著者
大城 昌平 松本 司 横山 茂樹 藤田 雅章
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.463-468, 1990-09-10 (Released:2018-10-25)

全身性関節弛緩症(GJL)が足関節不安定性の発症や病態にどのように関与しているか,特に足関節の捻挫既往,及びスポーツ活動の関連について知るため,GJLの58例116足関節を対象に,中等度以上の捻挫既往の有無と3年以上のスポーツ歴の有無について問診し,足関節の機械的不安定性の指標としてストレスX線撮影,機能的不安定性の指標として片脚立位での重心動揺の測定を行った。まず,症例を捻挫既往の有無により2群に分けて検討した。次に,3年以上のスポーツ歴の有無と,さらに捻挫既往の有無により分けた4群について検討した。その結果,GJL,あるいはGJL存在下でのスポーツ活動そのものは足関節不安定性に直接的に関与しているのではなく,捻挫既往の有無が,足関節不安定性の重要な関連因子であることが示唆された。
著者
佐藤 仁 高橋 輝雄 加藤 宗規
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.286-287, 2001
被引用文献数
1

学内において,学生が抱く障害イメージを教員が客観的に把握する指標を見出すことを目的とし,Barthel Index(以下,BI)を用いて検討した。「脊髄損傷に対する理学療法」の授業初日および最終日において,学生33名に対麻痺者に対するイメージをBIで得点化させた。BI平均点は,授業初日50.0 ± 12.4点,授業最終日には77.9 ± 12.4点と増加した(p<0.01)。授業最終日には,上肢機能を要する日常生活活動を自立のイメージとした学生数が増加した。また学生は授業聴講以前より,対麻痺者に対して整容は自立,移動は車椅子というイメージを抱いている傾向にあり,他の教科やマスメディアによる先行学習が形成されていることが推察された。学生が抱く障害イメージを客観的に把握するには,BIがひとつの指標として利用できることが示唆された。
著者
田平 一行 関川 則子 岩城 基 河戸 誠司 関川 清一 川俣 幹雄 大池 貴行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.59-64, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

症状の安定した慢性閉塞性肺疾患患者16名を対象に胸郭モビライゼーションを行い,即時効果について検討した。治療手技は米国Rancho Los Amigos病院で体系化された徒手胸郭伸張法を一部変更して実施し,治療前後の肺機能検査,胸郭拡張差,動脈血酸素飽和度,脈拍数,呼吸困難感を比較した。その結果,治療後に有意に第10肋骨部の胸郭拡張差は増加,心拍数は減少したが,その他の項目には変化を認めなかった。対象者の中から拘束性換気障害を合併した11症例を抽出し検討すると,更に腋窩部,剣状突起部の胸郭拡張差,肺活量,比肺活量でも有意な改善が認められた。これらは胸郭モビライゼーションによって,呼吸筋の柔軟性,関節可動性などが改善することによる効果と考えられた。慢性閉塞性肺疾患患者でも,特に拘束性換気障害をも合併した混合性換気障害の症例が胸郭モビライゼーションの良い適応になると思われた。
著者
高取 克彦 梛野 浩司 山本 和香 下平 貴弘 森下 慎一郎 立山 真治 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.352-356, 2003
参考文献数
15
被引用文献数
2

変形性膝関節症にて全人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:以下TKA)を受けた症例に対して,深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:以下DVT)の予防を目的とした下肢の神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)を実施し,その臨床的実用性を検討した。対象は,本研究に対して同意を得られた16例(男性2名,女性14名,平均年齢68.6 ± 8歳)とした。NMESは術直後から離床まで継続的に実施し,その臨床的実用性を以下の3項目(1.電気刺激に対するコンプライアンス,2.刺激強度の定常性,3.電極の皮膚への影響)で評価した。DVTの有無については,腫脹,Homan's徴候などの理学的所見と凝固線溶系マーカーのFDP D-dimer(以下D-dimer)値によるスクリーニング評価にて実施した。刺激に対するコンプライアンスは15例が手術直後からドレーンチューブ抜去までNMESが実施可能であり良好であった。1例のみ刺激に対する不快感によりNMESを一時中断した。刺激強度は麻酔の影響,発汗などにより定期的な調節が必要であった。電極の皮膚への影響は1例のみ皮膚の発赤が認められた。DVTスクリーニング評価では明らかな下肢腫張が3例,腓腹筋把握痛が3例に認められたが,D-dimer値は全症例正常範囲内であった。今回の結果から,本法は刺激強度の定常性や皮膚への影響などの課題を改善することで,臨床的実用性が獲得できるものと考えられた。
著者
小林 孝誌
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.374-379, 1995-11-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16
著者
吉田 剛
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.226-230, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
藤川 博樹 宮下 浩二 浦辺 幸夫 井尻 朋人 島 俊也
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20
被引用文献数
1

【はじめに】野球は全身を使うスポーツであり、ピッチングやバッティングは特に身体の回旋運動が重要となる。この回旋運動には股関節の内旋が関与しており、その制限は腰痛や投球障害などの外傷発生やパフォーマンスの低下につながると考えられている。しかし、野球選手のなかには、非荷重位で股関節内旋可動域に制限がないにも関わらず、荷重位で骨盤を回旋させると股関節内旋に制限が発生し、結果として骨盤回旋運動が制限される者がみられる。そこで、今回は荷重位での骨盤回旋運動制限の影響について3名の選手の例を提示し、その問題点と対応について報告する。<BR>【症例紹介】選手Aは27歳、身長178cm、体重75kg、右サイドスローの投手である。主訴はピッチングのフォロースルーにおける右肩棘下筋の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも10°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で骨盤の左回旋運動に制限がみられた。ピッチングのフォロースルーでも同様に骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に右肩関節の水平内転、内旋運動が過剰になっていた。選手Bは22歳、身長175cm、体重75kg、右オーバーハンドスローの投手である。主訴はピッチングの加速期における右肩関節前方の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも30°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で、骨盤の左回旋運動に制限がみられ、これを代償するように脊柱の左回旋運動が強まっていた。ピッチングの加速期でも骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に脊柱の左回旋運動が大きい、いわゆる「上体の開いた」フォームとなり右肩関節の水平外転、外旋運動が強まっていた。選手Cは29歳、身長176cm、体重78kg、左投、左打の内野手である。主訴はバッティングのインパクト時に生じる右腰部の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも20°であったが、荷重位で骨盤を回旋させると右股関節の内旋が不十分で、骨盤が右に水平移動して脊柱の左側屈が強まっていた。バッティングのインパクト時にも同様の運動がみられた。<BR>【問題点】上記の3選手は、荷重位での股関節内旋が不十分で、これが骨盤回旋運動を減少させていた。その結果、投球動作や打撃動作に変化が生じ、肩関節や腰部への負担が増大し、痛みが発生したと考えた。<BR>【経過】荷重位でのみ股関節内旋に制限がみられたことから、関節可動域ではなく、いわゆる「身体の使い方」に問題があると考えた。これらに対し、股関節を中心とした骨盤回旋運動のエクササイズを実施した。その際、足部の荷重位置、脊柱や骨盤のアライメントも意識して行わせた。その結果、3選手とも荷重位での骨盤回旋運動制限は消失し、主訴であったプレイ中の肩関節や腰部の痛みが解消した。また、パフォーマンス面でも満足感が得られた。<BR>
著者
名塚 健史 遠藤 浩士 長瀬 エリカ 佐々木 良江 鮫島 菜穂子 竹中 良孝 北村 直美 浦川 宰 根岸 朋也 山田 智教 藤縄 理 高倉 保幸
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【はじめに】今回、埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進委員会(以下スポリハ委員会)では埼玉県高等学校野球連盟(以下高野連)の依頼により、第88回全国高等学校野球選手権埼玉大会(以下選手権大会)、秋季埼玉県高等学校野球大会(以下秋季大会)でメディカルサポートを実施した。そこで、実際の活動内容と今後の課題について考察し報告する。<BR><BR>【方法】選手権大会は準々決勝、準決勝、決勝の7試合、2球場で各日程4名、秋季大会は準決勝、決勝の3試合、1球場で各日2名の体制でサポートを行った。サポートスタッフはスポリハ委員会の中から甲子園でのサポート、スポーツ現場での活動経験があるメンバーを中心に構成した。サポート内容は試合前後のコンデショニング・テーピングなど、試合中は所定の場所で待機し、デッドボールなど緊急時の対応を行った。実際に行ったサポートの内容はすべて記録し、1日毎終了後高野連側へ提出した。<BR><BR>【結果】実際の活動は、テーピング、外傷に対するチェックと応急処置、試合後のコンディショニングが活動の中心であった。選手権大会はテーピング2件、外傷後のチェック約15件、アイシング2件、熱中症の対応数件、コンディショニング1件であり、秋季大会はテーピング1件、外傷後のチェック約8件、アイシング1件、コンディショニング4件であった。最も多かったのは外傷後のチェックとコンディショニングであり、1試合平均3~4件程度の活動を行った。部位の内訳は、テーピングは肘関節2件、手関節1件、コンディショニングを利用したのは2チーム5名で下肢1件、肩関節2件、腰部2件であった。<BR><BR>【考察】全体的に活動の件数が少ない傾向にあった。外傷のチェックは圧痛や運動痛など疼痛の問診を中心に行ったが、選手は試合を続けたいがために症状を正確に伝えていない可能性が考えられた。また、今回の活動は埼玉県の高野連では初めての試みであり、事前の説明が不足していたことも加わって選手や監督にサポートの内容が浸透していなかった可能性が考えられる。このため、潜在的には今回関わった以上の傷害が生じていた事が予測された。このことより、事前の組み合わせ抽選会などで理学療法士が直接サポートの説明やストレッチのデモンストレーション、障害予防の講演などを行い、サポート活動や障害予防に対する認識を向上させる必要があると感じた。今後も春季大会、夏の選手権大会、秋季大会とサポートを行うことが決まっており、サポート内容、質の向上、事前の啓蒙活動などが今後の検討課題となった。<BR>
著者
阿部 長 丸山 泉 原 直哉 明吉 康則
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.232-236, 1996
参考文献数
10
被引用文献数
1

脳卒中片麻痺患者(CVA患者)21例を対象に,下肢筋の能力の一部である筋持久力が歩行耐久性に及ぼす影響について検討した。対象は屋内歩行自立以上の歩行能力を有するCVA患者の内,麻痺側下肢のBrunnstrom stageがIV・Vの者に限定した。両側下肢の筋持久力及び歩行耐久性の指標として,膝伸展最大収縮20回前後の膝伸展筋力と300m最速歩行前後の歩行速度の低下率を用いた。また,歩行耐久性評価時に歩行率・重複歩距離に関しても前後比を求め,それぞれ比較した。その結果,麻痺側下肢のみ,筋持久力と歩行耐久性とに正の相関関係を認めた。また,歩行率及び重複歩距離の前後比はt検定で有意差を認めなかった。これらの結果より,麻痺側下肢の筋持久力が高い者程,歩行耐久性も高いと考えられた。