著者
酒井 昭 斉藤 満
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.244-251, 1967-06-25

3〜4年生のスギを用いて幹の基部の凍害がおこるしくみを明らかにするために, 一連の実験を行ない, つぎの結果をえた。1)スギの幹の基部(3〜4年部位)はその上部にくらべて, 秋から冬にかけての耐凍性のたかまる進度がおくれるし, 冬の耐凍性の最高値もかなり低い。2)耐凍性がかなり高まった時期に10(日中)〜-5℃(夜間), 10(日中)〜-10℃(夜間)の温度変化を11日間与えても, また10℃で約10日間連続処理しても耐凍性はほとんど低下しなかった。しかし, 20(日中)〜-5℃(夜間)の温度変化や約13℃以高の温度で約10日間処理したときには耐凍性はかなり低下したが, まだ-12℃以高の温度での凍結には耐えることができた。以上の事実から耐凍性がかなり高まった厳冬期にはかなり大きり日週温度変化があっても耐凍性は低下しにくい。しかしまだほとんど凍結に耐えないか, 耐凍性が低い12月初旬や中旬に零下数度の冷え込みがあるときには, 幹のうちでもっとも耐凍性が低く, しかも温度が下がりやすい地際近くの幹が凍害を受けやすい。
著者
大村 寛
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.166-172, 1973-05-25

新聞の切り抜きを整理して, 降雨後, 山崩れにより人が死ぬまでのプロセスを調べた。その結果, 次のことがわかった。1.被害の大半は, 連続雨量が300mmに達するまでに, 標高100m未満の人口密度の低い所で発生している。2.被害をもたらした山崩れの大きさは500m^2(長さ25m×幅20m)前後であり, 崩れた土量が家屋の全壊率や, 死亡率に影響を及ぼす。3.救出に要する時間はできるだけ短い方がよい。現状では, 救出作業は機械化が必要。4.災害は夜に発生しやすく, 未成年者の死亡率は高い, 負傷は頭部と足に多い。5.前もって危険を予知し, 避難することが望ましい。
著者
石川 達芳 竹内 栄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.362-368, 1970-12-25

前報では, マツタケの収量と季節的降水量およびマツタケの発生するアカマツ林の土壌の水分状態との間に高い相関関係のあることを報告した。この報告では, 人工灌水することで, マツタケ子実体の収量および林内の微気象が如何に影響を受けるかについて報告する。6基のスプリンクラーを2つの灌水区内に地上3mの高さに設置した。図-1に示されるように1969年8月20日から10月13日の間に, 1区では110.6mm, 2区では53.5mm量の灌水をした。この期間の自然降水量は125.5mmと異常に少なく, 自然降水量と人工灌水量との合計量でも過去10年間の平均降水量より少なかった。表-5に示したとおり, 子実体発生への灌水の効果はかなり顕著であった。すなわち全試験林におけるマツタケ発生本数および生重量は, 豊年であった1968年のそれらの42.6%および27.9%であった。これに対して, 灌水区Iでは本数は95.3%, 生重量は67.3%であり, 灌水区IIでは本数124.2%, 生重量70.5%と本数では豊年並に, 生重量で約70%と著しい増加がみられた。灌水区および対照区における土壌水分の変化を図-1に示した。I区の土壌水分は灌水によって9月16日以後約20%に維持されたが, II区では13〜16%であった。灌水にもかかわらず, 灌水区の土壌水分は豊年時の土壌水分20〜24%(1966〜69年の測定)に比べて少なかった。灌水による気温および地中温度の変化は図4-1〜4-3に示した。灌水に伴って林内気温および地中温度は変化し, 地上1mの気温は4〜6℃ほど, 地中5cmの地温は2℃ほど対照区に比較して低下する。一方地中10cmの地温は, 灌水によって地中5cmの地温に近づくようである。すなわち灌水による冷却効果は, 灌水時の気温・地温と灌水する水温によって左右される。
著者
奥田 裕規 久保山 裕史 鹿又 秀聡 安村 直樹 村松 真
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.144-150, 2004-05-16
被引用文献数
3

ボーダレスな資本と商品の移動は,地域の処置能力を超えてエントロピーを増大させ,身の回りの環境に重大な影響を及ぼす。この間題は,木材利用の分野に関していえば,地域で使う木材は地域で賄うという「住宅用木材の自給構造」を成立させることで解決できる。金山町では長伐期大径木生産を目指した林業経営により多様な金山杉製材品が安定的に供給され,町内の製材所,森林組合で生産された金山杉製材品を使い,金山大工の手で「金山型住宅」を建てる「住宅用木材の自給構造」が成立している。この成立要因として,金山町民の多くが「金山型住宅」の立ち並ぶ伝統的な景観を評価し,「金山型住宅」を建てたいと思っていること,金山町には住宅建築と金山杉製材品の地場利用を結びつける町民,金山大工,設計事務所,製材所,森林組合,森林所有者からなる「金山型住宅建築ネットワーク」が形成され,金山大工ができるだけ金山杉を使って「金山型住宅」を建てようとしていることをあげることができる。
著者
堀 高夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.17-21, 1955-01-25

林業用索道は滑車付搬器を使用し曳索で操作するものを普通とし, 搬器荷重はその滑車を通して軌索に加えられ, 軌索には常に曳索の力が影響する。この型式の索道に適合する架空索理論式は複雑な形となり, 従つてその応用計算は試算によるほかないのである。本論文は抛物線索理論の基本公式より出発し, 自動的に反復計算によつて算定の行える型の公式を導き, その計算法について述べたものである。
著者
弘田 潤 紙谷 智彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.313-320, 1993-07-01
被引用文献数
9

新潟県上川村の30%択伐施業後数年が経過したブナ天然林において, 残存母樹の密度が異なる四つのプロットを設置し, 豊作年における母樹の結実と堅果散布について調査した。保残された母樹の樹冠の大きさや分布は一様でなく, 林冠の疎開は必ずしも結実促進に結び付いていなかった。各プロットの落下堅果の充実率は60.9〜68.7%で著しい差はなかった。一方, 1m^2当りの落下堅果量は多い方から437個(母樹密度147本/ha), 345個(同53本/ha), 302個(同104本/ha), 53個(同21本/ha)で, プロット間で著しい差があった。また, プロット内での落下堅果量の分布には大きなばらつきがあった。最も落下堅果量が少なかったプロットでは, 1m^2当りの落下充実堅果数が10個未満の場所が多く, 翌年発生した実生も更新に必要な量に達していなかった。以上の結果から, 大面積を更新の対象とする現行の天然更新施業において更新を成功させるためには, ha当り50本以上の母樹を適正に配置することが必要といえた。
著者
北村 博嗣
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.383-385, 1951-11-25

A shrinkage test have been made on Madake (Phyllostachys reticulata C. KOCH) grown in Akadomari and Kawasaki village of Sado district. The results of this test on 7 bamboos are as follows.The shrinkage percentage was calculated based on green dimension to oven or air dry.1) Table 1. Shrinkage percentage.[table]In longitudinal dimension, the shrinkage percentage to oven dry is extremely larger than that of to air dry.2) The shrinkage percentage of Moso-chiku (P. pubescens MAGEL) and Madake, in radial and tangential dimension, is almost similar but in longitudinal, Moso-chiku has larger one.3) These is no relation between the shrinkage percentage and the height from the ground, as shown in table 2.[table]4) The minimum value of specific gravity appeared in about one meter from the ground and in other part, increased with the height.
著者
川名 明 原口 隆英
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.398-399, 1958-09-25

1. 1957年7月5日東京都府中市東京農工大学農学部苗畑の15年生アカマツに高とりきを行い, 一部発根のみとめられた9月26日までの間の枝葉の全炭水化物および全窒素含有率の変化を測定した。2. 葉の部分ではこの処理によつて全窒素含有率が低下している。ただし枝部では認められずまた全炭水化物含有率は枝葉いずれにも処理による差は認められなかつた。3. 葉の全窒素の欠乏を何等かの方法で補うことによつて, 発根率をたかめることができるかもしれない。
著者
佐藤 大七郎 「人工林の一次生産」研究班 NEGISI K. SIBA Y. YAGI K. CHIBA M. NAGANO S. ORIME T. ASADA S. OSHIMA Y. TERADA M. HATIYA K. TADAKI Y. KARIZUMI N. KATO R. MORI M. ANDO T. SHIMODA H. HOZUMI K.
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.154-158, 1970-05-25
被引用文献数
1

IBPの「人工林の一次生産」研究班によって, 1966年に, 小岩井農場でおこなわれた, 収穫法による林分生産関係の調査方法を検討するための合宿-JPTF-66-KOIWAI-の, 調査結果のあらましである。この合宿で得られたデータは, 関係研究機関にくばられており, 調査結果のたちいった検討は研究班員によって, おいおい報告されることになっている。39年生の, ながいあいだ間伐をおこなっていないカラマツ林(表-1)について, 根および下層植生をふくむ, 現存量と物質生産量をしらべた結果は, 表-2〜4にしめした。上木のカラマツは, 植物現存量の97%をしめたが, その葉量(3.95 t/ha, LA I : 4.24)の全体に対するわりあいは, 乾物重で82%, 葉面積で64%にすぎなかった。この林の乾物生産量は18.46t/ha/年で, その約80%はカラマツ上木によってしめられていた。
著者
川名 明 藤本 吉幸 土井 雅子
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.433-434, 1956-11-25

1. 東京都府中市, 東京農工大学農学部苗畑の13年生アカマツに対し, 空中とりきを行なつた。2. 昭和30年6月18日処理して8月19日に初めて発根を認め, ひきつづき昭和31年までにホルモン処理区25%(5本), 無処理区20%(4本)の発根がみられ, 1部地面に下してよく生育している。3. 根のもとはカルスの中に発生した。
著者
野村 一高
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.379-382, 1976-10-25

17年生カラマツの当年生枝と葉におけるフェノール性成分の質的, 量的変化を, TLCと分光光度計を用いて1975年6月1日から11月1日にわたって調べた。葉においては発達過程を通して質的変化はほとんど見られなかったが, ケンフェロールが落葉直前に現われた。当年生枝においてはケンフェロール-3-O-グルコシドが夏期に消失し, ケンフェロールが秋期に現われたが, 他の成分はすべての時期に同じように観察された。量的変化としては葉中のケンフェロール-3-O-グルコシドは春から秋にかけて増減は示さず, 落葉直前にわずかに増加し, 当年生枝中のカテキンは春から秋にかけて増加する現象が認められた。以上の結果からこれらの化合物の生理作用, 代謝, 転流について論じた。