著者
ササキ ドリズ 樋元 淳一 伊藤 和彦
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.275-280, 2003-09-30

北海道で栽培中開発中の油加工用ジャガイモのうち、代表的な(トヨシロ、ホッカイコウガネ、ノースチップス、P982)を用い、2℃および6℃の条件で6ヵ月貯蔵実験を行った。測定は成分および各種物性値について行った。その結果、還元糖含量、ポテトチップスの外観および萌芽率は品種と貯蔵温度に影響を受けることが明らかになり、2℃で貯蔵した試料の萌芽は6ヵ月間にわたって完全に抑制できたが、還元糖含量は6℃で貯蔵した場合に比較してすべての品種とも大きく増加した。還元糖、ポテトチップスカラーおよび萌芽率は品種間および貯蔵温度によって有意な差を認めることができた。ノースチップスおよびP982の両品種は6ヵ月間の貯蔵を行った後でも還元糖含量が他の品種に比較して低い値を示し、これらを原料に加工したポテトチップスの外観は10℃で貯蔵した場合とほぼ同程度を示し、消費者を満足させるのに十分な状態を示した。
著者
東尾 久雄 一法師 克成 伊藤 秀和 東 敬子
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.303-307, 1997-11-30
被引用文献数
1

浅漬の賞味期限と密接な関係がある漬液白濁の起こり易さと原料野菜との関係を検討した。<BR>浅漬の漬液白濁の起こり易さは野菜の種類で異なった。キュウリの浅漬は他の野菜のものに比べて白濁が起こり難かったが, 接木による影響はなかった。漬液白濁が起こり易いハクサイにキュウリを同封したところ, いずれの量のキュウリ添加によっても, 漬液は白濁した。漬液中のカリウムイオン濃度は浅漬加工後の貯蔵中に増加したが, 野菜の種類で異なった。漬液中の全糖リンゴ酸含量は貯蔵中に一端増加した後減少したがその変化の程度は野菜の種類で異なった。アミノ酸含量もキャベツ・キュウリ・ナス浅漬で同様な変化が見られたが特にキャベツで大きく変化した。収穫及び水洗後のキュウリ・ナス・ダイコンに付着していた総生菌数グラム陰性菌, 真菌及び乳酸菌のいずれの菌数もキャベツに比べ少なかった。
著者
岡 大貴 入澤 友啓 野口 智弘 内野 昌孝 岡田 早苗 高野 克己
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.121-125, 2011-05-31

せんだんごは,対馬において伝統的な手法で,サツマイモから製造された澱粉である。せんだんごは'ろくべえ'という麺をはじめ,主食から間食まで幅広く加工利用されている。せんだんごは澱粉が約90%,繊維質が約6%を占め,SEMの結果,繊維質によって複数の澱粉粒が固まりとして存在していた。さらに,その繊維質はサツマイモ澱粉単独では形成できない生地のつなぎとなり,せんだんごより調製したろくべえは,冷麺やうどんとは異なるテクスチャーを示した。
著者
中内 道世 池本 重明 山西 妃早子 尾崎 嘉彦 築野 卓夫 野村 英作 細田 朝夫 谷口 久次
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.183-188, 2002-07-31
参考文献数
18
被引用文献数
1 7

合成したフェルラ酸誘導体31種類について, 細菌, カビ, 酵母に対する抗菌活性を評価した。供試した化合物のうち, 12種類の化合物がグラム陽性細菌, カビおよび酵母の増殖を抑制することを見い出した。それらのうちMICの測定に供した化合物のほとんどがフェルラ酸より抗菌力が向上した。フェルラ酸ブチルとフェルラ酸-2-メチル-1-ブチルは, <I>B. subtilis, S.aureus, S. cerevisiae</I>に対して顕著な増殖抑制を示した。フェルラ酸ヘキシルは, <I>B. subtilis, S.aureus</I>の増殖を顕著に抑制したが, カビ, 酵母に対してはその増殖に影響を与えなかった。一方, フェルラ酸メチル, フェルラ酸エチルはグラム陰性菌を除くいずれの供試菌に対しても増殖抑制作用を有し広い抗菌スペクトルを示した。フェルラ酸エステル類の抗菌活性は, アルキル基鎖の伸長に伴いグラム陽性細菌に対する抗菌力が向上し, 同時に細胞毒性も増すという傾向が認められた。フェルラ酸メチルおよびフェルラ酸-2-メチルー1-ブチルについては, 市販の食品保存料であるソルビン酸や安息香酸と同程度またはそれ以上の抗菌活性を有し, 細胞毒性試験でも100μMの濃度では, マウス由来線維芽細胞株Balb/c3T3A31-1-1の増殖にほとんど影響を与えず, 新たな食品用抗菌剤として検討できるレベルにあることが示唆された。
著者
阿部 一博
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.283-290, 2006-11-30
被引用文献数
3 5

近年の社会情勢や食環境の変化とともに食習慣や食素材の形態も移り変わり、特に簡便性を有するカット青果物の流通・消費量が急激に増加し、日本では最近10年程の間に2,000億円を超える市場規模となっている。カット青果物の先進国であるアメリカ合衆国では、2005年のフレッシュカット青果物の売上総額は前年比10%増の60億ドル(6,900億円/1ドル=115円換算)に達し、全国青果物小売総売上額の16%を占めることが、国際フレッシュカット青果物協会の市場調査で明らかになっており、日本におけるカット青果物の消費量のさらなる増加が予想される。一方、栄養士志望の若い女性を対象として、2005年に筆者が実施したアンケート調査においても、カット青果物の利用頻度が今後も高まることが明らかになっている。筆者は、1987年ごろから十数年間にわたってさまざまなカット青果物を研究の対象としており、また、基礎的な研究から応用研究まで幅広い分野の研究結果を報告しているので、それらを11項目に分けて記載する。
著者
荒木 忠治 長谷川 美典 伊庭 慶昭
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.343-347, 2001-12-31
被引用文献数
1

セイヨウナシ,バートレット,ラ・フランス,パス・クラサン,ウインター・ネリスおよびドヴァイァン・ジュコミスの果肉成分中,糖,酸,ペクチン組成,性状別含量と組成比の違いを調査した。<BR>(1) 収穫時の全糖含量は,バートレット,ラ・フンスパス・クラサンが9-11%,ウインター・ネリス(冷蔵40日)が12%,ドヴァイアン・ジュコミス(冷蔵60日)が11%であった。<BR>(2) 主な構成糖は,全品種ともショ糖,ブドウ糖,果糖およびソルビトールで,主要糖は果糖である・収穫時の含量と比率は,バートレットとラ・フランスが6-8%(全糖の60-70%),他の3品種は8-10%で,(同81-85%)を占めた。<BR>(3) 収穫時の全遊離酸含量は,バートレットが0.3-0.4%,他の品種は0.2%台で,主要酸はバートレットのみがクエン酸で,他はリンゴ酸であった。<BR>(4) 収穫時の全ペクチン含量は,バートレットが約400mgで,既報値に比べ少なく,パス・クラサンは500-600mg,ラ・フランスは470-690mgと年次による変動が著しかった。<BR>性状別含量は,バートレットのW-Pが約70mg,ラ・フランスとパス・クラサンは90-130mg,Na-Pが310-525mgで,両画分の比率はほぼ20:70であった。<BR>H-P画分は,30-60mgで6-12%を占め,品種間差や追熟による変化少なかった。<BR>本試験は,農林水産省・大臣官房企画室の「果実等の省エネルギー地下貯蔵技術開発」調査事業の一部として行われた。
著者
阿知波 信夫
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.91-99, 2006-05-31
被引用文献数
7 8

日本は今、"豊食"の時代と呼ばれ、多種多様な食べ物を、しかも手軽に入手し摂食することができる。しかしながら、遺伝子組換え野菜、残留農薬問題、調理時の微生物汚染由来の食中毒など、食の安全の確保は最も重要なテーマのひとつである。そこで、これら様々な問題を解決する手段として電解水に着目し、各ステージに合った具体的利用とそのときの効果をまとめた。第1章で農産物の生産現場での病害の防除を目的とした利用法について、第2章では培養液ならびに葉面散布液として利用したときの農産物の生育ならびに内容成分への影響について、第3章では収穫後の農産物の微生物汚染の機序とその対策について、そして第4章では最も一般的な殺菌剤である次亜塩素酸ナトリウムと比較したカット野菜への殺菌効果ならびに品質への影響について調査した結果を報告する。
著者
石丸 恵 茶珍 和雄 上田 悦範
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.89-93, 2003-03-31
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

刀根早生'果実は脱渋後の肉質が緻密で柔らかく最も人気のある渋ガキ品種の一つである。'刀根早生'果実の主な脱渋方法は固形アルコールによる樹上脱渋とCO, 脱渋 (CTSD法) であり, 樹上脱渋とCO<SUB>2</SUB>脱渋後の軟化速度は異なっている。そこでその違いをCO<SUB>2</SUB>排出量とエチレン生成の変化ならびに果実の軟化に密接に関係するヘミセルロース構成糖の分解酵素の一つであるβ-D-galactosidase活性の変化から検討した。<BR>(1) CO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実の呼吸量およびエチレン生成量は貯蔵後期に増加する傾向を示し, 樹上脱渋果実は無処理およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実より低く, 貯蔵期間中低いレベルを維持した。<BR>(2) 貯蔵期間中のβ-D-galactosidase活性は, 無処理果実およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実において収穫後2日から3日に活性が増大し, 収穫後7日にはその活性は収穫直後の約1.6~2倍になった。樹上脱渋果実は, 貯蔵期間中無処理およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実より低い活性であった。<BR>以上より, カキ'刀根早生'果実の収穫後の急速な軟化とβ-D-galactosidaseの活性は関係があると思われた。また, β-D-galactosidaseの活性とエチレン生成量は同様の傾向を示したことからエチレンによって誘導されたβ-D-galactosidaseがヘミセルロースを分解し, 最終的に指で押すと組織が崩壊しそうになる軟化現象を引き起こしていると思われた。
著者
田村 文男
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.315-321, 2009-11-30