著者
山田 実
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.70-71, 2009-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本研究の目的は,複数課題条件下の移動能力トレーニングであるTrail Walking Exercise(TWE)の臨床効果を,無作為化比較対照試験によって検証することである。対象は特定高齢者60名(80.5 ± 5.6歳)であり,無作為に標準的な運動介入に加えTWEを行うTWE群30名と,標準的運動介入のみを行うコントロール群30名に分けられた。介入は,両群ともに週に1回,16週間実施した。Timed up and go test(TUG)や片脚立位などの運動機能評価,および注意機能検査であるTrail Making test part A(TMT-A)を介入前後に測定し,アウトカムとした。二元配置分散分析の結果,TUG,TMT-Aに交互作用を認め,介入群でのみ有意な改善を示した。これらのことより,TWEは,動的なバランス能力や注意機能の改善に有用であり,転倒予防にも有用である可能性が示唆された。
著者
坂本 望 大谷 拓哉 新小田 幸一 前島 洋 吉村 理 飛松 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.45-51, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
24

認知症高齢者の易転倒が認知機能の低下によるものか,運動機能低下によるものか明らかにするために,認知症高齢者の外乱に対する反応を調べた。対象は認知症を有する高齢者(認知症群)10名と認知症を有さない高齢者(対照群)7名であった。外乱は移動速度100mm/s,移動距離50mmの床面の前方向への水平移動とした。この外乱を予告なしに5回加えた時の,足圧中心と前脛骨筋,大腿直筋の筋電図のアナログ信号を2000Hzでサンプリングし,A/D変換を行った。足圧中心データから足圧中心移動距離,足圧中心応答時間,筋電図データから各筋の潜時,潜時から500ms間(0-500ms間),及びその後の500ms間(500-1000ms間)における各筋の%筋電図積分値を算出した。足圧中心移動距離,500-1000ms間の前脛骨筋%筋電図積分値において,認知症群は対照群と比較し,有意に小さい値を示した。一方,足圧中心応答時間,各筋の潜時,0-500ms間における前脛骨筋,大腿直筋,500-1000ms間における大腿直筋の%筋電図積分値において2群間に有意差は認められなかった。これらの結果から,認知症群は対照群と比較し,外乱に対する反応への遅延を引き起こしていないことが明らかとなった。しかし,足圧中心を移動させず,少ない前脛骨筋の活動量で立位保持を行っていた。
著者
竹中 裕人 杉浦 英志 西浜 かすり 鈴木 惇也 伊藤 敦貴 花村 俊太朗 神谷 光広
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11731, (Released:2020-05-30)
参考文献数
40

【目的】腰部脊柱管狭窄症術後の患者立脚型アウトカムと運動機能の術後経過を明らかにすること。【方法】LSS 術後1,3,6 ヵ月で評価できた78 症例を対象とした(最大12 ヵ月追跡)。固定術37 例(68.4 ± 10.5 歳)と除圧術41 例(68.9 ± 7.8 歳)であった。JOABPEQ,腰痛・下肢痛・下肢しびれのVAS,6 分間歩行テストと体幹屈曲・伸展筋力を評価した。【結果】固定術,除圧術ともJOABPEQ の4 つの項目,腰痛,下肢痛,下肢しびれのVAS と6 分間歩行距離は,術後1 ヵ月から改善した。一方,JOABPEQ の腰椎機能障害は術後6 ヵ月から改善した。また,体幹筋力は,除圧術が術後3 ヵ月から改善した。【結論】本研究で明らかになったJOABPEQ と運動機能の経過は,手術の説明や術後経過の目標値として役立つと考えられる。
著者
松原 貴子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.439-440, 2008-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
14
著者
合田 秀人 岩井 浩一 谷内 勇太
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11737, (Released:2020-05-29)
参考文献数
21

【目的】地域理学療法における評価指標の使用状況および臨床で必要とされる評価指標の条件(以下,必要条件)を明らかにする。【方法】対象は茨城県の介護保険制度に基づく理学療法実践者とし,郵送法により質問紙調査を行った。【結果】使用状況としては,Range of Motion が94.2%,Manual Muscle Testing が93.2%,片脚立位が73.8%と,これらの評価指標は使用頻度が高かった。必要条件としては,「短時間で実施できる評価指標」が選択された割合は91.6%と非常に高かった。評価対象領域としては,身体構造や心身機能よりも,活動,参加およびQOL に関連する評価指標が必要とされていた。【結論】介護保険制度に基づく理学療法実践者の評価指標使用状況および必要条件が明らかになり,これらは,年齢,性別,地域理学療法領域での勤務年数によって影響される可能性が示唆された。
著者
赤澤 直紀 松井 有史 原田 和宏 大川 直美 岡 泰星 中谷 聖史 山中 理恵子 西川 勝矢 田村 公之 北裏 真己
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.71-78, 2013
参考文献数
27

【目的】健常成人男性のHip Flexion Angle(HFA)値にハムストリングスのマッサージ部位の違いが及ぼす効果を検証することである。【方法】健常成人男性32名(32肢)へのマッサージ部位について無作為に筋腱移行部群(11名),筋腹群(11名)およびコントロール(対側下肢筋腹)群(10名)に割りつけ,3分間のマッサージ介入を同一の圧迫圧で行った。アウトカムは盲検化された評価者によって測定された介入前,介入直後,3分後,6分後,9分後,15分後のHFA値とした。【結果】マッサージ介入直後,3分後,6分後の筋腱移行部群のHFA値はコントロール群より有意に高値を示した。【結論】ハムストリングス筋腱移行部へのマッサージはHFA値を拡大させる可能性を示唆した。
著者
木藤 伸宏 島澤 真一 弓削 千文 奥村 晃司 菅川 祥枝 吉用 聖加 井原 秀俊 三輪 恵 神谷 秀樹 岡田 恵也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.86-94, 2004-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
27
被引用文献数
10

本研究は,3軸の加速度センサを用いて歩行時の下腿近位部に生じる加速度の計測を行い,腰OAから得られた加速度波形とそのパワースペクトルより健常例とは異なるパラメーターを同定し,その特徴を明らかにする事を目的とする。対象は健常群10名(過去に腰痛の経験がない),膝OA群9名(Kellgren & Lawrence分類 ; Grade IV)である。結果は,膝OAでは健常人と異なる加速度波形・速度波形が確認できた。また,周波数解析の結果,膝OAは健常例と異なる測方加速度パワースペクトルが認められた。膝OAの加速度波形の特徴は衝撃吸収メカニズムの破綻と膝関節安定メカニズムの欠如によって起こっていると推測した。周波数解析の結果からは,筋による下腿運動の制御が不十分であると推測した。加速度センサによる歩行時の脛骨運動の測定は,病態運動の把握と定量的評価,理学療法プログラム立案,治療法の効果判定などのスクリーニング検査として有用性が高く,他党的指標の一つになり得る。また,非侵襲的であり,コスト面からも十分に臨床応用が可能である。
著者
林 典雄 立木 敏和
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.522-527, 1996
参考文献数
5
被引用文献数
1

解剖実習用遺体7体(男性4体,女性3体)7肩(右側5肩,左側2肩)を対象とし,後方腱板(棘下筋,小円筋)と後方関節包との結合様式について肉眼的に観察した。棘下筋と後方関節包との間には,筋線維による直接的な連絡は認められず,関節包を裏打ちするがごとく疎性結合組織によって密着していた。小円筋と後方関節包との間には,小円筋の関節包側の筋線維が腋窩陥凹部後方から関節包後下方にかけて直接付着する所見が認められた。棘下筋の機能として,後方関節包の後方からの支持機能および,自身の収縮力を効率よく大結節へと伝達する支点形成機能が考えられた。小円筋の機能として,大結節へと停止する線維群による支点形成機能の他に,関節包側の筋線維群による肩関節外旋運動時の挟み込みの防止および肩関節挙上時における静的支持機構の補助機能が考えられた。
著者
浦辺 幸夫 小林 寛和 高橋 久美子 川野 哲英
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.355-360, 1988-07-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
1

大腿直筋やハムストリングスは股関節と膝関節にまたがる二関節筋であり,その作用はこれまでに多く報告されている。しかし,膝関節と足関節にまたがる二関節筋としての腓腹筋の作用については,ほとんど注意がなされていなかった。今回は,Cybex IIを用いた膝関節の等速度性運動のなかで,足関節背屈による腓腹筋の伸張が,膝関節運動にどのような影響をもたらすか,筋トルクや筋電積分値について分析した。これらの結果をもとに,スポーツ活動における動作にどのように二関節筋が関与しているか検討を加え,スポーツ外傷の受傷機転やそのリハビリテーションの留意点について言及する。
著者
山口 光國
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.217-221, 2003
参考文献数
11

肩関節不安定症(instability)とは,あくまでも関節運動に際し,不安感,疼痛,脱臼を伴う病的状態と定義されている。肩関節不安定症は関節の解剖学的,生理学的破綻が基本となるが,肩に限らず身体の関節機能の障害や,日常生活動作の不備が強く関与する。よって肩関節不安定症に対し理学療法は,表出される愁訴を全て解剖学的,生理学的破綻と決め付けることなく,あくまでも機能的な問題の関与を疑い,対応を図る必要がある。また,肩関節不安定症に対する手術療法は,構造上の物理的破綻やそれに伴う生理学的な破綻に対するものだけでも,その対処法は多岐に渡り,さらに機能的,個体的な要因を加味された場合の対処法も異なるなど,病態,関わる因子により選択される方法は異なる。よって,術後の理学療法は,医師の指示をもとに対処された術法の目的を熱知した上で,生理学的な回復過程に準じ,施行されなければならない。さらに,肩不安定性への起因となりうる,身体機能ならびに運動についても術前から調査し,術後の機能回復ならびに予防的対応としての理学療法が施行されることが望ましい。
著者
小林 孝至 松嶋 真哉 横山 仁志 武市 梨絵 渡邉 陽介 中田 秀一 中茎 篤 相川 駿 駒瀬 裕子 峯下 昌道
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.166-173, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
18

【目的】COPD 急性増悪(以下,AECOPD)患者の栄養状態を調査し,退院時の自立歩行の可否に与える影響を明らかにすることである。【方法】対象は入院前歩行が自立していたAECOPD 患者であり,理学療法を実施した101 例である。栄養状態は低栄養の有無とエネルギー充足率を調査した。自立歩行の可否は歩行FIM で6 以上を可能と判定した。統計解析は自立歩行の可否を目的変数,低栄養の有無とエネルギー充足率を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析を実施した。【結果】自立歩行の可否に対して低栄養の有無(OR 3.9)とエネルギー充足率(OR 0.7)は,有意な因子であった(p<0.05)。【結論】AECOPD 患者における栄養状態は,退院時の自立歩行の可否に影響する可能性が示された。そのため,理学療法介入時には栄養状態の評価が必要と思われ,エネルギー充足率の低い患者へは早期からの栄養補給療法の併用が重要と考えた。
著者
金子 文成 車谷 洋 増田 正 村上 恒二 山根 雅仁
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.115-122, 2005-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的は,一連の投球動作中に変化する筋活動の様相について,先行研究にあるように投球相毎に平均化するのではなく,連続的時系列データとして動的変化を示し,肩関節回旋筋腱板を構成する筋における活動動態の差異について検討することであった。大学生野球部投手1名の投球中(球種は直球)に,肩関節回旋筋腱板を構成する4筋から筋電図を記録した。そのうち棘上筋,小円筋,肩甲下筋にはワイヤ電極を使用した。棘下筋には能動型表面電極を用いた。筋電図は振幅および時間軸共に規格化した(nRMS)。各関節運動の加速度はビデオカメラで記録した画像から算出した。反復した投球間における,nRMSのばらつきである変動係数は,筋によって異なる特徴を示した。筋活動動態の連続時系列的変化として,10球分のnRMSを平均した(nRMSavg)曲線の最大値出現時間は,筋毎に異なっていた。投球において動的機能が重要視される肩関節回旋筋腱板において,nRMSavgが時々刻々と入れ代わる様子が明らかになった。筋間の相関性も筋の組み合わせによって異なり,棘下筋と小円筋が強く相関していた。反復した投球における筋活動動態のばらつき,連続時系列的なnRMSavgの変化,そして筋間の相関性の特徴は,個人内での筋活動動態の特徴を検出するための指標として有効である可能性があると考えた。
著者
大矢 暢久 富田 知也 太田 祐敏 川村 博文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.176-183, 2013
参考文献数
31

【目的】急性期肩関節周囲炎患者の肩関節痛に対する消炎・鎮痛に関わるパルス超音波療法の非温熱効果を検証することである。【方法】肩関節周囲炎と診断された者のうち急性期の者12名を対象とし,コンロトール(C)群6名と超音波照射(US)群6名の2群に無作為に割つけて実施した。パルス超音波療法は,周波数1MHz,出力0.5W/cm^2,照射時間率20%,照射時間10分間の照射条件で3回/週,2週間実施した。効果判定は,C群,US群とも治療前後に,超音波検査,疼痛(VAS),関節可動域,主観的健康感(SF-36)などの評価を行い,有効性を検証した。【結果】US群はC群に比べ超音波検査での棘上筋腱厚,夜間時痛,関節可動域(屈曲,外旋)で有意差が認められた。【結論】肩関節周囲炎の急性期患者に対して,本研究での照射条件のパルス超音波療法による非温熱効果は,有効であることが示唆された。
著者
髙橋 真 岩本 浩二 門間 正彦 水上 昌文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
2020

<p>【目的】大学野球選手における投球側肩関節の外旋角度の増大に伴う上腕骨頭-肩甲骨関節窩後縁の骨間距離(以下,PGHD)を明らかにすることである。【方法】対象は大学野球選手11 名の投球側肩関節11肢とした。MRI 撮像時の肩関節肢位は肩90°外転位から90°,100°,110°外旋位の3 肢位とし,各肢位のPGHD を計測した。【結果】PGHD は肩関節90°外旋位よりも110°で有意に低値だった。【結論】肩関節外旋角度が増大すると,上腕骨頭と肩甲骨関節窩後縁が接近した。</p>
著者
竹井 仁
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.378-380, 2007-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
4
著者
内田 智也 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 佃 美智留 土定 寛幸 大久保 吏司 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
2020

<p>【目的】投球動作におけるステップ脚膝関節動作と肘外反トルクとの関連から肘関節負荷を増大させる動作を検討する。【方法】中学生投手20 名のFoot Contact(以下,FC)以降のステップ膝動作を膝関節位置の変位が生じない固定群と投球方向へ変位する前方移動群の二群に群分けした。FC・肩関節最大外旋位(以下,MER)・ボールリリースのステップ膝屈曲角度,投球中の肘外反トルク(身長・体重での補正値)および投球効率(肘外反トルク/ 球速)を群間比較した。【結果】固定群は14 名,前方移動群は6 名であり,前方移動群のステップ膝屈曲角度はFC からMER にかけて増大することが示された。また,肘外反トルクおよび投球効率は固定群が前方移動群より有意に低値を示した。【結論】前方移動群はFC 以降に膝の縦割れが生じていることで,肘関節に過度な負荷が加わっていることから,ステップ膝動作の評価は野球肘の理学療法において重要であることが示唆された。</p>