著者
高橋 哲也 森沢 知之 齊藤 正和
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.267-276, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
29

要約:2018年度に「早期離床・リハビリテーション加算」が新設され,集中治療における理学療法が注目されている。集中治療における理学療法への期待は,早期離床,気道クリアランス,身体機能の改善,合併症の予防など多岐にわたる。ICU退出後にも,患者の呼吸機能の低下,身体機能の低下,認知機能の低下,生活の質の低下は長期に及ぶことから,集中治療後症候群(postintensive care syndrome, PICS)対策も重要な役割である。2020年,筆者らは「Minimum standards of clinical practice for physical therapists working in intensive care units in Japan」を発表した。これは集中治療に関わる理学療法士の質保証を促すだけでなく,集中治療チームにおいて理学療法士の仕事に対する理解を深めたり,集中治療で働く専門職の卒後教育ツールとして活用も期待できる。集中治療における理学療法士の役割は明確であり,集中治療における理学療法士の役割を確実に果たすためにも,理学療法士は自ら質向上に努めることが重要である。
著者
篠原 史都 飯田 有輝 森沢 知之 山内 康太 小幡 賢吾 神津 玲 河合 佑亮 井上 茂亮 西田 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.84-90, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
20

【目的】重症患者における入院関連能力障害(HAD)と退院後の介護予防の必要性との関連を調査することである.【対象と方法】2021年9月から2022年3月にICUにて48時間以上の人工呼吸管理を施行した20歳以上の患者を対象とする前向き観察研究である.HADの有無の2群で背景因子,退院3ヵ月後の転帰と生活状況等について比較した.生活状況の調査は基本チェックリストを用いて郵送にて行った.また,多重ロジスティック回帰分析を用いてHAD発生に関与する因子を抽出した.【結果】65例が解析対象者となった.HADは21例に発生した.HAD群で退院3ヵ月後の運動機能低下とフレイルの割合が有意に高かった.また,HAD発生の関連因子としてICU退室時の握力とFunctional Status Score for the ICU合計が抽出された.【結論】HAD群で退院3ヵ月後にフレイルを呈した症例が多かった.
著者
森沢 知之 岩田 健太郎 上野 勝弘 北井 豪 福田 優子 高橋 哲也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.10-17, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
14
被引用文献数
4

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病院における心臓リハ実施状況および実施にかかわる問題点を明らかにすること。【方法】全国の回復期リハ病院194施設に対し郵送法にてアンケート調査を実施した。【結果】アンケートの回収率は61.9%で,心臓リハ実施率は7.5%(9施設)であった。心臓リハ非実施の理由は「循環器専門医の不在」や「心臓リハ経験者の不在」など人的要因が半数以上を占めた。今後の心臓リハ拡大には「回復期リハ病棟入院対象者患者の基準緩和」,「心臓リハに関する卒後教育体制の充実」,「心臓リハ施設基準の緩和」が必要とする意見が多かった。【結論】回復期リハ病院での心臓リハ実施施設の増加のためには急性期-回復期病院の連携システムの構築,心臓リハにかかわるスタッフの教育体制の充実などが今後の課題であると思われた。
著者
大塚 翔太 中嶋 翔吾 柏木 彩矢菜 南 頼康 森沢 知之 高橋 哲也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.593-598, 2012 (Released:2012-12-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

〔目的〕どの程度の強度・時間でのストレッチが局所の血流を変化させ,筋酸素動態に変化を与えるかを調査することを目的とする.〔対象〕全ての測定プロトコルを完遂した健常大学生17名とした.〔方法〕下腿三頭筋に対し5ニュートンメートル(N・m)で60秒,5 N・mで120秒,10 N・mで60秒,10 N・mで120秒のストレッチ4パターンを無作為に合計4回行った.〔結果〕筋酸素動態は,10 N・mでのストレッチを120秒加えた方が有意な変化を示した.特に60秒~90秒間で,5 N・mと比べ有意な差を認めた.〔結語〕一定以上の時間・強度を用いないストレッチでは,ストレッチ中の筋血流制限やその後の反応性充血に乏しく,十分な代謝性の変化が得られないことが確認された.
著者
森沢 知之 岩田 健太郎 上野 勝弘 北井 豪 福田 優子 高橋 哲也
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11070, (Released:2015-12-08)
参考文献数
14
被引用文献数
6

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病院における心臓リハ実施状況および実施にかかわる問題点を明らかにすること。【方法】全国の回復期リハ病院194施設に対し郵送法にてアンケート調査を実施した。【結果】アンケートの回収率は61.9%で,心臓リハ実施率は7.5%(9施設)であった。心臓リハ非実施の理由は「循環器専門医の不在」や「心臓リハ経験者の不在」など人的要因が半数以上を占めた。今後の心臓リハ拡大には「回復期リハ病棟入院対象者患者の基準緩和」,「心臓リハに関する卒後教育体制の充実」,「心臓リハ施設基準の緩和」が必要とする意見が多かった。【結論】回復期リハ病院での心臓リハ実施施設の増加のためには急性期-回復期病院の連携システムの構築,心臓リハにかかわるスタッフの教育体制の充実などが今後の課題であると思われた。
著者
田内 悠太 荻野 智之 森沢 知之 大松 重宏 坂本 利恵 和田 陽介 道免 和久
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1099-1105, 2018-11-10

要旨 【目的】介護支援専門員(ケアマネジャー,care manager;CM)を対象に,心不全疾患理解度とケアプラン状況を把握することを目的とした.【対象・方法】2016年9月時点での兵庫県丹波医療圏域内に登録してある60か所の事業所に在籍しているCM 152名に対し,郵送法にてアンケート調査を実施した.【結果】回収率は71.7%.CMの心不全の疾患理解度は高かった(72.0%)が,ケアプラン作成においては「運動・活動量」の症状を反映しておらず,心不全モデルケースに対して身体活動量を維持・向上させるための運動支援系サービスの選択は少なかった.医療情報の収集では医師からは直接的に得ていたが,コメディカルからは書面上で間接的に得ており,情報提供書の有効性が高かった.【結語】CMの心不全疾患理解度に比して運動支援系サービスの選択が少ない原因として,身体活動量を含めた運動療法の重要性の認識が低く,在宅心臓リハビリテーションを推進するうえでの課題になっていると考えられた.
著者
湯口 聡 森沢 知之 福田 真人 指方 梢 増田 幸泰 鈴木 あかね 合田 尚弘 佐々木 秀明 金子 純一朗 丸山 仁司 樋渡 正夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0672, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 開胸・開腹術後患者に対して呼吸合併症予防・早期離床を目的に、呼吸理学療法・運動療法が行われている。その中で、ベッド上で簡易に実施可能なシルベスター法を当院では用いている。シルベスター法は両手を組み、肩関節屈伸運動と深呼吸を行う方法で、上肢挙上で吸気、下降で呼気をすることで大きな換気量が得られるとされている。しかし、シルベスター法の換気量を定量的に報告したものはない。よって、本研究はシルベスター法の換気量を測定し、安静呼吸、深呼吸と比較・検討することである。【方法】 対象は呼吸器疾患の既往のない成人男性21名で、平均身長、体重、年齢はそれぞれ171.0±5.2cm、65.3±5.6kg、24.9±4.0歳である。被験者は、安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸・深呼吸・安静呼吸または、安静呼吸・深呼吸・安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸のどちらか一方をランダムに選択した(各呼吸時間3分、計15分)。測定姿位は全てベッド上背臥位とし、呼気ガス分析装置(COSMED社製K4b2)を用いて、安静呼吸・シルベスター法・深呼吸中の呼吸数、1回換気量を測定した。測定条件は、シルベスター法では両上肢挙上は被験者が限界を感じるところまでとし、どの呼吸においても呼吸数・呼吸様式(口・鼻呼吸)は被験者に任せた。統計的分析法は一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey法)を用い、安静呼吸、シルベスター法、深呼吸の3分間の呼吸数、1回換気量の平均値を比較した。【結果】 呼吸数の平均は、安静呼吸13.02±3.08回、シルベスター法5.26±1.37回、深呼吸6.18±1.62回であった。1回換気量の平均は安静呼吸0.66±0.21L、シルベスター法3.07±0.83L、深呼吸2.28±0.8Lであった。呼吸数は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法と安静呼吸・深呼吸との間に有意差(p<0.01)を認めたが、シルベスター法・深呼吸との間に有意差は認めなかった。1回換気量は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法・深呼吸のいずれにも有意差を認めた(p<0.01)。【考察】 シルベスター法は深呼吸に比べ1回換気量が高値を示した。これは、上肢挙上に伴う体幹伸展・胸郭拡張がシルベスター法の方が深呼吸より大きくなり、1回換気量が増加したものと考えられる。開胸・開腹術後患者は、術創部の疼痛により呼吸に伴う胸郭拡張が制限されやすい。それにより、呼吸補助筋を利用して呼吸数を増加させ、非効率的な呼吸に陥りやすい。今回、健常者を対象に測定した結果、シルベスター法は胸郭拡張性を促し、1回換気量の増加が図れたことから、開胸・開腹術後患者に対して有効である可能性が示唆された。
著者
湯口 聡 丸山 仁司 樋渡 正夫 森沢 知之 福田 真人 指方 梢 増田 幸泰 鈴木 あかね 合田 尚弘 佐々木 秀明 金子 純一朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D0672, 2005

【目的】<BR> 開胸・開腹術後患者に対して呼吸合併症予防・早期離床を目的に、呼吸理学療法・運動療法が行われている。その中で、ベッド上で簡易に実施可能なシルベスター法を当院では用いている。シルベスター法は両手を組み、肩関節屈伸運動と深呼吸を行う方法で、上肢挙上で吸気、下降で呼気をすることで大きな換気量が得られるとされている。しかし、シルベスター法の換気量を定量的に報告したものはない。よって、本研究はシルベスター法の換気量を測定し、安静呼吸、深呼吸と比較・検討することである。<BR>【方法】<BR> 対象は呼吸器疾患の既往のない成人男性21名で、平均身長、体重、年齢はそれぞれ171.0±5.2cm、65.3±5.6kg、24.9±4.0歳である。被験者は、安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸・深呼吸・安静呼吸または、安静呼吸・深呼吸・安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸のどちらか一方をランダムに選択した(各呼吸時間3分、計15分)。測定姿位は全てベッド上背臥位とし、呼気ガス分析装置(COSMED社製K4b2)を用いて、安静呼吸・シルベスター法・深呼吸中の呼吸数、1回換気量を測定した。測定条件は、シルベスター法では両上肢挙上は被験者が限界を感じるところまでとし、どの呼吸においても呼吸数・呼吸様式(口・鼻呼吸)は被験者に任せた。統計的分析法は一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey法)を用い、安静呼吸、シルベスター法、深呼吸の3分間の呼吸数、1回換気量の平均値を比較した。<BR>【結果】<BR> 呼吸数の平均は、安静呼吸13.02±3.08回、シルベスター法5.26±1.37回、深呼吸6.18±1.62回であった。1回換気量の平均は安静呼吸0.66±0.21L、シルベスター法3.07±0.83L、深呼吸2.28±0.8Lであった。呼吸数は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法と安静呼吸・深呼吸との間に有意差(p<0.01)を認めたが、シルベスター法・深呼吸との間に有意差は認めなかった。1回換気量は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法・深呼吸のいずれにも有意差を認めた(p<0.01)。<BR>【考察】<BR> シルベスター法は深呼吸に比べ1回換気量が高値を示した。これは、上肢挙上に伴う体幹伸展・胸郭拡張がシルベスター法の方が深呼吸より大きくなり、1回換気量が増加したものと考えられる。開胸・開腹術後患者は、術創部の疼痛により呼吸に伴う胸郭拡張が制限されやすい。それにより、呼吸補助筋を利用して呼吸数を増加させ、非効率的な呼吸に陥りやすい。今回、健常者を対象に測定した結果、シルベスター法は胸郭拡張性を促し、1回換気量の増加が図れたことから、開胸・開腹術後患者に対して有効である可能性が示唆された。
著者
辻田 純三 武村 政徳 渋谷 智也 辻田 大 賀屋 光晴 山下 陽一郎 中尾 哲也 森沢 知之 狩野 祐司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0441, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】近年,筋膜リリースと呼ばれる徒手療法が再び注目されているが,これは筋膜を伸張したり捻じれを解きほぐしたりすることで筋と筋の間や他の組織との可動性や伸展性を改善することを目的に行われる手技であり,軟部組織に起因する多くの関節可動域制限に適応する治療手技と考えられている。しかしながら筋膜リリースを行っている時の筋膜・その他の構造物がどのような変化をしているかを直接示した先行研究はみられない。我々は経皮的な吸引により関節運動や筋収縮の無い状態でも筋群や深筋膜の滑走が起こることを利用し,徒手の筋膜リリースと同様に筋と筋の間や他の組織との可動性や伸展性を改善できることを経験している。この吸引を利用した治療アプローチ(吸引療法)による関節可動域の改善等については既に症例報告等をしている(Tsujita J, et al., 2015他)が,治療中に筋膜・その他の構造物がどのような変化をしているかを直接示したものはなく,また治療前後の深筋膜の滑走性や筋硬度の変化を評価したものはない。本研究の目的は,①大腿外側部の経皮的吸引(吸引療法)により皮下の外側広筋・筋膜の滑走が生じるかを示し,②吸引療法により外側広筋・筋膜の滑走が改善するかどうかを超音波画像を用いて検討することである。【方法】大腿四頭筋の疾患を患ったことのない健常成人7名(31±15.4歳)の両脚を対象とし,先行研究に準じて膝関節0度(伸展)から45度(屈曲)に他動的に関節運動を行った時の大腿外側面超音波画像を1分間の吸引療法前後で観察記録し比較した。吸引療法は,大腿外側部遠位2分の1を特殊なノズルを用いて吸引しながら,そのノズルを長軸方向に沿って約1Hzのリズムで往復させて行った。また7名の内4名(左右8脚)においては吸引療法中も大腿外側面超音波画像を記録した。超音波画像はImageJソフトウエアーを用いて外側広筋の外側部の筋膜および外側広筋と中間広筋との共同中間腱の移動距離を計測した。吸引療法中の筋膜の移動の有無を示すとともに前後の膝関節45度屈曲における移動距離を分散分析を用いて比較し,また先行研究における移動距離とも比較・検討した。【結果】膝関節屈曲45度における中間腱の移動距離(mm)は吸引療法前が吸引中の移動距離(mm)は26.8±7.57,吸引療法後32.2±7.39であり,吸引療法により有意に改善され先行研究の筋膜リリースと同等な効果が確認できた。また吸引療法中,筋膜で5.4±2.56,中間腱で6.0±2.33の移動が認められた。【結論】吸引療法中の筋膜の変化を示すことができ,また吸引療法による筋膜の滑走性も徒手の筋膜リリースと同等な改善が認められ,吸引を利用した治療アプローチ(吸引療法)は徒手療法の筋膜リリースと同様な効果が期待できるといえる。今回の吸引療法は1分間の処置であり先行研究の4分間より短時間で同等な効果を示したことになるが,より効果的であるかどうかはさらに検討したい。
著者
森沢 知之 岩田 健太郎 上野 勝弘 北井 豪 福田 優子 高橋 哲也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.10-17, 2016

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病院における心臓リハ実施状況および実施にかかわる問題点を明らかにすること。【方法】全国の回復期リハ病院194施設に対し郵送法にてアンケート調査を実施した。【結果】アンケートの回収率は61.9%で,心臓リハ実施率は7.5%(9施設)であった。心臓リハ非実施の理由は「循環器専門医の不在」や「心臓リハ経験者の不在」など人的要因が半数以上を占めた。今後の心臓リハ拡大には「回復期リハ病棟入院対象者患者の基準緩和」,「心臓リハに関する卒後教育体制の充実」,「心臓リハ施設基準の緩和」が必要とする意見が多かった。【結論】回復期リハ病院での心臓リハ実施施設の増加のためには急性期-回復期病院の連携システムの構築,心臓リハにかかわるスタッフの教育体制の充実などが今後の課題であると思われた。
著者
安達 裕一 岡村 大介 森 雄司 櫻田 弘治 榊 聡子 湯口 聡 森沢 知之 高橋 哲也
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.195-201, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
16

【目的】長期集中治療管理を要する高齢心臓外科術後症例における,ICUでの身体機能と自宅退院の関連について検討する。【方法】待機的に心臓外科手術を施行後,3日以上のICU管理を要した65歳以上の高齢者278例(年齢75±6歳,女性42%)を,自宅退院群245例と非自宅退院群33例に分類した。ICUでの身体機能評価にはfunctional status score for the ICU(FSS-ICU)を採用した。自宅退院の規定因子についてロジスティック回帰分析により検討し,自宅退院可否を予測するFSS-ICU得点のカットオフ値をreceiver operating characteristic(ROC)曲線より算出した。【結果】ロジスティック回帰分析の結果,年齢,手術時間,ICU退室日のFSS-ICU得点が自宅退院の規定因子として抽出された。ROC曲線による自宅退院を予測するICU退室日のFSS-ICU得点のカットオフ値は21点であった。【結論】長期集中治療管理を要する高齢心臓外科術後症例の自宅退院には,ICU退室日の身体機能が関連した。
著者
石原 広大 井澤 和大 森沢 知之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11747, (Released:2020-07-16)
参考文献数
18

【目的】我々は,腹部大動脈瘤破裂術後に腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:以下,ACS)を合併し,術後経過が重症化した症例に対して,理学療法を施行した。その後,良好な転帰を得たため報告する。【症例紹介】症例は,腹部大動脈瘤破裂術後にACS を発症した60 歳代後半の患者である。術後経過において,ACS による循環不全や呼吸不全,多臓器不全が認められ,長期集中治療管理と入院加療が必要であった。我々は,ACS の病態や術後経過に応じて,呼吸理学療法や離床,運動療法を展開した。その結果,症例は人工呼吸器の離脱が可能であった。また,身体機能と運動耐容能は向上し,自宅退院が可能であった。【結論】腹部大動脈瘤破裂術後にACS を合併した症例に対しても,病態に応じた慎重な理学療法は実施可能であり,早期の運動機能と基本動作能力の獲得に貢献できる可能性がある。