著者
松本 弘 丸山 靖史 井上 博夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.549-555, 1994-07-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

本論文は、教師あり及び教師なしスペクトル写像とパワースペクトル包絡(PSE)分析合成系に基づく声質変換法を検討している。教師つきの場合、入力話者のスペクトルは、代表スペクトルの入力・目標話者間の差を歪最小基準で内挿することによって写像される。また、教師なし方法では、目標話者の符号帳と、これをファジー目的関数最小基準で入力話者に適応化した符号帳を用い、ファジー写像を利用して変換される。変換音声と目標音声との対比較による話者識別実験で評価を行い、男声男声変換では、どちらの方法についても平均識別率84%を得た。また、男声女声変換では、教師つき方法で平均70%の識別率が得られた。
著者
牧 勝弘 赤木 正人
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.55-64, 2011-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

聴神経の発火頻度は,音の立ち上がりに対して高く,その後急速に低下する(順応)。この順応は音圧レベルの影響を強く受け,その特性は個々の聴神経で大きく異なっている。従来のモデルは,順応の音圧レベル依存の性質を模擬できず,複数の聴神経の順応特性を模擬することができなかった。本研究では,内有毛細胞の受容器電位の生成機構について新しい機能モデルを提案し,従来の内有毛細胞モデルとパルス列を出力する聴神経モデルを組み合わせることで聴覚モデルを構築した。モデルの出力を生理データと比較することでモデルの評価を行い,本モデルが,複数の聴神経の順応特性を,音圧レベル依存の性質まで含めて定量的に模擬できることを示す。
著者
広根 万里雄 曽根 敏夫 二村 忠元
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.487-495, 1975-08-01 (Released:2017-06-02)

A theory of the excitation of a clarinet was proposed in case that no performer's lips were applied to the reed of the instrument, by assuming the interaction between the air column and the reed and considering the vibration of reed as a bending vibration of beam. The results of calculation were compared with those of experiment on a model clarinet specially prepared in order to make both experimental condition and theoretical assumption coincide. In Section 2, the method of calculation of the resonance frequency of reed itself is shown ; the calculation was based on the assumption that the reed vibration is well represented by one-dimensional bending vibration of beam. Section 3 depicts the equation (Eq. (14)) of motion of the reed of instrument and the wave equation (Eq. (13)) of air column. These equations were solved simultaneously and from the results of analysis the frequency equation was obtained, which gave the dependence of the excited frequency (including higher order modes) on the physical blowing condition of the instrument. In Section 4, an example of the excited frequency calculated from the frequency equation is first shown (Fig. 7) based on presumable values of the material constants for a standard reed, together with the resonance frequency of the reed. Next, for confirming the above mentioned theoretical results, calculation was performed for the excitation of an instrument with metal reeds of precisely defined material constants and geometrical form. Table 4 and Figs. 8 and 9 show the observed and calculated results of the excited frequency of the model clarinet mentioned above as a function of the pipe length. And for comparison, the resonance frequency of reed itself calculated by the method described in Section 2 is presented in the same table and figures, in which it is shown that the results of calculation and experiment coincide satisfactorily well. It was also made clear that the excited frequency of the clarinet without application of performer's lips is deviated to some extent from the resonance frequency of reed, and that the change of excited frequency due to the pipe length is nearly proportional to the resonance frequency of the air column. In this case, the change of excited frequency was small compared with that of resonance frequency of the air column, and there existed a frequency region in which the clarinet was difficult or perfectly not to be excited according to a certain relation existing between the resonance frequency of reed and that of air column (See Figs. 8 and 9).
著者
永井 洋平 小野 晃明 小幡谷 英一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.587-592, 2006-08-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
小幡谷 英ー 則元 京 長松 正明
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.24-29, 1995-12-25 (Released:2017-06-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

7種類の材質のクラリネット用リードを作製し, 奏者による官能検査を行った。そして, 奏者によるばらつきの小さかった音色の良さの心理量を, リードに用いた材料の幾つかの物性値と比較した。音色の心理量Tmと, リードの長さ方向の音速V_Lとの間には, 正の相関が, 幅方向の動的ヤング率E_Wとの間には, 負の相関がそれぞれ存在した。その結果, T_mとlog(V_L^7/E_W)との間には, 良好な直線関係が認められた。プラスチック材料のリードのT_mが低かったのは, その物性値が等方的であるためと推察された。一方, アカエゾマツやキリで作られたリードのT_mが, 葦(Arundo donax L)で作られたリードのそれよりも高く評価された。この結果から, ある種の木材を葦の代替材として用いる可能性が示唆された。
著者
宮崎 謙一 石井 玲子 大串 健吾
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.780-788, 1994-10-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

単独に提示された音の音楽的音高名を音高コンテクストとは無関係に絶対的に同定することができる絶対音感の能力は、従来から音楽に深い関わりを持つ能力とされてきた。しかし音楽が本質的に相対的音高関係の上に成り立つものであることを考えると、この絶対音感の能力が音楽にとってどのような意義を持つものであるかが問題となる。そこで、絶対音感を持つ音楽専攻の大学生が、相対的音高関係をどのように認知するかを調べる目的で実験を行った。絶対音感テストの結果から、被験者を3グループに分けた。実験課題は、音譜で視覚的に提示されたハ長調の7音メロディと、ハ長調、1/4音低いホ長調及び嬰ヘ長調の3通りのいずれかの調で聴覚的に提示された7音メロディとが旋律的に同じか違うかを判断することである。実験の結果、どのグループもハ長調でメロディが提示された場合に比べて他の調で提示された場合に正答率が低下し、反応時間も長くなるという結果が得られた。また、正確な絶対音感を持つグループでは、絶対音感と巧妙なストラテジを組み合わせて判断したものが多くみられた。これらの結果から、音楽的音高処理において絶対音感が持つ問題点について考察した。
著者
山本 修央 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.61-65, 2004-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
7

本稿では,イントラコンカ型ヘッドホンを周波数特性からランク付けする手法を提案し,聴取実験によりイントラコンカ型ヘッドホンの周波数特性とその音質との関連性を検討する。これまで我々は,設計目標が未知であるイントラコンカ型ヘッドホンの設計目標として,自由空間における線形歪のないスピーカ正面1[m]位置における頭部伝達関数を提案し,聴取実験によりその有効性を検証してきた。その結果かなりの有効性が示された。そこで本稿では,頭部伝達関数はイントラコンカ型ヘッドホンの設計目標として有効であるという立場から,既存のイントラコンカ型ヘッドホンの周波数特性がどの程度頭部伝達関数の周波数特性に一致しているかを検証することで,イントラコンカ型ヘッドホンのランク付けができるかどうかを検討する。また,イントラコンカ型ヘッドホンの周波数特性とその音質との関連性を聴取実験により検討する。
著者
杉江 聡
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.412-413, 2016-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
2
著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.151-162, 2017-03-01 (Released:2017-09-01)
参考文献数
34

話者の匿名性確保を目的とした声質変換の応用可能性を検証した。スペクトル周波数軸の伸縮によって声道長操作を模した変換音声を評価した。(1)声の自然性は声道長に対して放物線状に変化した。男声・女声ごとに最も自然に感じる声道長の存在可能性と共に,変換範囲の周縁部での品質低下が指摘された。また,声道長に比例する形で大柄な話者が想起された。なお,F0は同一でも,声道長が長いと声は低く認知された。(2)声道長を変えると別の人の声として認識され,逆に別人の声でも声道長を揃えると混同された。(3)変換音声による英語リスニングテストの成績は,標準的なテストの成績とほぼ遜色ないが,更なる品質向上が求められる。
著者
佐藤 正典 藤井 壽崇
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.356-358, 1997-05-01 (Released:2017-06-02)

超音波をフォノンの集合体としてとらえ媒質によるフォノンの反射と吸収によりLangevinの放射圧の発生メカニズムを解析し, 流体力学を用いた取り扱いと比較した。周波数をω, 波数をkとするとフォノンはエネルギーhωと運動量hkを持つ。超音波と媒質で運動量の保存則が成り立ち, 媒質はフォノンの吸収で同量の運動量を, 反射では2倍の運動量を受け取り音の放射圧を受ける。フォノンの個数計算による運動量の受け渡しから音の放射圧を求め, これが従来の流体力学的取り扱いと同じ結果を与えることを示しフォノンによる取り扱いは見通し良く音の放射圧のメカニズムを説明することを述べる。
著者
安倍 幸司 小澤 賢司 鈴木 陽一 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.343-350, 1998-05-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
12

本研究では, 環境音の知覚を探ることを目的として, 従来の研究で用いられてきた「音色を表現する評価語」に加え, 「音を聞いた際に人がいだく感情を表現する評価語」と「音の持つ情報に関する評価語」を用いた評価実験を行った。実験は, 66種類の刺激音と, 39種の評価語対を用い, SD法により行った。実験結果を因子分析した結果, 第一〜第三因子として, 「美的」, 「明るさ」, 「量的」という音色の3因子に相当する因子が得られた。また, それらとは独立に, 「音の定位情報に関する因子」, 「音源情報に関する因子」, 「音の存在意義に関する因子」, 「懐古・郷愁因子」が得られた。更に, 人が音を聞いた際にいだく感情は, 音の美的因子と相関があることが分かった。
著者
宇津野 秀夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.513-520, 2010-10-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1