著者
菅野 紘行 黒田 正明 金子 純一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.639-643, 1984-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11

犬・猫の皮膚の縫合法のうち, 抜糸をする必要のない方法について, 避妊手術に用いることを目的として検討した.その結果, 従来より行われている埋没縫合法は, 術創で糸を結紮し切るため, 創の両側の創縁の接合が悪いと, 糸が創外へ出る欠点を経験した.そこで, 糸を術創で切らず, 創口より皮下へ入れてしまう方法を試みたところ, よい結果が得られ, とくに猫においてもっとも優れていた.
著者
三好 正一 田口 清 青木 創 虻川 孝秀 岡田 洋之 吉野 知男
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.575-578, 2004-09-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15

4歳のホルスタイン種乳牛において分娩後, 食欲の低下とタール便の排泄を認めた. 被毛は粗剛となり脱毛し, 末梢部 (耳介, 尾端) の壊死, 両前膝表皮の脱落および左後肢の壊疽が認められた. 患畜が乾乳中に敷き料として用いられたライ小麦麦秤が赤カビに汚染され, 高濃度のマイコトキシン (デオキシニバレノール) が検出されたこと, また, 患畜がその敷き料を採食していたことから, 発症原因としてマイコトキシン中毒の関与が疑われた.
著者
網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.666-668, 1987

上顎のくちばしを根元から喪失したセキセイインコに, 人工くちばしを応用し, 好結果を得た. 患鳥は元気食欲がなく, 補助給餌や強制給餌を行ったが6日経ってもまったく自分で採食できなかった. そこで, アクリル板で人工くちばしを作製し装着したところ, その直後から少しずつ採食できるようになった. しかし, 13日目でそのくちばしは脱落し再び採食ができなくなり, 2回目の人工くちばし (歯科用レジン歯で作製) を装着した. 2回目の人工くちばしはその後7日で脱落したが, その時には上顎のくちばしがわずかに伸長して少し採食できるようになっていたので, その後は補助給餌を行っただけで順調な回復がみられた. 人工くちばしの装着は, くちばしを喪失したセキセイインコに対して有効な治療法の一つであると思われるので, その概要を報告する.
著者
吉野 信秀 池田 健一郎
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.259-263, 2020-06-20 (Released:2020-07-20)
参考文献数
10

水晶体亜脱臼を伴う犬の続発性緑内障眼に対して,網膜凝固用のグリーンレーザーを用いて,前眼房を通して虹彩と脱臼した水晶体の間隙から毛様体を目視しながらレーザー毛様体凝固を実施した.レーザー照射前の3カ月間は眼圧は30~38mmHgを推移した.照射後の3カ月間は15~21mmHgを推移し,その後ふたたび眼圧上昇を認めた.レーザー照射後には明らかなぶどう膜炎の症状は認めなかった.本手技は水晶体と虹彩との間隙から毛様体を観察できる特殊な症例に限定されるが,経強膜毛様体光凝固術(TSCP)ほど周辺組織に損傷を与えずに,また内視鏡下レーザー毛様体凝固術(ECP)のように眼内操作を必要とせずに,毛様体凝固と眼圧降下が可能であることを確認した.
著者
萩尾 光美 久保田 学 中嶋 達彦 西谷 公志 山谷 順明 幡谷 正明 吉村 隆美
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.548-552, 1979-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

A Japanese Black calf six and a half months old showed signs of anorexia and constipation for eight days. It failed to respond to any medical treatment during this period. The right sublumbar fossa was mildly distended. A resonant ping was audible by simultaneous auscultation and percussion over the whole right flank on the sixth day of illness.A tentative diagnosis of cecal volvulus was made. laparotomy was performed through the right flank under local anesthesia. Manual examination of the abdominal cavity detected the distended and displaced cecum filled with a large amount of gas and gastric juice, and adhesions of the omentum to the intestinal wall around the ileocecocolic junction.As the site of adhesion was thickened with proliferated connective tissue and the intestinal lumen narrowed at this site, the cecum and a proximal part of the colon were resected and then end-to-end anastomosis was made between the ileum and the colon.Postoperative recovery was uneventful with defecation on the day after operation and the appetite resumed gradually. During the postoperative period of four and a half months, the serum magnesium level was high temporarily and returned later to a normal one.
著者
藤島 誠 田辺 茂之 宇塚 雄次 更科 孝夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.349-352, 2001-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

子牛の哺乳期における第四胃鼓脹症発症時の酸塩基平衡の異常を明らかにするため, 本症発病子牛8例中6例のメトクロプラミドによる治療前と治療後7日目の血液性状を6例の健康子牛と比較・検討した。本症の血液ガス評価により, 幽門の閉塞により胃液が第四胃に捕捉される結果, 代償性低クロール血症と低カリウム血症性代謝性アルカローシスが起きたと考えられる.
著者
今井 邦俊 松田 祥子 小川 晴子 内海 洋
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.103-106, 2019-02-20 (Released:2019-03-20)
参考文献数
11

酸性次亜塩素酸水は,医療や食品分野で手指,器具,食材などの洗浄・殺菌目的,農業分野では特定農薬として使用されている.本研究では,次亜塩素酸水のPEDVに対する消毒効果を調べた.PEDVと酸性(pH3.0〜3.1)またはアルカリ性(pH11.7〜11.9)次亜塩素酸水を1:9の割合で混和し,1分間処理したところ99.9%以上のウイルス不活化率がみられた.特に,酸性次亜塩素酸水は5%豚糞便存在下でも1分間処理で99.9%以上の不活化率を示した.一方,pH2.7の細胞培養液はPEDVを不活化しなかったことから,酸性次亜塩素酸水の効果は溶液の酸性度に依存しないと判断された.次亜塩素酸水は安全性が高く環境負荷も少ないことから,既存の消毒薬に代わり畜産現場の衛生対策に広く使用されることが期待される.
著者
Duangtathip Karn Nguyen Thi Thu Huong 井口 純 三澤 尚明 谷口 喬子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.191-194, 2020-04-20 (Released:2020-05-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Escherichia albertii は新しく認定された腸管病原性細菌で,わが国でも集団食中毒事例が報告されている.本菌は特徴的な生化学性状に乏しく,腸管病原性大腸菌(EPEC)や腸管出血性大腸菌(EHEC)との鑑別が難しい.われわれは,健康な飼育犬の糞便から,E. albertii を分離・同定した.本分離株は,病原性関連遺伝子(eae )及び細胞膨張化致死毒素(cdt )を保有していたが,志賀毒素遺伝子(stx2f )は保有していなかった.また,既報と同様,ペニシリン,アンピシリン及びエリスロマイシンに耐性を示した.飼育犬からE. albertii が分離されたことより,犬が人への感染源となり得る可能性が示唆された.
著者
岡田 啓司 深谷 敦子 志賀 瀧郎 平田 統一 竹内 啓 内藤 善久
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.311-315, 2003-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

黒毛和種母牛5頭を分娩後低でんぷん飼料で飼養し, その後にデントコーンサイレージ3kg/日を追加給与した結果, 全頭の子牛は給与開始後1~3日に軽度の糞便性状の変化 (前駆症状) を示し, 5~7日に水様性白痢を発症した. この時, 母乳の乳脂肪率は前駆症状発現当日および白痢発症当日の朝に増加した. 母乳のpHは白痢発症前日に大きく変動した. 乳脂肪中パルミチン酸とステアリン酸は前駆症状発現前日から増加した. 子牛の血中トリグリセライドと遊離脂肪酸濃度は前駆症状発現当日に低下したが, 白痢発症前日には元の値に復した. このように母牛の飼料の変更は母乳成分を変化させ, それにより子牛の消化管での脂肪の吸収低下が引き起こされて白痢の発症した可能性が示唆された.
著者
中出 哲也 小谷 忠生 安藤 由章 沼田 芳明 内田 佳子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.305-311, 1992-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
10

X線検査で蹄葉炎と診断した3頭の蹄葉炎馬の罹患蹄である右前肢3蹄, 非罹患蹄と診断した右後肢3蹄と他の3頭の馬の非罹患蹄と診断した左前後肢6蹄, 計12蹄について走査電顕および光学顕微鏡で観察した.正常蹄の所見では蹄壁移行部, 蹄壁中央部および蹄尖部では1次表皮葉および2次表皮葉はその形態, 配列性および嵌合性が規則的であった.異常蹄の所見では蹄壁移行部において表皮葉と真皮葉との嵌合の不正が認められた.蹄壁中央部および蹄尖部では両葉の嵌合の不正と角質内層の肥厚が観察され, さらに表皮葉の長さと太さの不整および屈曲蛇行がみられた.2次表皮葉は不明瞭で, 蹄芽原線維の形成不全ないしは無形成が認められた.光顕による観察では真皮葉内の静脈の拡張および小ないし最小動脈壁の水腫性膨化, 有棘層の増殖肥厚と水腫および有棘層細胞中にケラトヒアリン顆粒の存在がみられた.
著者
源 宣之 湯城 正恵 杉山 誠 金城 俊夫 高田 純一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.497-501, 1988-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

DNAおよびRNA型動物ウィルスに対するグルタールアルデヒド (GA) の不活化効果を塩素剤およびヨウ素剤での成績と比較検討した. GAのロタウイルスに対する不活化効果は感作温度の上昇によって強まったが, 22℃と37℃との間では大きな差を認めなかった. また, その効果は蛋白質の存在によって強い影響を受けなかった. GAは用いたすべてのウィルスに対して塩素剤やヨウ素剤と同等またはそれ以上の効果を示し, なかでもロタウイルスを他の2剤より速やかに不活化した. また, 希釈したGAの不活化能は室温解放放置しても75日間にわたり維持された.
著者
松田 紫恵 大屋 賢司 柳井 徳磨 柵木 利昭 福士 秀人
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.143-147, 2009-02-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

臨床症状よりオカメインコの開口不全症候群と診断された1~2カ月齢のオカメインコの死亡例5例,口腔スワブ4検体を微生物学的,病理学的に検索した. 複数種の細菌が分離され,最も高率にBordetella avium (5/9例)が分離された. 分離されたB.aviumの全菌株は,Bordetella属菌が産生し病原性発現に関与する皮膚壊死毒素遺伝子を保有していた. 組織学的検索では,咬筋をはじめとする嘴の開閉運動筋の筋線維は変性・壊死,消失,筋線維間には炎症細胞が浸潤,細菌塊が認められた. 病変の進行した領域では線維芽細胞の増殖が著しく,高度に器質化していた. 分離B. aviumの薬剤感受性試験を実施した結果,β-ラクタム系,アミノグリコシド系およびテトラサイクリン系薬剤に高い感受性を示した.
著者
白井 淳資 松村 栄治 萩原 信子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.233-239, 2008-03-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1

超微細高密度オゾン水を用いて, エンベロープを有する4種類のウイルスおよび口蹄疫ウイルス (FMDV) と豚水胞病ウイルス (SVDV) に対する殺ウイルス効果を調べた. 本オゾン水は完全な効果を示すために最低100ml (4mg/l) を要したが, 混合直後に殺ウイルス効果を示した. エンベロープを有するウイルスおよびFMDVに対しては1mg/lのオゾン濃度で効果を示したが, SVDVに対しては3mg/lを要し, 有機物を混入した材料ではさらに1mg/l高い濃度4mg/lが必要であった. 生成後室温に開栓状態で放置したオゾン水はエンベロープを有するウイルスおよびFMDVに対し生成60分後でも効果を示したが, SVDVには効果が減弱した. このように本オゾン水は低濃度で即効性があるので, ウイルスの消毒に有効に利用できると思われる.
著者
小嶋 大亮 小嶋 恭子 太田 和美 小嶋 佳彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.107-110, 2020-02-20 (Released:2020-03-20)
参考文献数
13

2歳齢,去勢済雄猫が,約2カ月続く頭部の脱毛と搔痒を主訴に受診した.初診時の肉眼観察において,頭頂部に厚い赤色の痂皮を伴う潰瘍性病変と,鱗屑及び毛包円柱を伴う脱毛性病変が混在性に認められた.病理検査において潰瘍性病変では表皮直下より皮下組織にかけて,おもに好酸球とマクロファージが浸潤していた.炎症巣内には,flame figureと呼ばれる好酸球浸潤を伴った膠原線維融解の所見が認められた.脱毛性病変では,軽度の表皮肥厚と正常角化性角化亢進を認め,皮脂腺周囲にはCD3陽性のT細胞とマクロファージが浸潤していた.以上から,本症例の皮膚病変を好酸球性皮膚炎及び皮脂腺炎と診断した.
著者
辻 誠 上本 康喜 河﨑 哲也 石塚 泰雄 井澤 武史
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.523-528, 2017-08-20 (Released:2017-09-20)
参考文献数
18

5歳齢,避妊雌のアビシニアンが間欠的な嘔吐を示して来院した.上部消化管内視鏡検査を実施したところ,幽門洞に表面の滑沢な隆起病変が認められた.内視鏡生検を行い,リンパ球クローン性解析は陰性であったが,細胞診と病理組織検査の結果,胃のヘリコバクター感染と胃小細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.抗がん剤は用いず,ヘリコバクター除菌療法によって30日間の治療を行った結果,症状は消失しリンパ腫は完全寛解に至った.1年後の病理学的検査において,ヘリコバクターの軽度の持続感染がみられたものの,胃粘膜のリンパ腫の再発は認められなかった.