著者
五十嵐 健二 矢冨 謙治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.597-599, 1992-08-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

1989年6月~8月, 兵庫県東播磨地域の児童公園の砂場168カ所における犬と猫の回虫卵の汚染状況を調査した. 37カ所 (22.0%) の公園から犬と猫の回虫卵が検出され, そのうち人に感染力のある幼虫包蔵卵は12カ所 (7.1%) で認められた. 地域別にみると, 田園地域の公園は8.3%(6/72) と低率であったが, 市街地の公園は32.3%(31/96) と高率であった. 糞便の認められた砂場は47.1%(16/64) とさらに高率に汚染されていた.
著者
樋笠 正晃 宇野 理恵 宇野 雄博 山田 茂夫 安澤 数史
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.649-653, 2018

<p>慢性鼻炎として長期治療していた猫が,進行性の瞬膜及び眼球突出を呈し,鼻腔や眼窩を中心として,壊死組織を伴う炎症性肉芽の浸潤性増殖を認めた.病理組織学的検査により真菌感染が原因と診断され,抗真菌剤などによる内科治療や,壊死組織及び肉芽組織のデブリードマン等の外科治療を実施した.しかし,真菌感染は浸潤性に進行し,死亡した.本症例の起因菌の培養形態と高温発育試験及びβチューブリンとカルモジュリン遺伝子の塩基配列は近年分類された<i>Aspergillus felis</i> と一致していた.また,分離株は多くの抗真菌薬に対して高い最少発育阻止濃度を示し,感受性が低いことが示唆された.</p>
著者
丸山 成和 丸山 典彦 伊藤 宏 田中 良和 植松 典昭
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.330-333, 1983-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

牛以外の動物, とくに人と豚のアカバネウィルスに対する抗体の保有状況を知る目的で, 両者の血清について, 赤血球凝集抑制 (HI) 反応, 中和 (NT) 試験による調査を実施した. なおHI価10以上, NT価4以上を反応陽性とした.調査期間は人では1977年6月~1979年4月, 豚では1978年9月~1979年2月であった. 調査地域は人では県内8市5町, 豚では9市4町であった. その結果以下の成績を得た.1) 人血清1, 348例のうち1.3%(17/1, 348) がHI陽性であった. これらの陽性例は県東部の隣接田園地区に集中してみられた. 陽性例のHI価は10~40, NT価は4~32であった. なお豚のHI陽性率の高い地域の養豚従事者19人では1例が陽性 (陽性率5.3%) で, そのHI価およびNT価はそれぞれ10および8であった.2) 豚血清1, 134例 (4~5ヵ月齢の肥育豚654頭, 繁殖豚480頭) についてHI価を測定したところ, 1.4%(16/1, 134) の陽性率であった. このうち肥育豚は0.8%(5/654), 繁殖豚は2.3%(11/480) の陽性率であった.陽性例のHI価は10~20, NT価は4~64であった.豚および人は, Vectorの動物嗜好性によることも考えられるが, 牛にくらべて本ウイルスの感染をうけにくいものと推測される.
著者
中井 正博 河村 正 松岡 信男 片江 宏巳 大石 勇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.360-366, 1990-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
31

犬糸状虫症の予防に用いるIvermectin (IVM) の投与量6~9μg/kgの約2倍量を, ラフ・コリーに投与した場合の影響およびIVMの中枢神経組織への移行について検討した.試験犬は2ヵ月齢の幼犬である.ラフ・コリー4頭と雑種4頭にIVM20μg/kgを, 対照群4頭 (ラフ・コリー2, 雑種2) にplacebo (賦形剤) をいずれも1回経口投与した.投薬後24時間臨床所見を観察したが中枢神経症状を含あ, 異常所見は認あられなかった.また, 心電図, 血液・血漿生化学的検査値および24時間後の剖検による病理学的検査所見にも, IVM投与に関係すると考えられる異常は認められなかった.IVM投与後6, 24時間の血漿中IVM濃度は, コリー群と雑種群間に有意差はなく, 吸収・排泄に差は認められなかった.IVM投与後24時間の中枢神経組織中IVM濃度は, コリー3頭, 雑種4頭では検出限界以下であったが, コリー1頭では, 小脳で同時点における血漿中濃度の約1/3, 脳幹と脊髄では血漿中濃度に近い濃度が検出された.この成績から, ラフ・コリーのなかにはIVMが中枢神経組織に入り得る個体のあることが明らかにされた.
著者
石田 葵一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.603-609,618, 1966-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
95

1 0 0 0 OA 凍結精液

著者
永瀬 弘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.199-203, 1962-05-20 (Released:2011-06-17)
著者
佐藤 健太郎 小泉 源也
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.370-374, 2017-06-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
15

24カ月齢の黒毛和種肥育雌牛が慢性的な下痢を呈し,充実性組織塊が混在する水様性下痢,血液検査で栄養状態の低下と好酸球増多症を認めた.糞便より有意菌や寄生虫卵等は不検出であった.組織塊の細胞診で好酸球性炎による腸粘膜が剝離したものと推定し,好酸球性腸炎と診断した.また,当該牛は慢性的に高GGT血症を示し,16病日と47病日に下痢が再発した.粗飼料中のマイコトキシン検査では残飼稲ワラにおいて総アフラトキシンとして60病日に0.152mg/kg,120病日に0.300mg/kgが検出され,アフラトキシン中毒が示唆されたが,副腎皮質ホルモンを中心とした治療やマイコトキシン吸着剤の飼料添加後,栄養状態の改善が認められ,50病日以降の下痢の再発や好酸球数の増加は認められなかった.以上より,本例はアフラトキシン中毒を併発した好酸球性腸炎と考えられた.
著者
川口 博明 笹竹 洋 野口 倫子 秋岡 幸兵 三浦 直樹 武石 嘉一朗 堀内 正久 谷本 昭英
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.143-146, 2016-03-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,動物の乗り物による移動の機会が増えている.動物福祉の観点から,輸送ストレスを軽減する対策が必要になってきている.今回,輸送ストレスによる乗り物酔い症状(嘔吐,流涎,元気消失)を示す11頭の犬に対して,より副作用の少ない輸送ストレス軽減のための新規鍼治療を試みた.この鍼治療は円皮鍼という貼り付けるタイプの鍼を経穴「耳尖(じせん)」に装着する簡便な方法であり,全例の嘔吐,流涎,元気消失を抑制した.今後,獣医診療に鍼治療が利用されていくことが期待される.
著者
早崎 峯夫 大石 勇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.455-458, 1987-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8

秋田犬 (雄, 3才, 体重18kg) に全身性強皮症に類似した皮膚変化がみられた.特徴的異状所見は, 仮面様顔貌, まばたきおよび開口の困難, 木馬様歩行であった.開口の程度は, 口吻先端で約5cmで, 舌の運動も障害されていた.しかし, 食欲, 元気は正常であり, 採食も時間をかけて必要量を採ることができた.被毛, 皮膚表面, 眼, 粘膜, 筋肉, 関節, 骨, 耳および性格に異常を認めなかった.皮膚の生検にて, 膠原線維の著明な膨化増生や, 汗腺, 皮脂腺の萎縮が認められた. 臨床病理学的検査では, 抗核抗体とCRPは陰性, 副腎機能検査では, ソーン試験における好酸球数減少率は56.5%と, 軽度な機能低下が示唆された.症例犬は, 病態観察中, 第104日に腸捻転と腹膜炎により突然死亡した.
著者
茂崎 宇十沙 藤井 洋子 砂原 央 高野 裕史 青木 卓磨
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.512-517, 2014

3カ月齢のイタリアン・グレイハウンドが心雑音の精査を目的に来院した.各種検査の結果,肺動脈弁狭窄症及び筋性部心室中隔欠損症と診断した.肺動脈弁狭窄症は重度であり右室圧の亢進(肺動脈血流速:7.15m/s,推定圧較差:204.5mmHg)により,心室中隔欠損孔を介する短絡血流は右─左方向を呈し,酸素飽和度は93%であった.心室中隔欠損症よりも肺動脈弁狭窄症の病態が予後因子として重要であると判断し,治療として侵襲性が少なく死亡リスクが低い肺動脈弁バルーン弁口拡大術を選択した.右室負荷の軽減に成功し,短絡血流は左─右方向となり酸素飽和度は100%に改善した.術後18カ月が経過したが,臨床徴候は認められず,短絡血流量増大による左室容量負荷を生じることなく良好に維持されている.
著者
小林 聡 森 淳和 安川 慎二 伊澤 幸甫 藤井 康一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.747-751, 2016

<p>8カ月齢,避妊雌,体重4.6kgのイタリアン・グレーハウンドが右側の前肢跛行を主訴に紹介来院した.X線及びCT検査において右側前腕の重度変形を認めた.過去に橈尺骨骨折の治療履歴があったことより骨折時の外傷に起因する前腕変形であると診断した.変形が重度であり,従来のコンピュータ画面上での三次元立体構築像のみを使用する変形矯正方法ではランドマークの設定が行いにくく,術中の矯正程度の判断が困難で術後にアライメント不良が生じる可能性があった.そのため,CTデータより3Dプリンターモデルを作成し事前にシミュレーション手術を実施し,骨切り部分の確認やインプラント形状設定を行い矯正が問題なく実施できることを確認した後,実際の手術を行った.術後の経過は良好で骨癒合が認められ患肢の使用も良好であった.</p>
著者
大石 勇 小林 茂雄 久米 清治
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.60-65, 1973

本邦の犬には犬糸状虫が広くかつ高率に分布しているが, 他の糸状虫は沖縄を除いては未だ知られていない. 著者らは近年東京都西南地域に飼育される糸状虫子虫陽性犬110頭を対象とし, アセトン集虫法を用いて子虫の形態調査を行なった.<BR>検出された子虫は全て無鞘で, 体長・体巾の測定値, その他形態から2種頼に区別された. すなわち, 109頭から検出された子虫は大型で犬糸状虫子虫と同定され, 1頭から検出された子虫は小型で<I>Dip. reconditum</I>子虫と同定された.<I>Dip. reconditum</I>子虫は米国ケンタッキー州から輸入した2才のプロットハウンドに見出されたものであり, 本邦では沖縄以外の地域における最初の報告である.<BR>今回の調査から東京地域の犬に一般に見出される糸状虫は犬糸状虫であるが, 他種糸状虫の流行地から搬入された犬の検診には犬糸状虫以外の糸状虫を考慮して診断を行なう必要がある.
著者
矢野 淳 勝毛 智子 大島 奈々
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.361-367, 2018-07-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
24

人は,犬猫等のペットに愛着を抱く.ペットは愛情を注がれ,家庭の中で人同様に生活するようになったが,このことで生活習慣が乱れ,過肥,疾病の発生につながっているとも感じられる.そこで,飼い主のペットへの愛着がペットの健康に及ぼす影響を,飼い主への質問紙調査で検討した.その結果,ペットへの愛着として執着性愛着と気分安定性愛着が抽出され,執着性愛着はペットへの不適切な給餌傾向や混合ワクチン未接種に影響し,不適切な給餌をする飼い主の動物は過肥,混合ワクチン未接種,急性膵炎罹患が多く,その飼い主の執着性愛着は高かった.このことから執着性愛着は,不適切な給餌を介してペットの健康に悪影響を及ぼす可能性があることが分かった.ペットの疾病予防や動物愛護実現のため,獣医師は人のペットへの愛着の質について考慮する必要があると考えられる.