著者
菅谷 公男 西島 さおり 嘉手川 豪心 安次富 勝博 野口 克彦 松本 成史 山本 秀幸
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.11-17, 2021

<p> (目的) 水素は体内の酸化防止に効果があるとされているが,体内では水素は腸内細菌叢によって産生され,呼気中に排泄される.そこで,呼気中水素濃度(以下,呼気水素)の日内変動と,飲食物や泌尿器疾患との関連を検討した.</p><p> (対象と方法) 健常ボランティア(男40例,女45例,30~83歳)と,60歳以上の前立腺肥大症40例と女性過活動膀胱30例を対象とした.3例のボランティアでは飲食物摂取前後の呼気水素を測定し,1例では呼気水素の日内変動を調べた.ボランティアと泌尿器科外来患者では呼気水素と年齢や泌尿器疾患との関連を調べた.呼気水素が高値の1例と低値の1例では10日以上同一時刻に呼気水素を測定して変動幅を調べた.</p><p> (結果) 水道水,水素水や食物でも,摂取後に呼気水素は一時的に上昇した.日常生活では呼気水素は排便後に低下し,食事摂取で上昇し,腸管ガスが溜まった鼓腸で上昇した.呼気水素の最も高い女性の値は11.2~188.6ppmであったが,最も低い女性では0.4~2.3ppmであった.ボランティアの女性では加齢に伴って呼気水素は有意に上昇した.60歳以上では健常ボランティアと,前立腺肥大症,過活動膀胱や便秘の患者の呼気水素に差はなかった.</p><p> (結論) 呼気水素は飲食や加齢に伴って上昇し,前立腺肥大症,過活動膀胱や便秘とは関連しなかった.呼気水素は個人差が大きく,腸内細菌叢の違いによる差と考えられた.</p>
著者
山本 圭介 松岡 庸洋 高尾 徹也 辻村 晃 奥山 明彦 久保 盾貴 細川 亙 角田 洋一 山口 誓司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.500-503, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
13

41歳, 男性.家族歴・往歴に特記すべきことなし.以前より陰茎腫大を自覚し, 排尿時痛も出現したため前医受診.陰茎の著明な腫大を認めた.MRIにて, 陰茎皮膚および皮下組織の著明な肥厚を認めた.自排尿困難のため, 尿道カテーテル留置の上, 当科紹介.病的な皮膚・皮下組織を切除し, 左大腿部より採取した分層皮弁を陰茎に巻きつけて植皮を行った.病理診断では悪性所見を認めず, 非特異的炎症性変化であった.植皮の生着は良好で, 痛みは減少し尿道カテーテル抜去後も排尿可能であった.術後6カ月現在, 明らかな再発を認めず, 排尿・性機能についても特に問題ない.象皮病はリンパ浮腫の終末像であり, フィラリア感染や外傷・治療・腫瘍・液状異物自己注入などが原因で生じる.自験例ではフィラリア感染は否定的であり, 特発性と考えられた.
著者
宍戸 俊英 榎本 香織 藤田 直之 鈴木 敦 林 建二郎 野村 昌史 板谷 直 多武保 光宏 渡辺 和吉 野田 治久 桶川 隆嗣 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.543-550, 2008-03-20
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

(目的) 前立腺肥大症患者に対して実施した, ホルミウムレーザー前立腺核出術 (HoLEP) と経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) による治療効果を比較検討した.<br>(対象と方法) 2004年4月から2006年3月までの間にTUR-Pを施行した患者41人 (平均年齢69.2±7.3歳) と, 2005年12月から2007年2月までの間にHoLEPを施行した患者46人 (平均年齢68.2歳±7.5歳) の計87人を対象とした.<br>(結果) 両群間に患者年齢, 術前のIPSS, QOL index, 残尿量, 最大尿流率, 平均尿流率, 推定前立腺容積に有意差はなかった. ヘモグロビンの低下はTUR-P群1.91±1.3, HoLEP群1.15±1.2 (P<0.05) とHoLEP群で有意に少なかった. 手術時間はTUR-P群で118.3±369分, HoLEP群161.9±65.0分とHoLEP群で有意に長かった (p<0.001). 切除重量はTUR-P群が29.3±13.3g (10~55), HoLEP群34.8±33.4g (5~148) で有意差はなかった (p=0.337). カテーテル留置期間 (115.2±27.5vs52.1±29.6時間p<0.001) および入院期間 (9.4±2.2vs6.6±2.3日p<0.001) はHoLEP群で有意に短かった. また, 術後3ヵ月目のIPSS, QOL index, 残尿量, 最大尿流率, 平均尿流率に有意差を認めなかった.<br>(結論) HoLEPはBPHによる下部尿路閉塞に対し, TUR-Pと同等の治療効果を認めた. またTUR-Pに比べ出血が少なく, カテーテル留置期間や入院期間も短かった. HoLEPはTUR-Pの代替治療になり得る有力な治療選択肢であると考えられた.
著者
大島 伸一 藤田 民夫 小野 佳成 加藤 範夫 松浦 浩 竹内 宣久 西山 直樹 水谷 一夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1673-1678, 1994
被引用文献数
2

多発性嚢胞腎疾患症例における腎機能廃絶後の透析期の腎盂腎炎および嚢胞感染, 嚢胞出血等の発生頻度とそれらの治療における腎摘出術の有効性を検討した. 対象は透析をうけている多発性嚢胞腎疾患症例41例で, 男性25例, 女性16例, 平均年齢は55歳, 平均経過観察期間69ヵ月である. 腎盂腎炎および嚢胞感染は13例 (32%) 21回が, 嚢胞出血は13例 (32%) 16回にみられた. ともに保存的治療に反応しない場合やくり返す場合には腎摘出術を行った. それぞれ両側腎摘出術を10例, 片腎摘出術を1例に, また, 両側腎摘出術を5例, 片側腎摘出術を2例に施行した. 手術死は1例にみられた. 不明1例を除く14例の術後平均観察期間70ヵ月であったが, 両側腎摘出術後の無腎状態から生ずる貧血は13例93%に, 低血圧は5例33%にみられた. 以上の結果より維持透析をうけている多発性嚢胞腎疾患では, (1) 腎盂腎炎および嚢胞感染, 嚢胞出血等の合併症が高頻度で生ずること, (2) これらの合併症が腎機能廃絶後では透析と相まって保存的治療では治療困難であること, (3) 貧血や低血圧に対する治療は必要となるものの両側腎摘出術は有効な治療法となりうることが示唆された.
著者
中田 誠司 増田 広 佐藤 仁 清水 信明 鈴木 和浩 今井 強一 山中 英壽 斉藤 浩樹 中村 敏之 加藤 宣雄 高橋 修 矢嶋 久徳 梅山 和一 篠崎 忠利 大竹 伸明 関原 哲夫 猿木 和久 鈴木 慶二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.1483-1487, 1995-09-20
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

(背景と目的) 同一家系内に発生した前立腺癌患者の臨床病理学的特徴について検討した.<br>(対象と方法) 親子または兄弟に発生した7組 (14例, 親子2組, 兄弟5組) の前立腺癌患者 (F群) と, 1987~1993年の間に群馬県およびその近郊の病院で, 未治療の状態で発見された前立腺癌患者1,741例 (G群) を比較検討した. 両群の平均年齢が異なるため, 生存率は相対生存率を求めた.<br>(結果) 診断時年齢は, F群が54~86歳まで分布し, 平均68.1±8.5 (S. D.)歳, G群が47~97歳まで分布し, 平均74.2±8.3歳で, F群で平均年齢が低い傾向であった. 臨床病期, 組織学的分化度は, F群で早期癌の占める割合が高く, 低分化癌の占める割合が低い傾向であった. 予後は, 3年および5年相対生存率はF群で82.4%, 57.6%, G群で84.3%, 73.9%で, 5年の時点ではF群の生存率が低い傾向であったが, 全体的には両群の間にほとんど差はみられなかった. F群では死因の明らかな6例のうち4例 (66.7%) が前立腺癌死であるのに対し, G群では死因の明かな398例のうち前立腺癌死は224例 (56.3%) であった.家系の病歴に関しては, F群で前立腺癌の2人を除いた他の癌患者がいたのは6家系中3家系であった.<br>(結論) 家族性前立腺癌は, 診断時年齢が若く, 早期癌が多く, 低分化癌が少ない傾向であった.
著者
太田 匡彦 大園 誠一郎 池田 朋博 中農 勇 平尾 佳彦 渡辺 秀次 高島 健次 平尾 和也
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.705-710, 2004-07-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

(背景) 最近, 健康ブームで, スポーツ人口が増加しているが, 一部に運動後血尿を認める場合があり, 運動性血尿として注目されている. そこで, 最も一般的な運動であるランニングと血尿の検討を夏季において行った.<br>(対象と方法) 泌尿器科的疾患のないヘルシーボランティア109名に運動前安静時尿採取後, 5kmランニングを行い, 運動後尿を採取した. 評価可能例は90名で運動前後尿につき, 検尿, 尿沈査, フローサイトメトリーにより赤血球数, 赤血球形態について比較した.<br>(結果) 運動後の尿中赤血球数増加例が83名であり, 運動後顕微鏡的血尿例 (赤血球数3個/hpf以上) は32名であった. そのうち赤血球形態学的検討で dysmorphic pattern が23名と最多であった.<br>(結論) ランニングにより血尿が誘起され, 糸球体性血尿が中心と考えられた.
著者
本城 久司 北小路 博司 川喜田 健司 斎藤 雅人 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱 荒巻 駿三
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.665-669, 1998-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

(目的) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなった尿失禁に対する鍼治療の有用性について検討した.(対象と方法) 尿失禁を有する慢性期脊髄損傷患者の男性8名に鍼治療を施行した. 年齢は20~33歳 (平均27歳) であった. 損傷レベルは頚髄損傷4例・胸髄損傷4例であった. 全例ともウロダイナミクス検査により無抑制収縮が証明され, 排尿筋過反射と診断された. 鍼治療はステンレスディスポーザブル鍼 (直径0.3mm, 長さ60mm) を左右の第3後仙骨孔部 (BL-33) に刺入し, 10分間の手による半回旋刺激とした. 鍼治療は週1回の間隔で4回施行した. 鍼治療の効果について, ウロダイナミクス検査を治療直前, 初回治療直後および4回治療終了1週後に行って評価し, 臨床症状の変化は治療前と4回治療終了1週後で評価した.(結果) 鍼治療による副用はみられなかった. 8例のうち尿失禁が消失したものは3例であり, 他の3例に改善がみられた. 平均膀胱容量は治療前42.3±37.9mlであったのが, 治療終了1週後148.1±101.2mlと有意 (p<0. 05) に増大したが, 平均最大膀胱内圧には有意な変化はみられなかった.(結論) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなう尿失禁に対して鍼治療は有用であった.
著者
宮内 武彦 丸岡 正幸 長山 忠雄 若月 進
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.1908-1911, 1990
被引用文献数
1

鎮痛剤〔フェナセチン誘導体〕の常用によると思われる尿管腫瘍の夫婦症例を経験した. 症例は66歳の妻と70歳の夫で, 2人とも頭痛持ちのため妻は45歳頃, 夫は55歳頃よりノーシンを1~2包/日随時服用した. 推定総摂取量は4kgと2.5kgであった.<br>妻は1985年1月2日血尿で来院, 左尿管腫瘍の診断で2月13日左腎尿管摘出膀胱部分切除術施行, 6月11日膀胱内に腫瘍再発, 7月26日膀胱全摘尿管皮膚移植術施行. 1988年12月28日癌死した.<br>夫は1987年3月頃血尿, 8月4日来院, 左尿管腫瘍の診断で8月26日左腎尿管摘出術施行, 11月19日膀胱内に腫瘍再発, 経尿道的手術を施行したが, 再発のため1988年4月22日膀胱尿道全摘右尿管皮膚移植術施行, 7月腹腔内, 腹壁に転移が発生し, 10月15日癌死した.
著者
鈴木 孝憲 黒川 公平 岡部 和彦 伊藤 一人 羽鳥 基明 今井 強一 山中 英寿
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1742-1747, 1991
被引用文献数
2

雄雑種犬の骨盤内血管, 特に前立腺血管と椎骨静脈系との関係を, レントゲン撮影にて観察した.<br>腹大動脈は第6腰椎の高さで外腸骨動脈を左右に分岐し, 第7腰椎の高さで内腸骨動脈を左右に, また正中の位置で正中仙骨動脈を分岐していた. 仙腸関節の中央部で内腸骨動脈より分岐した尿生殖動脈は, 頭側に後膀胱動脈を, 尾側に前立腺動脈を分岐していた. 前立腺動脈は前立腺被膜部で分岐し, 尿道の中心部に向かうように実質内に入り, 網状に分岐分布していた.<br>前立腺静脈は実質内では網状に分布し, 動脈と並走し, 被膜部で合流し, 後膀胱静脈と吻合後尿生殖静脈へ流入していた. 尿生殖静脈は内腸骨動脈へ流入し, 外腸骨静脈と合流後, 総腸骨静脈, 後大静脈へと流入していた.<br>骨盤内静脈と椎骨静脈系との吻合は椎間静脈により行われていた. 椎骨静脈系との交通は, 後大静脈, 総腸骨静脈, 内腸骨静脈および内陰部静脈に観察された.