著者
赤堀 幸男 村上 篤司 星 昭二
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2000-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
42
被引用文献数
4 4

多剤耐性菌による院内感染が医療現場で重要な問題になっている。易感染患者を多く抱えるICU,CCU,NICUなどでは特に大きな問題である。院内感染防止対策としては,手指洗浄による交差感染経路の遮断が基本的かつ最も有効とされている。しかし,すべての菌に有効な殺菌剤はなく,院内感染を根絶できないのが現状である。オゾンを水に溶解したオゾン水は,強力な殺菌作用を有し,一般細菌はもちろんmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), vancomycin-resistant enterococci (VRE)などの多剤耐性菌に対しても,他の殺菌剤より極低濃度,5秒程度の極短時間で完全な殺菌作用を示す。一方,オゾン水中のオゾンは自然分解するため貯蔵できず,用時調製用のオゾン水供給装置が必要であり,作用機序,殺菌効果の特徴からくる独特の注意点もある。これらの問題点を考慮しても,オゾン水は手指洗浄用として最適であり,排水に悪影響しないなど,環境にも配慮した有効な院内感染対策方法を提供するものと考える。
著者
小谷 祐樹 川口 敦 志馬 伸朗
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.180-188, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
16

要約:よく計画された調査研究からは,将来の研究につながるresearch questionなどの重要な情報が得られる。得られた情報は量的なものも質的なものもあり,内容は臨床家の意見から患者による報告まで多岐にわたる。技術の発達により,調査研究が広く容易に実施されるようになったため,普段から調査研究実施の招待を受ける機会や,研究目的のアンケートに招待される機会が増えた。他の研究デザインと同様に,調査研究を批判的吟味する方法を知ることは,結果解釈だけでなく,堅牢な研究実施にも必須である。調査研究は,コストや方法論の点で容易な研究手法と思われがちだが,質の高い研究を実施するのは難題と言える。 したがって,臨床家は調査研究の参加者として,知識の利用者として,研究者として,頑健な方法論を理解する必要がある。本総説では,調査研究の実施や批判的吟味の必須となる事項に関して,研究計画書執筆から論文出版に至るまで記載した。
著者
森田 恭成 渡辺 伸一 大野 美香 自見 孝一朗 荒川 立郎 難波 智矢 堀部 達也 劉 啓文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.395-402, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】リハビリテーション(リハ)の介入日数と人工呼吸患者の日常生活動作(activities of daily living, ADL)との関係を検討した。ADLの評価には,Barthel index(BI)を用いた。【方法】共通の離床プロトコルに基づいたリハを週7日と週5日で行う施設群間で比較した。診療録より2017年1月から13ヶ月間のリハに関する情報を収集し,検討した。【結果】週7日群100例,週5日群106例が登録された。BIは両群で差を認めなかった(75対60,P=0.310)が,週7日群はリハ開始とICU退室が早く(2日対3日,P<0.0001,8日対10日,P=0.004),また,端坐位達成率が高く(41.0%対28.3%,P<0.0001),せん妄発生率が低かった(24.0%対45.3%,P=0.001)。多変量解析でBIに関係した因子は年齢であり,せん妄に関係した因子は週7日介入,年齢,鎮静プロトコルであった。【結語】週7日群と週5日群でBIには差を認めなかったが,週7日群でリハ開始とICU退室が早くなり,端坐位達成が多く,せん妄発生は少なかった。
著者
入江 洋正 松本 聡 兼清 信介 松田 憲昌 若松 弘也 松本 美志也 坂部 武史
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.519-524, 2010-10-01 (Released:2011-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

塩酸バンコマイシン(vancomycin, VCM)は,経口投与では腸管粘膜から吸収されないため血中への移行はないとされるが,血清濃度が上昇した2症例を経験した。【症例1】61歳の女性。敗血症,急性腎傷害,Clostridium difficile関連疾患(Clostridium difficile associated disease, CDAD)で,VCMの経口投与と静脈内投与,持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を行っていた。ICU入室4日目にトラフ値が33.7μg/mlであったためVCMの静脈内投与を中止したが,血清濃度の高値が持続した(中止2日後43.5μg/ml,7日後45.0μg/ml)。【症例2】63歳の女性。敗血症,CDAD,急性腎傷害でVCMの経口投与,CHDFを行っていたが,投与10日目のVCM血清濃度は10.3μg/mlであった。2症例とも腸管粘膜傷害と腎機能障害を合併していたため,VCMの腸管粘膜から血中への移行,腎からの排泄障害によって血清濃度が上昇したと考えられた。
著者
高橋 哲也 森沢 知之 齊藤 正和
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.267-276, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
29

要約:2018年度に「早期離床・リハビリテーション加算」が新設され,集中治療における理学療法が注目されている。集中治療における理学療法への期待は,早期離床,気道クリアランス,身体機能の改善,合併症の予防など多岐にわたる。ICU退出後にも,患者の呼吸機能の低下,身体機能の低下,認知機能の低下,生活の質の低下は長期に及ぶことから,集中治療後症候群(postintensive care syndrome, PICS)対策も重要な役割である。2020年,筆者らは「Minimum standards of clinical practice for physical therapists working in intensive care units in Japan」を発表した。これは集中治療に関わる理学療法士の質保証を促すだけでなく,集中治療チームにおいて理学療法士の仕事に対する理解を深めたり,集中治療で働く専門職の卒後教育ツールとして活用も期待できる。集中治療における理学療法士の役割は明確であり,集中治療における理学療法士の役割を確実に果たすためにも,理学療法士は自ら質向上に努めることが重要である。
著者
一二三 亨 小井土 雄一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.355-357, 2013-07-01 (Released:2013-08-09)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1
著者
熊丸 めぐみ 下山 伸哉 岡 徳彦 宮本 隆司 小林 富男
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.267-272, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
20

【目的】小児先天性心疾患手術後患者のICU-acquired weakness(ICU-AW)の発症状況とそのリスク因子を調査すること。【方法】小児先天性心疾患手術後患者255例をICU-AW群と非ICU-AW群に分けて比較検討するとともに,多変量解析にてICU-AWのリスク因子を同定した。【結果】IUC-AWと判定されたのは65例(25.5%)で,多変量解析の結果,筋弛緩薬投与日数(OR:2.358,95%CI:1.693〜3.283,P<0.001),Aristotle basic complexity levels(OR:2.997,95%CI:1.383〜6.495,P=0.005)がリスク因子として同定された。【結論】小児先天性心疾患手術後患者の25.5%にICU-AWを認めた。また,ICU-AWのリスク因子については,背景心疾患や手術後管理が関連していた。
著者
笠原 聡子 梅原 美香 吉田 正隆
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.8-13, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
16

【目的】ニカルジピン塩酸塩の持続点滴治療を要する患者における静脈炎の発症要因を明らかにする。【方法】2017年5月から2018年12月にICUで末梢静脈からニカルジピン塩酸塩を持続点滴投与された患者118名(173カテーテル)について,後ろ向きに検討した。静脈炎の危険因子を多重ロジスティック回帰分析により特定し,ROC分析によりカットオフ値を求めた。【結果】静脈炎の発症率は19.7%であった。血清アルブミン値(オッズ比0.32,95%CI 0.14〜0.71, P=0.006)と投与速度の時間加重平均(オッズ比1.27,95%CI 1.10〜1.47,P=0.001)は静脈炎発症の有意な危険因子であり,投与時間(オッズ比1.02,95%CI 1.00〜1.04,P=0.057)の関連傾向もみられた。カットオフ値は,血清アルブミン値が3.3 g/dL,投与速度が4.1 mg/hr,投与時間が22.7 hrであった。【結論】血清アルブミン値が3.3 g/dL以下,投与速度が4.1 mg/hr以上,投与時間が22.7 hr以上の患者で静脈炎の発症リスクが高かった。
著者
浜野 宣行 高橋 幸利 岡本 明久 三木 博和 阪本 幸世 西 憲一郎 中尾 慎一 新宮 興
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.233-237, 2011-04-01 (Released:2011-10-05)
参考文献数
14

精神症状や痙攣発作などの辺縁系障害を認める辺縁系脳炎の中でも抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎が近年話題となっており,若年女性の卵巣奇形腫に合併する頻度が高いことが報告されている。我々は,若年女性の腫瘍合併を伴わない抗NMDA受容体脳炎の1症例を経験した。抗痙攣薬や鎮静薬投与下でも痙攣抑制が困難な状況が継続したが,ステロイドパルス療法による一時的な症状の改善は認められた。血液検査,脳波検査,画像検査などでは特に有意な所見は得られず,また腫瘍の検出にも至らなかった。しかし,髄液中のグルタミン酸受容体抗体が検出され,本症例の辺縁系脳炎における自己抗体の介在が示唆された。重度の辺縁系障害のために長期の人工呼吸管理を余儀なくされたが,緩徐な症状軽快を認め,ICUを退室した。辺縁系脳炎は稀な疾患であるが,比較的治療反応性であるため,本疾患を疑った場合には早期に抗体検査や腫瘍検索を行うべきである。
著者
垂石 智重子 上松 友希 酢谷 朋子 高田 基志 鈴木 照
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.39-42, 2014-01-01 (Released:2014-01-22)
参考文献数
13

若年2型糖尿病に合併した糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoasidosis, DKA)により心停止を来した症例を経験した。症例は35歳,男性。2型糖尿病に対し内服治療を受けていた。全身倦怠感を訴え近医に往診を依頼した。診察中に意識消失したため当院救急外来に搬送された。到着後心停止となったが,31分間の心肺蘇生にて自己心拍が再開しICU入室となった。ICU入室時,著明な高カリウム血症と低ナトリウム血症,高血糖を認め,さらに浸透圧利尿による血液濃縮を認めた。軽度低体温療法を施行しつつ,血糖,電解質補正および循環管理を行った結果,第13病日に症状改善し,ICUを退室した。2型糖尿病は本来ケトーシス抵抗性であるが,本症例では清涼飲料水の多飲により,いわゆるソフトドリンクケトーシスを引き起こし,それに伴うアシドーシスなどが誘引となり高カリウム血症を来し心停止に至ったと考えられた。
著者
日本集中治療医学会集中治療PT・OT・ST委員会 集中治療に従事する理学療法士等の能力要素検討ワーキンググループ
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.237-254, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

要約:日本の集中治療領域で働く理学療法士(physical therapist, PT)のためのミニマムスタンダード(MS)を合意形成することを目的として,集中治療に関して十分な経験を持つPT,医師,および看護師(それぞれ54名,44名,42名)を対象に,修正Delphi法を用いた調査を実施した。調査項目は,集中治療に関する潜在的な知識と技術272項目とし,すべての項目について,集中治療領域で働くPTのMSとして“必須である”,“必須でない”,“わからない”のいずれかで回答するように求めた。3職種のそれぞれにおいて70%以上が“必須である”と回答した項目をMSに合意したとし,PTのみ合意の場合は,MSの予備的項目として合意したと定義した。MSとして合意されたのは141項目,MSの予備的項目として合意されたのは58 項目であった。本調査で合意形成されたMSは,集中治療に関わるPTの質を担保し,チームでの診療を円滑かつ効果的なものにすると考えられる。
著者
水谷 敦史 加藤 俊哉 中山 禎司 本城 裕美子 影山 富士人 森 弘樹 小澤 享史 吉野 篤人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-79, 2013-01-01 (Released:2013-04-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

重症の急性鉄中毒により死亡した稀有な症例を経験したので,考察を踏まえ報告する。症例は23歳,女性。鉄欠乏性貧血の既往があり,処方されていた鉄剤(クエン酸第一鉄ナトリウム)を意図的に過剰服用し,当院に救急搬送された(推定摂取量2,400 mg)。当院来院時の症状は傾眠・腹痛・嘔吐であり,非重症の鉄中毒症例と思われたが,その後進行性に悪化し意識障害が出現,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)となった。デフェロキサミン投与,輸血療法,血漿交換,持続的血液濾過透析などの集中治療を行ったが,最終的に肝不全とその合併症(DIC・脳浮腫)により死亡した。急性鉄中毒重症例では,肝不全が完成した後に集中治療を開始してもその効果は乏しく,肝不全の発症予防および重篤化防止が重要であると考えられる。そのために,治療開始初期から消化管除染・デフェロキサミン投与・急性期血液浄化法などの集中治療を行うことが必要であると考えられた。
著者
日本集中治療医学会倫理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.210-215, 2017-03-01 (Released:2017-03-16)
被引用文献数
1 2

Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)の概念形成から約半世紀を経たが,いまだにその誤解と誤用が大きな問題になっている。日本集中治療医学会倫理委員会は,世界と本邦におけるDNAR指示の歴史と経緯を学び,その考え方を理解・把握して日本集中治療医学会会員諸氏に正しく伝えることを企画した。DNARは心停止時に心肺蘇生を行わない指示であり,ICU入室を含めて酸素投与,栄養・輸液,鎮痛・鎮静薬,抗不整脈薬,昇圧薬,人工呼吸器,血液浄化法など,通常の医療・看護内容に影響を与えてはいけない。倫理委員会は,本報告に基づきDNAR指示が正しい対象に正しい方法で運用されることを期待する。
著者
對東 俊介
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.503-509, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
51

重症患者に対するリハビリテーションの目的は,日常生活活動(activities of daily living, ADL)を維持,改善,再獲得することで,QOLを改善することである。重症患者に対するリハビリテーションはABCDEFバンドルの一つの要素として捉え,集中治療後症候群ost-intensive care syndrome, PICS)予防のために包括的な介入を行うべきである。重症患者においてリハビリテーションは死亡を改善しないが,身体機能やADLを改善するため,国内外のガイドラインで実施が推奨されている。近年はPICS予防のためのICU入室中のリハビリテーションだけでなく,ICU退室後のリハビリテーションやフォローアップが注目されている。臨床現場で遭遇する様々な障害や疾患に対するICU内およびICU退院後のリハビリテーションの最適な量,頻度,強度,期間,および種類を明らかにするために,さらなる研究が必要である。