著者
パーマー アラン R. シャクレトン トレバー M. マクアルパイン ディヴィッド 古川 茂人
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.184-192, 2002-03-01
被引用文献数
1

人間やその他の哺乳類は音源の定位のために3種類の手がかりを用いている。そのうち二つは両耳的なもので,それぞれの耳における音のレベルあるいは時間の比較を行うものである。高周波音においては,レベルの差が頭による影の効果によって生ずる。低周波音においては,信号音がそれぞれの耳に到達する時間の差に基づいて定位が行われる。この時間差は音源からそれぞれの耳に到達する経路の差の結果として生ずる。三つ目の手がかりは,鼓膜におけるスペクトルのピークとトラフ(谷)のパターンが,音源の上下に依存して変化することに基づいている。このパターンは複数の音波が鼓膜付近において干渉することで生ずるものである。これら三つの定位手がかりは,それぞれ異なった生理学的機構によって処理される。鼓膜における音波の干渉によって生ずるスペクトルの溝(notch)に対しては,背側蝸牛神経核のニューロンが選択的に感度が高い。外側上オリーブには,片側の耳から抑制性,もう片側の耳から興奮性の入力を受けるニューロンが存在し,両耳間レベル差の第1段階の処理がそれらのニューロンによってなされている。内側上オリーブにおいては,両耳から興奮性の入力を受け,その入力が時間的に同時に到着したときにのみ発火するようなニューロンが存在する。両耳間時間差の情報は,それらのニューロンの発火率に変換されるのである。本稿では,そのような同時性検出機構の音源定位への寄与について,最近得られた知見を基に検討する。
著者
田原 靖彦 佐藤 洋 西谷 修一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.14-23, 2004-12-25 (Released:2017-06-02)
参考文献数
13

エコーが分離して知覚される限界の遅延時間(dTJd)の測定を通じて,聴覚の積分特注が検討された。聴感実験の音源としてインパルス,帯域ノイズパルス,純音パルス,そして日本語の4連音節単語が使用された。本研究により以下の知見を得た。1)聴覚積分による音感覚の減衰過程は,一般的にベキ乗関数によって表現される。しかし,実験音源とエコーレベルの範囲を限定すれば指数関数による表現も可能である。2)エコーが分離知覚されるための直接音とエコーの間の最小空白時間(臨界無音時間)は音源の匪類によらず約9msとなる。3)第2エコーのdTJdは,第1エコーを第2エコーの直接音と見なして,単一エコーの分離知覚モデルを適用することで説明できる。これらの結果を通じて,室内音響評価指標の改良に重要な意味を持つ,聴覚減衰過程の関数型,各種の聴覚パラメータ,エコーの分離知覚メカニズムが明らかとなった。
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.178-179, 2018-03-01 (Released:2018-09-01)
著者
田中 秀幸 永井 啓之亮 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.148-155, 2000-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

本研究の目的は, ピアノ1本弦の2次元的な振動を光学的に測定し, その性質を見出すことである。測定装置は単一のフォトトランジスタを用いた測定装置を2セット用意し, ピアノ弦の2次元振動の詳しい振る舞いを測定した。その結果, ハンマで垂直方向には叩かれた弦が水平方向の振動成分を持つのは, 駒からの寄与によるということが実験的に明らかにされた。また, 弦は2次元の回転運動をするが, その回転方向は周期的に入れ替わる。すなわち, 駒の与える境界条件によって, 垂直振動は水平振動よりもわずかに周波数が低くなる。更に, ピアノの1本弦から発生される音は従来言われているように2段減衰をするが, 調波成分によって, 減衰の仕方が大きく変わることが分かった。