著者
原口 昌宏
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.57-64, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究は、先天性心疾患の子どもの父親の語りから、子どもや妻にどのような思いを抱いているのかを明らかにすることを目的として、質的記述的研究法により父親の語りを帰納的に分析した。結果、先天性心疾患の子どもの父親が抱く思いは、9つのカテゴリーとそれらを構成する27のサブカテゴリーから構成されていた。父親は、出生直後から子どもの状態によって気持ちが大きく揺れ動き、幼児期にかけて子どもの将来を心配し、さらに妻に対して気を配り、父親として周囲の期待に応えようとしていることが明らかになった。以上より、父親が抱くこれらの複雑な思いを理解し、その思いに沿った支援をすることは、看護の重要な役割であると考える。
著者
久保 仁美 今井 彩 阿久澤 智恵子 松﨑 奈々子 金泉 志保美 佐光 恵子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.18-26, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究の目的は、NICU入院児の母親への退院支援に対する熟練看護師の認識を明らかにすることである。5年以上のNICU勤務経験を有する熟練看護師12名を対象に、退院支援の認識について半構成的面接調査を行い、Berelson. Bの内容分析を行った。結果238コードから、49サブカテゴリー、15カテゴリー、6コアカテゴリーが生成された。6コアカテゴリーは、【母子関係・母親-看護師関係を構築し深める】、【出産後のプロセスを支える一貫した支援】、【退院後の育児を見据える】、【退院調整に多職種でかかわる】、【退院後の母子の生活を知りNICUでの退院支援を評価する】、【妊娠中から退院支援が始まる】であった。熟練看護師は、出産後のプロセスを支える一貫した退院支援の認識を基盤とし、各時期における退院支援の認識を相互に補完し合い、母親への退院支援に結びついていることが示唆された。
著者
柏瀬 淳 阿久澤 智恵子 青柳 千春 今井 彩 金泉 志保美
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.101-108, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17

本研究は、内服薬を必要とする小児の服薬管理に関する国内の研究動向を明らかにし、今後の研究課題について検討することを目的とした。医学中央雑誌Web (Ver. 5) を用いて文献を検索し、19件を対象に分析した。研究対象は小児の保護者が多く、看護師を対象とした研究は少なかった。対象疾患は慢性疾患の中でも気管支喘息やてんかんが主であり、長期内服管理を必要とする慢性腎疾患や小児がんなどを対象とした研究はみられなかった。対象文献の研究内容をコード化し、類似性に従って分類した結果、研究内容を表す7つのカテゴリが形成された。認知発達に応じた働きかけにより服薬行動の必要性を意識化すること、患者教育の重要性などが明らかにされていた。今後はより幅広い小児の疾患を対象とした服薬管理に関する研究、看護師を対象とした小児の服薬管理指導に関する研究を進めていく必要がある。
著者
細野 恵子 市川 正人 上野 美代子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.52-56, 2009-11-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2

外来で乳幼児の処置に付き添う家族の認識を明らかにすることを目的に、採血あるいは点滴を受ける乳幼児の家族118名を対象に自記式質問紙調査を行った。質問の内容は親が乳幼児を抱きかかえて座位で行う、あるいは幼児自身が椅子に座り親が側に付き添う状態での処置に対する親の認識を確認するもので、量的データは記述統計、質的データは内容分析を行った。その結果、看護師による処置前の説明はわかりやすいと捉えられており、子どもの処置に同席することは親の役割と認識し、子どもと親の安心感も得られていることが示された。座位での処置に対しては、子どもに安心感を与え親自身も安心したいという希望が伺われた。一方、座位での処置を希望する家族は5割弱で、親の抱きかかえによる処置の意図が十分に伝わっていない可能性が推察され、親の意向を尊重する関わりと子どもの権利を守る関わりの意味や重要性を広く知らせていく必要性が示唆された。
著者
松﨑 奈々子 阿久澤 智恵子 久保 仁美 今井 彩 青栁 千春 下山 京子 佐光 恵子 金泉 志保美
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.31-37, 2016 (Released:2016-12-09)
参考文献数
13
被引用文献数
5

【目的】小児訪問看護の際に訪問看護師が行った他機関・多職種との連携内容を明らかにし、連携における訪問看護師の役割について示唆を得ることである。 【対象と方法】A県内の訪問看護ステーションに勤務し、小児の訪問看護を経験したことのある訪問看護師12名。半構成的面接法によるインタビュー調査を実施した。 【結果】訪問看護師は、【小児と家族についての情報共有】、【小児と家族のための退院支援】、【在宅での支援方針の決定】を連携の基盤とし、小児のニーズを満たすための【多職種の専門性を活かしたケア提供】、【小児のニーズに応じて専門職を巻き込む】働きをしていた。 【考察】訪問看護師は、情報共有や協議を通じて連携するための基盤をつくり、在宅生活を送る中での様々な状況や小児の成長・発達に応じて必要な他機関・多職種とつながり、小児と家族の支援体制に他機関・多職種を巻き込んでいく役割があることが示唆された。
著者
扇野 綾子 中村 由美子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1-9, 2014 (Released:2016-12-09)
参考文献数
19
被引用文献数
3

本研究の目的は、慢性疾患患児を育てる母親の心理的適応の構造の特徴について明らかにすることである。 病児の母親247名と健康児の母親332名を対象に、自記式質問紙調査を行った。心理的適応に関連する要因として精神的健康度、コーピング、レジリエンスを測定し、分析は記述統計と平均値の差の検定の後、共分散構造分析を用い母親の心理的適応モデルを作成した。 各尺度の得点を比較した結果、病児の母親は健康児の母親に比べて精神的健康度が低く、レジリエンスの 「I AM」 「I WILL/DO」、コーピングの 「肯定的解釈」 が有意に低かった。共分散構造モデルについて、子どもの疾患の有無による多母集団の同時分析を行った結果、病児の母親の心理的適応を構成する要因では 「自信」 の影響が大きく、『柔軟な力』を構成する 「楽観視」 と 「こころのゆとり」 のパス係数が高かった。 これらの結果より、病児の母親に対しては育児を承認し、長期的な視点をもち関わるなど支援の方向性の示唆が得られた。
著者
山口 求 今村 美幸 光盛 友美 鍋島 和貴
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.113-119, 2011

乳児期の虐待死が増えており、その理由は「泣きやまない」というものである。子育てに疲弊する母親は、相談する相手もなく「社会的に孤立」しやすい現状がある。そこで本研究は、「地域の親が看護学生に子育て体験を語る」ワークショップ(以下WS)を導入した。親はWSの参加で子育て体験を振り返り、子育てへの「気づき」から、親としての自覚と親自身の自尊感情の高まりがある。WSによる親の自尊感情の高まりは、親教育の支援となるのかを検討することを目的とする。WSの結果は、6つの大カテゴリーに分類された。【子育ての大変さ・困難性】【子育ての楽しさ・喜び】【誕生の喜び】【子育てサポート体制】【両親への尊敬】【子育てによる自己成長の実感】である。自分の子育てを振り返ることで、否定的な子育てを客観的に見つめ、肯定的な子育ての感情と交錯しながら、親自身が成長することを自覚することにつながっている。WSでの子育て体験は、親としての自覚を再認識し、自尊感情を高めるという"親が親となる"発達支援になることが示唆された。
著者
本田 直子 杉本 陽子 村端 真由美
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.44-50, 2015-07-20

本研究の目的は、NICUに入院した早産児をもつ母親がわが子を抱いている時の思いについて明らかにし、抱くことの意味を母親の主観から検討することである。対象は早産児をもつ母親で、わが子を抱いている時の思いについて半構造化面接を行い、母親の思いの部分を抽出し、得られた内容をKJ法で分析した。その結果、わが子を抱いている母親の思いは【生きている存在であることの実感から子どもの生きる力の強さや生命力を感じた】【出産から今がつながり、わが子として存在をより近くで実感した】【身体の小さいことや未熟さから、保育器外の環境にいることや成長に心配や不安を持った】【子どもとのつながりが感じられ、母親として自分の存在を自覚した】【子どもを愛おしく思い、子どもと過ごす時間が大切だと感じた】【抱っこは成長の証と感じて前向きな気持ちになった】であった。早産児を持つ母親はわが子を抱いている時に五感で子どもを感じ取ることで相互作用が生じ、母親としての始まりを実感していた。早産児の身体の小ささや呼吸の荒さ、ぬくもりや重みなど子どもが意図して発していないものもサインとして受け取られていた。同時に、抱くことができるという状況から子どもの成長を感じ、今までもてなかった安堵感や前向きな気持ちを感じていた。
著者
遠藤 晋作 堀田 法子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.18-25, 2015-07-20

学童期後半の先天性心疾患をもつ子どもに対する母親からの病気説明の実施状況と、その影響要因を母子双方の視点から明らかにすることを目的に、先天性心疾患をもつ10〜12歳の子どもとその母親に無記名自記式の質問紙調査を行い、92組(回収率82.5%、有効回答率92.9%)の回答を分析した。結果、病気説明に関する項目について、母親は全項目で希望より子どもへ話せておらず、子どもは今後の見通しや合併症の項目で、希望より母親から聞けていなかった。また多重ロジスティック回帰分析より、母親が子どもへ病気説明をしたと思うことに対する影響要因は、同疾患児の家族との交流、母親の病状に対する理解度、夫婦間不一致、子どもの運動制限が示され、子どもが母親から病気説明を聞いたと思うことに対する影響要因は、同疾患児の家族との交流、母親からの心理的侵入、被受容感、厳しいしつけが示された。母子の希望の確認や仲介、母親への情報提供、母子関係への配慮が、子どもへ適切な病気説明を行うための有効な支援となる。
著者
立松 生陽 市江 和子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.64-70, 2012-11-20

本研究では、重症心身障害児(者)施設における医療的ケアの現状、職員のメンタルヘルスについての実態を明らかにし、看護職と非医療職者が連携し、医療的ケアを提供できる環境を整備するための示唆を得ることを目的とした。対象は、重症心身障害児(者)施設2ヶ所、重症心身障害児(者)B型通園事業5ヶ所における、看護職、福祉職、保育職などの133名である。125名回収(回収率94.0%)、有効回答116名(有効回答率87.2%)であった医療的ケア実施について必要とされている内容は多いが、自信をもってできると回答した者は少なく、自己の技術到達度への認識は低かった。これは、施設職員のケアに対する知識・技術の不足、実施への不安の表れと推測される。看護職の多くが、研修の必要性を感じていた。対象の半数以上がストレスを感じ、心配事があるとしていたが、健康状態に関し、施設間、職種間での有意差はなかった。
著者
橋本 浩子 谷 洋江
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.65-71, 2009-03-20
被引用文献数
3

本研究の目的は、外来通院中の点滴・採血を受ける血液・腫瘍疾患の子どものストレスの状態とプレパレーションを通じて処置に対する理解や認知を知ること、通常のケア時とプレパレーション実施後における処置中の子どもの行動の違いを明らかにし、点滴や採血によるストレスを緩和する看護援助を検討することである。5組の子どもと保護者を対象とした。その結果、1.処置前は4名がストレスがある状態であり、処置前後のストレスレベルの変化については個別性があるが、処置後もストレスがある状態であった。2.プレパレーション時の子どもの反応から、子どもは経験した処置内容を正確に観察しているが、すべて理解できているわけではなかった。3.プレパレーション実施後の処置中の子どもの行動には、子どもの頑張ろうとする行動が観察された。繰り返し処置を受けている子どもに対して、プレパレーションを通してこれまでの経験を表現できるように援助を行うことは有用と考えられた。
著者
仁尾 かおり
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.43-50, 2011-11-20

ダウン症児の母親の背景要因と自立に関する認識によるレジリエンスの差異を明らかにすることを目的とした。自立に対する認識尺度は、【自立に対する望み】3因子、【自立へのかかわり】3因子で構成されている。S-H式レジリエンス検査用紙は、<ソーシャルサポート>、<自己効力感>、<社会性>の3因子で構成されている。両尺度共に信頼性・妥当性が確認されている。研究参加者は、12〜22歳のダウン症児の母親297名である。調査は無記名、自記式郵送調査とし、患者会を通して調査用紙の配付・回収を行った。母親の背景要因では、有職者がレジリエンス合計得点、レジリエンスのうち<自己効力感>因子の得点が高かった。自立に関する認識では、【自立に対する望み】、【自立へのかかわり】高得点群がレジリエンス全て、および一部因子の得点が高く、<ソーシャルサポート>において差が顕著であった。以上のことから、母親が働くことはレジリエンスを高めること、自立に対する望みを高くもち自立の可能性を広げる取り組みを積極的に行うためには、周囲の支援が不可欠であると考えられた。
著者
丸山 始美 山下 早苗
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.228-234, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
6

小児医療現場における意思決定と看護介入について国内の現状を先行文献より明らかにすることを目的に、Web版医学中央雑誌 (Ver. 5) を用いて1995年~2016年の文献を対象に検索を行い、得られた28件の分析を行った。入院・治療・検査、復学・転校に関する意思決定の主体者は 「子どもと家族」 である場合が多く、ターミナル期、在宅移行・在宅での医療的ケアに関する意思決定の主体者は 「家族」 が多いという結果であった。子どもの状態に対する家族の受容状況が、子どもとともに意思決定する困難さに影響していると考えられ、家族が不安定な状況であっても、揺れ動く家族の思いに寄り添い、子どもを意思決定の参加者としてとらえ、子どもの最善の利益に向けた調整を図ることの重要性が示唆された。
著者
藤田 優一 藤原 千惠子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.54-60, 2013-07-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
15

看護師が判断する小児の催眠剤、鎮静剤、麻酔剤使用後の転倒・転落に注意が必要な時間の指標を明らかにすることを目的として調査を行った。小児看護経験が5年以上の看護師(平均8.3年)を対象に2回のデルファイ法を実施した。第1回調査では23施設の121名に、催眠剤、鎮静剤、麻酔剤を調査票に示して「薬剤投与後は経験的に何時間後まで転倒・転落の危険があると判断するか」を質問し、第2回調査では65名に第1回と同様の質問に対して「1時間」〜「24時間」の中から回答者が選択した。回答を短い時間から順に並べて積算した時に、回答数の80%以上となる時間を転倒・転落に注意が必要な時間の指標とし、トリクロホスナトリウムシロップは3時間、抱水クロラール坐剤3時間、ミダゾラム6時間、チアミラールナトリウム3時間、チオペンタールナトリウム4時間、全身麻酔手術の帰室後6時間であった。
著者
平岩 洋美 福嶋 友美 大西 文子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.51-57, 2008-03-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

本研究の目的は、乳幼児の採血・注射における親の同席の現状と親の同席に対する看護師の認識の把握および親の同席に対して小児看護としてどのような取り組みがされているかを明らかにすることである。調査期間は平成17年8月3日〜9月7日。調査方法はA県内にある9施設の小児科に勤務している看護師226名に対し、自作の質問紙調査を実施した。結果は、(1)親の同席が必要であると考える看護師は約3割であった。(2)親が同席できる選択肢を持つ病棟は約7割であり、増加傾向にあった。(3)看護師は経験年数に関係なく、親の同席がない場合と比較し親の同席がある場合は精神的負担・緊張を多く感じていた(p<0・0001)。(4)親の同席への取り組みは看護師同志の意見交換が最も多かったが、看護師が役立つと考える取り組みは医師との意見交換・話し合いであった。
著者
井上 みゆき
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.69-75, 2007-03-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
10

本研究は、法的な手続きも視野に入れた「子どもの最善の利益」の看護ケアの構築を目指すために、法的対応に焦点を絞り、日本における医療ネグレクトの文献から現状の課題と対応を検討する目的で行われた。文献検索は、医学中央雑誌によるコンピュター検索を行った。その結果、医療ネグレクトの問題は、現実に臨床の現場で直面しながらも、わが国には医療ネグレクトへの法的介入を目的とする制度は存在しないため、どのように対応してよいのか模索している段階であると考える。今後は、医療ネグレクトの介入を目的にした法の整備や、臨床の問題を検討する倫理委員会の活用など、医療ネグレクトに対応するためのシステムが整備されることが望まれる。そして看護師は、「子どもの最善の利益」が守られるような法の整備を含むシステムの構築を提唱していく必要があるだろう。またわが国の現行法の中で、「子どもの最善の利益」を守る具体的なケアを明らかにする必要があると考える。
著者
遠藤 晋作 上田 敏丈 堀田 法子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.274-283, 2019 (Released:2019-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

先天性心疾患をもつ学童期までの子どもに対して母親が行う病気説明プロセスを明らかにすることを目的とし、疾患をもつ10歳~12歳の子どもの母親4名に半構成的面接を行った。分析にはSCATの手法を用いた。母親は医師から病気説明を受け、 「自発的な情報収集」 を行うが 「断続・漸進的な理解向上」 しか望めず、子どもが学童期になっても 「理解追求が停滞する不全的な病気説明理解」 状態にあった。その背景には 「疾患衝撃による理解阻害」 「病気理解の追求困難」 「医師母親間の信頼関係形成困難」 があり、母親は幼児期までの子どもに対する 「日常生活に即した内容中心の病気説明」 を、学童期までに 「日常生活に即した内容と不十分な医学的知識が共存した病気説明」 に変容させていた。またその病気説明は 「成長に付帯する病気説明選択要因」 に影響されていた。母親が医学的知識を向上し、子どもへ希望に沿った説明を行えるよう支援することが求められる。
著者
都築 知香枝 石黒 彩子 浅野 みどり 三浦 清世美 山田 知子 奈良間 美保
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.25-31, 2006-03-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

目的:(1)AD児をもつ母親の生活困難度,育児ストレスについて非AD児の母親との比較を行なう。(2)ADの疾患特性,生活困難度が,育児ストレスにどのように関連しているかを明らかにする。方法:2〜6歳のAD児の母親と非AD児の母親を対象に,属性,生活困難度,Parenting Stress Index(PSI)の質問紙調査を実施した。年齢について1対1対応でペアマッチングさせ,AD群,対照群ともに121組を解析対象とした。実施に際し,学内の研究委員会の倫理審査で承認を得た。結果:1)AD児の母親と対照群での育児ストレス総得点の比較において,有意差はみられなかった。2)AD児の母親は対照群に比較して,子どもに問題を感じていた。3)重症である児の母親ほど,子どもの機嫌の悪さや子どもに問題を感じていた。4)合併症の有無と育児ストレスには相関がみられなかった。5)育児ストレスと生活困難度の間には有意な相関が見られた。
著者
杉村 篤士
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.56-62, 2014 (Released:2016-12-09)
参考文献数
9

外来におけるADの乳幼児をもつ母親への有効的な看護介入の方法の指針を得ることを目的に、11名の母親に聞き取り調査を行った。その結果、母親は、子どもの将来やステロイド外用薬の副作用に対する不安、医療者からの不明瞭・一方的な指導、ADの治療における軟膏処置の複雑さから、家庭でのケアが不十分となり、子どもの症状悪化や治癒の遷延を招いたことが明らかになった。これらのことより、外来における看護介入として、母親のADに関する理解や不安を把握したうえでの知識の提供、実演による軟膏指導、個別性に配慮したパンフレットの利用、初期段階においての母親との子どもの特徴の把握、症状悪化時の対応の検討、母親の自己効力感の向上を目指した関わり、家族の支援体制の調整が重要であることが示唆された。