著者
二塚 信
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.938-949, 1998-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16

近年農業の機械化は急速に進展し, 水田, 畑作ともに乗用化, 多機能化, 多条化がはかられている. 本研究班では主として水田9機種, 畑作13機種の乗用型農業機械の騒音及び手腕系振動, 座席振動についてISO等国際標準に基づく測定法によって測定した. その結果, 乗用機械の実稼動時の騒音は少なからず日本産業衛生学会の許容基準を上回り, 聴覚障害のリスクが高いことが判明した. 手腕系振動は乗用型農業機械では振動レベルは低いが, 携帯型摘茶機などは高値を示した. 他方, 座席振動は現行の操作時間ではISOの許容曝露限界を上回るケースは例外的であるが, 長期的な健康影響を考慮するとき, 疲労・能率減退限界2時間を下回る機種が少なくなく, 機械の工学的改善が必要だと思われた. 作業者の健康影響については, 乗用型農業機械の長期間操作者では高周波帯域の聴力低下が明らかで, 臨床的に騒音性難聴と診断され得る症例がみられた.今後農業経営規模の拡大, あるいは法人・会社組織化による農業機械のオペレータの専属化の進行は必至だと思われる. 本学会として, 農業機械の騒音及び振動の測定及び評価を組織的・体系的に行なう必要があり, 本研究班として健康障害予防の観点から今後の医学的, 衛生工学的対策の提言を試みた.

1 0 0 0 OA 農薬中毒の4例

著者
前川 謙一 加川 憲作 松野 康成 冨田 恵子 毛利 泰実 畠山 啓朗 勝村 直樹 山藤 正広 河村 修 端山 和雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.52-55, 1997-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

去2年間に当院を受診した農薬中毒の4例について報告した。症例はパラコート2例, スミチオン2例で, それぞれ生存1例, 死亡1例で死因はともに呼吸不全であった。パラコートの生存例は死亡例より多くの量を服毒していたが, 嘔吐が強いため, 実際の吸収量は少なく, また超急性期に胃洗浄, 人工透析, 血液吸着が行われたため救命し得たと考えられた。またスミチオンの死亡例は来院時, 原因物質が不明であり, 人工透析および血液吸着導入までの時間を要し, 呼吸不全を招来したことが死亡原因と考えられた。したがって, 原因物質の如何にかかわらず, 農薬中毒に対しては, 早期より人工透析および血液吸着を含めた集中治療を実施することが予後の改善につながると考えられた。
著者
居村 剛 坂東 玲芳 和田 泰男 福島 泰 Ryozo HAYAI 松浦 一 井上 博之 蔭山 哲夫 武田 美雄 市原 照由 加藤 和則
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-54, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

農業アレルギーの調査研究の一つの対象として, しいたけ栽培者を選び, その胞子による過敏性肺炎の3例を発見報告した, これらの3症例には, しいたけ胞子アレルゲンに対する血清沈降抗体がみられ, ことに, その1例において, しいたけ胞子および, 抽出アレルゲンによる誘発反応を試み, 陽性所見を得た. しいたけ農家群には, 高い自覚的呼吸器症状がみられるが, その原因は単一でなく, アレルギー機序は, その一部の原因であろうと考えられ1る. しいたけ胞子抽出アレルゲンの皮内反応陽性率は低く, そのアレルゲン性は高くないと考えられ, この疾患には, アレルギー素因が大きい要素を占める.この他, Mushroom worker's lung等との関連や, きのこ胞子類によるアレルギー疾患との関係も論じた.
著者
永美 大志 大谷津 恭之 加藤 絹枝 前島 文夫 西垣 良夫 夏川 周介
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.44-49, 2010-05-30 (Released:2010-06-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

石灰硫黄合剤は,春先に果樹の殺虫,殺菌に使用される農薬である。製剤は,強アルカリであり,しばしば難治性のアルカリ腐食を本態とする深達性の潰瘍を引き起こす。 我々も2007年に50代男性の症例を経験した。患者は,3月上旬,防水性の防護具を着用せず庭木に本剤を散布し,ズボンなどへの付着にかまわず,そのまま作業を続行した。夕方より皮膚付着部の疼痛が惹起し,翌朝になっても継続したため受診した。初診時,両下腿後面に白色潰瘍を伴う3度の熱傷を認めた。第6病日デブリードマン術を施行したが,潰瘍は真皮層から脂肪層に及んでいた。人工真皮で被覆して肉芽形成を促した後,第20病日に植皮術を施行した。経過は順調で,約1か月で退院となった。 わが国において2000年代に入ってからほぼ毎年,本剤による化学熱傷の症例が報告されており,他の研究報告を見ても,この熱傷の発生数がなかなか減少していないことが伺われた。 この熱傷を防止するには,(1) 防水性の防護具で全身を覆うようにすること,(2) 万一本剤が身体に付着した場合は,迅速に洗浄すること,の2点が肝要である。障害防止のためのさらなる啓発活動が必要と考え,啓発パンフレットを作成した。
著者
朱宮 哲明 山田 千夏 和嶋 真由 伊藤 美香利 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.291-294, 2016-07-31 (Released:2016-09-24)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食物アレルギー児に給食を提供する病院では誤食防止対策が求められている。これまで当院栄養科では,アレルゲンを除去した料理(アレルゲン除去食)を専用区域において担当調理師が調理し,その料理内容を食札に明記することにより誤食防止に努めてきた。平成26年1月~12月の1年間に,当院に入院した食物アレルギー児258例にアレルゲン除去食を提供したが,アレルゲンを含有する料理の誤配膳が3件発生し,内2件で患児の誤食があった。誤配膳が発生した原因として,アレルゲン除去食とアレルゲンを含む料理が同色の食器に盛り付けられていたことが考えられた。対策として誤食防止対策を改定し,アレルゲン除去食の食器とお膳を全て黄色に統一して他の料理と明確に区別した。さらに,アレルゲン除去食専用の棚を設け,配膳前の最終確認には調理担当者2人によるダブルチェックを義務づけた。今後も誤食防止対策の改良に努めていきたい。
著者
小泉 雄一郎
出版者
日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.74-79, 1995-07-30
参考文献数
8
著者
吉崎 浩一 野瀬 弘之 鈴木 優司 近藤 則央 前田 淳一 堀井 修 飯井 サト子 牧村 士郎 寺井 継男 東 弘志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.630-637, 1999-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

上部消化管造影検査で高濃度バリウムを使用するにあたっての前調査として, バリウム飲用による副作用及びその服用感がバリウム濃度及びその性状によりどのように変化するかアンケート調査を行い検討した。副作用は, バリウム濃度上昇に伴い増加したが, 何れも一過性のものであり, 医療機関で治療を要した例はなかった。さらに, 便秘群と通常群に分けて検討したが, 便秘群では通常群より低い濃度で副作用の割合が増え, 排泄状況に関しても便の硬化や排泄の遅延などが認められた。バリウム便の排泄は, 基本的には普段の排便状況と一致し, 濃度増加による影響をあまり受けないものと思われた。下剤の有無による排便状況の調査では, 下剤の服用が必ずしも良好な排泄につながっておらず, 今後下剤を服用するタイミングや水分摂取等に関する検討が必要であると思われた。バリウムの飲み易さは, バリウムを選択する際の要素の一つと考えられるため, その服用感に関して調査したが, 濃度の差よりその性状に起因することが明らかになった。これらの結果より高濃度バリウムを使用するに当たり, 副作用出現を抑制するためには特に便秘群において適切な指導をする必要があると思われた。
著者
冨士井 睦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.107-113, 2015 (Released:2015-08-13)
参考文献数
20

〔目的〕頭部外傷による錐体骨骨折後に, 遅発性顔面神経麻痺 (delayed facial palsy: DFP) を発症することがある。今回, 我々は顔面神経麻痺出現時に用いられるHouse-Brackmann grading system (HBS) に基づいた重症度とDFPの改善に要した期間との関連を後ろ向きに検討した。 〔対象と方法〕頭部外傷による錐体骨骨折282例のうちDFPを認めたのは33例であった。DFPの経過観察中に医学・美容上問題のないHBSⅡへ改善した時点を治癒とした。33例のDFPのうち最重症でもHBSⅡであった3例と顔面神経開放術を行なったHBSⅤの1例を除いた29例に対し, 麻痺の重症度とDFPの改善までの期間についてlog rank検定にて統計学的に検討した。 〔結果〕HBSⅤの重度群 (n=7) はHBSⅢ, Ⅳの中等度群 (n=22) に比べ統計学的有意に治癒期間が延長した (p=0.02)。後者は全例治癒に至り, 治癒に至るまでの中央値は50日, 前者では1年の経過観察後も2例で顔面神経麻痺は継続し, 治癒に至った5例の治癒に至るまでの日数の中央値は93日であった。 〔結語〕DFPはHBSによって予後予測が可能である事が示唆された。またDFPでもHBSⅤに至れば顔面神経麻痺を後遺する可能性がある。

1 0 0 0 OA 農夫症の研究

著者
松島 松翠 寺島 重信 磯村 孝二 市川 英彦 横山 孝子 大柴 弘子 井出 秀郷 萩原 篤 清水 博昭 白岩 智恵子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.135-144, 1969-03-01 (Released:2011-02-17)

長野県南佐久郡八千穂村の三部落から, 40才代及び50才代の男女113名を選び, 2年間にわたって農夫症々候群を中心に追跡調査を行なった。そのうち4回全部検診及び調査のできた81例について, 次のような結果を得た。1) 労働時間は男に比べて女に多く, かつ逆に睡眠時間は女の万に短かい, とくに40才代にかいて著明である。あきらかに女の万が過労状態であるといえる。また疲労の自覚症状や一般的健康状況, 検査結果, 有病率なども一般に女の万に悪い。即ち女の万が健康障害が多い。2) 農夫症総点数は, 一般に40才代より50才代が, 又, 男より女に多く, 農繁期に増加している。最近2年間の経過では, 男女とも増加しているが, 女の万が増加率が高い。3) 農夫症総点数は, 耕地面積 (一人当り) の多いほど, また乳卵摂取量の少ないほど高い。4) 農夫症総点数は, 疲労の自覚症状 (とくに身体的症状)、有病率と著明に相関している。また諸検査結果 (血圧, 血液, 肝機能等), 心電図, 胃レ線, 腰部レ線結果による異常と若干の相関が認められる。5) 以上の点から, 農夫症は慢性疲労状態, 不健康状態, 疾病状態を表わす一つの健康示標であるといえる。これを減らしていくためには, 農家の生活及び農業全般の根本的な改善がなされなければならない。
著者
佐々木 高信 照屋 孝夫 平野 惣大 喜瀬 真雄 花城 和彦 青木 一雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.174-179, 2019

2009年4月より2016年12月までの期間に,琉球大学医学部附属病院にて頭頸部癌(口腔,咽頭,喉頭,その他)からの肺転移巣を切除した21症例27切除術を後方視的に検討した。全症例の肺転移巣切除後5年全生存率(overall survival: OS)は56.7%,生存期間中央値(median survival time: MST)は21か月と報告された文献における肺転移切除群と比較し良好な成績を得た。肺転移巣の腫瘍径≥2.0cmが有意な予後不良因子であった(<i>p</i>=0.0157)。多変量解析では独立した予後不良因子は得られなかった。以上より2.0cmより小さい径の肺転移巣に対し,積極的な切除が予後改善に貢献する可能性が示唆された。今回の結果は悪性疾患の肺転移治療に関し,意義のある知見と考え,報告する。
著者
羽田 明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.631-635, 2019 (Released:2019-05-12)
参考文献数
4

The incredible speed at which research into the human genome has recently progressed has led to the widespread use of genomic data in clinical settings. The day will soon come when clinical practice that fails to utilize patients' genomic data will be considered outdated and will pose a high risk of legal action. In this lecture, I discuss several topics: 1.the progress of human genomic research, 2. Homo sapiens as just one of the many species on Earth; 3. the clinical applications of genomic research findings, with Kawasaki disease as an example;and 4.the current state of genomic research and its future prospects. Medical researchers and doctors have long dreamed of a day when health care services based on each individual's genomic data will be a reality;this is usually referred to as “madeto-order medicine,” “tailor-made medicine,” “personalized medicine,” and most recently, “precision medicine.” Thanks to the recent rapid development of genomic analysis,such as next-generation sequencing,as well as that of statistical analysis methods, it has been said that individual genomic data were available at a cost as low as$1,000 in 2014. Our planet is 4.6 billion years old, and life began 3.8 billion years ago. Since then,the Earth has witnessed the evolution of prokaryotic and eukaryotic unicellular organisms, followed by multicellular organisms, photosynthetic plants, the Cambrian explosion of marine life, and the emergence of land-dwelling creatures. Our mammalian ancestors appeared during the age of the dinosaurs, which suffered a mass extinction due to a dramatic change in climate caused by an asteroid impact. The small dinosaurs that survived evolved into today's birds while the mammals of that era evolved to successfully occupy a diverse array of ecological niches. The human family appeared about 2.5 million years ago in Africa. Archaic humans, such as Homo neanderthalensis, lived among our Homo sapiens ancestors, who appeared about 200,000 years ago. Now we know that 21%of the human genome has genes in common with prokaryotes and other eukaryotes. The difference between our genome and that of the gorilla and the chimpanzee is only 2% and 1%, respectively. Among Homo sapiens, the difference between any two individuals is only 0.2%, which manifests as differences in skin color, disease susceptibility, and other traits. Kawasaki disease was identified by Dr.Tomisaku Kawasaki, who reported his findings in 1967. Since then, vigorous efforts have been made to identify the cause of the disease, but so far, nothing specific has been found. We therefore took a genome-based approach and identified several genes responsible for the development of Kawasaki disease. Because some of the identified genes are thought to participate in the Ca2+-NFAT signal transduction pathway, we hypothesized that cyclosporine A, which is known as a suppressor of this pathway, might be useful in the treatment of the disease. We performed an investigator-initiated clinical trial and confirmed our hypothesis. This was one of the first clinical applications based on human genome research. Now, there are several large-scale genome-based projects, such as the UK Biobank, that are open to any researcher who would like to make use of their resources. They also contain clinical information and patient data, such as socioeconomic status, and educational background. With these kinds of resources at our disposal, we can expect great accomplishments in the not-too-distant future.
著者
本宮 真 渡辺 直也 紺野 拓也 安井 啓悟
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.52-57, 2018 (Released:2018-06-23)
参考文献数
14

北海道における労働災害(労災)の現状は,致死的な災害の対策により死亡者数は減少傾向にあるが,一方で非致死的な労災事故対策は不十分とされている。北海道十勝管内における非致死的な労災外傷の状況を明らかにするため,十勝管内で唯一3次救命センターを備えた総合病院である当院の整形外科における労災外傷の現状を調査し,多数回手術症例に関して検討した。2013年11月~2016年7月までの整形外科受診患者のうち,労災保険を利用して加療を行なった全患者を対象とし,年齢・性別・職業・受傷機転・受傷部位(上肢・下肢・脊柱)・疾患名・手術回数を調査した。全労災症例数は818件あり,平均年齢は47歳(16~82歳)であった。受傷部位は上肢482件,下肢273件,脊柱123件と上肢の外傷が最多であった。371件に手術が施行されており,3回以上の手術を要した重度症例は37件(上肢28,下肢11)であった。職業は1次産業が19件,2次産業は14件で,受傷原因は農工業機械による巻き込まれが19件であった。多数回手術例は,上肢複合組織損傷例または軟部欠損を伴う重度下肢外傷例のいずれかであった。重度上下肢外傷は軟部組織損傷を伴うため,複数回の手術を含む長期の加療が必要となる。今後より詳細に労災外傷の状況を検討し労災外傷の発生予防策を検討するとともに,積極的な治療による後遺症の軽減,および職業復帰支援を計画していく予定である。
著者
上田 厚 青山 公治 藤田 委由 上田 忠子 萬田 芙美 松下 敏夫 野村 茂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-66, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

菊栽培従事者の男子47%, 女子62%に, 作業に関連した鼻, 呼吸器症状および皮膚症状がみられた。前者は選花作業時'後者は農薬散布時に自覚されることが多いようであった。菊および農薬に対するパッチテスト, プリげクテスト'血清免疫グロブリン値測定, 鼻汁検査などにより, 前者の症状は即時型, 後者は遅延型アレルギーの関与が示唆された。また, これらのアレルギー学的検査所見の有無と, 菊および農薬の暴露量には若干の関連が認められた。アレルギー所見は, 菊の品種別では, 大芳花に最も高率で'ついでステッフマン, 金盃, 寒山陽などであったが'主として大輸株に即時型'小菊株に遅延型の症状が集積している傾向を認めた。しかしながら, 各品種と検査所見との関連をφ係数で検討すると'アレルギー学的検査所見との関連のとくに著しい品種は検出されなかった。また'皮膚症状については, パッチテスト成績などよりみて, 菊よりもむしろ農薬の関与が強いと思われる成績が得られた。このように, 菊栽培従事者の多くは, 作業に伴い菊や農薬の慢性的な暴露を受け, それに感作された状態にあることが確かめられた。さらに, それらによるアレルギー症状は, その他の作業環境における種々のallergenに様々に修飾されて発現するものであることが示唆された。
著者
三浦 篤史 青木 芙美 桃井 宏樹 柳沢 国道 大井 敬子 大橋 正明 竹内 玲子 小林 由美子 佐々木 由美 大倉 輝明 跡部 治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.719-725, 2009-01-30 (Released:2009-04-08)
参考文献数
6

佐久総合病院では,筋弛緩薬,カリウム製剤などはハイリスク薬として扱われているが,インスリンは事故防止のために標準化された対策がなされていない。今回我々は,多職種に渡ったチームを構成し医療改善運動を行なった。チームでは薬剤師が中心となり,Quality Control (QC) 手法を利用してインスリン投与の過誤を防止するための対策に取り組んだ。その結果,インスリン取り扱いに関するヒヤリ・ハットは減少した。薬剤に関したヒヤリ・ハット事例は多く,薬剤師のリスクマネジメントに果たす役割は大きいと考えられる。今後,薬剤師は積極的にリスクマネジメントに関わり,医薬品が関与する医療事故を未然に防止することが望まれる。そのことからも,QC手法を活用し,医療改善運動に取り組むことは効果的な活動と考えられた。
著者
岡林 義弘 清水 武 安藤 芳之 西田 正方 北村 純 太田 正隆 佐々木 俊哉
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.927-932, 1990

最近の高令化に伴い, 大腸癌の増加が謂われており, われわれは農村地域における大腸癌の実態を知るため調査を行なった。<BR>昭和48年より15年間の大腸癌症例は, 338例で性差はなく, 60才代がもっとも多く, 次いで70才代と60才以上の患者が62%を占めた。<BR>部位に関しては, 直腸が140例41%ともっとも多く次いでS状結腸であった。切除率は94.3%, 治癒切除は68.3%に可能で, 治療切除例の累積5年生存率は77%, 10年生存65.9%であった。<BR>大腸早期癌は24例と小数で, ほとんどが進行癌であり, 糞便潜血スクリーニング検査による大腸癌集検もようやく普及の段階になり, 今後は検診数を増して早期発見, 治療に努めねばならない。このほかpm癌, 腸閉塞をきたした癌などについても検討を加えた。