著者
吉永 敦史 諸角 誠人 吉田 宗一郎 大野 玲奈 石井 信行 寺尾 俊哉 鎌田 成芳 林 哲夫 山田 拓己
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.30-33, 2007-01-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
9

症例は2歳男児. 子宮内胎児発育遅延にて当院母子周産期総合医療センターへ母体搬送され, 在胎39週3日, 帝王切開にて2200gで出生した. 生下時外性器異常を認めたが, 電解質は正常であった. 染色体検査では, 45X/46X, idic (Y) (q11.2) を呈していた. 腹部超音波検査において子宮及び卵巣は認められなかった. 当科紹介受診となり, 陰嚢型の尿道下裂及び右鼠径ヘルニア, 右非触知停留精巣の診断となった. また左陰嚢内容は触診上正常組織であった. 1歳時右鼠径ヘルニア修復術及び右停留精巣手術施行するも, 右精索及び精巣上体様の構造物は認められたが, 右精巣は認められなかった. さらに2歳時尿道形成術を施行したが, 術後瘻孔形成あり, 瘻孔閉鎖術を追加施行した. 現在, 瘻孔なく, 経過良好である.
著者
安達 秀樹 佐藤 嘉一 堀田 浩貴 熊本 悦明 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.788-794, 1997-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

(目的) Erectometer を用いた陰茎周増加値の測定において, その増加値のみで勃起度の判定ができるかどうかなど, 陰茎周増加値の臨床的意義を陰茎周増加率との比較を含め改めて検討した.(対象と方法) インポテンスを訴えて受診した症例とインポテンスのない症例合計116例を対象として, vasoactive drug 海綿体注入により人工的勃起を起こし, 陰茎の周径変化と陰茎硬度を比較検討した.(結果) 陰茎周最大増加値が21mm以上では十分な硬度の勃起が得られ, 10mm以下では不十分な硬度が多いことが示された. また11mm以上21mm未満では, 弛緩時の陰茎周値が95mm未満の場合勃起は不十分であり, 95mm以上では十分な勃起が多いことが示された. 陰茎周最大増加率26%以上の症例は十分な勃起が多く, 10%以下では不十分な勃起のことが多かった. 11%以上26%未満では, 弛緩時陰茎周が95mm未満の場合勃起が不十分であり, 95mm以上では十分な勃起が多いことが示された. 陰茎周増加値と陰茎周増加率の診断精度はほぼ同等であった.(結論) 陰茎周増加値に弛緩時陰茎周を考慮することで, 陰茎硬度の推定がより正確となった. Erectometer による陰茎周増加値を用いた勃起能評価は性機能障害のスクリーニングとして有用と考えられた.
著者
西澤 秀治 鈴木 一実 刀川 信幸 貫井 昭徳 熊丸 貴俊 塩路 康信 三角 芳文 満 純孝 徳江 章彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.537-541, 2000-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
22
被引用文献数
1

(目的) Vanishing testis 症例を手術所見と組織学的所見で分析し, 診断と治療方針につき検討を行った.(対象と方法) 1974年から1999年3月までの間に経験した停留精巣症例は378例453精巣, そのうち非触知精巣は107例, 115精巣 (左67, 右32, 両側8) であった. 非触知精巣に対する手術は, 鼠径部で横切開し腹腔内まで検索した. 1993年以降腹腔鏡を施行した. 52例で精管, 精巣血管を認め vanishing testis と診断した. 精索または小塊は切除し組織学的に検討した.(結果) Vanishing testis 52例の患側は左41例右9例両側2例であった. 小塊は35例に認め, 小塊の長径は35例中24例で5mm以下であった. 小塊または精索の先端は, 52例中34例が鼠径管以下の鼠径部, 8例が陰嚢内に存在した. 小塊27例, 索状物の試験切除16例の43例において組織学的検討を行った. 精管を31例, 精巣上体を11例に認めた. 精巣組織は2例にみられ, ともに germ cell を伴わない精細管であった. 12例の vanishing testis の腹腔鏡所見では, 7例で健側に比較し低形成の精巣血管がみられた.(結論) 精巣組織を認めたものは vanishing testis の4.7%, 小塊の中では7.4%であり, 文献上は0~16%であった. 非触知精巣で触診や術前画像診断で鼠径部に精巣類似の腫瘤がなく, 腹腔鏡で vanishing testis に適合する所見がえられた場合, 鼠径管に精巣が存在する可能性は低い. Vanishing testis では germ cell を含むことは稀で, 悪性化予防は, 鼠径部での小塊切除の積極的な理由とはならないと考えられた.
著者
新美 三由紀 赤座 英之 武島 仁 樋之津 淳子 高橋 秀人 加納 克巳 大谷 幹伸 石川 悟 野口 良輔 小田 英世 大橋 靖雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.752-761, 1997-08-20
参考文献数
11
被引用文献数
2

(背景と目的) 癌告知の是非について様々な論議がなされているが, 現在でも, その原則は確立されてはいない. そこで今回は, 前立腺癌患者のQOLに対する癌告知の影響について検討した.<br>(対象と方法) 前立腺癌の外来通院患者を対象に, GHQとI-PSSを用いて, QOLの構成因子である身体・精神・社会的側面を測定し, GLMにより, [うつ状態] [不安と不眠] [社会的活動障害] のそれぞれに対する寄与要因を探索し, 告知の効果の影響を検討した.<br>(結果) 告知の有無で比較したとき, 全変数とも有意差は認められなかったが,「うつ状態」「I-PSS」「身体的症状」の3変数間の相関構造が, 告知あり群と告知なし群で大きく異なった. さらにGLMの結果,「うつ状態」に対して「身体的症状」「I-PSS」「臨床病期」が主効果として寄与し,「告知の効果」と「身体的症状」の交互作用が認められた.<br>(結論) 前立腺癌患者は, 身体状態が良いときは, 病名告知に関わらず精神的に安定しているが, 身体的な自覚症状が強くなると, 告知されていない群の方が抑うつ傾向を示す可能性が高い. 一方, 病名を告知された前立腺癌患者群では, この傾向は比較的弱いことが示唆された. これは病名を告知されている群は, 患者自身が自覚的な身体症状の変化を理解でき, そのために精神的安定が保たれているのではないかと推察される.
著者
木内 利郎 冨山 栄輔 岡田 紘一 向井 雅俊 中山 治郎 今津 哲央 三宅 修 清原 久和
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.12-17, 2015-01-20 (Released:2016-01-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

今回我々は前立腺全摘除術における切除断端陽性症例となる予測因子および,切除断端陽性症例においてPSA非再発生存率に寄与する因子について検討した.対象は2009年4月~2012年12月までに当科で前立腺全摘除術を施行した症例のうち,術後6カ月以上の経過観察が可能であった症例で,術前内分泌療法を施行した症例,pN1症例を除いた182例を対象とした.切除断端陽性を65例に認めた.切除断端陽性となる予測因子は多変量解析で,前立腺容積<40 cm3,生検陽性本数≧25%,BMI≧25.0であった.また切除断端陽性症例のうち,PSA nadir≧0.02 ng/mlまたはpT3の症例ではPSA非再発生存率が有意に低かった.
著者
塩野 裕 岸本 幸一 古田 希 三木 健太 波多野 孝史 五十嵐 宏 大石 幸彦 清田 浩
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.707-709, 2002-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1 2

症例は3歳, 男児. 生下時より左停留精巣を指摘されていたが, 精巣の下降を認めないため, 手術目的に当科を紹介受診された. 左停留精巣の診断で手術行ったところ, 左側に精巣を2個認め多精巣症と診断された. 術中の生検では悪性所見を認めなかったため, 重複精巣を陰嚢皮下に固定し, 手術を終了した. 多精巣症は自験例が本邦21例目であった.
著者
梅田 弘幸 嘉村 康邦 石橋 哲 山口 脩
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.441-444, 1998-03-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18
被引用文献数
3 2

多精巣症は極めて稀な奇形で現在まで約70例が報告されているのみである. 我々は4個の精巣を持つ多精巣症に合併した胎児性癌を経験したので報告する. 多精巣症に合併した悪性腫瘍は5例, また4個の精巣を持つ多精巣症は3例報告されているのみである. 停留精巣や精巣念転などの手術時や他疾患にて泌尿器科受診時に偶然発見されることが多いことを考えると, 泌尿器科受診の機会がなく, 生涯診断されない多精巣症が少なからず存在することが予想される. 多精巣症が高い悪性素因を有するかどうかは明かとなっていないが, 多精巣症は停留精巣を伴うことが多く, また, 停留精巣は精巣腫瘍の発症率が高いことを考えると, 多精巣症は余剰精巣の摘出または生検により, 厳重な経過観察が必要と思われる.
著者
東原 英二 奴田原 紀久雄
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1545-1560, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
148

常染色体優性遺伝嚢胞腎 (ADPKD) は進行性の腎機能低下が主要な病態であるが, その予後は従来いわれているように「診断後10年で腎不全に到る」ものでもなく, 腎不全が不可避でもない. 本邦での透析導入時平均年齢は52~56歳であるが, 透析に移行しない者も含めると, おおよそ平均73歳で終末期腎不全に到る. 60歳代で透析を受ける割合は約40%であり, 本邦のADPKDの予後は欧米よりも若干良好である可能性がある.ADPKDの遺伝子は第16染色体の短腕上のα-globin 遺伝子の近くに存在することが確かめられている. この遺伝子 (PKD1) によるADPKDと, PKD1の関与が証明定れないADPDKでは, 腎機能の予後が異なることが報告定れている.高血圧は約60%に認められる. 嚢胞の圧迫によって腎動脈が狭細化し, レニン―アンギオテンシン―アルドステロン系が刺激定れることが高血圧発症の端緒であり, 片側性腎血管性高血圧と異なり両腎が侵されているので, 圧Na利尿がおこらず, Naが体内に貯留し高血圧となると考えられている.肝嚢胞の合併頻度は57%で高齢になるに従い増大し, 肝嚢胞の有る者ほど腎機能は悪い. 肝嚢胞と膵嚢胞 (7%) の合併は有意に相関する. 経皮的嚢胞穿刺を行っても腎機能は改善せず, 出血や感染などの合併症もあるので激しい疼痛や管理の困難な感染の治療を目的とする以外は実施すべきではないと考えられる. その他ADPKDには, 腎結石 (10~18%), 大腸憩室 (80%), 頭蓋内動脈瘤 (8%), 心臓弁膜の閉鎖不全 (20~30%) などの合併症がある.
著者
横田 成司 伊藤 文夫 石川 哲生 山下 かおり 中澤 速和
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.616-619, 2013-07-20 (Released:2014-08-04)
参考文献数
6

症例は75歳,男性.局所浸潤性膀胱癌(cT2N0M0)に対して根治的膀胱全摘術及びStuder法による代用膀胱造設術を施行した.術後20日目に多量の水様性下痢症状を認め,膀胱造影にて代用膀胱直腸瘻と診断した.代用膀胱内にフォーリーカテーテルを留置し保存的に加療した.4カ月後の膀胱造影にて瘻孔の閉鎖を認めた.代用膀胱直腸瘻は稀有な合併症であり,我々が調べえた限り,これまでに文献的な報告はみられない.症例を提示するとともに,代用膀胱・膣瘻に関する文献を参考に,その成因,診断,治療について考察を加えた.
著者
青沼 佳代 矢内原 仁 上野 宗久 出口 修宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.745-751, 2007-09-20

(目的) PlasmaKinetic (PK) system<sup>®</sup> は生理食塩水で灌流を行う TUR system である. そのため術中に低ナトリウム血症を発症しないという従来の monopolar 電気メスでは解決できなかった大きな利点がある. PK system<sup>®</sup> を用いてTUR-Pを行った46例における1年間の臨床経過を報告する.<br>(対象と方法) 2004年6月22日から2005年11月17日までの間に PK system<sup>®</sup> を用いてTUR-Pを行った前立腺肥大症を有する46症例について安全性, 有用性を検討した. 麻酔は腰椎麻酔40例, 仙骨部硬膜外麻酔6例に施行した. 臨床成績として国際前立腺症状スコア (IPSS), QOLスコア, 最大尿流量率 (Qmax), 残尿量 (RUV) の各項目を評価し, 術前, 術後1ヵ月, 3ヵ月, 1年のデータを比較した. れ性機能につき国際勃起機能スコア (IIEF5) で術前と術後1年を比較した. また, PK system<sup>®</sup> の切除凝固能について従来の monopolar TUR と比較し, 組織学的検討を加えた.<br>(結果) すべての症例で術中低ナトリウム血症などの合併症を認めず安全に手術が施行でき, 術後経過においても良好な臨床経過を得られた. 手術時間は99.0±43.2分, 灌流液使用量は28.2±16.3L, 前立腺切除重量は35.3±19.4gであった. 尿道カテーテル抜去までの日数は1.7±1.0日, 術後入院日数は4.3±2.4日であった.<br>術前と術後1ヵ月, 3ヵ月及び1年の時点におけるIPSSは28.2±7.4から6.1±5.9, 2.7±3.5, 6.6±5.3, QOLスコアは5.4±1.0から0.9±1.2, 0.6±0.9, 1.3±1.1と有意に低下した. また最大尿流量率 (ml/s) は3.7±4.0ml/sから19.5±9.6, 17.9±7.3, 18.7±9.9ml/sと有意に増加した. 排尿後残尿量は104.8±83.6mlから19.4±25.0, 11.1±247, 17.9±28.5mlと有意に減少した.<br>性機能についてはIIEF5による術前, 術後1年の統計を調査し, それぞれ6.2±5.2, 6.0±5.3であった. 術後勃起障害を訴えたのは2例であった.<br>組織学的検討ではPK system<sup>®</sup> の切開面は出力を上げても切開面における炭化組織の付着は認められなかった.<br>(結論) PK system<sup>®</sup> は従来の monopolar TURに匹敵する切除, 凝固能を有しており安全にTUR-P行うことが可能であると考えられた. 一年間の経過観察において, 良好な結果を得られたことからも, 今後広く普及するものと考えられた.