著者
木原 知穂 薬師神 裕子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.51-58, 2016

本研究の目的は、タブレット型携帯端末を用いた小児糖尿病自己管理支援システムを活用し、1型糖尿病を持つ子どものセルフケア能力と自己効力感に関する効果を検証することである。糖尿病サマーキャンプに参加した1型糖尿病を持つ9歳〜18歳の15名を対象に、開発した専用アプリから、血糖値等のデータ入力を依頼し、システム使用前、使用直後、1か月後の糖尿病セルフケア行動尺度及び自己効力感尺度得点の変化を分析した。システムの評価は、アプリの評価得点とシステム使用時の子どもの反応から分析した。セルフケア行動尺度得点は、キャンプ終了後に有意な上昇を認めた。システムを楽しく活用して自己のデータを記録し、グラフ画面で各データを一元的に見て自身のデータを振り返ることで、自己の行動やインスリン量と血糖コントロールを容易に関連づけて考えることが可能になり、血糖コントロールに関する気づきや意欲を引き出す効果が示唆された。
著者
橘 ゆり 鈴木 ひろ子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.45-50, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
13

本研究の目的は、医療的ケアを必要とする子どもの在宅生活を継続している母親がどのような思いを抱いているのかを明らかにすることである。医療的ケアを必要とする子どもの在宅生活を継続している母親, 7名に半構成的面接を行い、質的記述的研究方法により分析した結果、家族は【地域のサービスを利用しながら家族そろって生活ができる喜び】、【家事、育児、ケアの時間に追われ、心身への負担を感じる】、【体調の変化に伴う緊急時の不安】、【夫や同胞へ負担をかけているのではないかという心配】、【医療的ケアが必要なことによる支援体制への不安】、【今後の生活への前向きな思い】、【子どもの成長の喜びと将来への不安】、【出生時に感じた悲哀の思い】の8カテゴリーの思いを抱いていた。母親が多様な課題をクリアしながら、安心して生活を送るためには他職種や地域の社会資源との連携を継続的に行うことが必要である。また、親の会や同じ障がいをもつ母親との出会いを促すかかわりをしていくことが大切であり、人と人をつなぐ橋渡しは在宅支援の大きな役割である。子どもの成長発達を母親とともに喜び、その思いを共有することが大切である。また家族そろって生活ができる母親の喜びの心の内には、出産時に感じた悲哀の思いを抱き続けていることを忘れず、継続的にかかわっていく必要があると考えられる。
著者
鈴木 和香子 中垣 紀子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.68-73, 2016

<p> 特別支援学校で医療的ケアを受けている児童生徒の父親2名、母親7名を対象とし、医療的ケアの現状について思うことを明らかにし、その現状から課題を考察することを目的に質的記述的研究を行った。結果、【養育者の負担が大きいと思う】、【教員との信頼関係が重要だと感じる】、【教員の医療的ケア実施の負担が大きく心配である】、【教員が医療的ケアを拒否しているように感じる】、【学校側との相互理解ができていないと感じる】、【個別性を配慮した医療的ケアをしてほしい】、【医療的ケア制度の改善を検討してほしい】、【教育を受ける権利を尊重してほしい】の8カテゴリーが抽出された。</p><p> 養育者の視点での医療的ケアの課題には、養育者の負担、教員に対する信頼と不安の葛藤、養育者と学校間の相互理解不足、児童生徒の個別性に対応可能な医療的ケア制度の不足、特別支援学校の看護師の役割の不確定さが存在すると考えられた。</p>
著者
佐藤 加奈 蝦名 美智子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.105-111, 2009
参考文献数
8

目的:幼児が注射をされるときの経験を知ること。調査期間:2007年7月から約1ヶ月間。方法:大学生7人へ構成的質問11項目、主な内容は注射が好きか、覚えている注射の経験はどのようなことか、現在はどう思っているかである。得られた内容を質的に分析しカテゴリー化した。結果:幼児へ関わるときのよい関わりとして10項目が抽出された。主な内容は(1)注射の前に必ず注射の目的や痛みがあることを説明する、(2)安易に注射は「痛くない」「すぐ終わる」と言わない、(3)子どもが注射を受ける覚悟ができるまで待つ、(4)2人以上の看護師で子どもを取り囲まない、(5)馬乗りはやめる、(6)母親が付き添い母親が押さえると子どもが注射を「やらなければならないこと」と諦める、(7)処置後に子どもの頑張りを褒める、(8)ご褒美をもらうことで子どもは嫌なことを吹っ切る。考察:これらは特別な準備の必要がなく、明日からでも実行可能な内容であった。
著者
杉山 智江 佐鹿 孝子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-9, 2014-07-20

小児がんの子どもがターミナル期に、病気の予後や死の不安・恐怖について「語り」始めた瞬間(とき)からの看護師の関わりのプロセスを明らかにすることを目的とした。臨床経験3年目以上の看護師10名に半構造的面接を行った。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに準じて分析した結果、8カテゴリーと24概念が抽出された。看護師は【病気・治療の見通しへの不安に応える】ことで【予後が悪いという子どもの思いを察知】しており【いつでも話を聞く姿勢】や【話し始めを待つ姿勢】で【子どもの今に合わせる】関わりをしていた。その結果、子どもの【最期の話を受けとめる】や【命の危うさへの思いに応じる】ことで【命の危うさへの一時的な安心を察知】していた。【命の危うさへの一時的な安心を察知】すると再び【いつでも話を聞く姿勢】や【話し始めを待つ姿勢】のプロセスを辿っていた。看護師が【子どもの今に合わせる】ことで"命の危うさ"や"最期の話"を「語り」始めることがあるので、その瞬間(とき)の関わりが重要であることが示唆された。
著者
森 浩美 小口 初枝 岡田 洋子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.22-28, 2012-11-20

本研究の目的は、小児看護学実習において看護学生の受け持ち患者になった子どもに付き添う家族の認識や思いを明らかにすることである。受け持ち患者終了後の家族24名を対象に半構造化面接を行い、質的記述的に分析した。その結果、家族は学生の受け持ち患者になることへの心配や懸念を感じつつ、協力するのは当然という思いと子どもの成長や付き添い生活の支援など得られるものへの期待から承諾していた。そして、家族は学生の消極的な態度や不慣れな対応に戸惑いや心配を感じていた。しかし、家族は楽しむ子どもの姿や学生の子どもを思う接し方、自分自身も支援を受けられたことに満足し、時には学生が付き添い生活のパートナーになると感じていたことが明らかとなった。教員は学生の看護の質を高め、家族の心配や懸念が実際のものとならないように、期待したことは叶えられるようにするという役割がある。
著者
山口 求 今村 美幸 松高 健司 光盛 友美
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.59-64, 2009-03-20
被引用文献数
2

乳幼児の皮膚は、角質層が薄く、バリア機能も低く皮膚表面は容易に傷つきやすく、雑菌などによる感染のリスク状態にあり、皮膚トラブルを起こしやすい。しかし看護系に乳幼児のスキンケアに関する先行研究はほとんど見られない。そこで、本研究(委託研究)は、乳幼児のスキンケアにてん菜砂糖に、精油・食用油でオイルコーティングしたシュガースクラブの保湿効果を検証することを目的とした。医師の皮膚テストにより安全性を確保し、入浴後に使用する実験群と、入浴のみの統制群とに分け22名の乳幼児を対象とした。指標にはモデラスを用いて水分値、弾力値、肌状態を入浴前と入浴30分、60分後に測定した。結果、水分値、肌状態は30分後が有意に上昇したが、60分後は低下傾向を示した。保湿効果の持続性は、今後の継続研究で検証する必要がある。視診・触診による肌状態の観察結果は、統制群の乳幼児に変化はなく、実験群では乾燥状態の皮膚がしっとりとし保湿効果が得られた。
著者
藤田 紋佳 中村 伸枝 佐藤 奈保
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.102-108, 2013-03-20

本研究の目的は、日本における肝移植後の子どもと家族のQOL評価をどのような視点から評価しているのか及び、今後の課題を文献検討により明らかにすることである。医中誌Web版(Ver.5)を用いて文献検索を行い、肝移植後の子どもや家族のQOL評価に関する内容の記述がある文献、33件を得た。筆頭研究者の背景は、医師が最も多く、看護職による研究は3件であった。対象は、自施設における移植後の子どもが殆どであった。子どもに関しては、術後合併症や肝機能、免疫抑制剤の投薬状況や副作用、拒絶反応、感染症といった身体管理に関するQOLの検討であり、過去のデータからの評価による調査が多かった。家族に関しては、生体ドナーの評価が主であった。肝移植を受けた子どもやドナーとなった親だけではなく、子どもの療養生活に関わる家族を含めた包括的なQOL評価の視点の整備と、QOL向上のための継続的な支援方法を検討する必要がある。
著者
鍵小野 美和 川出 富貴子 臼井 徳子 正木 佐知子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.98-104, 2009-03-20

誕生25時間後に死の転帰をとった全前脳症の子どもや家族の何が人々を感動させ元気にさせるのか、周りに及ぼす力を明確にするという目的でグループインタビューを行った。周りに感動を与えた事象は【両親の言動】【両親の精神的側面】【子どもの反応】【医療者の対応】の4カテゴリーに、子どもが両親に残してくれたもの、子どもと両親が周りに残してくれたものは【認識】【感情・思い】【生き方へのフィードバック】の3カテゴリーに分類された。また、【両親の言動】の中での<生まれてきてくれてありがとう>の意味づけは、「胎内の子どもと共に過ごせた幸せ」、「生まれてくれたことへの感謝」などのサブカテゴリーに分類された。親の子どもへの無条件の愛が行動となり、そのことが周囲に与える感動を介して認知領域、情意領域、精神運動領域への何らかの影響を与えていることが示唆された。
著者
仁尾 かおり
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-8, 2008-03-20
被引用文献数
2

先天性心疾患をもちキャリーオーバーする中学生・高校生の病気認知の構造および背景要因による差異を明らかにすることを目的とし、先行研究の結果より独自に作成した調査票を用いて調査を行った。因子分析の結果、病気認知は、『病気による制限・制約に対するつらい思い』『病気をもつ自分を前向きに受けとめようとする思い』『病気をもつ自分を理解してほしい思い』『病状や死に対する不安』『病気を知られたくない思い』『身体を守りたい思い』の6因子により構成されていた。背景要因では、重症度の高い人が、『病気による制限・制約に対するつらい思い』『病状や死に対する不安』が高く、『病気をもつ自分を理解してほしい思い』『身体を守りたい思い』では、重症度の高い人に加えて高校生が高得点であった。彼らの相反する認知による葛藤を理解し、肯定的な認知を高め、否定的な認知を低減する支援が必要であることが示唆され、具体的な支援を検討した。
著者
仁尾 かおり 石河 真紀
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.25-33, 2013
参考文献数
19

本研究は、人の内面の強さを示すレジリエンスに着目し、先天性心疾患をもつ思春期・青年期の人のレジリエンス構成要素を明らかにすることを目的とした。研究参加者は16名(平均18.2歳)で、データ収集は4グループ(1グループあたり3〜5名)のフォーカスグループインタビューにより行った。データは質的に分析した結果、212コード、45サブカテゴリー、および「将来に希望をもつ」、「自分で病気の管理ができる」など10カテゴリーが抽出された。そして、カテゴリーをGrotbergの考え方により分類した結果、『I AM』5カテゴリー、『I HAVE』3カテゴリー、『I CAN』2カテゴリーとなった。その結果、自分の病気を受容し、頑張ることができる内面の強さ、どの発達段階においても成長のために他者からサポートを得ること、友達や家族に支えられていると実感できること、発達段階により具体的な内容は変わるとしても、発達段階に応じて自分の病気を理解して自分で管理できることが重要であることが示唆された。
著者
永谷 智恵
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.16-21, 2009-07-20
被引用文献数
1

本研究は保健師の子ども虐待の支援に携わった体験から、支援の困難さを明らかにしていくことを目的に帰納的、記述的研究を行った。その結果【子どもの状況を把握することの困難さ】【家族の中の母親を支え続けることの困難さ】【母親の養育行動を変えることの困難さ】の3つのカテゴリーが導き出された。保健師は家庭訪問時、毎回母親が留守にすることで子どもの状況を確認することができず、成長発達への影響や生命への不安を増大させていた。また母親の抱えている辛い思いを傾聴するが、母親の感情に引きずられ、さらに家族関係の調整の難しさに無力感を抱いていた。育児行動の未熟な母親に繰り返し指導を行うが、育児行動の変化は乏しく保健師は苛立ちを持つとともに、母親のそばで育児を見守る身近な存在がいないことで、子どもに生じる事件、事故による命の危険を感じ子どもの安全を祈る思いに至っていた。
著者
山下 早苗 猪下 光
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.7-15, 2005-09-05
被引用文献数
2

外来通院している小児がん患者の親15ケースを対象に、Mishelの不確実性理論を基盤に、子どもへの告知に対する親の意向を明らかにし、告知に対する意向を評価する認知の過程で生じている不確かさについて分析した。親の意向は「告知するつもりはない」「聞いてきたら隠さないが,敢えて告知するつもりはない」「告知せざるを得ないが踏ん切りがつかない」「隠す必要はない」であった。親は子どもへ告知するかしないかを決定するにあたって、まず「告知の必要性」や「告知の条件」について不確かさを生じており、多くの親が、自己管理の必要性から告知を肯定的に評価するのは、子どもの巣立ちの時期であった。告知する必要があると評価した親は、「告知の方法」や「告知後のサポート」、「家族の意向」や「医療者の意向」について不確かさを生じていたが、告知について気兼ねなく相談できる機会や場、人材の不足により、子どもへの告知を躊躇していた。
著者
村井 裕子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-23, 2012-03-20

研究目的は、歯科を利用する身体障害のある子どもの母親が口腔ケアを実施する際の工夫を明らかにし、看護への示唆を得ることである。身体障害のある子どもの母親10名を対象とし、子どもの口腔ケアにおける母親の工夫について半構成的面接を行い、質的帰納的に分析した。見出されたカテゴリーは【きれいに磨く方法を覚える】【楽しい雰囲気をつくる】【磨くタイミングをつかむ】【呼吸の安定をはかる】【子どもの思いを汲み取る】【家族の生活に合わせる】であった。歯科を利用する障害のある子どもの母親は、子どものサインを読み取り身体・精神状況に応じて継続的にケアすることで子どもに合わせた独自の工夫を見出していた。母親への口腔ケア支援として、家族全体の状況を把握したうえで、日常的な視点で実施可能な工夫を一緒に考えることや、歯科専門職と連携すること、ケアの困難感の変化を把握し継続してかかわる必要性が示唆された。
著者
水落 裕美 藤丸 千尋 藤田 史恵 藤好 貴子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.48-55, 2012-03-20
被引用文献数
1

本研究の目的は、気管切開管理を必要とする重症心身障害児を養育する母親が在宅での生活を作り上げていくプロセスを明らかにすることである。在宅で6ヶ月以上、気管切開管理を必要とする重症心身障害児を養育する母親6名に、半構成的面接を行い、インタビューで語られた内容をデータ化し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果、自分らしい生活の創造、生活を後押しするマンパワー、母親としての自信の芽生えの3つのカテゴリーが抽出された。在宅療養を開始した当初、母親は、想像のつかない恐怖からくる退院初日の不安が一番強い。無我夢中の毎日から試行錯誤の日々を経て、意外と大丈夫な日常へと自分らしい生活を作り上げていくプロセスにおいて、積極的な父親の関わりやきょうだい児によるお手伝いなどの家族の協力や共感出来る母親の存在が、生活を後押しするマンパワーとなっていた。
著者
荒川 まりえ
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-16, 2011
参考文献数
13

本研究の目的は、看護師が子どもの死を心に受けとめる際に関係したことを明らかにすることである。看護師経験年数が6年以上で、子どもの死に遭遇したことのある看護師12名を対象として、半構成的面接を実施した。得られたデータから「子どもの死を心に受けとめる際に関係したこと」に関する文脈を抽出し質的に分析をした。その結果【よい看取りを行う】【子どもについて親とわかちあう】【第三者からのサポートを得る】【日々の流れに身を委ねる】【意識的に前に踏み出す】【死を捉える力】という6つのカテゴリーが抽出された。死を心に受けとめる際に関係したことは、子どもの生前および死後それぞれに見出された。死を心に受けとめるためには、自分自身と向き合うことが必要であり、看護師はありのままの自分を受け入れることで、自分の中で子どもが亡くなった出来事やその時抱いた気持ちを消化していた。
著者
神道 那実 浅野 みどり
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.9-16, 2007-09-20
被引用文献数
1

本研究の目的は、小児血液疾患の治療に伴って必要となる療養行動において、患児がどのような自主性を発揮しているのか、また病状説明と親の関わりが自主性にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることであった。対象は、小児血液疾患をもつ入院中の10〜14歳の患児とその親4組であり、質問紙および半構成面接を行った。その結果、患児は療養行動に対して否定的感情を抱きながらも個々の理解に応じた自主性を発揮していた。内服では多くの自主性が見られたのに対し、含嗽では不十分であり、自主性が体調や血液データ、過去の経験、必要性の理解度に影響を受けていることが明らかとなった。病状説明においては、すべての患児が希望通りに病状説明を受けていたことが自主性の促進因子となっていたが、入院初期の説明内容は3事例が覚えていなかった。また、患児の意思や行動を尊重した親の関わりが自主性を促進していることが示唆された。
著者
富澤 弥生 塩飽 仁
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.16-23, 2005-03-20
参考文献数
14

本研究の目的は、小児白血病の中で頻度が高く再発のリスクが最も低い子どもの低リスク群白血病を母親が認識する過程を明らかにすることである。本研究は、低リスク群白血病患児の母親7名を対象に調査を行い、研究方法は、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。その結果、母親が子どもの低リスク群白血病を認識する過程において,【発病理由の追究】,【仲間がいる感覚】,【見通しの実感】,【死と遠い距離感の保持】,【生活上の目標設定】の5つのカテゴリーが生成され,その中で最終過程にあるカテゴリーは【生活上の目標設定】であり,中核カテゴリーは【まともな生活】であった。本研究において、他の子どもが亡くなった時、再発した時、また、退院後などに、各カテゴリーに対応した母親に対する適切な看護介入の必要性が示唆された。
著者
萩原 綾子 権守 礼美 相原 慎
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.33-39, 2009-11-20

本研究は、先天性心疾患(以下、CHD)によりフォンタン手術を受ける子どもの家族の満足度について過去3年に手術を受けた40名の家族を対象にし、2006年10月〜2007年2月までアンケート調査を実施した。回収率は70%で、早期退院と医師の説明やケアに関する満足度は8点以上(10点満点)であった。看護師の説明やケアに対する満足度は、早期退院、医師の説明やケアの満足度と比べると低い傾向にあり7点が6項目あった。特に入院中の看護師への声のかけやすさに関しては、4.9±3.1点であり低かった。質問項目の自由記述について意味内容ごとに項目を抜き出し、内容を分析した。満足度に影響を与える因子として、二つのカテゴリーが抽出され、それぞれに【説明】【専門的なケア】と命名した。家族は、看護師に手術や治療の看護ケアだけでなく、これを踏まえた食事や睡眠といった療養に関する看護ケアを期待しており、これを実践することが質の高い看護ケアにつながると考えた。