著者
岩本 英久 梶原 康博 滝 聖子 関 洲二
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.208-217, 2007-08-15

技能の伝承や保存のために,技能者の動作をモデル化し,その動作の特徴を明らかにすることは重要なことである.本研究では,技能者による動作のモデルとして,技能伝承訓練段階であっても,患者の生命に危険を与えてはならない外科手術における運針動作を対象にする.運針動作のモデル化は,外科医の運針軌跡を4種類のパターンに設定し,ロボットで再現することによって行う.運針動作の特徴は,縫合針の軌道と運針後の軌跡を比較するとともに,持針器に加わる回転トルクを測定して考察する.その結果,縫合針円に沿った運針パターンは,軌道と軌跡の差および回転トルクを最小にできることが示された.実際の手術現場では,縫合針円よりも深い運針を行っているので,縫合針円より深く補正する運針パターンの中で比較すると,縫合長さの中央で深く補正する運針パターンが軌道と軌跡の差が小さく,回転トルクの小さい運針であった.
著者
小田 哲久
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.135-145, 1998-08-15
被引用文献数
5

本論文は, ファジィ論理の真理値(Truth Value)を多次元に拡張した論理体系を提案する.本提案は, FCR法(Fuzzy-set Concurrent Rating Method : ファジィ多項目並列評定法)という, 心理測定法における応答の矛盾度を表わす指標に理論的意味を与えるために提案されたもので, 命題の真理値(Truthfulness : T)と偽値(Falseness : F)を独立次元とみなす.類似のアイデアに, 向殿・菊池の「拡張区間真理値モデル」があるが, 本提案では, TとFの直積空間としての超論理空間(Hyper Logic Space : HLS)を設定する.HLS上で論理演算を定義することで, 向殿らのモデルとは別の形の否定演算が導かれた.その論理代数系は, クリーネ律を満たし, 演算の結果が理解しやすい.HLSは, 矛盾への洞察を助け, また, より高次の超論理空間への拡張の道筋を示している.
著者
曹 徳弼
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.372-379, 2000-10-15

需要の変動はトレンド(線形と非線型), 周期変動(季節変動含む), およびばらつきに分類することができる.トレンドや周期が一定である場合には予測モデルを用いてそれを抽出することができ, ばらつきは安全在庫で対処すればよい.また, トレンドや周期がダイナミックに変化する場合には予測モデルを逐次修正する方法と安全在庫をダイナミックに変化させる方法が考えられる.本研究では予測モデルの修正(予測モデルの再同定, バラメータの再推定, 再学習など)に手間がかかことや, バイヤス発生の確認が遅れることなどを考慮し, 予測モデルを逐次修正する方法の補助的な方法として, 過去一定期間における予測誤差の平均とばらつきに基づいて安全在庫をダイナミックに変化させる方法を提案した.提案法の有効性を検証するために本研究では, 単段階在庫システムにおいて移動平均法に基づいて需要予測を行う発注点方式を対象に, 異なる4つの需要パターンのもとで, 需要が安定していることを想定して安全在庫を計算する方法(方法A), 理想的な予測手法を想定して安全在庫を計算する方法(方法B), および予測のバイアスの存在を無視して安全在庫を計算する方法(方法C)など3つの方法と, 平均在庫水準および欠品率を評価基準に比較実験を行った.その結果, 需要のパタンが変化する場合には提案法がA, C両方式に比べて平均在庫をそれぞれ50%近く削減し, 提案法の有効性が示された.また, B方式は提案法より平均在庫が少なく, パターンの変化を素早くキャッチする予測手法の確立が大変重要であることを確認できた.
著者
宗澤 良臣 梶原 康博 大崎 紘一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.17-28, 2007-04-15
被引用文献数
2

日本の開発製造型のものづくり体制を支援し,発展させるためには,生産現場の高度な技能を効率よく継承し,定着させるための技能者,素材,工具の動き,力関係,感覚等の分析,表示手法の開発,科学的な技能指導者の養成法,技能訓練者の訓練体制等の技能訓練システムの確立が2007年問題とも絡んで急務となっている.本論文では,技能者の技能を作業中の素材,工具,身体部位の3次元空間内での方向を,3次元座標系の3軸回転角度から分析し,表示する手法の開発を行っている。3次元空間内の位置座標を用いて動きを表現する研究は多数行われているが,さらに座標値に3軸回転角度による方向を3軸ベクトルとして加えることにより,動きを完全に表示することが可能となる.そこで,基準座標系内における部位の方向を計測するセンサー座標系の3軸回転角度からセンサー座標系の3軸単位ベクトルを回転角-回転軸変換行列から求める.そして,各軸の単位ベクトルの要素の2乗和が1となる性質を用いて2次元座標系に表現するための2次元表現グラフを提案する.2次元表現グラフでは,3次元座標系の8象限を2つの2次元座標系で示している.そして,センサー座標系の軸単位ベクトルから,設置した部位の方向を2次元表現グラフで表示することができる.そして,岡山県の伝統工芸である備中神楽面の制作作業において,技能者が工具を使って面を彫る作業を,素材,工具,上肢の部位の方向,及び相隣る部位間での軸単位ベクトルの関係から提案した分析,表示手法により,数量的な技能基準を求めることができた.
著者
平塚 三好 大澤 紘一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.145-152, 2009-08-15
被引用文献数
1

The innovation speed in the fields of information communications and electronics is exceedingly fast. For this reason, in the case that patent trolls intentionally delay a claim for damages for companies that infringe on patents, it is likely to be difficult for the companies to recover from damage caused by the delay, even if the delay period is for one or two years. The Japanese Civil Code provides a statute of limitations of three years to exercise one's rights. This, however, differs from the realities of the technology, in which the delay of a year or two matters materially. Considering a U.S. doctrine that is an effective defense to exercise rights with unreasonable delay, we herein propose flexible limitations to such delayed conduct in preparation for events should patent trolls appear in Japan in the future.
著者
藤川 昇 松井 正之
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.54-64, 2010-06-15
被引用文献数
1

産学官連携による技術移転・事業化に際し,成功要因を分析することはきわめて重要であるが,これまで定性的な事例報告が多く,要因についての数理的な検討はなされていない.本研究は,まず,売上げ実績があるため「成功」として官公庁が公開している100事例を用い,成功要因の実証的分析を行った.次に,その成功要因をもとに,多変量解析による分析を加え,シーズとニーズのマッチング等コーディネートの基本機能とシーズの魅力を高める付加価値向上機能の貢献度,およびコーディネータの現状の姿を明らかにしたほか,産学官連携のモデル化を試みた.その結果,技術移転・事業化の成功率を上げるための効果的なマネジメントの手がかりを得るとともに,コーディネータ育成の方向が示された.
著者
森 李 梶原 康博 大崎 紘 宗澤 良臣
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.37-45, 2001-04-15
被引用文献数
1

省人化工場内の安全確保のためにモニター画面上の画像から作業員を識別するための模様の認識, 姿勢の認識, および作業員が危険の程度を知らせるための画像処理による判別の容易な合図動作とその認識手法を提案する, まず, 省人化工場の出入口において入退室する作業員を認識するために, 作業着に付ける模様を提案し, 画像処理により模様を識別するための特徴量および判別規準を設定する.次に, 作業域内の作業員および搬送車等の対象物を差分処理により検出し, 移動または静止状態であるかを面積の変化率から, 作業員または他の設備であるかを領域の複雑度から判別する.作業員が静止している場合には, 姿勢および合図を認識する.姿勢は立位, 座位および臥位姿勢について, モニター画面上での作業員の外接長方形および面積に基づく特徴量を定義し, その判別規準を設定する.作業員からの合図としで"停止せよ", "危険", "助けを求む", "作業完了またはOK"等を画像処理による認識の容易な動作で表現し, その認識を行う方法を提案する.
著者
松井 正之 高橋 義久
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.262-272, 2004-12-15
被引用文献数
1

SCM時代の到来によって, 需給マネジメントに関する関心が高まっている.我々は, 需給マネジメントのeラーニング開発を行い, その過程で需給対応のマネジメント問題としてそのマッチングのあり方に関心をもった.本論文では, 需要にマッチした良い生産計画とは何かを考えさせるeラーニング法を開発して, そのなかで有効な決定規則を与える松井のペア行列表に基づいた(N, α)戦略マップを提案している.これは, 経済性に基づいて, 最適な平滑化定数α(出力変数)と基準在庫量N(入力変数)の最適な組み合わせを与える.その結果, 需給マネジメントでは, 予測情報の正確さがすべてではなく, 頑健性の重要さを示している.
著者
下田 祐紀夫 櫻井 文仁 渡邊 博之
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.151-158, 1997-10-15
被引用文献数
2

切削加工では, 工具欠損が発生すると切削不能になるため, 工作機械, ロボット, 無人搬送車等をストップさせ, 復旧作業を行うために作業者がついていなければならず, 切削加工は自動化されているものの無人化されていないのが現状である.加工システムの信頼度を低め, 無人化を阻止している要因の一つが突発的に発生する工具欠損である.本論は, 工具寿命を「摩耗によるもの」と「欠損によるもの」とにわけ, 各々の工具寿命分布を考慮して問題を定式化し, 工具欠損の発生による加工の中断を少なくし, 信頼度の高い加工システムを構築するために工具の選択法と工具交換時期等の設計法を与えている.
著者
下田 祐紀夫 櫻井 文仁 早部 哲夫
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.263-273, 1999-10-15

切削加工の無人化を阻止している要因の一つが, 加工中に突発的に発生する工具欠損である.工具が欠損すると, 切削不能になるため, 復旧作業を行うために作業者がついていなければならないからである.本研究は, 夜間の切削加工を対象とし, 「加工中に工具が寿命になった場合は, 機械を停止させ, 朝まで停止したままとする」の前提のもとに切削加工を無人化した場合に, どのような問題が発生するかを明らかにした上で, 「切削加工の無人化への移行基準」を提案している.工具欠損の発生頻度が少ない場合は無人化した方が経済的となる分岐点が存在することを示し, 分岐点を求めるための生産量モデルと生産コストモデルを与えている.
著者
松丸 正延 土井田 修
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.426-435, 2000-12-15
被引用文献数
1

本研究では資本と負債の両面を考慮した倒産判別モデルを提案する.具体的には, 日々変化する株価を株式市場の投資家による企業評価と考え, 資本の時価総額を推定する.この際にベータ値推定法により資本の時価総額を推定する, 一方, 企業の負債は1事業年度ごとの金額しか公表されていないので, 日々の負債額を推定するのは困難であるが, オプション価格の評価に用いられているBlack-Scholesモデルを援用して負債推定を行う.この日次の資本の時価総額と負債の推定を用いた倒産判別モデルにより, 従来では1事業年度ごとにしか行えなかった倒産判別が日次で行えることが可能となった.また, 実証分析において本モデルの妥当性を示すことができた.
著者
松本 俊之 志田 敬介 金沢 孝
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.332-343, 2002-02-15
被引用文献数
4

立位姿勢・3次元作業域における動力式ドライバーを用いたタッピンねじ締め作業において, 作業方向と作業位置による作業者の作業姿勢が締結品質や作業負荷に影響すると考えられる.このことを確かめるための実証的研究を行った.実験結果から, 作業可能と思われている作業方向と作業位置でも締めつけトルクが許容範囲を下回ることがあり, 不良締結となる場合があり, 不良締結となる作業方向と作業位置は, 左方向では身体の右側の作業位置, 前方向では身体の前方の遠い作業位置, 下方向では身体の高い位置であることが判明した.また, 作業方向と作業位置によって, 最大押圧力と最大傾き力は一様でなく, 力をかけすぎる作業方向と作業位置は, 左方向では身体の正面の作業位置, 前方向ではほとんどの作業位置である, 傾き力が大きい作業方向と作業位置は, 左方向ではほとんどの作業位置, 前方向では低い作業位置であることが判明した.作業設計と製品設計において, これらのことを考慮する必要がある.
著者
葛山 康典
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.325-331, 2002-02-15

近年, 企業において積極的に直接金融が利用されている.なかでもここ数年, 普通社債の発行額の伸びが著しい.普通社債の評価は, 利払い及び元本の償還に関する不確実性である信用リスクの考慮を必要とする点において, 国債など信用リスクのない債券の評価と異なっている.社債格付け会社の発表する信用格付けを用いて企業の信用力を評価する方法は, 極めて一般的になっている.Jarrow et al.(1997)は, 社債償還までの比較的長期間にわたる格付けの変化を, マルコフモデルによってモデル化し, 格付け推移に関するマルチンゲール確率を用いて, 社債評価を行う方法を提案した.この際, 債務不履行が発生した場合の回収率として, 過去の債務不履行から得られた統計量を用いている.しかしながら, 社債による資金調達が一般的に行われるようになって日が浅い本邦社債市場においては, 過去の債務不履行事例が極めて少ない現状にある.本論では, Jarrow et al.における社債評価方法を, 本邦社債市場に適用できるように改良する.すなわち, 債務不履行時の回収率をモデルパラメータとし, 社債の市場価格にキャリブレートする方法を提案する.また, 提案した方法を用いて本邦社債市場における社債の信用リスクプレミアムに関する実証研究を行う.
著者
辻 洋 佐賀 亮介 金蔵 武史
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.342-346, 2003-12-15

This paper proposes the development of a software simulator that allows users to build a supply chain model and analyze the logistics issues behind the model. The simulator consists of five kinds of participants and an e-marketplace for the supply chain. Each participant is implemented as a distributed object such that it runs concurrently and has the following capacities and policies : (1) end customers, (2) intermediaries including manufacturers, (3) parts suppliers, (4) electronic payment service providers, and (5) transportation servers. The e-marketplace defines the trade protocol for the workflow management and transaction analysis. The SCM simulator visualizes goods flow, money flow and information flow. This paper discusses the background of the proposal, the goal of simulator, and milestone, and technical issues for development.
著者
久保 貞也 栗山 仙之助 能勢 豊一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.424-430, 2000-02-15

地域に存在し, 自ら製造・販売している企業は, 個性的な製品を顧客に提供できる反面, 販売拠点が少なく, 顧客ニーズの変化によって収益が大きく影響される.これに対し, コンビニエンス・ストアは多くの製品カテゴリを扱うとともに, 地域内に点在している.そして, 点在することで顧客の利便性が向上することにもつながっている.以前の研究において, 先に上げた企業をコンビニエンス・ストアのように多種の製品を取り扱える相互供給システムが提案された.このシステムは小規模の企業でも多くの販売機会を得ることを目的としている.本論文では, 相互供給システムでの製品配送に関して, 巡回配送と物流センタ配送を定式化して比較を行う.また, 配送車両の容量に制約がある場合についても考察する.