分別が注目されている。また、固相―液相間で同位体変動が起こる主な要因として、天然の炭酸カルシウムにおけるカルサイトとアラゴナイトといったような結晶系の違い、液相のpH、結晶成長速度の3つが挙げられる。これらの指標から海水組成、二酸化炭素吸収量、風化速度といった古環境情報を復元することができる。そこで本研究では、炭酸カルシウムにおけるこれら3つの指標を制御する無機沈殿実験法を開発し、研究例が限られている各結晶構造における模擬海水-炭酸カルシウム間でのストロンチウム同位体分別の大きさとpH、沈殿速度との関係性について調べることを目的とした。</p>