著者
南部 泰士 佐々木 希 南部 美由紀 佐々木 英行 桐原 優子 月澤 恵子 今野谷 美名子 高橋 俊明
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.76-84, 2011

秋田県南部前期高齢者女性の介護予防基本チェックリストと骨密度の関連を明らかにし,今後の介護予防支援事業における基礎情報の提供を目的に調査を行なった。基本チェックリスト『口腔』の症状がある前期高齢者女性は骨密度が低かった。また,特定高齢者判定基準で『口腔』に該当している前期高齢者女性は,『運動』,『うつ』の生活機能が低下していた。<br> 骨密度は前期高齢者女性の要介護リスクを判断する指標となることから,骨密度の維持および向上を図る,骨粗鬆症検診の受診率を向上させる必要がある。
著者
野村 茂
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1093-1097, 1995

作目として, 岩手県の米作・肉牛飼育, 茨城県および熊本県のレンコン生産, 富山県の米作・チューリップ球根栽培, 長野県の高原野菜栽培および鹿児島県の施設園芸などを選び, 農業従事者の労働負担と健康影響を調査するとともに, 労働負担評価の開発, すなわち, 蓄積的疲労兆候インディックス (CFSI) の農業従事者への適用のための改訂を試みている.<BR>第2年度, 本研究では, 肉牛飼養農家では, 作業者の心拍数の観察から, 牧草処理の最農繁期に最も労働負担が強い可能性が示唆され, レンコン生産については, 茨城県と熊本県における生産労働の差異, 収穫作業労働の改善の必要性が指摘された. また, チューリップ球根栽培における農薬の使用の実態と農薬中毒および皮膚炎の発生の様態が把握された. また, 高原野菜栽培でも9時間未満の農作業で130/分以上の心拍数増加が認められ, 最盛期の12時間以上農作業時の実態の把握も必要であることが示された. このように, 本年度, さらに, 農業経営の性格をふまえた作目別の労働特性と労働負担の実態が明らかにされた.
著者
武藤 桃太郎 武藤 瑞恵 石川 千里 井上 充貴 升田 晃生 高橋 裕之 萩原 正弘 青木 貴徳 橋本 道紀 稲葉 聡 矢吹 英彦
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.49-56, 2014

症例1は85歳, 女性。近医にてCEA9.2ng/mlと高値を指摘され当科紹介となった。CT検査, 超音波検査で虫垂部に嚢胞状腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸下端に半球状の表面平滑な隆起性病変を認め, 虫垂は造影されなかった。虫垂粘液嚢腫の診断で盲腸部分切除術を施行し, 術後CEAは4.7ng/mlと正常化した。 症例2は74歳, 女性。高血圧, 高脂血症で当科通院中にCEA12.3ng/mlと高値を示し, CT検査, 超音波検査で虫垂部に嚢胞状腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸に粘膜下腫瘍様隆起を認め, 虫垂は造影されなかった。虫垂粘液嚢腫の診断で盲腸部分切除術を施行し, 術後CEAは1.5ng/mlと正常化した。 いずれも病理検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断され, 免疫染色ではCEA陽性であった。
著者
高松 道生 田村 真
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.79-84, 2001

佐久地域の全住民を対象として, WHO-MONICA Projectの手法に基づく心筋梗塞発症登録研究を行った。1989年度から1998年度の10年間の推移では発症数に有意な変化は認められず, 人口の高齢化に伴う発症増加も認められなかった。心筋梗塞発症例の平均年齢は女性で不変, 男性がやや高齢化の傾向にあった。最重症の心筋梗塞は突然死の形を取る事が多いが, その把握には保健所を中心とした公的研究が必要と考えられる。一方で農業従事の有無に視点を置いた研究も必要であり, 本学会の研究テーマとして意義のあるものと思われる。
著者
國井 享奈 野村 智美 高山 裕子 世良 喜子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.27-37, 2017
被引用文献数
1

看護師としてメンタルヘルスに不調を感じたときの心身の状況とその時の具体的な出来事を明らかにすることである。A 病院に勤務する全看護師204人に対し質問紙調査を行なった。調査内容は, 1 )個人属性, 2 )看護師がメンタルヘルスに不調を感じたときの心身の状況, 3 )看護師の仕事上のメンタルヘルスに不調を感じた具体的な出来事の自由記載である。Krippendorff の内容分析を参考にして163名の有効回答を分析対象とした。看護師がメンタルヘルスに不調を感じたときの心身の状況は,ひどく疲れた77.3%,だるい62%,不眠,憂うつだ,何をするのも面倒だ,が半数以上の回答であった。メンタルヘルスに不調を感じた出来事の具体的な状況, 1 .労働環境に関わる状況81件は, 1 )時間外勤務, 2 )業務内容がストレス, 3 )夜勤回数, 4 )新しい環境にストレス, 5 )仕事上のミス, 6 )配置への不安, 7 )業務への不安, 8 )とれない公休・有給休暇, 9 )育児との両立,10)役割過重,11)自信喪失,12)ストレスの場面のフラッシュバック,13)トラウマ,14)看護質が低いに分類された。2 .人間関係に関わる状況35件は,15)上司がストレス,16)同僚がストレス,17)先輩の態度,18)先輩がストレス,19)上司の暴言,20)医師の言動,21)患者に陰性感情,22)産休後の部署の変化,23)同僚の暴言,24)先輩の暴言,25)同僚師長の職務放棄,26)後輩の態度,27)他職種との連携,28)スタッフへの指導であった。対人関係より労働環境の記述が多かった。
著者
水本 一生
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.747-752, 2015

難治性皮膚潰瘍に対して電子ネットワークを利用した臨床写真画像転送による大学病院と地域病院の診療連携体制を構築し, 診断治療にあたる試みを行ない, その有用性を検討した。2013年4月から2014年3月までの間に75歳以上の難治性皮膚潰瘍の患者で手術を必要とした26例を対象とした。臨床写真を電子メールに添付し共同研究者である島根大学医学部付属病院皮膚科形成外科診療担当医に配信, チャット形式での検討により, 治療方針を決定し, 熱傷瘢痕9例, 褥瘡7例, 虚血肢3例, 悪性腫瘍1例, 外傷6例に対して地域病院で手術および周術期管理を行なった。術式変更となったものは遊離植皮術を予定していた熱傷瘢痕に対して局所皮弁術を施行した2例 (7.7%) であった。術後, 重篤な合併症を発生した症例はなく, また, 再手術を必要とした症例は外傷に対して縫合閉鎖した1例 (3.8%) のみであった。電子ネットワークを利用した大学病院と地域病院の診療連携により高齢者難治性皮膚潰瘍の診断・治療を地域病院で展開することが可能であった。
著者
藤原 秀臣 田谷 利光 徳永 毅 雨宮 浩 家坂 義人 川田 健一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.958-963, 1994-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

農業は, 近年各分野での機械化が進んできたとはいえ, 依然筋肉労働を主体とした産業のひとつである。土浦市は全国有数のれんこん生産地であるが, れんこん収穫労働は冬期には泥水田に腰まで浸かって掘り取り作業が行われ, 寒冷という外的因子に加えて強い筋肉労働を伴うため労働負担とくに循環器負担が大きいと考えられている。そこで, れんこん収穫作業中の循環諸指標を労働現場で測定し, 循環器負担の様相について検討した。対象は, れんこん生産農業者18例で, 男性11例, 女性7例, 年齢は41~66歳 (平均56.7歳) である。測定実施日前1週間以内に健康チェックと嫌気性代謝閾値 (AT) 測定を行い, 測定当日には, Holter心電図を装着し, 作業現場において, 血圧, 心拍数, 血液酸素飽和度, 12誘導心電図の測定を施行した。その結果, 心拍数は作業中, 有意に上昇したが全例で予測最大心拍数以下であり, 作業直後には前値に復していた。血圧, 二重積, 血液酸素飽和度とも作業前後で有意な変動は認めなかった。また, 労働において心電図上の虚血性変化はみられなかった。男女の比較では, 女性に作業直後に血圧はむしろ低下し, 二重積の上昇の程度も低い傾向がみられた。しかし60歳以上の2例では, 作業直後の血圧上昇, 不整脈がみられた。以上のことより, れんこん収穫労働は, 循環諸指標に著明な変動を惹起せず, 循環器負担は軽度であったが, 60歳以上の高齢者については充分な健康管理が必要であると考えられた。
著者
朱宮 哲明 国政 陽子 菱川 千鶴 大場 陽子 澤田 智恵美 林 幸子 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.80-82, 2004
被引用文献数
2

平成14年4月~平成15年3月の1年間に, 昭和病院の栄養科職員35名より提出された事故報告書 (インシデント・アクシデントレポート) 158件を集計分析し, 今後の事故防止に向けて検討した。<BR>項目別の事故報告書件数は, 事務処理ミスが90件 (57%) と最も多く, 次いで配膳ミス56件 (35%), 異物混入8件 (5%), その他4件 (3%) の順であった。事故の大半が確認不足により発生しており, 反復確認, 複数の職員による確認など確認の徹底が事故を減少させると思われた。事故報告書の内容および原因を職員にフィードバックすると共に, それらを分析して, 新たな事故防止マニュルを作成してゆく必要がある。
著者
江幡 世利子
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1078-1082, 1995

土浦協同病院に勤務する看護婦を対象として「死後の処置」に関する意識調査をアンケート方式で行った。<BR>調査は,(1) 死後の処置を行う時どのようなことに気をつけているか,(2) 患者の生前と死後での接し方の変化,(3) 患者の死に接して考えること,(4) 死後の処置に家族を参加させることの是非の4点に主眼を置いた。<BR>調査は,(1) 死後の処置を行う時どのようなことに気をつけているか,(2) 患者の生前と死後での接し方の変化,(3) 患者の死に接して考えること,(4) 死後の処置に家族を参加させることの是非の4点に主眼を置いた。<BR>今回の調査により, 本来の目的である「死後の処置」についての現状の把握ができたほかに, 自分達の行ってきた業務を振り返り, 反省するよい機会にもなった。そして, 家族の危機状況に対する心くばりをすることなど改めて自分の看護の姿勢を見直すことへもつながった。
著者
永美 大志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-23, 1996-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

近年, 国内農業の重要性が認識される一方で, 農産物の輸入は年毎に増加しており, その農薬残留, とくに長距離輸送, 長期保存を可能にするためのポストハーベスト使用農薬の残留は, 衛生学上の問題点の一つである。今回筆者は, ポテトチップス中の発芽防止剤, マレイン酸ヒドラジドとクロルプロラァムの簡便な同時残留分析法を作成した。本分析法による, 両剤の回収率および検出限界は, それぞれ81±5, 79±4%, 0.1, 0.01μg/g-rawであった。本方法を用いて市販品の残留調査を行った。マレイン酸ヒドラジドは, 0.3μg/g-rawを最高に25%の検体から残留を認めた。クロルプロファムは, 0.11μg/g-rawを最高に45%の検体から残留を認めた。
著者
松尾 弘文 杉村 巌 小西 行夫 種田 光明
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.71-78, 1987

北海道鷹栖町は, 旭川市に隣接する農業 (主に水田) を主な産業基盤とする人口約7,500の農村地区である。同町では無床の開業医療機関が一か所あるのみである。住民のヘルスニーズに応えるべく, 昭和50年より住民総合健診を実施してきた。疾病の早期発見, 予防につとめ発症後も早期にまた効率よく一次医療機関および二次医療機関に受診できるように, 健診を中心としてのプライマリ・ヘルスケア (以下PHC) の確立をめざしてきた。<BR>今回の調査では健診開始10年目を迎え, 健診がPHCの確立にいかに寄与したかを調査し検討した。結果として, 疾病の有症者数の改善, 医療費上昇の抑制, 病診間の連携, 保健意識の向上などが認められた。以上のように, 健診を中心としたPHCの確立は, 医療機関の乏しい農村地区においては有効であると考える。
著者
倉益 直子 田内川 明美 宮内 幸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.49-54, 2012-05-30 (Released:2012-09-20)
参考文献数
9

2004年に看護協会が実施した「新卒看護職員の早期離職等実態調査」において,新人の9.3%が1年以内に離職していたという結果は,看護界を驚かせた。離職理由としては,「基礎教育終了時の能力と現場で求められる能力のギャップ」「肯定的なストロークが少ない職場風土」「教育的配慮の不足」などが挙げられている1)。新人看護師にとっての入職後1年間は,これまでになくストレスフルな毎日であることがこの調査により明らかになった。事実,新人看護師の中で「眠れない」「食べられない」「仕事に行けない」などの深刻な症状を呈し離職に至る者もいる。 心理学によると,ストレス反応を低下させる要因は,「自尊感情 (self-esteem)」「自己効力感 (self-efficacy)」「アイデンティティ (identity) の確保」の3つであると言われている2)。ところが,医療現場では常に「完全」を求められることや,対人援助職特有の「やってもきりがない」等の不満足感が,自尊感情や自己効力感を低下させる。このことからも新人看護師が初めて接する看護現場は,ストレス反応が起こりやすい環境であると言える。そのため,当院では以前より新人看護師の心身のリラックスを図る新人研修として「集団コラージュ療法」を取り入れてきた。「コラージュ療法」はこれまで,精神科臨床や非行対応臨床などから始まり,最近は,末期がん患者や認知症患者などにも活用されて成果を挙げている。我々が検索した文献では,健康な専門職への適用は見られなかったが,当院では10年前から実施しており,その安全性はすでに確認されている。今回,当院における新人看護師対象の「集団コラージュ療法」について検討したところストレスケアとして有用と考えられる所見が得られたので報告する。