著者
櫛田 達矢 中島 敦司 永田 洋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.57-64, 1999-02-16
参考文献数
24
被引用文献数
3

アカマツの冬芽内の葉原基の形成経過と日長反応性の関連から, 土用芽の発生要因を検討した。1年生苗を2月20日, 3月7,22日の各日からガラス室で加温処理した後, 5月22日に野外に搬出し, 主軸の先端に形成された冬芽の土用芽の発生状況を調査した。その結果, 早い時期から加温した個体ほど, より早い時期に冬芽内の節間が伸長し始め, 土用芽の発生率も高く, 二次伸長量も大きくなった。また, 3月6日から6月4日まで加温した処理区(加温区)と無加温区の冬芽を定期的に採取し, 冬芽内に形成された葉原基の数を解剖学的な方法で調べたところ, 加温区では冬芽内の節間で急激な伸長の認められた8月中に, 90以上の葉原基の形成が確認された。一方, 無加温区で90以上の葉原基が確認されたのは9月上旬の短日条件になってからであり, 節間の急激な伸長はみられなかった。以上の結果, アカマツの土用芽とは, 90〜100程度まで葉原基を形成した冬芽において, その内部の節間が野外の14時間以上の長日条件で伸長成長したものと考えられた。
著者
杉本 寿
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.140-142, 1954-05-25

この研究はROKUROSHI SYSTEMおよびROKUROSHI SETTLEMENTSを基礎とする, わが国山村の経済構造の研究である。ここにおいてはその結論と, 調査方法論を示すために近畿地方のTableを掲げることにした。ROKUROSHI SYSTEMを通じて, 全一てきに標記課題の研究調査を試みることについて, 学問てきには若干の疑問が観られ, 且つ論争が見られるであろう。しかしこの特異な山村民族の集団が, 全日本の地理てき領域に散在し, 優良な山村聚落を構成して居ることは, 日本山村の地域てき性格構造を正確に象徴する, 東北型とか九州型とも云うべき, 地方林業てき区域を最も端てきに指摘し得る, 都合の良いDataを現わして居るのである。著者は30年らい, この研究を通じて, わが国の山村経済構造の究明が, これ以外のDataによつては困難であることを科学てきに経験した。すなわちそれと云うのは, 学問てきに純粋な山村とは, 果して何れの村落をピツクアツプす可きであるか。同一種族ないしは尠くとも学問てきに比較検討し得べき, 同一基盤にたつ研究資料には, この資料以外には存在しないからである。しかしこれには以下の如き資材Dataの若干の欠陥が存在している。それは経済てきに恵まれ過ぎた山村の調査聚落数が欠けている事である。しかしそれは一面, 日本全国の平均値と云う意味においては, 若干の役割を果しても居るものである。また更に地方性, なかんづく北海道においては, 開拓事業を通じて資料が霧散〔すべての農業資料における共通性であるが〕し, 東北・関東・九州地方には資料の濃淡があり, そのfrequencyが相当大である事である。しかしこれらの事は, これらのFactが, この研究の為に存在するもので無い以上, やむを得ない事であらねばならない。Tableとしては, 日本全国のうち最も小さい単位領域である, 近畿地方だけを挙げる事にした。また印刷の制約により, 更に簡約にしたものが, このTableである。このTableにては簡易に過ぎ理解困難, または更に原表を必要とする方は, 中国地方のB原表が福井大学紀要に発表されるので, 著者あて申込まれたい。因みにA原表は, 江戸時代前後における, 山村の歴史地理てき統計実態表である。全国のB原表のみ近く某官庁より出版せられる予定である。
著者
大庭 喜八郎 村井 正文
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.177-180, 1971-06-25
被引用文献数
2

1962年に放射線育種場のガンマー線照射ほ場に定植された市販のスギ苗の中から劣性の白子遺伝子についてヘテロ接合型, 4個体, 淡緑色または黄緑色苗を生ずる劣性遺伝子についてヘテロ接合型, 2個体および両遺伝子について二重へテロ接合型, 1個体を発見した。この劣性遺伝子のホモ接合体は, 自然条件のもとでは発芽後間もなく枯死する。これらの劣性遺伝子はガンマー線照射によって生じたものとは考えられず, ヘテロ接合型の母樹から採種されたために, 劣性遺伝子が後代に伝達されたのであろう。ジベレリン処理により誘起した花を用い, 自殖を含む2カ年の交配試験により, 単一ヘテロ接合型苗は, 正常苗 : 白子苗または淡緑色苗を3 : 1の割合で分離した。一方, 白子は淡緑色に対し上位性があるため, 二重ヘテロ接合型苗は, 正常苗 : 白子苗 : 淡緑色苗が9 : 4 : 3の分離比をしめした。この劣性遺伝子とスギの1個体および2品種, すなわち, G-5,クモトオシならびにクマスギにおいて淡緑色苗を生ずる劣性遺伝子とは, いずれも相同ではなかった。
著者
本間 環 山口 五十磨 中嶋 正敏 室伏 旭 右田 一雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.358-365, 1995-07-01
被引用文献数
1

スギ(Cryptomeria japonica D. DON)の伸長成長および花芽形成は、他の針葉樹と同様にジベレリン(GAs)の投与によって促進される。このことは、これらの生理現象が内生GAsによって調節されている可能性をも示している。しかし、針葉樹の内生GAsに関する知見は少ない。これまでに、針葉樹の内生GAsの報告はマツ科の4種に限られている。一方、スギのジベレリン様物質は矮性イネ「短銀坊主」によるバイオアッセイにより確認されているものの、その同定は末だ報告されていない。本研究では、内生GAsとスギの生理学的および形態学的変化との関連を解明する研究の第一段階として、花粉に含まれる内生GAsの分析を行った。その結果、高速液体クロマトグラフィーにより精製した試料を「短銀坊主」によるバイオアッセイおよびエンザイムイムノアッセイ(ELISAs)を用いて分析し、GA_1および/またはGA_3、GA_4、GA_9、GA_<12>、GA_<15>の存在を推測した。それらのうちGA_9、GA_<12>およびGA_<15>をガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により同定した。しかしながら、ELISAによりその存在が示唆されたGA_1および/またはGA_3とGA_4については、含有量が少ないためにGC/MSあるいはGC/SIMのいずれにおいても同定することはできなかった。これらの結果から、スギの花粉にはearly-non-hydroxylation pathwayが主要な生合成経路として機能している可能性が示された。
著者
柴草 良悦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.199-206, 1972-06-25

生長休止期の22〜23年生トドマツの葉を1970年1月19日と1971年3月5日の2回採取し, その中にある生長抑制物質を調べた。1.1970年1月19日のトドマツの葉においては, 酸性区分と中性区分にサリチル酸と推定される物質が存在する。また, 不確実ではあるが, 酸性区分に, p-オキシ安息香酸, バニリン酸, 中性区分にp-オキシ安息香酸と推定される物質が存在する。2.アベナ伸長試験において, 合成のサリチル酸は, 濃度1〜500ppmで抑制作用を示すが, 合成のp-オキシ安息香酸とバニリン酸は, 約1〜100ppmで促進作用を示す。生長抑制物質の種類によっては, 低濃度で生長促進作用を有することは注目される。3.1971年3月5日の葉においては, 酸性区分, 中性区分に多量の生長抑制物質が認められるが, 前実験で見られたフェノール化合物はなかった。生長休止期の生長抑制物質は, 質的にも変化していることが予想される。本実験の酸性区分の生長抑制物質について幾つかの実験を行ない, 以下のことがわかった。1)Rf0.50〜1.00の生長抑制物質(inhibitor-β)は, アベナ伸長試験において, 濃度を増すにつれて直線的に抑制作用が強くなる。しかし, Rf0.10〜0.50の生長抑制物質は, 低濃度では生長促進作用を示し, 高濃度では生長抑制作用を示す。2)inhibitor-βは, トドマツ苗木の秋伸びを抑制する作用がある。また, Rf0.10〜1.00の生長抑制物質も, エゾマツ種子の発芽を抑制する作用を有している。3)inhibitor-βと合成IAAの相互作用をアベナ伸長試験で調べた。IAAがinhibitor-βの強い抑制作用を弱めることはあまりできない。この事実から, 植物の休眠を破ったり生長を開始することは, IAAの増加より生長抑制物質の減少が関係するように考えられる。
著者
只木 良也 香川 照雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.7-13, 1968-01-25
被引用文献数
3

落葉枝量の季節変化を, 密生した若いコジイ林で3年間, ヒノキ壮齢林およびテーダマツの若い造林地で2年間調べた。受け取り面積0.5m^2のリタートラップを林内に設置して, その中に落ち込む落葉枝を, コジイ林の1年目は半月ごとに, その他では1月ごとに集め, 絶乾重を測定した。コジイ林では年間落葉量の1/3以上が4〜5月に落ちるのに対して, ヒノキ林やテーダマツ林での落葉のピークは秋である。しかし, 落葉量は台風時にはかなり多くなる。枝や球果の落下は, 年間を通じて不規則に起こるが, 台風や強風の時に大量に落下し, 落葉よりもこれらの影響をうけやすい。年間落葉量は, 台風が襲った年に平年より多くなり, その翌年には逆に少なくなる。コジイ林の年間落葉量と立木密度との間には年ごとにY-D効果が認められた。年間落葉量を冬期の林分葉量と比較すると, コジイ林では年間落葉量は林分葉量の40〜50%にあたり, ヒノキ林では30%, テーダマツ林では100%となる。これらから, 林分葉量の季節変化と, 葉の年齢構成を模式的に表わしてみた。
著者
陶山 佳久 中村 徹
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.510-517, 1988-12-01
被引用文献数
6

アカマツ林の遷移に関する基礎的情報を得ることを目的として, 林内相対照度の違う3林分内(7,15,27%)に発生したアカマツ当年生実生の発生, 発育, 死亡過程を調査した。発生は4月下旬に始まり, 2〜3週間後には発生頻度がピークに達し, 7月下旬には終了した。年間総発生本数は54,100〜99,400本/haに達した。林床の相対照度が低い2調査区では9月下旬までに全個体が死亡し, 相対照度が最も高い調査区では21%が冬期まで生存した。死亡要因はおもに動物害, 苗立枯病害, 乾燥害および被陰によるものであった。林内のアカマツ実生は被陰により発育を妨げられ, 発育初期段階で死亡する割合が大きく, 動物害と苗立枯病害は, 実生が初生葉を展開するまでに発生する重大な死亡要因であった。一方, 乾燥害によって死亡したとみなされた個体数は少なかった。
著者
柴草 良悦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.341-345, 1973-11-25

生長休止期である1972年12月12日に採取した24年生トドマツ葉の生長抑制物質を調べた。その結果, アベナ伸長試験で強い抑制作用を有する生長抑制物質のひとつは, 薄層クロマトグラフィー, ガスクロマトグラフィーによって, アプサイシン酸であると試験的に同定された。
著者
古澤 仁美 宮西 裕美 金子 真司 日野 輝明
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.318-325, 2003-11-16
被引用文献数
20

ニホンジカによって林床のミヤコザサが強度の探食を受けている大台ヶ原の針広混交林において,シカ排除区とササ刈り区を設けてリターおよび土壌の移動量を測定した。移動した樹木葉と樹木枝は非ササ刈り区ではササ刈り区と比べて小さく,ミヤコザサにはこれらの移動を抑止する効果が認められた。ミヤコザサの地上部現存量とリターおよび土壌の移動量とは指数関数的な負の相関が認められた。シカ排除処理後3年間経過した区ではミヤコザサの地上部現存量は回復し,リターおよび土壌の移動量は他の広葉樹林で報告されている値と同程度であった。それに対してシカを排除しない対照区ではリターおよび土壌の移動量は他の広葉樹林の約1.2〜4.3倍であった。現在の大台ヶ原ではニホンジカによるミヤコザサの採食の影響でリターおよび土壌の移動量が増加していると示唆された。
著者
吉岡 邦二
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.359-362, 1951-11-25
被引用文献数
2

1) The pine forest established on coastal sandy areas at Hamayoshida, Miyagi Pref. were investigated from the ecological standpoint.2) Within the forest investigated eight communities were found occurring in zonation towards the interior. Pinus Thunbergii ("Kuromatsu") communities with strand plants as undergrowths were found on the seaward parts, while P. densiflora ("Akamatsu") communities with many inland plants on the interior parts. The zonal arrangement of the communities was accompanied by the zonal change of such properties of the soil as moisture, pH, Ca-and Cl-content etc. The maritime character of which weakened inwards. Accordingly, it may be said that these soil properties, as well as meteorological characters, control the structure of communities.3) Some precise examples of water levels influencing greatly upon the structure of pine forests will be given as follows : When the water level is higher than 25-35 cm in summer, the pines are unable to grow, and when lower than 50 cm, the normal types of forests appear. On the intermediate site occurred the forests with such hygrophytic undergrowths as sedges.The inhibiting effect of underground water upon the establishment of pine forests seems to be accelerated by the increasing content of chlorids.
著者
千葉 幸弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.481-491, 1994-11-01
被引用文献数
3

1991年9月の台風19号によって発生したスギ人工林の激害地を1992年3月に調査して、暴風によって生じる樹幹の折損機構を沢田モデルによって解析した。ほとんどの個体が折損した二つの壊滅的被害地それぞれに20m×20mのプロットを設け、すべての個体のサイズ(樹高、胸高直径など)および折損木の折損高、折損部直径を測定した。樹高曲線に拡張相対成長式を採用し、生枝下高が林分に固有の一定値をとると仮定することによって、風圧力によって樹幹内に生じる応力をシミュレートした。幹形を単テーパービームとみなして推定された折損高は、概して実際の値とよく一致した。樹幹内曲げ応力分布から、風圧力による樹幹の折損位置は材内部の物理的欠点のために予測位置を中心にばらつき、台風を生き残った立木でも樹幹に沿ってモメが発生していると考えられた。いくつかの樹幹形状比に応じた折損位置についても検討したが、このことは被害材の利活用および被害林分のその後の処理を考える上で重要である。
著者
萩原 秋男 鈴木 道代 穂積 和夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.397-404, 1978-11-25
被引用文献数
1

18年生(1974年現在)ヒノキ人工林における落葉枝量の季節変化を明らかにし, 枯死量・被食量の推定を行なった。落葉のピークは10〜11月と1月にあった。この落葉の季節変動が総落葉枝量のそれを特徴づけていた。落枝量の1〜2月にかけてのピークは, 雪による影響であると考えられた。生殖器官の落下のピークは11月にあったが, 明確な季節変化は観察されなかった。虫遺体の落下量は夏に多かった。また, 虫ふんの落下は7月にピークを示し, 冬から春にかけては, ほとんど認められなかった。植物体の落下と虫遺体・虫ふんのそれとには, 季節変動において明らかな差が認められた。すなわち, 前者は主に秋から冬にかけて, 後者はおもに夏に落下のピークがあった。年総落葉枝量は1.8t(dw)/ha・yrと推定された。そのうち, ヒノキ葉, 枝, 虫ふんの年落下量はそれぞれ1.5t(dw)/ha・yr, 97kg(dw)/ha・yr, 47kg(dw)/ha・yrであった。枯死量は葉で2.0t(dw)/ha・yr, 枝で0.12t(dw)/ha・yrと算出された。また, 食葉性昆虫による葉の被食量は76kg(dw)/ha・yrと推定された。この値はヒノキ落葉量の5.2%, 総光合成生産量の0.15%を占めていた。したがって, 被食量の落葉枝量や総生産量に占める割合は非常に小さいと推定された。
著者
山脇 三平
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.481-488, 1958-11-25

この報告は, わが国の山岳林のうち急傾斜でない山腹で運材につかわれている3 tonクローラ型トラクタ(Table 2参照)の牽引抵抗・燃料消費率・振動について実際測定してえられた2,3の結果について報告している。1. 伐採点からトラクタ道側まで数十mの林地上を, トラクタ後部に装備された小型1胴ウインチで玉切材や全幹材(樹種カラマツ)を集材するときの, 集材索にはたらいた張力, 負荷時・無負荷時の燃料消費率を測定した。この結果は, Table 3,Fig. 3のとおりである。2. 勾配=3〜16%のトラクター道上を, 運行速度=2.5〜6.0 km/hrで, 運材に従事しているトラクタの燃料消費率はFig. 4のとおりである。3. 走行中のトラクタおよびサルキーの集材索と牽引桿の双方に作用している張力については, Fig. 1に示した筆者の設計した測定方法によつて同時測定をすることができた。こういう丸太牽引の機構は, トラクタおよびサルキーによる運材をほかの運材方法とはちがつたものとして特徴づけているわけで, この測定の結果は, Table 4-a, b, Fig. 5のとおりである。4. これらの結果から, 牽引桿に作用する張力は集材索に作用する張力より絶対値は小さいが, より変動のはげしい繰返し応力がはたらいていることが認められる。この試験はさらに継続される必要があるが, これらの結果はこのサルキーの重心が高いために凸凹のひどい地面上ではバランスをうしないやすいことなどとともに, トラクタまたはサルキーの構造および作業方式について改良をくわえる必要があると, 筆者は考えている。5. このトラクタおよびサルキーでやわらかい土砂道上を運材するとき, あるいは林地の伐根をのりこえたりしたときでも, トラクタの運転台の振動には大きな加速度があらわれなかつた。ただしブルドーザ付のトラクタが単車で, 砂利で舗装したかたい林道上を, 2〜6.2 km/hrの速度で走行するばあいには, トラクタの走行速度がはやくなるほど衝撃回数は少なくなるが加速度の絶対値は大きくなり, 三成分別の衝撃回数はどの路面でも最高速走行のときに, 前後>左右>上下の成分の順の大きさになることが認めらる(Table 5参照)。
著者
藤井 英二郎 辰巳 修三 陣内 巌
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.273-279, 1979-08-25

常磐線沿線地域のマツ平地林16群落を調査し, 草本層構成種の積算優占度からGLEASONの類似度指数を求め, これをもとに因子分析し, 因子軸上に各群落を因子負荷量によって位置づけた結果, よく下刈りされた群落グループと下刈り放棄後遷移が進んだグループ, それらの中間にあるグループの三つに区分された。そして, 偏向遷移系列と正常遷移系列の2因子が推定された。3グループ間で優占度による生活型組成を比較すると休眠型でMMとM, 生育型でb, 散布型でD_4が遷移の進行につれて増加し, 逆に休眠型でCh, 生育型でt, 散布型でD_1が減少した。また生活型ごとに構成種の相対優占度-順位関係を3グループ間でくらべると, 遷移が進むにつれて生活型の構成種数は減るが優占度は増える建設型(休眠型でM, 生育型でb, 散布型でD_4が該当)と, 構成種数も優占度も減るが種数がより急激に減る衰退型I(生育型でtが該当), 優占度がより急激に減る衰退型II(休眠型でCh, 散布型でD_1が該当)とがみられた。
著者
藤井 英二郎 陣内 巌
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.76-82, 1979-03-25
被引用文献数
5

常磐線沿線地域のマツ平地林16群落を調査し, 草本層の種組成の類似性をJACCARDの共通係数で判断し, この共通係数行列をもとに直接バリマックス法で因子分析した結果, 下刈りによる偏向遷移系列と正常遷移系列の2因子が推定された。これら2因子軸上に各群落を因子負荷量によって位置づけた結果, よく下刈りされ遷移の退行を起こした群落グループA(このなかには上層のマツが高密な群落も含まれた)と下刈り強度の弱い, あるいは下刈りを放棄して数年を経た群落グループB, さらに下刈りを放棄して10年以上経た群落グループCとに区分された。A, B, Cの間で種数による生活型組成を比較するとA, B, Cの順, すなわち下刈りによって退行遷移した群落から下刈り放棄によって林床植生が発達するにつれて, 休眠型でMとG, 生育型でeと1,散布器官型でD_2が増加し, 逆に休眠型でChとH, 生育型でtとpr, 散布器官型でD_4が減少する傾向がみられた。
著者
橋詰 隼人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.312-319, 1962-11-25
被引用文献数
9

1) 雄花芽は新条の先端部の葉腋に形成されたが, 雌花芽は新条の頂芽に分化した。2) 自然状態における雄花芽の分化期は6月下旬〜9月下旬であった。花芽分化後, 雄花芽は急速に生長して, 短期間で雄しべおよび造胞組織の分化が認められた。そして, 9月中旬〜11月上旬の期間に花粉が形成された。3) 自然状態における雌花芽の分化期は7月中旬〜9月中旬であった。雌花芽では, 花芽分化後短期間で苞鱗の分化が認められ、8月上旬〜10月中旬の期間に胚珠が形成された。胚珠はその後珠皮と珠心に分化した。10月下旬にはすべての雌花で珠皮と珠心の完全に分化した胚珠が認められた。開花期は2月下旬〜3月下旬であった。4) 雌花芽の分化開始期は雄花芽よりも2〜3週間おそかった。また分化期間は雄花芽よりもみじかい傾向がみられた。5) 同一新条における花芽分化あるいは同一花芽における花部器官の分化は求頂的に進行した。6) 花芽分化期および花芽の発育経過には, 年により10〜20日の早晩がみられるようである。7) ジベレリン処理の場合は処理後約30日で花芽分化が開始された。ジベレリン処理によっておこる花芽分化の期間は自然分化に比して約2ヵ月ながいようであった。9月までの処理区では胚珠および花粉は年内に形成され, 開花期は自然分化に比して著しく相違しなかった。しかし, 10月処理区では花芽の発育が抑制され, 花粉は翌春形成された。したがって, 開花期は15〜20日おくれるようである。
著者
吉野 豊
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.91-94, 2000-02-16
参考文献数
22
被引用文献数
1

囗長時間がオオバヤシャブシ(Alnus sieboldiana)の伸長成長と花芽分化に及ぼす影響を調査した。野外に定植された8年生の供試木を夏至から12月まで夜間に蛍光灯で補光し, 24時間日長とした(CL区)。一方, 自然の日長条件下のオオバヤシャブシを対照区とし(Cont区), 4月から12月まで両区の伸長成長量と花芽の分化状況を調査した。Cont区では, 枝のシュートの伸長成長は6月下旬に緩慢となって7月に停止したが, 主軸のシュートの伸長は9月まで持続し, 主軸の方が伸長期間が長かった。また, Cont区の枝では7月に伸長成長が停止するとともに雄花芽の形成が認められた。一方, CL区の枝の伸長成長は10月下旬まで持続し, 花芽形成が著しく抑制された。しかし, 10月末になると, CL区でも伸長成長は停止し, 休眠芽が形成された。囗長時間が短くなり始める時期に花芽が分化し, 長日条件下におくと花芽分化が抑制される現象から, オオバヤシャブシの花芽分化は主として光周性により支配されており, 限界日長時間が約15時間で枝の伸長成長が低下し, 花芽を分化する短日植物であると思われる。また, 通常の花芽分化時期ではない10月に少数の雄花芽の形成が認められたことから, 気温も花芽分化に補足的に影響しており, 低温を感知して花芽が形成される場合もあることがわかった。
著者
岸原 信義 石井 正典
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.373-381, 1982-10-25
被引用文献数
2

本論は日本の山地流域からの流出に関する総合的な研究の第一歩として, 流出地帯区分を主体に流出の地域性に関する検討を行ったものである。解析は全国319流域の月流出量の資料を用いて行われ, その結果夏期流出比率の多少によって2大区分がなされた。表日本型(非積雪型)と裏日本型(積雪型)の流域群ともいえる。ついで時期別(厳寒期, 融雪期, 梅雨期, 台風期, 初冬期)の流出比率と年流出量の多少とによって, 10の流出地帯区が分類された。各流出地帯区の流出特性は, 夏期流出区では流出のピークが梅雨期か台風期かによって, 冬期流出区にあっては融雪流出の開始, 終了と融雪流出のピークの月によって特徴づけられる。日本の山地流域からの平均年流出量は約2,110mmで, これに蒸発散量を加えれば, 山地流域という点を考慮に入れても, 降水量の過少推定が指摘される。