著者
生原 喜久雄 相場 芳憲
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.8-14, 1982-01-25
被引用文献数
8

群馬県勢多郡東村にある東京農工大学演習林でスギ・ヒノキ壮齢林の小流域における養分循環と養分収支について調査した。林内雨量および樹幹流量はそれぞれ林外雨量の84%, 4%であった。蒸発散量は林外雨量の63%であった。林床へ供給される1年間の養分量はスギ林でN : 76kg/ha, K : 30kg/ha, Ca : 151kg/ha, Mg : 11kg/ha, 尾根部を占めているヒノキ林でN : 62kg/ha, K : 17kg/ha, Ca : 75kg/ha, Mg : 9kg/haであった。スギおよびヒノキ林ともに林床へ供給される養分量のうち樹幹流の占める割合は10%以下で, 林内雨の占める割合はN, Ca : 20〜30%, K : 60〜70%, Mg : 40%であった。これらのスギ林とヒノキ林からなる壮齢林分の1年間の養分収支(林外雨-渓流への流出量)はN : +4.2kg/ha, K : +3.4kg/ha, Ca : -4.6kg/ha, Mg : -1.4kg/haであった。1年間の養分還元量(林内雨+樹幹流+落葉・落枝類-林外雨)はN : 63kg/ha, K : 18kg/ha, Ca : 107kg/ha, Mg : 8kg/haであった。
著者
石田 仁
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.410-418, 1996-11-16
被引用文献数
5

コナラ-アカマツ二次林(旧薪炭林)主要高木性樹種の更新特性を解明する目的で,閉鎖林分における各種の樹高階別分布密度のパターン(樹高分布タイプ)と更新樹の分布および伸長成長の関係について検討した。樹高分布タイプから,I型:林冠層付近にのみ分布する樹種, II型:林冠層付近および林床に不連続的に分布する樹種, III型:低い樹高階ほど分布密度が高い樹種,の3タイプの種群が見出された。I,II型の樹種がいずれも高木性樹種であったのに対して, III型の樹種は1種(コシアブラ)を除き林冠層に到達しない小高木性樹種で,成熟した森林にも多く分布する樹種であった。閉鎖林内において,II型の更新樹は5年以上生存することがなかったのに対して,III型の更新樹は長期間生存し緩慢に伸長成長を持続していた。I,II型の樹種の伸長成長速度はIII型樹種のそれよりも大きく,温帯林の先駆樹種の値に準じていた。閉鎖林分における構成樹種の樹高分布は,更新樹の耐陰性(閉鎖林冠下での生存期間)とよく対応し,伸長成長の特性を予測する一指標となることが示唆された。
著者
小林 一三 山崎 三郎 黒田 敏夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.21-28, 1973-01-25
被引用文献数
1

茨城県下から採集したマツカレハ幼虫を材料として, 人工照明の影響のない3m×3m×2.5mの大型ケージを用いて成虫の羽化の様子とその後の成虫の行動を調べたところ, 次のような結果を得た。1)羽化は7月中旬を盛期として行なわれ, その羽化曲線はピークが羽化開始日の方に傾き, 尾を終了日の方へひいた型となった。この傾向は雌よりも雄の方が著しいため, 羽化期を通じての毎日の羽化成虫の性比は初期には0.5より小さく, 盛期に0.5,後期には0.5より大と漸増した。2)1日における羽化時刻は午後5時から11時までの間であって, 雄は雌よりも早い時刻に羽化し, そのピークは日没前の7時ころ, 雌では日没後の8時ころであった。この場合の雄雌のちがいは同型の曲線が約1時間のずれを持ったちがいであって, 1)の性比の変化と共に交尾を確実にする上で役立つものと思われる。3)羽化した成虫は30分ほどで翅の伸張を終え, 雄ではその後2時間ほどで飛行した。雌は翅の伸張を行なった場所に止まって深夜を中心とした時間帯に交尾を行なった。日中は静止を続け夕刻から活動を開始し, その後, 雌はただちに産卵を始め, 夜9時ころまでが産卵の時間であった。夕刻7時30分と明方4時を中心としたl0〜20分間にややはっきりとした飛行の集中する現象がみられた。
著者
青島 清雄 小林 正
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.289-293, 1952-09-25
被引用文献数
1

マツの青変材の青変菌が死んでからの耐朽性を知る目的で, マツの青変菌Ceratostomella ips RUMB.2系統Graphium sp.及びLeptographium sp.夫々1系統をアカマツ辺材の試験片に接種して充分変色させてから蒸気殺菌して, マツノオオウズラタケ, ヒトクチタケ, シハイタケ, ワタグサレタケ及びチヨークアナタケを夫々の青変材に接種し, ワタグサレタケは6カ月後, 他の4種の腐朽菌は1年後に試験片の重量減少率を測定した。この結果からは青変材と健全材とは耐朽性に統計的に意味のある差異は見出せない。
著者
杉原 彦一 野口 昌巳 藤井 禧雄 安堂 誠
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.275-281, 1965-08-25

振子式木材切削試験器を用いて、単一のチェンソー歯の木材切削性能試験を行なった。そこで、チェンソー歯の諸角度(上刃にげ角、側刃すくい角)を数段階に変化させ、さらにそれが切削所要エネルギーに与える影響をより詳細に知るために、切削用木材試片の樹種(オオナラ、ブナ、スギ、ヒノキ、アカマツ、ラワン)、含水状態(気乾状態、飽水状態)を、又その切酎方向(a、b、c;Fig.3参照)、切込量(0.2、0.4、0.6mm)をも数段階に変化させ、上述の諸角度の変化と組み合わせその交互作用をも検討した。実験データの分析にあたっ.ては、分散分析を行ない、その結果について検討した。実験の結果、チェンソー歯にあっては、切削所要エネルギーを最小にするという観点からすれば、上刃刃先角(角度の名称はFig.2を参照)が一般的な55°の場合、上刃にげ角は4〜5°(よって、上刃すくい角は31〜30°)、側刃すくい角は30°〜40°の角度を取ることが最も好ましいことがわかった。
著者
中島 敦司 養父 志乃夫 櫛田 達矢 永田 洋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.69-75, 1997-05-16
参考文献数
18
被引用文献数
6

サザンカを3月18日にビニールハウスへ搬入し4月18日に再び自然の野外に移した。フラッシュの終了した5月8日に, 半数の個体に対して緩効性肥料(10-10-10)を1個体当り20g 施し, 5月12日, 6月11日, 7月11日, 8月10日, 9月9日の各日に, 18時間日長に調節した18℃恒温または25℃恒温のグロースチャンバー内か蛍光灯下の圃場に移したところ, 花芽の形成は5月12日に25℃および野外-長日に移した区で早くなった。また, 花芽の形成割合と土用芽の発生割合は負の関係にあった(γ=0.78)。さらに, 発育を続けている花芽を着生したままの葉芽は頂芽, 側芽ともに二次成長することはなかった。土用芽は同一節位上に形成された花芽が発育しなかったか, 形成された花芽のすべてが落下したか, 花芽を形成しなかった頂芽においてのみ認められた。そして, 開花率と土用芽の発生割合の間には有意な負の相関が示された(γ=-0.53)。この結果, サザンカの花芽と葉芽の発育および展開は相互に抑制する関係にあると考えられた。
著者
倉田 益二郎
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, 1939-11-10
著者
谷本 丈夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.155-160, 1976-05-25

前報に引き続き, アカマツ苗木の庇陰下での生長経過をしらべた。3月7日に処理を開始し6月9日, 7月27日, 9月13日と11月14日に苗を掘り取り幹, 根, 葉の量などを測定した。苗高は生長期の前半は処理による差は少なかった。後半の生長は冬芽の伸長によるものであるが, 弱い庇陰区ほど生長がよかった。地際直径は早い時期から弱い庇陰区ほど生長がよかった。当年の針葉の平均の長さと旧葉も含めた個体あたりの葉の合計の長さはともに庇陰区のほうが対照区よりも大きかった。それぞれが最大となる庇陰の程度を相対照度であらわすと, 針葉の平均の長さは6月9日57.7%, 7月27日56.6%, 9月13日と11月14日は40.0%, 個体あたりの葉の合計の長さはそれぞれ59.7%, 61.1%, 60.4%, 60.4%と計算された。庇陰処理の影響は苗の部分でちがい, 全重量に対する葉の重量比は6月9日に庇陰の程度が強いほど小さかったが, 7月27日, 9月13日には庇陰処理区内で最大となり, 11月14日には庇陰の程度が強いほど大きくなった。幹の重量比はどの時期とも庇陰の程度が強くなるほど増加した。根の重量比は幹と反対にどの時期も庇陰の程度が強くなるほど減少している。平均個体重, 葉重はどの時期も庇陰の程度が弱いほど生長がよかった。
著者
酒井 昭 石川 雅也
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-20, 1979-01-25

亜高山または亜寒帯性針葉樹の冬芽は-30〜-40℃の温度範囲で枝条原基のみが凍死することが知られている。このことは枝条原基がこの温度範囲まで過冷却後細胞内凍結をおこして死ぬ可能性を示している。このことを確かめるために, 針葉樹の冬の芽の示差熱分析を行なった。亜高山または亜寒帯性モミ属の冬芽は-5〜-8℃で外部芽鱗が凍結したのち, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。また, 芽から枝条原基, その直下にある厚角組織およびそれらの外側をとりまくうすい内部芽鱗をとり出し熱分析したところ, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。しかし, 開舒20日前の春の芽の枝条原基は-15℃までも過冷却しなかった。暖帯性モミ(A.firma)の冬芽の枝条原基は, その凍死温度である-20〜-22℃まで過冷却した。しかし, トウヒ属の冬芽では-5〜-8℃での外部芽鱗の凍結につづき, または少しおくれて枝条原基が凍った。カラマツ属の冬芽の示差熱分析では, 葉原基の凍結に由来すると思われる多数の小さい熱の放出が認められた。温帯性落葉広葉樹と異なり, 針葉樹の枝の木部では-30〜-40℃までの過冷却は認められなかった。
著者
柴草 良悦 木俣 聰彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.393-397, 1976-11-25

芽の内部構造の変化からトドマツの自発休眠の開始時期を調べ, また1975年11月7日(自発休眠中)と12月22日(他発休眠中)に採取したトドマツの芽の原基体をα-ナフタレン酢酸(NAA)を添加したMS培地で無菌的に培養して, NAAに対する生長反応から休眠の深さを洞察しようと試みた。自発休眠は, 葉原基およびクラウンの完成後, 9月中旬に始まると考えられる。12月22日に採取した芽の原基体の葉原基は, 11月7日に採取したものより盛んに発達し, また11月7日より12月22日においては, より低濃度のNAAで葉原基は発達した。また, 培養した芽の原基体の軸長は, 低濃度のNAAにおいてわずかに大きかった。クラウンの下部の切り口面より発達したカルスは, 11月7日と12月22日の間でその形成において差は認められなかったが, 両区とも高い濃度のNAAにおいてよかった。培養の際, 他発休眠中の芽の原基体は自発休眠中のものより, 軸や葉原基の上部の細胞伸長の点で, NAAに対する反応が著しかった。
著者
猪瀬 光雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.224-228, 1983-06-25
被引用文献数
1
著者
浅川 澄彦 猪熊 友康
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.331-335, 1961-10-25
被引用文献数
1

クロマツとアカエゾマツのタネについて, 発芽における光感性をしらべた。いずれのタネも, 赤色光の短時間(30分)照射によつていちじるしく発芽が促進される。このような光の效果は, 0.2%の硝酸カリによつて部分的におきかえられる。クロマツのタネの発芽は, くりかえし照射したほうがよく促進される。いずれのタネの場合にも, 赤色光による效果は赤外光照射によつてうちけされるが, その程度は, タネをまきつけてから赤色光をあてるまでの時間, および赤色光をあててから赤外光をあてるまでの時間によつてことなる。クロマツ・アカエゾマツのタネを冷処理すると, 発芽するのに光を必要としなくなることがしられているが, 冷処理されたタネには赤外光照射による阻害があらわれないから, 光化学反応を中心とした光感経路にかわりうるようなほかの経路が, 冷処理のあいだにすすんだものとかんがえることができる。クロマツとアカエゾマツのタネは, 冷処理をうけると光にたいしてちがった反応をしめすようになるが, そのうちでもっともいちじるしいものは, アカエゾマツの冷処理されたタネの場合で, 赤外光によってかえって発芽が促進されるようになる。
著者
梶原 幹弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.50-55, 1989-02-01
被引用文献数
4

現実の幹曲線が相似であれば完満度は等しいとみなし、現実の幹曲線を直径方向、樹高方向ともに樹高分の1に縮めた一種の相対幹曲線における直径の減少度を完満度と定義することを提案した。この相対幹曲線は正常相対幹曲線とこれに対応する形状比とに分解でき、前者の後者に対する商として与えられる。多くの伐倒木での測定値を用いて、スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツの同齢林における完満度の変化を調べた結果、次のことがわかった。1)幹の上部では完満度の経年変化は比較的小さかったが、一定の樹齢までは幹の下部で完満度が著しく大きくなった。2)高い度管理状態のものほど完満度が大きかった。3)スギにおける密度管理状態による完満度の差は、樹種間におけるそれよりも大きかった。4)完満度の垂直的変化のパターンには樹種間における差異が認められた。これらの結果からすると、ここに提案した完満度の定義と表現は実用的に有効であるといえる。