著者
國谷 貴司 須部 明香 金村 典哉 渡辺 直之
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.137-141, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
27

後肢の不全麻痺を呈し,CT検査において大動脈血栓塞栓症(ATE)と診断した犬4例の臨床症状と臨床病理学的所見の特徴について検討した.初診時に跛行を呈した11~14(13.0±1.4)歳齢の高齢犬が,14~30(18.0±8.0)日の慢性経過で不全麻痺あるいは全麻痺への臨床症状の悪化を認めた.血液検査ではD-ダイマーの上昇(4例),AST,CK及びALTの上昇(3例),血小板減少(3例)を認めた.慢性進行性の跛行を呈する高齢犬において,D-ダイマーの高値がATEと関連性が高いことが示唆された.D-ダイマーと他の臨床検査の組み合わせにより犬のATEの診断に有用であることが示された.
著者
小澤 真希子 岸野 友祐 津山 悠 川畑 健 牛草 貴博
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.e199-e204, 2022 (Released:2022-11-30)
参考文献数
13

夜間行動を主訴として行動診療科に来院した高齢犬24頭を対象とし,後ろ向き調査を実施した.夜間行動の要因疾患は認知機能不全症候群(CDS),皮膚疾患,腫瘍性疾患,クッシング症候群/下垂体腫瘤が多かった.対象症例の約5割でCDSが夜間行動の要因疾患として診断されたが,身体疾患は8割以上で診断され,身体疾患の診断率がCDSの診断率を上回った.夜間行動として運動と発声をともに示した犬ではCDS保有率が約9割であったが,運動のみあるいは発声のみ示した犬では4割以下であった.追跡調査の結果,夜間行動は約6割の犬で死亡時まで継続したが,要因疾患の治療で完治に至った犬も約2割認められた.本研究の結果から,高齢犬の夜間行動は身体疾患の関連するものが多く転帰は保有疾患ごとに異なるため,鑑別診断がきわめて重要であることが示唆された.
著者
佐々木 慎哉 保田 恭志 柴田 真治 高島 諭 西飯 直仁 高須 正規 大場 恵典 北川 均
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.625-629, 2010-08-20 (Released:2016-09-07)
参考文献数
20

自然発症した僧帽弁閉鎖不全の犬54例において,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)とスピロノラクトンの長期併用時における血漿カリウム濃度を検討した. 3~95カ月の試験期間中に,スピロノラクトン非併用群とスピロノラクトン併用群ともに臨床症状が徐々に進行し,心臓陰影サイズは49週以降にわずかに拡大する傾向にあった. 投与期間中に,スピロノラクトン非併用群,併用群とも明瞭な持続性の高カリウム血症は認められなかった. 僧帽弁閉鎖不全の犬では,血漿電解質等のモニターは必要であるが,ACEI とスピロノラクトンの併用を考慮してもよいと考えられた.

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出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.184-186, 1956-04-20 (Released:2011-06-17)
著者
前田 昌也 佐藤 文夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.297-302, 2017-05-20 (Released:2017-06-20)
参考文献数
12

軽種馬の育成調教や競走成績に影響を及ぼす発育期整形外科的疾患(DOD)を回顧的に明らかにすることを目的に,国内の軽種馬生産牧場に対して,育成期全般に罹患したDODを含むすべての疾病について聞き取り調査を実施した.その結果,DODとして,腰痿,近位部関節の離断性骨軟骨症,骨端炎,肢軸異常,屈曲異常及び軟骨下骨囊胞があげられた.競走馬登録された個体の中で,種子骨炎,腱炎,外科手術を要する疝痛を罹患した個体は,病歴があげられなかった個体と比較して,初出走の時期が有意に遅延していた.一方で,購入前検査で発生率が高い遠位部関節の骨病変については競走への影響を訴える回答は得られず,深刻な症状を呈していない例が多いと考えられた.
著者
高瀬 公三 西川 比呂志 山田 進二
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.717-720, 1983-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11

脳病変をともなう鶏ひなから分離したPseudomonas aeruginosaに対するひなの感受性を検討し, 以下の成績を得た.ひなの感受性は脳内接種で最も高く, 102個で100%死亡した. 皮下および腹腔内接種ではやや低下し, 経口接種では最も低く, 108個で20%が死亡した. これらはすべて接種後5日以内に死亡した.各種日齢のひなに108個を皮下接種した結果, 1および7日齢ひなで100%, 14日齢ひなで50%, 24日齢ひなで10%の死亡率を示し, 若い日齢でより高い感受性を示した.皮下接種によるひなの50%致死量は104.6個であるのに比し, マウスでは107.5個で, 明らかにひなの感受性が高かった.皮下接種した4例のひなに, 野外例と同様な脳病変を再現できた.
著者
徳富 剛二郎
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.563-567, 1965-09-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22
著者
米山 州二 齊藤 かおり 小笠原 悠 陸 拾七 間 陽子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.e114-e121, 2022 (Released:2022-06-15)
参考文献数
17

牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)の高度感染酪農場で清浄化を達成した.まず,感染牛の血中プロウイルス量(PVL)及びBoLA-DRB3アリルから各感染個体のBLVの伝播源としてのリスクを推定し,感染高リスク牛を優先的に淘汰した.また,子宮内感染を避けるため,原則,後継牛は非感染牛に雌の性選別精液を人工授精して得た.続いて農場内放牧を中止し,牛舎内の感染牛の飼養区域を完全分離し,境界に抵抗性アリルを有する感染牛を配置した.感染母牛から生まれた子牛11頭中,5頭が感染牛で,高PVLの母牛でより高頻度だった.搾乳牛の82.8%が感染していた2015年10月から対策を開始し,2020年5月に清浄化を確認した.高度感染農場でも子宮内感染に注意し,高PVL牛の優先的淘汰と感染牛の分離飼育をあわせることで清浄化は可能である.
著者
亀谷 勉
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.467-477, 1988-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
228
著者
内田 明彦 川上 泰 村田 義彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.525-527, 1998-09-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

1995-1996年に相模湾および駿河湾で獲られた5, 555匹 (18種) の魚類についてアニサキス幼虫の感染状況を調べたところ, 相模湾産のカタクチイワシ6.1%, マサバ33.7%, マルアジ2.0%, ヒラソウダ23.1%および駿河湾産のマサバ21.0%, カタクチイワシ3.5%, マイワシ0.5%, シイラ33.3%から幼虫が検出された. 感染虫は大部分がAuisakis I型 (Anisakis simplex) で, Anisakis IIおよびIV型, ContracaecumBおよびD型, 旋尾線虫の幼虫も検出された.
著者
西川 晃豊 田口 清 樋口 豪紀 佐野 公洋 永幡 肇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.35-39, 2006-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15

強電解酸性水 (電解水) に硫酸銅を溶解させた電解水硫酸銅液に6%まで有機物を混入させ, 大腸菌 (Escherichia coli ATCC 11775株) に対する殺菌効果を評価した.電解水硫酸銅液は有機物混入下で硫酸銅濃度2.5×10-2%まで大腸菌の発育を阻止し, 水道水や蒸留水を溶媒とした硫酸銅液より殺菌効果が高かった.次に趾皮膚炎 (DD) が蔓延していたフリーストール農場 (搾乳牛約130頭) において電解水のすすぎ槽と電解水2.5%硫酸銅液の薬液槽を用いた通過型蹄浴のDDによる跛行制御効果を検討した.全頭の通過により薬浴槽のpHは3.1から4.5に, CODは230から3, 890ppmに上昇した.この蹄浴による5カ月間の跛行を呈するDDの摘発率は毎月1.5~3.9%で, 過去4カ月間に実施した水道水5%硫酸銅液による蹄浴と差がなく, 硫酸銅使用量を従来よりも半減できることが示唆された.
著者
深瀬 徹 板垣 博
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.783-787, 1988-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
24

カルバメート系の殺虫薬であるプロポクスル (propoxur) の1%(w/w) 散剤について, 犬へ強制経取投与した場合の安全性を検討した. 供試犬16頭を1群4頭の4群にわけ, それぞれ, 無投薬対照群, プロポクスル5mg/kg投与群, 10mg/kg投与群, 20mg/kg投与群とし, 薬剤投与1週間前から投与後3週間にわたって, 各犬の一般臨床所見の観察と種々の血液学的, 血液化学的検査を実施した. その結果, プロボクスルの投与に起因すると思われる所見として, 赤血球数, 白血球数, 血小板数の減少と, ヘマトクリット値の低下, および血清α-アミラーゼ活性の上昇と, 血清コリンエステラーゼ活性の低下が認められたが, これらの変化は一過性のものであり, 投薬後1週間以内にすべて投薬前のレベルに回復した. このことから, プロポクスルの1%散剤は, 通常行われる20mg/kg程度の用量での散布では, 散布後に犬が経口的に薬剤を摂取したとしても, 重篤な副作用を発現することはないと考えられた
著者
大津 奈央 倉持 好 佐々木 淳 落合 謙爾 御領 政信
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.357-362, 2017-06-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
15

ブロイラーの浅胸筋変性症の発生要因及び病変形成プロセス解明のため,浅胸筋に肉眼的異常のある32日齢及び48〜50日齢のブロイラーの浅胸筋と深胸筋を病理学的に検索した.肉眼的に32日齢では浅胸筋は軽度の退色,筋線維の走行に一致する白色線条病変が観察され,組織学的には散在性の筋線維の硝子様変性,絮状変性,大小不同,マクロファージによる筋貪食像が認められた.48〜50日齢では,32日齢の病変より重度かつ広範で,肉眼的に浅胸筋の扁平化や,退色,水腫,白色線条病変が認められ,組織学的には筋線維の再生性変化や線維芽細胞の増殖を伴う膠原線維の増生が顕著であった.重症例では筋膜が肥厚し,膠原線維の増生及び血管新生が認められた.深胸筋ではどの日齢でも筋線維の硝子様変性がわずかに認められるのみであった.全症例で浅胸筋浅層の病変が最も重度で深部になるほど軽度であり,局所的な循環障害に起因することが示唆された.
著者
石川 義久 鮫島 都郷 野村 吉利 本橋 常正 織間 博正 田坂 邦安
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.715-720, 1989-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
18
被引用文献数
6 6

HmLu細胞培養に順化した狂犬病ウイルスRC・HL株の抗原性および注射法を検討した. 交差中和試験において, 抗RC・HL株, 抗CVS株および抗HF-TC株血清は, それぞれ対応ウイルス株を最高の抗体価で中和した. 他方, 抗RC・HL株血清はHF5TC株よりCVS株を高い抗体価で中和した. 試作ワクチン注射犬の感染防御試験によって測定された最小有効抗体価は, RC・HL株による測定で11.3倍, HF-TC株による測定で約4倍であった. モルモットに対する最小有効抗体価はイヌのそれよりやや高く測定された. この傾向はモルモットにおける受身免疫試験でも認あられた. 試作ワクチンをイヌあるいはネコに対して0.5ml, 1.0mlおよび2.0ml皮下注射した場合, ならびに原液, 2倍, 4倍および8倍希釈ワクチン1.0mlを皮下注射した場合, それぞれ注射後2週および4週の抗体価に有意差は認められなかった. 試作ワクチン1.0mlを1回皮下注射されたイヌのHF-TC株により測定された抗体価は, 1ヵ月後29.3倍, 12カ月後5.4倍であった. 1ヵ月, 6ヵ月および12カ月間隔で2回注射されたイヌのHF-TC株による測定の2回注射後の最高中和抗体価は, それぞれ313.3倍, 368.1倍および340.3倍であった. 24ヵ月間隔で2回注射後の中和抗体価は1回注射後のそれと同程度であった. これら血清の抗体価をRC・HL株で測定した場合には, HF-TC株によって得られた値より2.2~11.4倍高かった. RC・HL株不活化ワクチンは, 1.0ml注射により12カ月間免疫を持続し, 再注射によりさらに高い抗体応答を引き起こすことが示された.