著者
太郎丸 博 大谷 信介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.166-171, 2015 (Released:2016-09-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2
著者
中山 伸樹
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.395-414, 2008-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
31

政府の新自由主義的な大学政策のために,今日の日本の大学は深刻な危機に直面しつつあり,学生の質の変化が進む中,よりいっそうの大学教育改善の努力が求められる.社会学教育は,大学進学率の上昇にともなって拡大し,1991年の大学設置基準大綱化以降,各大学で学部・学科の再編が進んだ.『学校基本調査報告書』でみる限り,「社会学関係」の学生数・占有率ともに上昇しているが,その結果,社会学中心学科が拡大しているとはいいきれない.大綱化以降,学科名称は急増し,「大学改革」の迷走ぶりを象徴しつつ,『学校基本調査報告書』の学科分類は破綻してしまった.本稿は,社会学をプロフェッションとしてとらえることの意義,社会学プロフェッションが大学ルートと学会ルートの重なりと区別という形で存在することを主張し,一般国民や政府・財界との関係や社会学分野の課題を示し,大学ルートの集約の場,大学ルートと学会ルートの調整の場がないことを指摘している.本稿はまた,学生と教員の間,教員と同僚の間,教育役割と研究役割の間の「3つのアパルトヘイト」論を紹介し,教育と研究は構造と作動原理がかなり異なる点に教育改革が困難である理由を見,社会学教育の改革のためには「アパルトヘイトの打破」「理念・目的・目標の明確化」「社会学の社会的機能への目配り」を通じて実質合理性を高めることが重要であると指摘している.
著者
中村 英代
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.498-515, 2015 (Released:2017-03-31)
参考文献数
35

本稿の目的は, 薬物依存からの回復支援施設であるダルク (Drug Addict Rehabilitation Center : DARC) では, 何が目指され, 何が行われているのかを考察することにある.薬物問題の歴史は古く, 国内外で社会問題として存在し続けている. 薬物依存に対する介入/支援の代表的なものには, 専門家主導による司法モデルと医学モデルとがあるが, そのどちらのアプローチでもなく, 薬物依存症者自身が主導している介入/支援がある. それが本稿で考察するダルクだ. ダルクは, 薬物依存の当事者が1985年に創立して以来, 薬物依存者同士の共同生活を通して薬物依存者たちの回復を支援してきた. 薬物依存の当事者が運営している点, 12ステップ・プログラムを中心に据えている点, 日本独自に展開した施設である点にダルクの特徴がある.本稿では, 2011年4月以降, 首都圏に立地する2つのダルクを中心にフィールドワークとインタビュー (31名) を行ってきた. 調査の結果, ダルクとは, 我々が暮らす現代社会の原理とは異なる原理に基づいて営まれている共同体であることが明らかになった. 具体的には, 人類学者のG.ベイトソンの議論を補助線として, ダルクとは「ひとつの変数 (金, 人望, 権力など) の最大化」を抑制する共同体であることを, 結論として提示する.
著者
玉野 和志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.224-241, 2015 (Released:2016-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本稿では地方自治体の政策形成に対して, 何らかの関わりをもってきた村落, 都市, 地域に関する社会学研究者の経験を検討することで, 政策形成に関与しようとする社会学者がふまえるべき教訓を導き出すことを目的とする. ここでは, 戦後農地改革の評価を行った福武農村社会学から地域開発政策への批判に及んだ地域社会学への展開, 自治省のコミュニティ施策に深く関与した都市社会学者の経験, そして近年の東日本大震災に関する日本学術会議社会学委員会の提言を取り上げる.そこから, 社会学者は政策の事後評価に関する地道な調査研究を蓄積することはもとより, 市民がより納得できると同時に, 政策の実施者である政府の意向をもふまえて, できるかぎりのことを模索することが求められることが教訓として引き出される. そのうえで, 政策形成に社会学が独自に貢献できるのは, 時間的・空間的に広がる人と人とのつながりに根ざした当時者の主観的な思いによって測られる, 歴史的・文化的な要因を数値などの客観的な表現で示すことであり, その結果, 人々がより納得できる実効ある政策の実現を可能にし, 民主主義の実質化に貢献することであることを明らかにする.
著者
安村 克己
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.366-377, 1996-12-30 (Released:2009-10-13)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本稿の目的は, 観光の社会学関連文献をレヴューしながら観光社会学の対象領域を俯瞰し, 観光社会学の学問的意義を再考することにある。現代観光の影響は, 個人の行為レベルから世界システムのレベルに至るまで広範囲に及び, 多様かつ多大である。したがって, 観光はいまや社会学者にとって看過できない社会現象であるが, それに対する社会学の取組みはほとんどなされていない。とりわけ日本の社会学者は, 観光研究に無関心であるようだ。こうした観光社会学の現状を勘案し, 本稿は, 観光社会学の現代的意義を検討していく。観光社会学の成果にはすでに注目すべき業績も見られるが, それらの成果を体系的に整理する作業は, いまだなされていない。本稿では, 観光社会学の対象領域を明確にするために, 社会学的空間レベルの4つの区分- (1) 行為者, (2) 社会的相互作用, (3) 社会システム, (4) 世界システム-に対応させて, 観光社会学関連の既存の経験的研究結果を4つの対象領域タイプ- (1) 観光者類型, (2) 観光のホスト-ゲスト関係, (3) 社会的・文化的インパクト, (4) 国際観光とマスツーリズムに分類する。この準拠枠に従って, 観光社会学の射程となる対象領域を概観し, その学問的意義を吟味していきたい。
著者
澤井 敦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.118-134, 2002-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

現代社会は死をタブー視する社会であると度々指摘される.しかしメディアにおいて死が頻繁に話題になるようになり, 死はタブーから解放されたとする見方もなされている.本稿の目的は, 「死のタブーからの解放」とは何を意味しているのか, また, 依然として死がタブー視されているとすれば, それはどのような意味においてなのか, という点を検討し, それを通じて「死のタブー化」の概念の実質を明確にすることにある.本稿ではまず, P.アリエスやG.ゴーラーによる古典的定式化の再検討, および, 死の「公的な不在, 私的な現存」というテーゼの批判的検討を行い, 死のタブー化という概念の実質的な意味が, 死にゆく者や死別した者との「関係」の忌避という点にあることを明らかにする.そして次に, メディアにおいて流通する, 死をめぐる多様な情報の質的差異について考察し, それらの情報が, ゴーラーのいう「死のポルノグラフィ」としての性質を有すると同時に, 死や死別の受容の仕方を教示する「死のガイドライン」としての性質を有することを確認する.そして最後に, 死のタブーからの解放という見方は, この「死のガイドライン」としての情報がメディアを通じて流通するという現象を指し示すものであるということ, しかしながら, そうした「解放」にもかかわらず, 死を身に帯びた者との関係の忌避という意味での死のタブー化は, 依然として存続していくことを指摘する.
著者
川崎 賢一 藤村 正之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.601-613, 2005-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
9

本稿の目的は, 1992年11月に出版された『社会学の宇宙』 (川崎賢一・藤村正之 (共編), 恒星社厚生閣) という社会学テキストがどのように編集・出版されたのかを, 編者自身がその当時に考えていたことにできる限り忠実に, 紹介することである.その当時は, バブル経済崩壊直後の日本社会にあって, 社会学教育自体にも変革の波が押し寄せようとしていた.その波への1つの回答として, 編者たちが念頭に置いたのは, 大まかにいうと, 従来考えられていた〈教養としての社会学〉から, 〈普通に使える社会学〉あるいは〈DIY (Do It Yourself) の社会学〉へ, 大きくその方向を変えることを目指そうということであった.その意図がうまくいったかどうかはわからないが, 少なくとも, その後の社会学のテキストはさまざまな種類のテキストが出版されるようになった.その意味で, われわれのテキストが果たした何がしかの役割があったのではなかろうか.
著者
上野 千鶴子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.31-50, 1980-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
49

異常とは「集団が境界の定義のために創出する有標記号のうち、マイナスのサンクションを受け、かつ状況的に発生するもの、こと、ひと」であり、異常の成立する諸次元には、 (1) ユニット・レベル (個体内の自己防衛機制) 、 (2) 間ユニット・レベル (個体間の協働、共犯的な状況の定義) 、 (3) システム・レベル (集団アイデンティティの防衛と維持) の三つを区別することができる。異常の創出が個人および集団の自己防衛機制に関わっているなら、そのために解発される攻撃性のターゲットが何であるかによって、異常を類型化することができる。それには (1) 葛藤の当事者である (同位の) 他者、 (2) 攻撃性を転位した「身代わりの他者」、 (3) 自己自身の三類型がある。それは二つの葛藤回避型の社会、葛藤をルール化した多元的な競争社会と、社会統合を代償に葛藤を物理的に回避した離合集散型の社会とを両極にした、一元的でリジットな社会統合から多元的でルースな社会統合に至るまでの、統合度のスペクトラムを分節している。即ち、異常の類型は、集団の統合の類型と対応しており、現実の諸社会は、このスペクトラム上のいずれかの地点に分布している。だとすれば、異常の表現型をインデックスとして、それを創出する集団の特性を推論することができる。異常の一般理論は、異常を扱う諸学の間に対象と方法の一貫性を導入し、異常の通文化的分析を可能にする。

3 0 0 0 OA 家と祖先崇拝

著者
櫻井 義秀
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.119-136,227, 1988-09-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
34

祖先崇拝は直系家族における家長-跡取りの権威主義的な互恵関係を正当化する「孝」を儀礼化したものであり、家父長的家族結合を維持・強化する機能を果す。本稿の目的は、フォーテスらにより提唱されたこの理論を以下の二点に関して考察することにある。 (一) 家長-跡取りの世代間の構造的結合を死者供養の儀礼の中に確認すること、 (二) 祖先崇拝と家の構造連関を測定すること、である。この問題を農業村落である山形県村山郡黒澤のムカサリ絵馬習俗と祖先崇拝の実態調査から分析し、次の結論を得た。(一) 婚姻の絵馬習俗に認められた家長-長子のダイアッドは、祖先崇拝における世代間関係の主・客を逆転させたものである。未婚の死者が先祖になれないというのは、家を創設、又は継承させるための前提条件である子孫を残さなかったからである。婚姻が、家格維持・嫡子獲得の制度であった地域において、天逝者に対する婚姻儀礼は、家の象徴的実体である祖霊に彼らを加えることを意味した。家長は、とりわけ長子に対しこの儀礼を行った。(二) 祖先崇拝の祭儀の実施は、生業形態・家族類型・家格・家父長的父子関係・世代深度の、家の構造を示す諸変数と関連を持つ。黒澤のような農村部で行なわれる現在の祖先崇拝は家と密接な関係を維持していると考えられる。
著者
副田 義也
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.238-241, 2008-06-30 (Released:2010-04-01)
著者
岡本 智周 笹野 悦子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-32, 2001-06-30
被引用文献数
1 2

本稿は, 戦後の新聞紙上で「サラリーマン」の表象がいかに変化してきたのかを分析する.近年しばしば「サラリーマンと主婦に子ども」という家族構成が家族の「55年体制」と称されている.その「55年体制的サラリーマン」が戦後の全国紙において生成し, 消失していく過程を具体的に提示することが, 本稿の意義である.<BR>分析の対象は, 1945年から1999年の『朝日新聞』における, 見出しに「サラリーマン」という語が入った全1034件の記事である.我々はまずこれらの記事を量的に検討し, それらを内容の面から8つのカテゴリーに分け, さらにカテゴリーごとに「55年体制的サラリーマン」を自明視する記事の割合の増減を検討した.この作業によって戦後を5つの時期に区分することができた.<BR>次に我々は, 内容分析によって各時期の「サラリーマン」の特徴を提示した.「55年体制的サラリーマン」に関して明らかになったことは, その自明性が高度経済成長期の初期に初めて成立し, 「サラリーマン」に対して1960年代後半においては「納税」が, ポストオイルショック期においては「性別役割分業に基づいた家族への回帰」が期待されていたことである.また, その自明性がバブル経済期半ば以降に問い直され始め, 1990年代において「サラリーマン」にはリスクを伴う個人化傾向・周縁化傾向が促されつつあるということも, 本研究によって確認された.